Re:黒い球と共に   作:八雲ネム

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第9話 コンタクト

「これ、お前さんの新しい戸籍だ」

「どうやって作ったんですか?」

「そう簡単に言えない方法で」

 

 田中星人の討伐ミッションから数日後、外国からの郵送で送られてきたのはダークウェブで作ってもらった岸本の戸籍謄本と各種個人証明書類であり、そこには書類上では生きているものの実際には失踪等で行方不明の両親の名前が記載されていた。

 人口が1億2千万人以上の日本において、祖父母が既に他界して両親が行方不明と言う状態の家族は少ないながらも一定数、存在しているものでそこに戸籍を捩じ込んでしまえば背後関係を疑われる事はない。

 とは言え、戸籍の改竄や捏造は違法行為な上に各種個人証明書類も違法に取得しているので発覚すれば数年はムショ暮らしになるだろうし、発覚しない様に周到に手を打った結果として数百万の出費になった。

 

 勿論、オリジナルの岸本がくたばっていたらここまでの違法行為に手を染める必要はなかったものの、生きている以上は俺がリターンを得る為に何が何でもカタストロフィが終わった後も生きてもらうぞ。

 

「これ………大丈夫なんですよね?」

「あぁ、岸本が犯罪なんかをして目立たなければ   つまりは今までの生活を送っていればまず気付かれないだろう」

「………分かりました。いずれ、必要になると薄々気付いていたので受け取っておきます」

「おう、そうしてくれ」

 

 そんな俺の言葉に、岸本はため息を吐いてから受け取ってくれたので一安心しながら時計を見ると予定の時間に近づいていた。

 

「さてと、ちょっくら出かけてくる」

「あれ? 散歩の時間にしちゃ早くない?」

「待ち合わせしてっからなぁ。早めに出ておくに越した事はないよ」

「何時ぐらいに帰るー?」

「遅くとも7時ぐらいには帰ると思う」

「分かった」

 

 そう言いながら立ち上がった俺に、美哉が聞いてきたので具体的な事は言わずに答えると彼女はさり気なく、察したので帰ってくる時間を示し合わせてから出発した。

 これで、何の連絡もなしに予定の時間までに帰ってこなかったら俺に異変が発生したと分かる為、彼女の方で行動するだろうと思いながら家を出て電車で新宿駅へと向かった。

 俺の場合、基本的に買い物やジャックの散歩などの日常生活に欠かせないもの以外では外へ出かけなくても良い様に、行動様式を整えているので今回の外出は例外中の例外。

 

 何しろ、新宿駅の西口に時間指定で待ち合わせに応じてくれとのメールがPCの誰にも教えていない多数のメールアドレスの内の1つに来たのだ。

 勿論、これだけでは単なる誤送信として片付けていたのだが続けて送られてきたメールに送った本人だと思われる名前と職業が記載され、顔写真のデータが添付されて送られてきた。

 名前は東郷 十三、GANTZ本編では本名不明の自衛官として登場した人物であり、おこりんぼう星人時に多数の星人を討伐しながらも最終的には落命した初期の方では優秀な部類に入るキャラだった。

 

 そんな人物を出して落ち合おうと言ってくる、と言う事はこっちの事情を知っているのか、或いは馬鹿にする為に呼び寄せたかのどちらかであり、博打の大穴としては俺と似た様な転生者が居る事ぐらいしか、俺の頭では考えられない。

 その為、普段着の下にはガンツスーツを着込んで戦闘に入ってもすぐに対処できる様にしながら、新宿駅西口の指定された場所に立って指定された時間まで読書しながら待っていると俺の前に人が立った。

 

(まさか、本人が来るとはね。半信半疑だったが、来てよかったよ)

「横須賀の海は穏やかで、猿島の猿は今日も元気でしょうね」

 

 目線を上げると、東郷 十三本人が立っていたのでそんな事を思っていると、彼から会った際の符牒が来たので俺も符牒で返した。

 

「猿島に猿は、一匹もいませんよ」

「………河岸を変えよう」

「あぁ」

 

 すると、彼はニヤリと口角を上げてから場所を変える事を提案してきたので頷くと彼の案内で新宿駅から離れて人気の少ない裏路地へと歩みを進めた。

 

(尾行の気配はなし………本当に誘っただけか? いや、こう言う場合は個人でやってる喫茶店に誘い込んでコーヒーに睡眠導入剤をぶち込むっつー手もあるな)

