デクとキラの二重奏   作:ルーシー統括主任

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同伴中でしたが、カフェに寄ることが出来たので投稿します

父親が単身赴任なの完全に頭から離れてました  ‍♂️指摘してくださった方ありがとうございます


第2話 「合格の裏側」

「うわぁぁぁぁぁ!」

緑谷出久の叫びが演習場に響き渡った。0ポイントの巨大仮想敵を一撃で粉砕した瞬間、勝利の余韻に浸る暇もなく、彼は空中に投げ出されていた。幼稚で負けず嫌いな性格が引き起こした衝動的な行動と、「ワン・フォー・オール」の反動が肉体を苛む。両脚と右腕が折れ、激痛が全身を貫く中、彼の意識は夜神月としてフル回転していた。

「くそっ…僕はまだここで死ぬわけにはいかない! 考えろ、考えろ!」

必死に頭を働かせる。効率よく訓練しなかった過去の自分への怒りはとうに消え、生存本能が彼を支配していた。「両脚と右腕は使い物にならない…でも左腕はまだ動く。タイミングさえ合えば…!」

「僕は新世界の神だ。死ぬわけにはいかない!」

決意を固め、地面が迫る中で左腕を振り上げる準備をしたその瞬間――「バチン!」

鋭い音とともに顔に衝撃が走った。試験前に校門で助けてくれた少女が、彼の頬を思い切り叩いていた。

急降下していた出久の身体が地面すれすれでピタリと停止。「解…除…!」 彼女の声と同時に、数センチの高さから落下し、命は助かった。だが、両脚と右腕は紫色に腫れ上がり、骨折の痛みが容赦なく襲う。「うううぅ…」と悶えながら、夜神月は彼女の個性を分析した。

「触れた対象を無重力にする個性か…。」

安堵の感覚も束の間、痛みが過去の記憶を呼び起こす。YB倉庫で松田に撃たれたあの痛みと酷似していた。

「うぅ...なんだこれは...まだだ…あと1ポイントでも稼がなければ…」

這いずりながら手を伸ばすも、プレゼントマイクの無情な声が響く。「終了〜!!!」

極度の痛みと出血に耐えきれず、彼は意識を失った。

 

周囲の受験生は呆然と立ち尽くす。「あいつ、何者だよ…」「規格外すぎる…」

試験前に口論したメガネの少年、飯田天哉は複雑な表情で呟いた。「0ポイントの仮想敵を倒す意味…少しずつ分かってきた気がする」

その後、リカバリーガールの治療で出久は一命を取り留めた。

 

 

1週間後。緑谷家の食卓では、出久と母が二人で食事をしていた。

父は海外に単身赴任中で家には出久と母の二人しかいない。

「出久…出久?」

母の呼びかけに出久は反応しない。「出久!!?」

三度目の呼び声でようやく顔を上げた。「ちょっと大丈夫? 何、魚と微笑みあってんの!!!」

「あぁ、ごめん。大丈夫だよ」とそっけなく返す。だが、彼の頭の中はデスノートの考察で埋め尽くされていた。

 

自室に戻った夜神月は、ノートを手に考えを巡らせた。

「デスノートに触れて記憶が戻ったのは、これが僕――夜神月がかつて使っていたものだからだろう。つまり、この世界は僕が死んだ未来。そして、キラの事件が記録に残っていないのは、超常釈明期の混乱で資料が失われたからか」

インターネットで調べても痕跡は見つからなかったが、驚くべき発見があった。キラが童話として絵本に描かれているのだ。「僕が童話の主人公とは…神らしい皮肉だな」と薄く笑う。

さらに考察を深める。「緑谷出久として生きてきたのに記憶が戻ったということは、僕の魂が個性か何かでこの身体に宿っていたのだろう。死神が存在する世界なら、あり得る話だ」

「となると、リュークが現れるのも時間の問題か。また面白いゲームを見せてやろうじゃないか」

意気込んだ彼は、デスノートを開き、躊躇なくペンを走らせた。報道された犯罪者や指名手配犯の名前を次々と書き込む。前世の失敗を教訓に、1時間おきに心臓麻痺で死ぬよう調整した。

「個性で捜査される可能性もあるが…考えすぎても仕方ない。まずは行動だ」

一夜で100人以上の名前を書き終えた。

 

翌朝、ニュースは「謎の心臓麻痺事件」の連発を報じていた。コメンテーターは「童話のキラの模倣犯か?」と推測し、ネットでは「キラは実在したんだ!」と盛り上がるも、荒唐無稽な意見として軽く扱われていた。

夜神月は対策を講じた。引き出しに二重底を作り、腕時計の裏にノートの切れ端を隠す。「個性社会で通用するかは分からないが、やれることはやっておく」

 

リビングで母と過ごしていると、彼女が突然叫んだ。「出いずいずく出久!!!」

駆け寄ってきた母が差し出したのは、雄英高校からの封筒だった。

「来た!!! 来てた!!! 来てたよ!!!」

0ポイントしか取れなかった不安がよぎるも、封筒を開けると端末から光が放たれ、空中に映像が浮かんだ。テクノロジーの進歩に夜神月は内心驚く。

映像には、正門と試験で助けてくれた少女――麗日お茶子が映っていた。彼女は「助けてくれた彼にポイントを分けてあげてほしい」と直訴していた。

続いてオールマイトが現れ、「採点は敵ポイントだけじゃない! 救助ポイントもある!」と明かす。「緑谷出久、60ポイント。合格だ!」

「来いよ、緑谷少年。ここが君のヒーローアカデミアだ」と締めくくった。

夜神月は喜びよりも、「いい隠れ蓑になる」と冷たく笑っただけだった。

 





-緑谷出久
雄英入試で「ワン・フォー・オール」を使い0P仮想敵を破壊するが、重傷を負う。デスノートに触れ夜神月の記憶が蘇り、裏でキラとして犯罪者を裁き始める。合格通知を受け、ヒーローとキラの二重生活を計画。
-オールマイト
出久に個性を継承したNo.1ヒーロー。試験の映像で合格を伝え、救助ポイントの存在を明かす。出久の裏の顔には気付かず、彼を未来のヒーローとして期待。
-麗日お茶子
入試で出久を助けた受験生。無重力の個性を持ち、彼に救助ポイントを譲り合格を後押し。明るく優しい性格。
-飯田天哉
試験で出久と口論した真面目な受験生。0P仮想敵を倒す意味に気付き始め、彼の実力に複雑な思いを抱く。
-緑谷の母
出久を育てるシングルマザー。雄英からの合格通知に大喜びするが、息子の異変には気付いていない。
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