苦戦の末にドラゴン討伐に成功した彼は、ついにローラ姫と対面したが…。
由来は別サイトに投稿した作品で使用したゲームキャラの名前です。
ローラ姫を助けるために沼地の洞くつにやってきた勇者ルウは、レミーラの呪文で周囲を照らしながら内部を進んでいった。
この時点で彼は十分にレベルを上げており、装備もはがねの剣、はがねの鎧、鉄の盾だった。
そのため、ここに出現するメーダやドロルといったモンスター達は彼を見るなり、勝ち目はないと判断して逃げ出してしまった。
(よし。あれから私も成長したものだな。最初にここに来た時にはこれらのモンスターでレベル上げをしていたのが遠い過去のようだ。)
彼自身もこのようなモンスターと戦うのはもはや時間の無駄になっていたため、脳裏にあるのはドラゴンにいかにして勝つのかということだった。
そして通路を進んでいき、扉を開けると、いよいよ自分より大きな体をしたモンスターの姿が見えてきた。
(いよいよドラゴンとの再戦の時がやってきたか。最初に勝負を挑んだ時には撤退を余儀なくされたけれど、今度は絶対に勝つ!もうあんな惨めな姿にはならない!)
ルウは相手の後ろ姿を見つめながらあの時のことを思い出した。
『よく来た。私はドラゴンと申す。私は待っておった。そなたのような若者がやってくることを。』
『私は勇者ロトの血を引きし者、ルウと言います。ローラ姫の捜索隊を返り討ちにしたのはお前だったのか?』
『その通りだ。うわさでは全滅したということになっているが、助かった者もおる。私は竜王様からここに来た者と勝負を挑むことを命令されただけの身だから、むやみに命を狙うつもりはない。だが、助かるかどうかはそちらの判断次第だぞ。』
『そうか。だが、私はこれまでどんな敵とも勝ってきた。だから恐れはしない。お前を倒す!』
『分かった。もしこの先の部屋に入りたいなら、この私を倒してゆくがいい。』
『面白い。受けて立つぞ!』
ルウは鉄の斧を振り上げて身構えた。
先に行動したのはドラゴンの方で、彼は炎を吐いてかなりのダメージを与えた。
(これは強力だ。でもこっちにはラリホーがある。うわさではある程度の確率で効くはずだからな。)
彼は事前に聞いていた情報を信じて呪文を唱えてみたが、失敗してしまった。
(※FC版ではラリホーがある程度効きますが、リメイク版では無効です。)
するとドラゴンは通常攻撃をしてきて、何と炎よりも大きなダメージを与えてきた。
(こっ、これはまずい!このままでは次の攻撃で間違いなくやられてしまう!この時点で薬草やホイミでHPを回復させても、受けるダメージに追い付かないか、かろうじて追いつくかという状況になってしまう!)
これまで負け知らずだった彼は、ここで初めて敗戦という言葉が頭をよぎった。
そしてどうすればいいのか迷っていると、ドラゴンがニヤリと笑った。
『どうした?逃げるのか?もしそうするのであれば、1度だけ逃がしてやろう。実際逃げるを選んだ者に関しては見逃してきたからな。』
ドラゴンは勝ち誇ったような表情でルウに決断を迫ってきた。
(こうなったら、いさぎよく逃げるしかないのか!)
彼はこれまで逃げることを恥だと考えており、どんな敵に対しても逃げずに挑んできたというプライドがあっただけに、一か八かでもう一度ラリホーを唱えようとした。
しかし、もし今度外してしまえば本気でとどめを刺されてしまうのではないかという雰囲気を感じ取った。
一方のドラゴンはいつまでも猶予は与えんぞとばかりに、大きく息を吸い込んだ。
(あの目は本気だ。このままではやられる!冗談抜きで本当にやられてしまう!)