 

 ジャックを連れていない以上、俺が警戒するのも理由があってガンツのメンバーと敵対的な出自がはっきりとされなかった吸血鬼の軍団との戦闘を原作が開始する前から続けていた。

 一時は奴らを壊滅まで追い詰めたものの何人か、取り逃したので今度こそは奴らを殲滅しないとなと思いながら警戒しつつ、彼についていくとごく普通の小規模な喫茶店に案内されて店内の奥、人に話の内容が聞かれない席に彼が座った。

 吸血鬼の件もあるから、こう言った奥まった場所に長時間いるのは奇襲を受ける事を考えれば避けたいのだが、内容が内容なだけに下手に聞かれるのはまずいからなと思いながら俺も座った。

 

「それで? 俺を誘った理由を聞いても良いかな?」

「黒い球の部屋と言う話を知っているか?」

「………リアルで聞くのは初めてっすねぇ」

「ここ数年、日本中で原因不明の建物破壊が発生しているからな。上から原因究明の話が来てこうやってコンタクトを取った」

「一体いつから、防衛省や国はああ言った嘘八百な話でいっぱいな掲示板を間に受ける様になったのやら」

 

 東郷さんの話を聞くと、いかにもオカルトな話を振ってきたのでため息を吐きながらアイスティーを注文して話を促した。

 

「それで、そんな話を証明させる為に呼び出したんですか?」

「いやそうではない。ただ、実際に行った際にどうしたら良いのか、と言う話を聞きたいだけだ」

「………」

 

 半笑いな俺に対し、東郷さんは真面目な表情で言ってきたので彼や彼を動かしている連中の目的についてに思考を巡らせる。

 そもそも、自衛隊も含めた各国の軍事組織と言うのは他の組織と同じ様にお役所仕事の方が多く、新しく開発された装備に関しても信頼性の他にも予算の都合で保守的な傾向がある。

 そして、そんな組織に属する人を10回クリアしているとは言ってもデスゲームに参加している奴と鉢合わせると言う事は彼らのバックボーン、国に影響力を持っている大企業の役員だったり、金持ちの意向が反映されていると言っても過言ではない。

 

 となれば、今の俺ができる事と言えば何も言わずに立ち去るか、或いは彼らに敵対しない姿勢を示しながら東郷さんを味方に付けるかの二択ぐらいだろうな。

 勿論、他の選択肢もあるんだろうがカタストロフィを乗り越える事がこの世界における目標である以上、目標を完遂するまで無駄な敵を増やさない事が重要なので今の俺にはその二択ぐらいしか思い付かない。

 その為、今の俺ができる事と言えば   

 

「その掲示板の話、どこまで知ってます?」

「俺も又聞きだから詳しくはないのだが、黒い服を着たグループが居て一定の間隔で敵と戦っているって事ぐらいは聞いている」

「例えば………そうですね、確か職業は自衛官でしたっけ?」

「あぁ」

 

 ガンツのルールでは、あの部屋での話を無関係な人に話すと脳内に埋め込まれた小型爆弾によって内部から爆発、最低でも脳みそを破壊できる威力の爆発によって殺されてしまうので自衛隊を引き合いに出して答える事にした。

 

「演習とか訓練とかで敵を倒す際、私服の状態で“銃だけ”を持って行きますか?」

「訓練内容にもよるが迷彩服は勿論、弾薬や爆発物は必ず持っていくし、潜入を想定する場合でもドーランと言う艶消しのメイクは必ず使うな」

「自衛隊でも必要な装備は持っていくんです。掲示板の設定を現実に持ってくるとすれば武器だけを支給するとは考えにくい、と考えられませんか?」

「………つまり、創作の範疇とは言っても防具も支給されるという訳か」

「えぇ。いくらコスプレじみた格好だとしても無いよりかは遥かにマシだと考えますね」

「そうか」

 

 ガンツのガバガバ判定に引っ掛からない様に、具体的な話は一切しないで話すと東郷さんは考える素振りを見せたので話している途中で注文したアイスティーに口を付けながらそっと息を吐いた。

 いくら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()だとしても、今の段階でそれがバレるリスクは避けたいので迂回した表現になってしまった。

 しかし、こちらの意図を察した東郷さんはそれ以上はこちらを問いただす事はせずに突然、呼び出した非礼の詫びてきたのでそれを受け取ってから軽い雑談をしてから彼と別れた。

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