俺の脳内選択肢が全力で修羅道に導いてくる 作:修羅
私はヤグラ・ラシュア。精鋭騎士にして、現在教師役を務めている。
本日は学校初日であるというのに。妹が居眠りをしていたので軽くしめておいた。
レルミラは色々と事情が複雑な子だ。現状維持の実力では彼女自身がこの先困ることは間違いない。最近は色々と不穏な噂も聞くしな……。ラシュア家の血を引く者は全員強さを求められるし、求めなくてはならん。
だが、それでもレルミラは特別だ。わざわざ学校の教師役に私が手を挙げるほどにはな。
「では、どちらから戦う」
「お姉様! アタシ達、二人で協力してもいいの! そうでないと相手にならないわ!」
「今回は一人ずつだ」
レルミラとその横にいるのは今期ツートップと言われているライヴァン。黒髪を持つ孤児と聞いている。
私は奴の試合を見たことがある。まさに不気味という言葉が似合う男なのだろう。剣術大会、レルミラとの試合であそこまで我を出し。立ち上がり続け、勝利をもぎ取ってみせた。
たかが模擬戦のような試合の一勝など、価値はないといえばそれまでだ。だが、奴にとっては勝つことは全てなのだろう。
でなければあれほどの執念はないだろうさ。
世界で1番強い存在になる。奴はそう言った。騎士ではなく、強い存在というのが大事なのだな。
あくまでここは通過点であり、騎士という位などには興味もない。
「では、先に見せてもらおうか。ライヴァン」
「……」
修練場、青空がよく見える空き地というような場所だ。ライヴァンは刀を2本持っている。一本は粗悪という評価が正しい普通の刀だ。
今彼はそれを握っている。
だが、もう一本が異様な雰囲気を孕んでいた。抜いてはいない。だが、異質感を帯刀している。
「威修羅か」
「……さぁな」
一度だけ、迷宮都市コアで見たことがある。無論、買おうなどと手に入れようなどと思いはしなかったがな。あれを手に取ろうなどと……愚者にほどがある。
僅かに指先を触れただけで直感で破滅に行くと確信があった。
「ふん。考えすぎたな。さぁ、かかってこい」
──魔素の奔流
「……大した魔素だ。私もこの歳でここまでの魔素量は見たことがない」
体に完全な100%の転化が出来ていないとはいえ……ここまでの量があれば体は十分強化できるだろうな。それに素の身体能力も高いと見える。
「ッ!!!」
「大した奴だ」
──刀と剣が交差する。火花が散る中で私はその男の瞳を見つめる。
まるで虚空。力だけを求め続ける修羅のようだ。誇りを持ち守るための力を求めるのではなく、ただ力を求める暴君のような荒々しい瞳だ。
「修羅か」
刀の振り方も様になっている。ルテス上級騎士の指導の賜物だろうか。噂には聞いていたが、噂以上の強さだ。
これなら、他の子達では相手になるまい。
だからこそ、私が担当をしているのだろうがな。
黒髪を持ち、呪いの刀を持ち、力を求める少年。騎士の一部では伝説の虚無の悪魔の存在を思い出す存在がいるらしい。
それ故に彼に奨励枠を出した。あの剣術大会で異質なものを彼に感じてしまったからこそ。
この人材が
そう言った場所にこの少年が流れることを止めるために帝国が先に唾をつけておいた。
そして、それを私に監視をしろと言っている。私としてもそれは望むところだ、レルミラの身の安全を考えても一石二鳥だ。
「……っ!!」
「見事な剣術だ。だが少々荒いがな」
縦横無尽に走り回るその荒々しさ。しかし、そこにある確実な努力の積み重ねによる剣戟の美しさ。
なるほど……レルミラとツートップと思っていたが……こいつのワントップか。今のところはと言う評価になるがな。
「少々強めに行くぞ」
「……構わん」
