とある竜の恋の詩   作:桜寝子

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第17話 色んな姿

 剣を注文してから早一週間。

 受け取りの日が近づいている中、私達が何をしているのかと言うと……働いていた。

 

 賞金の殆どを支払いに使う以上、念の為に多少は稼いでおいた方が良いのでは、と話し合って決めたからだ。

 

 最初は普通に常識的な範囲で楽しく過ごそうとはした。

 けれど、もし足りなかったら? 足りたとして、もし路銀が心許なくなってしまったら?

 そんな事が頭の中をチラチラと出たり消えたりを繰り返す。

 多少の金額だろうと、使えば使うだけ気になって仕方がない。

 

 私もそうだが、特にアリーシャはその所為で気軽に楽しめなくなっていた。

 だったら稼げばいいじゃないか、という至極当然の答えだ。

 

 

 で、じゃあどんな仕事を請けたのか……なんだけど。

 宿の食堂で忙しなく走り回っている。そりゃもう必死に。

 

 朝食を食べながら話していたから、丁度良いやとその場で従業員に聞いてみたのだ。

 そしたらトントン拍子で話が進んでこれである。ちなみに今日で3日目だ。

 

 勿論やるならやるで真面目に働いた。全く経験が無いがこれも楽しんでしまえと前向きだったのだ。

 

 そう、過去形だ。今は若干後悔してる。

 まさかこんな事になるとは……

 

 

「エルちゃーん! 8番にラオ牛ステーキ、12番に特製シチュー! それから――」

「3番空きましたー! 5番に2名様ご案内、それで7番お会計! これで待ちが――」

「オルグ貝は売り切れー! これが最後です! クルル海老もあと少しで――」

「エルちゃーん、注文良いかー?」

「嬢ちゃん、フレアサーモンのムニエルってまだか?」

「こっちも串焼きが来てないぞ」

「エルちゃんこれ4番にお願い、その後1番と2番の食器下げて――」

「ようエルちゃん、今日も来たぞ。頑張れよー」

「エルちゃーん、こっち見てー」

「エルちゃーん」

「エルちゃ――」

「エ――」

 

 

 なんっっなんだこの忙しさはっ!? ギャーギャーうるせぇ!

 どいつもこいつも勝手に気安くエルちゃんとか呼びやがって! しかも殆ど男じゃないか!

 そもそもなんで昼間っからおっさん連中が集まってんだ、仕事しろ!

 

 なんて事は頑張って内心に押し込めて、どうにか笑顔を振り撒いて可愛らしく接客中だ。

 今日で3日と言ったが、日に日に客が増えてる。どうすんだこれ。

 

 

 流石にこの大盛況は予想外だったのか、宿としてはてんてこ舞いの大騒ぎ。

 嬉しい悲鳴って奴かね。嬉しそうなのは初日だけで、今は本当に悲鳴を上げてる気がするけど。

 

 どうにか大急ぎで仕入れを増やして、私とアリーシャが入ってなんとかギリギリ回って……ないな。

 色々足りなさ過ぎて、最早何をどうすればいいのか素人の私には何も分からない。

 

 

 何故ここまで客が一気に増えたのか?

 その理由は勿論、私だ。

 

 これでも今や王都中で話題に上る美少女であるこの私が、この宿の食堂で働いている。

 その話が一瞬で広まり押し掛けてきたのだ。

 

 いや、何言ってるんだか分からないけど、実際客がそう言ってるんだからそうなんだろう。

 

 ちなみにアリーシャは厨房だ。元々料理が上手いからな、アイツ。

 彼女が表に出てこない分、私に注目が集まってる訳だな。

 

 まぁ、この状況を考えたら調理に専念してた方が良い。

 あっちも手が足りてないし、酔ったおっさん達の鬱陶しい絡みを上手く流せないだろうからな。

 

 

 一応言っておくけど、ただ私を見る為だけに来ている訳じゃない。

 この食堂は元から盛況だったし、満足させる味を持ってる。

 私はただ後押ししているだけだろう。

 

 

「エルちゃん、エールくれー! アレもよろしく!」

 

「チッ――コホンッ……エルちゃんの、エールだぞっ」

 

 きゅるーんと笑顔でぶりぶりなセリフと共に杯をドカッと置く。

 屈辱だ。なんだこれ。

 

