ユメ先輩「ひぃん!!ギルドは狩猟を要請するよ!」 作:まつ毛とパンツ
緋の森の異常気象は集中豪雨が降り注ぐ。幸いにも、ベースキャンプは雨を凌げるようになっており、集中豪雨の影響がほとんど無い。
「確か、この集中豪雨って汚水処理の役割が有るんだって?」
「はい。そうみたいですね」
今日は鳥の隊は余程のことがない限りは非番であり、緋の森のベースキャンプでゆっくりと寛いでいた。とはいえ、ゆっくりと寛ぐのは実働要員であるレイヴンとリンクス、オトモ+オトモンのペコとレウスぐらいであり、アルマは調査の資料の報告書作り、ユメはアルマの手伝い、ジェマはレイヴンとリンクスの装備の点検補修及び強化と製造である。
「ふぅー、レ・ダウの素材初めて扱ったけど、良いのが出来たね。ガーディアンの素材で武器を作れば、原種とは別の武器になるな」
ジェマはリンクスとレイヴンが任務や調査で捕獲した、或いは討伐したモンスターの素材から2人の新しい装備を作っていた。レ・ダウは現時点ではキヴォトスの固有種であり、ガーディアンもそうだと言えるだろう。初めて扱う素材であったが、問題なく武具を仕上げることが出来た。
レ・ダウの素材から作ったのはリンクスが使う双剣 煌雷双剣、レイヴンが使うライトボウガンである*1。ガーディアンリオレウスの素材からは原種リオレウスと似たような外見の武器が出来たが、色は白くなっており、少し性質が異なる。
『どうかね?アルマ、ユメさん。そちらの進展は?』
一方、アルマさんとユメはタブレットで書類をまとめながら、別のタブレットで総司令であるファビウスとテレビ電話でやり取りを行っていた。画面に映るファビウスの後ろではアビドス高等学校のグランドが映っており、そこでは大陸から船がやって来ており、交易品や物資、そして新たにハンターが派遣されており…賑わいを見せていた。
「はい。問題なく進んでいます。ただ、此方の調査を行ってから初めての異常気象ですので…」
『そうか。私からだが、見ての通り…ギルドから新たな人員が派遣された。規模は新大陸調査団の期団ほどになるだろうな』
当初はユメをアビドス高等学校に送り、アビドス砂漠の生態調査やキヴォトス人との文化的交流で終わると思っていた。だが、蓋を開けてみればアビドス砂漠だけではなく、ミレニアム自治区の遥か地下にある竜都の跡地、トリニティ自治区内にある緋の森、調査は未だだがゲヘナ火山地帯などなど様々な所で生態系が変わっている。
だからこそ、人員増強としてギルドから新たに優秀なハンターや編纂者、鍛冶職人が派遣されたのだ。
「それは良かったです。賑やかになりますね」
『うむ。それとだ、ミレニアムに滞在していた赤の隊から報告でな。竜都の跡地から、連竜脈を辿って探索をしたところ…かつての竜都の首都…氷霧の断崖に辿り着いた。そこで……行方不明となっていた伝説のハンター ポッケ村の英雄がアリウス分校の生徒達と生活を共にしてるのが確認された』
「生きて…居たんですか?あの伝説が…」
ポッケ村の英雄。アルマも伝説として聞かされたハンター。かつて、火山に出現した禁忌の巨大飛竜種(飛べません)アカムトルムが出現し、ギルドは精鋭のハンターを200人以上派遣したが、その全員がアカムトルムの前に帰らぬ骸と成り果てた。当時、上位ハンターだったポッケ村の英雄が、ギルドからの無茶振りで単独でクエストに参加、見事一人で討伐。その半年後、ポッケ村の雪山最奥でアカムトルムと双璧をなす禁忌の巨大飛竜種ウカムルバスが登場。ギルドはポッケ村に避難勧告を出し、ポッケ村を見捨てる選択をした…しかし「俺がソイツを倒せば良くね?」ポッケ村の英雄はそう言い、天上天下天地無双刀を担いで単独で討伐。英雄が村に戻ると、彼なら絶対にウカムルバスを倒せると信じていた村人全員は避難しておらず、英雄を温かく迎えたのだ。