魔素による体の強化は魔素を体に流用、転化することで大幅な出力を叩き出す。だが、あまりにやりすぎる、器以上の力を出そうとすると体が壊れてしまう。
「卑怯というか?」
流石にここまで身体的に差が出てしまうと卑怯かと試しに聞いてみた。私は精鋭騎士、魔素の扱い歴、実戦経験、それらで上を行っている。
輝かしい原石であるだろうが、こちらは間違いなく上だ。溜め込んだ経験値から使う、魔素による体強化は勝敗を裕に決める。
「……強くなるなら、より強い奴と戦うのが近道だ」
「答えになっていないが……言いたいことは理解した」
こいつ……とことんこちらの想像通りの人間だろうな。魔素によって強化した私の体に対して、無理やり体を強化している。
「……ッ!」
「これが私の教え子か」
これまでこんな子供は見たことがなかったが……レルミラにも良い刺激になってくれそうだ。悪い刺激にもなりそうだが……どちらにしてもレルミラには強さがいることは間違いない。
競争相手としてはこれ以上ない存在だろうな。追われるよりも、追った方が走りやすいというものだ。
レルミラは余りに差がありすぎる相手に対して、すぐに諦める癖がある。合理的とも言えるが、まだ若いのだから馬鹿でもいい。
「ここまでだ」
「……まだだ」
終わらせようと思ったが、この小僧はまだ斬りかかってくる。まぁ、イカれているとは思うが。粋の良い若者は私も嫌いではない。
まぁ、度合いによるがな。
◾️◾️
精鋭騎士のヤグラ・ラシュアが一対一の模擬戦をすると言ってきたので戦った。なるほど、確かにルテスよりも強いんだろうな。
動きの桁が違うっていうのが正しいな。魔素の量もルテスより多かった。剣術とか、魔素の使い方を教えてもらわなかったらここまで打ち合えなかっただろうよ。
ってか、世界には強い奴がいっぱいいるみたいだ。選択肢から解放されたいが、強い奴がこんなにもいるとなると正直やる気なくなるわぁ。
まぁ、その後にレルミラとヤグラの試合を見て自信取り戻したけどね。どう考えても同年代の中じゃ俺が1番だぜ!
ふふ、これも修行の成果だよな。
ただ、魔素の消費が激しすぎた。魔素は人間の心臓から溢れるが、人間の食べたご飯の栄養素から作られているらしい。だからこそ、貴族とかお金持ちの子の方が魔素は普通は多くなるらしい。
というわけでお昼は馬鹿みたいに食べることにしている。食堂があるらしいが、ぼっちなので端っこで食べている。
「あれ、黒髪の子じゃない。ほら、噂の」
「孤児なのに奨励枠なんだってよ」
「貴族でもないものが我が物顔とはな」
ふむ、やはり黒髪はあまり良い印象ではないのだろう。それに加えて貴族様とかからしたら、孤児のくせに奨励枠とかは生意気な対象になるのかもしれん。
魔素の量とかも気にするだろうな。ご飯とかちゃんと食べてお金をかけているのに、努力してるはずがその辺の孤児に負けるとなるとプライドが傷つくだろうし。
「アンタ、結構食べるのね」
一人でもしゃもしゃ飯を食べていると、レルミラもやってきた。彼女は大食いだが俺ほどじゃない。
「……あぁ」
「まぁ、あれだけ魔素があれば当然ね。ただ。燃費が悪そうね。あんな出力を馬鹿みたいにしてたら、すぐ力尽きるわ」
「……」
──選べ
『ここは早めに切り上げる』
『おかわりをする』
もうお腹いっぱいだ。それに、ここでずっとチラチラ色んな人に見られると緊張する! コミュ障なんだ!!
「でも。ライヴァン君ちょっとかっこよくない?」
「わかるー。ちょっと悪そうな感じがいいよね」
ふ……女の子達の会話が聞こえてきてしまったぜ。やっぱりちょっと悪そうな奴がモテるな。
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