「美哉、ジャックと一緒に先帰ってて」
「うん、今日寝かせないから」
「おう」
ファックス云々の話を終えた後、質問がなかったのでお開きになった途端に西はステルスを使って速攻で帰った為、残された俺達も帰る事になったのだが岸本に俺のコートを渡しているので俺と玄野達4人でタクシーに乗り、美哉はジャックと共に一足先に俺達の家に帰ってもらった。
その際、生の実感を感じる為に夜通しセッ!をする事を耳元で囁かれたので、ここで言わなくても良いのに思いながら偶然にも通りかかったタクシーを呼び止めた。
そして、ここで原作との分岐点なのが
原作では、玄野の学ランから生徒手帳を落とした事で彼が住んでいるアパートに転がり込む展開になるのだが、この世界においては俺のコートを貸しているから原作通りなら確実に落とすだろう。
何しろ、原作では彼女のオリジナルは死んでおらず、今回のミッションが終了した時点で病院で治療を受けている筈だからだ。
自殺する際に手首をかなり深く切ったとか、失神している間に強盗が押し入って拳銃で頭を撃ち抜かれたとかの要因がない限り、オリジナルが生存している事を聞いてパニックを起こした彼女は持てるものを持って家を飛び出す展開になる筈だ。
それで来なければ彼女の運命はそこまでだし、来たら来たで暖かく迎え入れるだけの経済的な余裕があるので、玄野には悪いが彼女を死なせない為にもこちら側に来てもらおう。
そんな事を思いながら、まずは岸本の家へ向かった。
「無事に送り届けた?」
「もち。コートも無事にって、財布落としたかな?」
「けっこー抜けてる所あるよね」
「普段はそう簡単に落ちない場所に入れてるんだがねぇ」
玄野達を送り届けた後、帰宅すると先に帰っていた美哉とジャックは既にスーツを脱いでいたので俺も寝室で脱ぎ始めたのだが、免許更新時に期限が切れた運転免許証が入った財布がなかったので第一関門は突破したと判断した。
後は、彼女がその財布に気付いて家を出る際に一緒に持ってくるかで運命は変わるだろうが、自分のアイデンティティが揺さぶられている彼女にとって顔見知りとは言っても、知っている人に縋りたくなるのは当然だと思うのでほぼ確実に来るだろう。
これで実はミッション中に落ちてました、なんでオチだったら第一関門もクソもないのだが、原作でもミッションでは落ちずに彼女の自室で落ちた描写があったと思うのでその可能性はほぼないだろう。
「ん。じゃあ、始めよ?」
「お前なぁ、シャワーとか浴びずに良いのかよ」
「どうせ汚れるんだし、誤差よ誤差」
「そりゃそうだがねぇ………」
予定通り、上手くいった事に内心でほくそ笑みながらスーツを脱ぎ終わると待ち構えていたかの様に、美哉が俺に抱き付いて自分の胸を俺に押し付けてきたのでため息を吐きながら彼女を見ると、完全に期待した表情をしていたので断ると男が廃ると思い直して彼女をベッドに押し倒した。
翌日の早朝
「ふぅ………相変わらず、元気だな。ジャック」
「ワン!」
通信制の大学に通い、ネットワーク上の数字をこねくり回して利益を得ているので殆ど家から出ない生活を送る事はできる。
しかし、星人を討伐するミッションが定期的に発生する上にカタストロフィとして、宇宙を何世代に渡って移動可能な技術を有する巨人族が侵略してくるので引きこもりな生活をする気にはなれないし、そもそもジャックがいるのでランニングするのにそこまで苦労を感じないしね。
世界中の富豪の様に、ミッションに参加するメンバーの誰が生き残るかなんて言う胸糞な賭け事をしていれば良い様な身分ではないし、そこまでの財力を蓄えた結果として人格が歪むんだったら程々の金持ちで充分だと思っている。
そう思いつつ、一周回るのに1キロもある公園で5回の走り込みを終えた俺とジャックは、帰って朝飯にしようと走って帰っていると予定通りとは言え、意外な人物と遭遇した。