これまで味わったことのない、本当に嫌な予感を感じた彼はついにプライドを捨て、逃げるを選択した。
『フハハハ。良かろう。今回だけ見逃してやる。逃げるは恥だが時として役に立つものだからな。成長してまた挑んでくるがよい。』
ドラゴンの高笑いを聞きながら、ルウは命からがらその場を後にしていった。
(もしあの時、逃げなかったらどうなっていたことか。多分「キラーマジンガが倒せない」のような状態になっていたことだろう。あの時、うp主はやけになって挑み続けたが、そんなことになったらこっちがたまったものではないからな。)
(↑言っていること、メタっ!)
彼は本当に死ぬかと思うような恐怖を経験しただけに、その日のことは未だにトラウマになっていた。
そして消えてしまいたいと思いたくなるほどの悔しさと闘いながらも立ち直り、ひたすら強くなるために修行を繰り返し、この日を迎えた。
するとドラゴンもこちらの気配に気付き、振り向いた。
「おおっ!よく来た。勇者ルウよ。久しぶりだな。私は待っておった。そなたのような若者が再びやってくる日を。今度こそ私に勝つつもりか?」
「はい。そのために、あれから腕を磨いて、レベルアップをしてきましたから。」
「そうか。ならば、その腕前を見せてみろ。そして今度こそこの私を倒してゆくがいい。ただし、今度は逃げる選択肢無しで勝負だ。」
「分かりました。本気で行きます!」
ルウは恐ろしいまでの緊張感を感じながらも、いよいよドラゴンとの真剣勝負に挑んでいった。
戦闘になると、今度はルウが先制で通常攻撃をヒットさせた。
するとドラゴンも負けじと反撃してきて、20ポイント程度のHPを削った。
(装備を強化したおかげで、以前よりもダメージは少なくなったな。でもホイミや薬草を使ったとしても、ほとんど相手の攻撃でチャラにされてしまう。こうなったら、ギリギリまで攻撃を続けてみよう。一発でうまくいくのかはわからないけれど、やってみるしかない。)
ルウはそう決心すると、その後2ターン通常攻撃を続けた。
一方のドラゴンは炎と通常攻撃で攻撃をしてきた。
(次のターンで相手から攻撃されるとちょっと危ないな。ここはホイミを使うことにしよう。)
すでに以前のようなプライドを捨てている彼は安全第一で呪文を唱えた。
その結果、HP自体は30近く回復したが、相手の攻撃で20以上削られてしまい、またホイミを唱えることになった。
そんな状況がもう1ターン続いた後、やっと1回だけ攻撃をするチャンスが生まれたため、今度は通常攻撃に切り替えた。
戦闘は上記のような展開を繰り返しながら進んでいき、ドラゴンのHPはあと少しになった。
しかし、ルウもMPを大きく減らしてしまい、薬草も残り少しになってきたため、早く決着をつけなければならなくなってしまった。
(ここでラリホーを当てるか、会心の一撃でも出れば一気に勝てるけれど、そうもいきそうにないな、だけど、弱気になってはいけない。勝つしか無いんだ!)
彼は肩で息をしながらも振りかぶり、攻撃を仕掛けたが、あろうことかかわされてしまった。
するとドラゴンはチャンスとばかりに尻尾で痛烈な一撃を繰り出してきた。
「ぐああああっ!!」
左腕に大ダメージを浴びたルウはHPこそかろうじて踏みとどまったものの、痛みで左腕が動かせなくなった。
(とにかくここはホイミだ!)
彼はとっさに呪文を唱え、HPを回復させたものの、それでも左腕は動かなかった。
一方のドラゴンは炎を吐いてきて、ホイミの回復量を半分以上削られてしまった。
(こうなったら玉砕覚悟でやってやる!)