だが、ギルドのうっかりで、数年前…アカムトルムとウカムルバスの衝突が確認された。自然の具現化である古龍さえも勝てない禁忌の化物。その2体を同時に倒す戦力はない…ギルドは最後の望みをかけ、両者の討伐経験があるポッケ村の英雄を単独で送り込んだ。つまり、世界のために死んでこいということである。禁忌VS禁忌の危険地帯ではネコタク救助も使えず、バックアップなし、1度でも戦闘不能になればそのまま死ぬ。
ポッケの英雄VSアカムトルムVSウカムルバスの激闘はやがて、ポッケの英雄VSアカムトルム&ウカムルバスとなり、3日3晩続き…戦闘の音が聞こえなくなり、ギルドが確認すると…天上天下天地無双刀で切り倒された2体の禁忌、そして崩壊した大地だけであり、ギルドは正式にポッケの英雄の殉職をポッケ村に通達。だが、それを認めたくないポッケ村の人々の声もあり…表向きは行方不明ということにしたのだ。
『ああ…私も驚いた。なんでも最初にウカムルバスを討伐し、その後にアカムトルムを倒したあと、剥ぎ取ろうとしたら大地が崩壊してそのまま海に落ちてキヴォトスに流れ着いたらしい』
今はミレニアムサイエンススクールで、数年振りのキャンプ飯以外の食事を食べてたり、数年振りの銭湯及びドラム缶風呂ではないお風呂を楽しんでるだろう。なんにせよ、英雄から提供された氷霧の断崖の生態調査データは非常に役立つし、彼らが拠点に使っていた所もベースキャンプとして活用できる。
と、そのときだった。空高く、救難信号の信号弾が打ち上げられ、タブレットや調査員のスマホに救難信号が発射されたことを知らせるアラーム、そして座標が表示される。
「これは…星の隊から!?」
救難信号を出したのは、この集中豪雨で調査を行っていたオリヴィア達であった。
集中豪雨の影響もあり、緋の森は全体的に水浸しとなっており、川は氾濫している。普段、水が無いところでも、膝下位まで水が来ており、普段から水が有るところは成人男性の腰ほどまで水で浸水していたのだ。
「逃げられそうにないな…」
オリヴィアは少し離れた所に、ミカとエリックを隠し、一人でとある巨大モンスターと戦っていた。そのモンスターは増水した川を泳いでおり、オリヴィアの隙を伺っている。オリヴィアが油断した一瞬の隙をついて、その巨体を用いてオリヴィアを潰すつもりである。その後は、ミカとエリックを消化試合のように潰して食べるのだろう。
その時…風切り音が響き、空からリオレウスが飛んでくる。地上からは疾走して水がバシャバシャと溢れる音が聞こえる。どうやら、鳥の隊からレイヴンとリンクスが救援に来てくれたようだ。
「動くな!!」
セクレトに乗ったレイヴン、空からリンクスを乗せたレウスが近づいてくると、オリヴィアは停まるように指示を出した。
「ここはヤツの縄張りだ。そして、狙いは私だ」
その瞬間、前方の水が膨らむように弾けて、全長30メートル程の巨大な海竜種が現れた。顔はピラルクのようになっており、全身に水の羽衣を彷彿させる水のベールを纏っている。この水のベールが有る限り、頭部などの露出している所以外で与えるダメージは限りなく低くなってしまうのだ。
そのモンスターはウズ・トゥナ。この緋の森の頂点であり、その巨体と水のベールが持つ防御力を活かして敵を粉砕するモンスターである。
ウズ・トゥナはその体躯を活かして、オリヴィアを左腕で押し潰そうとするが、オリヴィアはハンマーを振るい…攻撃を受け止めて、後ろに飛び下がる。だが、ウズ・トゥナは水場というフィールドを活かして身体を回転させて…尻尾から頭まで使って凪ぎ払うように攻撃するがオリヴィアは膝の力を抜くことによる脱力を用いて一瞬で姿勢を低くして、攻撃をかわす。