「うわっ!?」
「うぉっと!? 岸本か!?」
スーツは着ていない為、最短経路で帰路を走っているとT字路で走っていた岸本と遭遇した事に驚きながらも、上手くいった事に対して喜びを噛み締めながら立ち止まって彼女が走っていた理由を聞いた。
「そうか、やっぱりか」
「はい。だからどうしようかと悩んじゃって」
「分かった。行く宛がないんだったらうちにでも来るかい?」
「えっ、良いんですか?」
「あぁ。どこへ行くにしろ、一旦は落ち着いた場所でゆっくり考えた方がいいだろうからな」
するとやっぱり、彼女のオリジナルは生きている様で彼女が帰宅して暫くしてから治療を受けている段階だと電話で聞いたのと、俺からガンツとファックスの話を聞いていた為に俺の運転免許証が入っていた財布を持って家を飛び出してしまったとの事だった。
俺の場合、転生時に自称神様からそう言う話を聞かされていた上に彼女が来る前にも他の人で同じ事が発生していたので、特にこれと言って反応する事はないものの彼女から体験した衝撃はかなりの物だったと推測できる。俺も同じ状況に陥ったらパニックを起こすだろうしね。
その為、今の彼女には安心できる場所での充分な休息が必要だと判断して俺が暮らしている家に誘うと、岸本は少し遠慮気味に聞いていたので来る様に言って2人と1匹で家に帰った。
「ただいまー」
「お、お邪魔します」
「ワン!」
「おかえり〜って岸本さん?」
都内の閑静な住宅街の中、車庫付き一軒家で暮らしている事に岸本が驚いていたもののお金の他に幾らかの資産があるので、それを有効活用した結果が現状なのでそう簡単に驚かないでほしい。
「どうして彼女を連れて来たの?」
「ガンツによる適当な仕事の結果」
「あぁ、理解」
「一先ず、彼女を安心させたい」
「分かった。じゃあ、まずはお風呂から入る?」
「………良いんですか?」
「こう言うのは日常に触れた方が良いからね」
そう思いつつ、彼女を招くと美哉もタイミング良く起きていた様で訳を聞いた彼女はすぐに理解して岸本を風呂場に連れて行った為、俺は濡れたタオルでジャックの足を綺麗にしてジャージから部屋着に着替えて部屋の掃除に取り掛かった。
何しろ、昨日はミッション後にヤった美哉とのおせっせで色々と散らかっているので、不快感を感じさせない為にも急いで取り掛かった。
美哉 side
「そっか。そりゃ大変だったね」
「はい。その時はどうしようかと思ってたんですけど、彼の財布が落ちている事に気が付いたので何とかここまで来れました」
(くっ、やっぱりデカい! 道彦の目線が行くのも当然の大きさね!)
FかG?と思いながら、彼女の話を聞くと手首を切って自殺しようとしたけど傷が浅かったらしく、病院で治療中との話を聞いたのでスワンプマン的状況に陥っちゃったかと思った。
彼女の事例は以前にもあって確か、私がミッションに参加し始めてから半年ぐらい経った頃に冴えないサラリーマンが同じ様な状況になっていたと記憶している。
彼の場合、自動車事故がきっかけでミッションに参加する様になったけどオリジナルの方は頭を強く打っただけとかで、病院で治療中だと聞かされた挙句、家族から不審者扱いされて最終的に精神系の病院に入れられて次のミッションで呆気なく死んじゃったんじゃなかったかな。
あそこまで、最初と2回目のミッションで人相が変わったのを目の当たりにしたからかなりの衝撃を受けたなぁ。
まぁ、私の場合は道彦が居たから戸惑いながらもスルーできたし、ミッション中の地獄だって耐えられる。
それに、このミッションが全てが終わった後に始まるカタストロフィを彼と一緒に見届けるまで地獄のミッションを付き合うつもりだ。
(最後まで一緒に居ようね? 道彦くん♡)