覚悟を決めたルウはまるで捨て身のようにドラゴンに向かっていき、右手一本でダメージを与えた。
「うおおおおっ!!」
会心の一撃に近いダメージを受けたドラゴンはとうとうHPを削り切られたため、攻撃のモーションが止まった。
そしてゆっくりとその場に倒れ込んでいったため、戦闘はついに決着した。
(や、やった…。勝った…。勝ったんだ…。)
痛みに加えて緊張の糸が切れた彼はその場で剣を落とし、右手で左腕を触った。
すると患部付近は大きくはれ上がっており、しかも激痛が走ったため、その場にひざまずいてしまった。
(み、見事だ…。この私が敗れるとは…。)
ドラゴンはその場から動けず、代わりに目で何か合図を送った。
するとそこにメーダやドロル達が現れ、「ドラゴン様ーーっ!」、「大丈夫ですか!」と叫んだ後、すぐさま何らのアイテムを使った。
ルウにはそれが何か分からなかったが、どうやらキメラの翼のような効果を持つものだったらしく、彼らの体は光に包まれていった。
(くっ!逃がすものか…。)
ルウは再び剣を拾い、立ち上がろうとしたが、やはり痛みのためにその場から動けず、結果的に状況を見つめることしか出来なかった。
しばらくすると、ドラゴン達の姿は跡形もなくなっており、ルウは一人でその場に取り残される形になった。
すでにMPは残り4しかなかったが、彼はそれを使って最後のホイミを唱え、さらに薬草で患部を治療した。
痛みが走るのは相変わらずだったが、幸い周りには誰もいないこともあって時間をかけることが出来、最終的にようやく立ち上がれる状態になった。
(さあ、姫のところに行くぞ。)
ルウは顔をしかめながら歩き始めた。
「きゃあっ!ド、ドラゴンですか?こっ、今度はどんな用ですか!?」
先の部屋には素敵なドレスを身に着けた女性がいたが、彼女はビックリしておびえた表情を見せながら後ずさりを始めた。
「ちょっ、ちょっと待ってください。私は人間です…。」
ルウは自分の名前を名乗り、さらにドラゴンを倒して姫を助けに来たことを打ち明けた。
「まあっ!本当にあのドラゴンを退治したと言うのですか?」
「はい、そうです。その代わり、かなりの痛手を負いましたが…。」
彼は右手で動かない左腕を指さしながら事情を説明した。
「ルウ様…。そんな状態になってまで、あの恐ろしいドラゴンを…。本当にありがとうございます。こうやって助けに来て下さる人がいたなんて、まだ信じられませんわ。私はラルス16世の娘、ローラです。」
彼女は自分の名前を名乗った後、竜王にさらわれてからの出来事を話してくれた。
しかし、ルウは話をじっくりと聞いていられる状態ではなかったため、一刻も早く城に戻りたいことを打ち明けた。
「そうですか。失礼しました。では、早速ですが、私をお城まで連れて帰ってくれますね?」
ローラ姫は目を輝かさせながら問いかけてきた。
「いいえ。私は今、こんな状態ですので、一旦城に戻って傷を回復させたいのですが…。」
「そんな、ひどい…。」
ルウの回答にショックを受けた彼女の顔は一気に悲しげなものになり、目はウルウル状態になった。
「あなた、本当に勇者なのですか?もう一度聞きます。私をお城まで連れて帰ってくれますね?」
「いえ。だから体が…。」
「そんな、ひどい…。あなた、本当に勇者なのですか?もう一度聞きます。私をお城まで連れて帰ってくれますね?」
「ごめんなさい。」
「そんな、ひどい…。あなた、本当に勇者なのですか?もう一度聞きます。私をお城まで連れて帰ってくれますね?」
「私はけが人です。勘弁してください。」
「そんな、ひどい…。あなた、本当に勇者なのですか?もう一度聞きます。私をお城まで連れて帰ってくれますね?」
「体が本当にバッキバキなので、すみません。」
「そんな、ひどい…。あなた、本当に勇者なのですか?もう一度聞きます。私をお城まで連れて帰ってくれますね?」
