【悲報】超絶成金プレイヤー、異世界転移する【課金できない】   作:課金は家賃まで

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(´・ω・`)<やモ便(やっぱりモモンガって便利)だなあ


死の支配者、匙を投げる

 

 

 

 

 

 

 パンドラズ・アクターに対して黒歴史だのなんだの言っている余裕は今のナザリックにはない。過去の過ちやそこから湧き出てくる羞恥心は、気合いでなんとかするのが死の支配者(オーバーロード)だ。

 

 黎明華という存在がナザリックにとってどれほどの脅威となるのか、拙いながらも鬼気迫る勢いでシモベたちに伝えた後、モモンガはナザリックの三賢―――アルベド、デミウルゴス、パンドラズ・アクター―――を自室に集め会議をしていた。

 

 そして、そこで自身の身の上や能力について、洗いざらい説明した。

 

 ……というのも、『遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモート・ビューイング)』で得られたわずかな情報を頼りに行動しなければならない現状、トップに立つ自分が部下に隠し事をしていては、自分より遥かに優秀な部下の行動の枷にもなってしまうからだ。

 

 〈遠隔視の鏡〉はとても有益な情報をもたらしてくれた。

 

 まず、周辺地形の形状から、黎明華(あのカス)はさほど大胆に暴れている―――この世界に来てすぐ超位魔法を連射して地形破壊、土着国家爆散、などのバカな行為をしている―――わけではないこと。

 

 少なくとも小規模なコミュニティで信仰されるほどの善行を成していること。

 

 あの村の規模と住民の身なり、血色の良さから、あの村の生活水準はかなり良いように見えること。

 

 ―――そして、村の中央部、篝火のそばにゴーレムらしきものが祀られていたこと。

 

 

 それらの情報から察するに、現在の黎明華(カス)は安定状態にあるのだろう、というのがモモンガの意見だった。

 

 だが、この世界の住民に優しいからと言って我らがナザリックとも友好的な態度で接してくれる保証はない。ただでさえヤツと我々にはタイムラグがあるのだ。それも一年や二年では効かないぐらい大幅なタイムラグが。

 

 ギルドの規模、課金額、保有する戦力、プレイ時間の全てで劣る我々が勝利する唯一の方法は、準備期間の有無からくるアドバンテージによる圧殺ぐらいしかなかった。もし仮にヤツと戦うまでに……それこそ百年ほど時間があれば、贔屓目に見てもかなりいい戦いができただろう。だが現実は違う。ヤツの方が先に来ている(・・・・・・・・・・・)のだ。

 

 現状を改善するためには、どうにかしてあの狂人に取り入らなければならない。だがもしうまく友好関係を結べたとしても、何かの拍子に攻撃されるかもしれない。どの道、一矢報いるための作戦を考える必要があった。

 

 

 

 

「―――あとは超々広範囲の時間停止、ですか…」

 

 

「そうだ……正直言ってこればかりは、我々にはどうしようもない。一部のNPCに対策アイテムを配ることは可能だが、完全なる無効化は不可能だからだ」

 

「それを踏まえた上で、諸君らに奴を倒す方法を考えてもらいたい。もちろんすぐにとは言わない、なるべく早いほうがいいのは言うまでもないが…」

 

 

「…一旦我々の方で考えさせていただいてもよろしいでしょうか」

 

 

「―――ああ、頼んだぞ」

 

 

(あ、多分これ無理かも)

 

 

 モモンガが知る限りの『黎明華』の能力と、ワールドエネミー〈妖精界の捕食獣(ジ・プレデター・オブ・アルフヘイム)〉の予想ステータス。そしてゲーム最終日の全体アナウンスから、ヤツがワールドエネミー〈七大罪・怠惰〉でもある可能性が高いことをデミウルゴスたちに伝え、その場は解散となった。

 

 

 

 

 

 

 モモンガ様の部屋から退出した後、私たちは第九階層のショットバーに集合し対策会議を行っていた。バーではあるが酒を飲むわけではない、ただ静かな場所が必要だったからだ。私はここの常連だから、店長にも顔が利くというのもある。ソフトドリンクを頼みカウンターに座ると、アルベドが話しかけてきた。

 

 

 

「……デミウルゴス、パンドラズ・アクター。単刀直入に聞くけど―――」

 

 