「頼む、エリックとミカだけでも!!」
ウズ・トゥナは水中に再び潜る。どうやら水中から勢い付けて大波と巨体で纏めていっそうするつもりだ。
「リンクス、レウス。今だ」
「はい!」
「アギャッス」
ウズ・トゥナが加速するまで時間がある。レウスは急降下を行い、エリックとミカの寸前で空中前転を行い、その瞬間にリンクスがエリックとミカを掴み、その瞬間にレウスが空に飛び立つ。そして安全圏まで行くと、2人を後ろに座らせた。
そして…その瞬間、加速をつけたウズ・トゥナがオリヴィア目掛けて水面から飛び出した。
「ぬぅおら!!」
そのタイミングを待っていたように、オリヴィアが腰の捻りを用いてハンマーを振り上げ、タイミングを合わせた相殺攻撃を行う。これにより、何十tという重さを誇るウズ・トゥナは弾かれるように側面からバランスを崩して不発に終わる。
「援護する。この様子では、討伐か撃退しないと無理だ」
「助かる。先ずは、あの水のベールを剥がさないと、此方の攻撃が通らないぞ」
レイヴンはセクレトから降りて、双剣リュウノツガイを抜刀する。
ここに、レイヴン&オリヴィアVSウズ・トゥナの戦いが始まるのだった。
「ビャァァァア!!」
ウズ・トゥナは咆哮を響かせるが、レイヴンはものともせず、リュウノツガイでウズ・トゥナの顔を切り裂き、続けて首を切り裂く。
「ビャァァァ!?」
「なるほど。ベールがない所は普通に通るな…」
頭部から血を流し、首から流血するウズ・トゥナ。しかし、モンスターの生命力は高く…傷跡は残ったが、出血は停まる。
「やはり、頭部と首以外でダメージを与えるためには、ベールを剥がさなければな」
オリヴィアがハンマーでウズ・トゥナの左腕を叩く。本来なら、甲殻や骨が軋む音が出そうだが、水のベールが威力を和らげてしまう。
「ボウガンに切り替えて、属性弾でベールを剥がしてみる」
「頼む」
「だったら…我々が」
「お任せだぁあ!!」
武器を変えるのなら、セクレトを呼んで、鞍からサブの武器を出さなければならない。その隙を狙う必要があり、それを買って出たのが、オトモであるペコとアトスである。2人はドングリのようなロケットに乗り、そのロケットでウズ・トゥナの前まで飛んで、顔面に張り付いた。これでウズ・トゥナは前が見えない、視覚が封じられた状態である。
「感謝する」
ガチャリ。レイヴンはセクレトの鞍から、サブ武器として持ち込んだレ・ダウの素材から作ったライトボウガンを取り出した。電撃弾を装填し、速射モードに切り替える。そして照準を合わせて、引き金を引いた。
連続で放たれる電撃弾は効果抜群のようで、銃声でウズ・トゥナの悲鳴が書き消され、ベールが剥がれた。
「オリヴィア」
「任せろ」
オリヴィアがハンマーをウズ・トゥナの右前足に振り下ろし、骨が砕ける音が響いて、ウズ・トゥナは大きく怯む。そして、アトスとペコが吹き飛ばされ、ウズ・トゥナは水の中に入って逃げていった。
「ウギャァ…」
なんとか泳ぎ、湖まで戻ったウズ・トゥナ。だが、ウズ・トゥナの首に何かが噛みついた。それは…ラギアクルス。同じく海竜種の大型モンスターであり、なんと電気属性を操るのだ。ラギアは全身から10万ボルトの電撃を放ち、傷ついたウズ・トゥナに致命傷を与えてしまい、ウズ・トゥナは断末魔をあげて死滅した。しかし、水中からでは外に声が響かず…ウズ・トゥナの死に調査隊は気付かない。そして、ラギアクルスに捕食され…水面には血で真っ赤に染まった。
次回、なかなかゲヘナとの話し合いが出来ないファビウス。
そんな中、再びアリスと先生がアビドスにやって来る。
パヴァーヌ編のラスボス◯・◯◯倒したあとの番外編。
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