「今夜は宿屋に泊まり、傷が回復するのを待つことにします。」
「そんな、ひどい…。あなた、本当に勇者なのですか?もう一度聞きます。私をお城まで連れて帰ってくれますね?」
「どーもすいません。」
「そんな、ひどい…。あなた、本当に勇者なのですか?もう一度聞きます。私をお城まで連れて帰ってくれますね?」
「1・8・4。」
「そんな、ひどい…。あなた、本当に勇者なのですか?もう一度聞きます。私をお城まで連れて帰ってくれますね?」
「こんな形でNoと言うしか出来ない私を許してください。」
「そんな、ひどい…。あなた、本当に勇者なのですか?もう一度聞きます。私をお城まで連れて帰ってくれますね?」
「ここで一首。このたびは ローラ姫から 誘われて 我こたふるは ごめんなりけり。」
「そんな、ひどい…。あなた、本当に勇者なのですか?もう一度聞きます。私をお城まで連れて帰ってくれますね?」
「こたえーーはっ…、ノーーーーーーッ!」
「そんな、ひどい…。あなた、本当に勇者なのですか?もう一度聞きます。私をお城まで連れて帰ってくれますね?」
「お急ぎのところ大変ご迷惑をおかけしております。」
「そんな、ひどい…。あなた、本当に勇者なのですか?もう一度聞きます。私をお城まで連れて帰ってくれますね?」
「ごめんね、ごめんね~。」
「そんな、ひどい…。あなた、本当に勇者なのですか?もう一度聞きます。私をお城まで連れて帰ってくれますね?」
「いいえかNoでおこたえします。」
「そんな、ひどい…。あなた、本当に勇者なのですか?もう一度聞きます。私をお城まで連れて帰ってくれますね?」
「すいま1000ゴールド」
「そんな、ひどい…。あなた、本当に勇者なのですか?もう一度聞きます。私をお城まで連れて帰ってくれますね?」
「すいまそん。」
「そんな、ひどい…。あなた、本当に勇者なのですか?もう一度聞きます。私をお城まで連れて帰ってくれますね?」
「お気の毒ですが 私はいいえと答えてしまいました。」
「そんな、ひどい…。あなた、本当に勇者なのですか?もう一度聞きます。私をお城まで連れて帰ってくれますね?」
「ダメで~す。ダメダメ。」
「そんな、ひどい…。あなた、本当に勇者なのですか?もう一度聞きます。私をお城まで連れて帰ってくれますね?」
「無理だ、無理だ、無理だ、ムリムリ。」
「そんな、ひどい…。あなた、本当に勇者なのですか?もう一度聞きます。私をお城まで連れて帰ってくれますね?」
「No.」(英語、スペイン語、イタリア語)
「そんな、ひどい…。あなた、本当に勇者なのですか?もう一度聞きます。私をお城まで連れて帰ってくれますね?」
「Non.」(フランス語)
「そんな、ひどい…。あなた、本当に勇者なのですか?もう一度聞きます。私をお城まで連れて帰ってくれますね?」
「Nein.」(ドイツ語、発音はナイン)
「そんな、ひどい…。あなた、本当に勇者なのですか?もう一度聞きます。私をお城まで連れて帰ってくれますね?」
「아뇨.」(韓国語、発音はアニョ)
「そんな、ひどい…。あなた、本当に勇者なのですか?もう一度聞きます。私をお城まで連れて帰ってくれますね?」
「不是.」(中国語、発音はブシー)
「そんな、ひどい…。」
ローラ姫はルウが何度断っても同じことを言うばかりで、会話は無限ループの状態になりつつあった。
そのルウは最初こそ体の状態を理由にしていたものの、次第にウケを狙ったような言い方になり、ついには「いいえ」を色々な言語で言い出した。
しかし、ローラ姫の執念の前にとうとう疲れ切ってしまい、根負けするかのように「はい。」と答えることにした。
「本当ですか?」
それまでウルウル状態だった彼女の表情は途端に一変し、今度はうれしそうに問いかけてきた。
「は、はい。」
「うれしゅうございますっ!ぽっ。」
ローラ姫は彼の答えが嘘ではないことを確信すると、自分を抱きかかえてもらうことを希望した。