「友好関係を結べるならそれが最善です。それは分かっています。ですが、モモンガ様が仰ったようにアレ―――黎明華とは遅かれ早かれ戦う運命にある」

「モモンガ様の言では黎明華とは、幼い子供のように怒りっぽく、猫よりも気まぐれな、さながら災害のような存在。その毒牙がナザリックに向けられない保証はないのですから、何か策を講じる必要があります。ですが…」

 

 

「……はあ。そもそも『複数のプレイヤーを一つに統合する』なんていうこと自体イレギュラーなのだから……それがどういう感覚なのか分からないの。私たちは身体を一つしか持たないでしょう?」

 

 

 

 アルベドがそう言って視線を横に向けると、このバーに来てから一度も喋らなかったパンドラズ・アクターが口を開く。

 

 

 

「デミウルゴス様、私は〈二重の影(ドッペルゲンガー)〉です。複数の姿に変わることができる、という能力をモモンガ様より賜り、その通りに『至高の四十一人』の方々を模倣することができます……おそらく『黎明華』なる者は私と似たような存在ではないでしょうか?」

 

 

「……どういうことだい?」

 

 

「モモンガ様の話を聞く限りでは、黎明華は複数の姿を持たない…一つで完結しているように思えます。つまり変身する必要のない〈二重の影(ドッペルゲンガー)〉のようなものではないでしょうか?」

 

 

 彼の言う『黎明華上位〈二重の影〉説』が本当だとすれば、計画の一つとして考えていた『〈完全不可知化〉を用いた階層守護者全員での暗殺』は意味をなさない。この作戦を成功させるには黎明華がWEではないタイミングが必要だからだ。

 

 

「それはモモンガ様が〈無尽黄金楽土〉を『一芸に秀でている者たちの集まり』だと評していたから?」

 

 

「正にその通り!一芸に特化している者がそれぞれの欠点を補うべく一つになる……なるほど、これ以上ないほどに合理的な手段です。それぞれの長所が短所を打ち消しあい、補完しあう*1…」

「…そしてその中にはWEすらあるというではありませんか!これだけ様々な能力を持っているならいっそのこと一つに纏めてしまい、変身する手間を省いてしまった方が合理的というものです。そうでしょう?」

 

 

「ですが、彼はあまりに合理的すぎるが故に一つだけ弱点を晒しています」

 

 

「弱点?ふむ。その口ぶりから察するに、君の言う弱点とは彼の人間性……というわけでは無いんだろうね?」

 

 

「それも弱点ではあります。圧倒的な自尊は他者への侮蔑を生じさせ、ゆくゆくは看過できない隙となりますからね。ですが決してそれだけではないのです」

 

 

「―――ギミック、かしら?」

 

 

Das ist richtig(その通りです) 守護者統括殿!玉座の守りも任されている貴女にとっては幾分馴染み深い存在でしたか?」

「……白状しますと、実は私、黎明華……WE〈妖精界の捕食獣(ジ・プレデター・オブ・アルフヘイム)〉の戦闘風景が収められたデータクリスタルを観たことがありまして…」

 

「それでも素晴らしい。つまり我々は『黎明華』とではなく『〈妖精界の捕食獣〉の特殊ギミック』と戦うべき、というわけかな」

 

「はい。どれだけ犠牲を払ってでもギミックさえ攻略できれば、勝機が生まれる可能性があります」

 

「……もしもその情報が間違っていたらどうするつもり?」

 

「と言いますと?」

 

「かつての……ナザリック外のプレイヤーどもは徒党を組んで挑んだけれど〈妖精界の捕食獣〉を倒せなかった。そうして倒せないままにイベントは終了し、黎明華は文字通り一つのワールド(アルフヘイム)と一体化した。もしもワールドを一つ取り込んだことで、〈妖精界の捕食獣〉のギミックそのものが変質していたら…?」

 

 

 アルベドの抱いた恐れを、パンドラズ・アクターは一笑に付した。

 

 

「―――アハハ、アルベド殿。おかしなことを言うものです」

 

「その時は全て消えるだけです。我々も、モモンガ様も、そしてこのギルドも」

 

 

 顔に空いた三つの穴から暗黒が滲み出すようだった。

 

 

 

 

 

 

*1
攻撃力が高いけど紙装甲なヤツと、攻撃力が低いけど硬いヤツを合体させると強いなあ(小並感)

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