しかし、ルウは片腕が使えないため、それは出来ないことを伝えた。
「そんな、ひどい…。」
「そんなこと言われても、私はドラゴンとの戦いでこんな状態なんです。ですから、一緒に歩いてこの洞窟を出ましょう。」
「…分かりました。ではルウ様、一緒にまいりましょう。」
彼女は自分の足で歩くことに同意をすると、ルウの後をついていくような形で部屋を後にすることにした。
洞くつでは暗闇の中でしか生息していないメーダやドロルこそまだいたものの、すっかり戦意を喪失していたために戦闘になることはなく、何とか2人で洞くつを脱出するための階段にたどり着いた。
外では毒の沼地が前方に広がっていた。
すでにルウはここを何度も(ダメージを受けながら)通り抜けてきたため、見慣れた光景ではあったが、ローラ姫はこんなところ歩きたくないとばかりに顔を青ざめさせてしまった。
「あの、もしかしてなんですが…。」
「何ですか?」
「これを歩いて渡らないといけないんですか?」
「安心してください。持ってきてますよ!」
不安がる彼女をよそに、ルウは道具袋に右手を入れ、あらかじめ用意しておいた物を取り出した。
「それは何ですか?」
「これはキメラの翼と言います。これを使えばラダトーム城まで飛んで帰れますよ。」
「キメラというのは、あのモンスターのキメラのことですか?」
「はい、そうです。どうやらその生き物がつけていた翼に特殊な加工をしてこのような効果を得たそうです。」
「それは便利ですね。では、早速使ってみてください。」
「分かりました。」
ルウは早速右手でその翼を大空に放り投げようとしたが、その瞬間、右肩を脱臼してしまった。
「うああああっ!」
「ルウ様、どうしたんですか?」
「か、肩が…。」
彼はキメラの翼を落としてしまい、しかも両腕をだらりと下げたままその場にうずくまってしまった。
「こんなことになるなんて…。私はどうすればいいのですか?」
「姫様…。どうか自分でその翼を…。」
「この翼を、どうすればいいのですか?」
「大空に…、放り…、投げて…。」
ルウはそう言い残すと次第に意識が遠のいていき、とうとう倒れてしまった。
「そんな、ひどい…。私を一人にするなんて…。」
パニックになったローラ姫はどうすれば分からなくなり、誰かに助けを求めようとした。
しかし、前方にあるのは毒の沼地だけで誰も来てくれそうにはない状況だったため、自分で何とかするしかない状況だった。
(と、とにかく、こうなってしまった以上、私が何とかするしかないですわ。こんな沼地を歩いて抜けられるとは思えないし、洞くつの中にはもう戻りたくないですから。)
彼女は懸命に気持ちを落ち着けると、足元に落ちている翼を拾い上げた。
そしてルウに言われたとおりにそれを放り投げようとしたが、もし効果を発揮しなければ翼を沼地に落としてしまう可能性があるため、なかなか実行に移せなかった。
しかし、このままではルウが力尽きてしまい、自分が(なぜか)洞くつに戻されてしまいそうな状態だったため、迷っている場合ではなかった。
(こうなったら、賭けるしかないですわ。翼さん、どうか私達を助けてください。お願いします!)
彼女は神頼みをした後、両手を震わせながら構えた。
そして空に向かって力いっぱい放り投げると、翼は空中で光を放ち始めた。
(えっ?これで効果を発揮してくれるんですか?懐かしいラダトーム城に帰れるんですか?)
そう願っていると、光はローラ姫めがけて降り注いできた。
しかし、このままでは自分一人だけにしか効果を発揮しないことになりそうな状況だったため、彼女はとっさにルウに寄り添った。
すると光は2人の体を包み込んでいき、大空に向かって飛び立っていった。
気が付くとローラ姫はラダトーム城のすぐ前に降り立っていた。
(私、本当に帰ってきたんですか?本当に空を飛んで懐かしいお城に帰ってきたんですか?)
彼女はキメラの翼を使うのが初めてだっただけに、起きた出来事が信じられず、あっけにとられるばかりだった。
(あっ、そうですわ!ルウ様は?ルウ様はどうなったんですか?)
ふと我に返ると、彼女はルウも一緒であることを確認した。
そのため、(良かった…。2人とも戻ってこられたのね…。)と思いながら、ほっと一息ついた。
すると城の入り口で見張りをしていた2人の兵士が彼女達を見つけた。
「どなたですか?」
「どうされました?」
彼らが駆け寄ってくると、目の前にいる人達があのローラ姫とルウであることを確認した。
「姫様!姫様ではありませんか!よっ、よくぞご無事で!」
「まさか勇者のお方に助けてもらったのですか!?」
彼らはビックリ仰天しながらもうれしそうに駆け寄ってきた。
「はい、そうです。私はここにいるルウ様に助けてもらいました。」
ローラ姫はこの日あった出来事を詳しく話そうとしたが、兵士の一人は急いでルウの手当てをすることにしたため、医師のもとに向かっていくことにし、もう一人がローラ姫を連れて王様のもとへと向かっていくことにした。
(ルウ様…。そばにいてあげられなくてごめんなさい。でも、この恩は忘れません…。)
彼女は一緒に宿屋に行けなかった悔しさをかみしめながら城に中に入っていき、階段を上がって2階に向かっていった。
半年ぶりに父親であるラルス16世の顔を見られたローラ姫は、懐かしいその顔を見ると、途端に表情がくしゃくしゃになり、「お父様ーーーーーっ!」と叫びながら胸元に飛び込んでいった。
「無事だったんだな…。良かった…。良かった…。」
「お父様…、ずっと会いたかったです…。」
2人はお互い力いっぱいハグをしながら再会を喜んだ。
そして気持ちが落ち着いた後、用意された夕食を一緒に食べ、さらに一晩を過ごすことにした。
(※とはいえ、お楽しみはしていませんので、安心してください。)
一方、治療室に運ばれたルウは脱臼した関節をはめてもらい、さらに左腕に治療を施された。
それからしばらくすると彼は目を覚ましたため、「ローラ姫は?」とばかりに起き上がろうとした。
しかし、その途端に激痛が走ったため、再びベッドの上に横になった。
「君、まだ動いてはいかん。そのケガはかなりの重症だ。しばらくの間、ここで入院が必要になるぞ。」
「えっ?本当ですか?」
「うむ。」
「じゃあ、旅には?」
「それは少なくとも1か月後になるだろう。その間は旅や戦いのことは忘れ、回復に専念しなさい。」
「そんな、ひどい…。」
ルウは受け入れがたい事実を突きつけられ、がっくりとしてしまった。
(※その際、ローラ姫の口癖が移ってしまったようです。)
「まあ、そんなふうに考えるでない。これまで走り続けてきたんだ。今はゆっくり休みなさい。おそらく竜王の方も、今回ドラゴンが倒されたことで動揺していることだろうし、しばらくは平和な時間が流れるはずだ。」
「そうですか…。そうなればいいんですが…。」
彼はまだ落ち込みながらも医師からの助言でしばらくの間治療に専念することにした。
その後。入院生活を送りながら懸命に治療に励んだルウは、まだ剣の素振りこそ出来ないものの、日常生活ならばなんとか送れるようになったため、退院することになった。
彼はこれまで自分の面倒を見てくれた医師の人にお礼を言った後、城の2階に向かって進んでいった。
「おおっ!ルウよ!よくぞ無事で戻ってきた!そして私の娘、ローラを助け出してくれたこと、心から礼を言うぞ!」
「ルウ様!このたびは私をあの恐ろしいドラゴンから救い出していただき、誠にありがとうございます!私はあれからルウ様のこと、ずっと思い続けておりました。早く元気な姿になって私のもとにやってきてくれることを心から祈り続けておりました。」
「どうじゃ?しばらくの間、ここでわしと娘と一緒に過ごしてみるつもりはないか?」
「それがいいですわ。私も何か恩返しをしとうございますゆえ、お願いしとうございます。」
「お言葉は大変うれしいです。私としても姫が無事でよかったです。ですが、私はこのまますぐに出発したいと思っているのです。」
ルウはうれしそうな表情こそ見せたものの、姫の無事な姿を一目見たらすぐに旅立つつもりだったため、王様とローラ姫の提案をきっぱりと断ってしまった。
「何と、その体で行くというのか。しかし、まだ包帯を巻いているし、とても戦える状態ではないはずじゃが。」
「それでも行きます。たとえ通常攻撃が出来なくても私には呪文があります。ラリホーやマホトーンでこちらに有利な状況を作り出し、ギラで攻撃すれば何とかなります。」
「そんな、ひどい…。私、ルウ様のそばにいたいのに…。」
ローラ姫はがっくりとうつむいてしまった。
それを見たルウはすっかり動揺してしまい、どうすればいいのか分からなくなってしまった。
それからしばらくの間、王の間には何とも言い難い雰囲気が漂った。
ルウは相変わらず旅に出たい気持ちを崩しておらず、一方のローラ姫は彼にここにいてほしい気持ちだった。
王様はそんな2人を何とかして納得させる方法がないものか、じっと考え込んでいた。
するとローラ姫は何か吹っ切れたかのように、キリッとした表情になった。
「ルウ様。私にいい考えが浮かびましたが、よろしいですか?」
「何でしょうか?」
「あなたの旅に、このローラもお供しとうございます。」
「ええっ!?」
「うそでしょ!?」
彼女の思わぬ提案に、王様とルウもビックリ仰天だった。
「お願いします。このローラも連れていってくださいますわね?」
「そっ、それはいくら何でもお断りします。」
「そんな、ひどい…。お願いします。このローラも連れていってくださいますわね?」
「無茶です。」
「そんな、ひどい…。お願いします。このローラも連れていってくださいますわね?」
「無理です!」
「そんな、ひどい…。お願いします。このローラも連れていってくださいますわね?」
「今回ばかりは私も引き下がりません。」
「そんな、ひどい…。お願いします。このローラも連れていってくださいますわね?」
「危険です。すみません。」
「そんな、ひどい…。お願いします。このローラも連れていってくださいますわね?」
「ダメです!」
「そんな、ひどい…。お願いします。このローラも連れていってくださいますわね?」
「いーーーえ!」
「そんな、ひどい…。お願いします。このローラも連れていってくださいますわね?」
「すんません!」
「そんな、ひどい…。お願いします。このローラも連れていってくださいますわね?」
「アイムソーリー、ヒゲソーリー。」
「そんな、ひどい…。お願いします。このローラも連れていってくださいますわね?」
「めんご。」
「そんな、ひどい…。お願いします。このローラも連れていってくださいますわね?」
「強麺なさいよ~。」
「そんな、ひどい…。お願いします。このローラも連れていってくださいますわね?」
「ごめんね 素直じゃなくって。」
「そんな、ひどい…。お願いします。このローラも連れていってくださいますわね?」
「✕ ~ダメ~」
「そんな、ひどい…。お願いします。このローラも連れていってくださいますわね?」
「私は私はあなたから 旅立ちます。」
「そんな、ひどい…。お願いします。このローラも連れていってくださいますわね?」
「I’ll go.」(私は行きます。)
「そんな、ひどい…。お願いします。このローラも連れていってくださいますわね?」
「Leave me alone.」(一人にさせてください。)
「そんな、ひどい…。お願いします。このローラも連れていってくださいますわね?」
「No Way!」(※Noより強い言い方です。)
「そんな、ひどい…。お願いします。このローラも連れていってくださいますわね?」
「I have a bad feeling about this.」(嫌な予感がする。)
「そんな、ひどい…。お願いします。このローラも連れていってくださいますわね?」
「Relax. Don't do it.」(※解釈次第でとんでもない意味になるため、訳は割愛します。)
「そんな、ひどい…。お願いします。このローラも連れていってくださいますわね?」
(※この後、ルウは「いいえ」を色々な言語で言いますが、さすがにこれはカットさせていただきます。)
「そんな、ひどい…。お願いします。このローラも連れていってくださいますわね?」
「いっきまーす!」(←アルル・ナジャのマネ。)
「そんな、ひどい…。」
2人はお互い譲らないまま、堂々巡りのやり取りを続けた。
そんな様子をかたわらで聞いていた王様はとうとう疲れてしまい、彼らに妥協案を示すことにした。
「確かに姫が直接ついていくのは危険じゃ。」
「ええっ!お父様まで…。そんな、ひどい…。」
「そんな顔をするでない。その代わり、お前の大事なものを渡すというのはどうじゃ?」
「大事なものですか?」
「そうじゃ。お前がルウのことを1日たりとも忘れなかったように、ルウもお前のことを思い出してくれるようなアイテムを渡してみてはどうかのう。」
「……。」
ローラ姫は何も言わずにじっと考え込んでしまった。
しかし、しばらくすると決心がついたのか、吹っ切れた表情で「分かりました。」と答えた。
「分かってくれたか。良かった。それで、どうするつもりじゃ?」
「ルウ様を思う私の気持ちをこのアイテムに託してみたいと思います。」
彼女はそう言うと、「王女の愛」という名前のペンダントを取り出した。
「どうかこれを受け取ってください。たとえ離れていても、私はルウ様のことを思い続けておりますゆえ。」
「いえ。そんなものがなくても、私も姫のことを思い続けていますので…。」
「そんな、ひどい…。」
ルウの返答にショックを受けたローラ姫はこれまで見せたこともないような悲しい表情を見せた。
すると、今度は王様の表情が今まで見たこともないような恐ろしいものに変わり、目をギラギラと光らせながらゴゴゴゴゴゴと音を立てるようなオーラを出してきた。
「わ、分かりました。では、それを受け取ることにします。」
すっかりビビったルウは、潔くそのアイテムを受け取ることにした。
「うれしゅうございます。ぽっ。」
「うむ。それでこそ勇者にふさわしい。」
2人の表情はさっきまでとは打って変わり、にこやかなものに変わった。
それを見ながらルウは王女の愛を受け取り、このまま旅に出ることにした。
「あの、もう行かれてしまうのですか?」
「はい。私にはまだやるべきことがありますので。」
「そうですか。分かりました。では、その前に、私から一つ確認しておきたいことがあります。」
「何ですか?」
「ルウ様はローラのことを思ってくださいますか?」
「えっ?えっと…。」
ルウは思わぬ質問に、思わず「いいえ」と答えそうになってしまった。
しかし、そんなことを言おうものなら、また「そんな、ひどい…。」というセリフと、王様のオーラにさらされることになりそうな状況が頭に浮かんだため、今度は一発で「はい。」と答えることにした。
「うれしゅうございます。ぽっ。」
ローラ姫は顔を赤らめながら喜んでくれた。
「うむ。それでこそ勇者にふさわしい。では、旅の無事を祈っておるぞ。」
「はい。戦いで傷ついた時には、夜に宿屋に泊まり、傷をしっかりと回復させます。では、行ってまいります。」
ルウは力強く言うと、2人に背を向け、王の間を後にしていった。
(そうなんですね。ルウ様は夜になれば宿屋にやってくるのですね。では、私もルウ様がラダトームに戻ってきた時には、町の宿屋にとまることにしとうございます。)
ローラ姫は口にこそ出さなかったが、何かを考え始めた。
そして、王様に許可を取り、早速その日の夕方に実行することにした。
しかし、ルウは回復が必要になった時には城の中にいるMP回復の老人のところに行っていたため、その考えが空振りになってしまうことを、まだ知らずにいた…。
こうして、ロトの血を引きし者である、ルウの旅はまだまだ続く…。
3月8日、追記
好評につき、この度、2回目のループ部分を加筆しました。
この作品を読んでいただき、本当にありがとうございます。