「なんか舌打ちが聞こえた気が……まぁいいか、ありがとさん――麦茶じゃねぇか!」

 

 余計な注文をしてくれたおっさんに嫌がらせをするのも何回目だろうか。

 わざと間違えたり、激辛にしてやったり……

 しかし何故か客はそれさえ楽しんでるのが不思議で仕方ない。

 

 可愛い女の子の可愛い悪戯、らしい。本当に屈辱だ。

 内心を一切表に出さない事を褒めて欲しい。舌打ち? 気の所為だ。

 

「飲んだからそれも計上だね、毎度ありー」

 

「あー、やられた! まぁ1杯くらい良いけどよ」

 

 既に酔ってるから気付かないのか、分かってて乗ってるのか。

 それはどっちでも良いけど、とにかく私は可愛がられている。

 

 紛れも無く子供扱い。その原因もやっぱり私だから誰にも文句が言えない。

 いや、あのセリフだけは文句を言いたいけどな。本当になんなんだ、誰が考えたんだ。

 

 

「ほい、ステーキお待たせっ。あとこれ……えっと、なんか貝のアレ。それと……なんだっけ、魚」

 

 やたらメニューが豊富だから、私にはどれがなんだか分からない。

 食えれば良いで生きてきたのが、美味けりゃ良いになったけど……まだ料理の名前はあんまり、な。

 

 とにかく名前が覚えきれないから、もう半分わざと適当な言い方で通している。

 それでなんとかなってるのが謎だ。なってないけど許してくれてるだけなのかもしれないが。

 

「いっぱい食べてくれてありがとー! あ、おにーさん、それ頼むならこっちもオススメ! すっごい美味しいから!」

 

 既に分かってるだろうけど、今の私は絶賛演技中だ。

 

 普段の私、つまり素の言動だと接客に向いてない。

 それくらいは私でも分かってるから、最初から演技して始めたのだ。

 

 場を和ませ、顔と一緒に財布の紐も緩ませる為に。

 子供らしく可愛らしく、精一杯に。

 

「あ、それからもうすぐ注文は打ち切りだからね! 皆もう食べない? 注文するなら最後だよー!」

 

 それを見たアリーシャや他の従業員から、ああしろこうしろと指示を受けた。

 そうして言われるがまま完璧にやってみせてしまった。

 その結果がこれだ。

 

 子供に紛れて学んだ演技が役立つのは良いけど、思ってたのとなんか違う。

 こんな使い方をする事になるとはね……

 

 

 ワンピースの上に着たエプロンをヒラヒラと揺らし、席の合間を駆け回る。

 聞こえてくる話からすると、小さな女の子が元気に可愛くトテトテと働いているのが癒されるらしい。

 この街はロリコンが多いのか……?

 

 大会であれだけの力を見せたというのに、化物扱いされるどころか人気者だ。訳が分からない。

 いや、そういう奴は勿論居るんだけど……思ってたよりずっと少ないんだ。

 

 やっぱり見た目って重要なんだな。おっさんだったらこうはならない。なんだか悲しくなる。

 

「ほらほら、皆! もう一旦店仕舞いだよ! また後で来てね!」

 

 注文を打ち切ってしばらくすると、私は客を促していく。

 

 あまりにも客が来るものだから、昼過ぎで営業を止めて夕食時に再開する事になっている。

 誰も休まる暇が無いのもそうだけど、根本的な話で食材が足りないんだ。

 

 これから大急ぎで仕入れを頑張る事になる。

 それはそれで休まらない気がするけど、私とアリーシャはそこまでは関わらない。

 遅めの昼食を取りながら、しっかり休ませてもらおう。

 

 

「あまー。うまー」

 

 用意してくれたホットケーキをもぐもぐ。

 体力はなんの問題も無い筈なんだけど、やたら疲れる。

 甘い物は癒されるわー。

 

「お疲れ様、エルちゃん」

 

「あぁ……お前もな」

 

 アリーシャもくたびれながら食事を置き、私の対面に座った。

 ひたすら調理し続けるってのも大変だろう。私には分からない苦労だ。

 

「私もそっちで働けたらなぁ……珍しいエルちゃんがいっぱい見れるのに」

 

「それは厨房が死ぬからやめてやれ」

 

 そんな残念そうに言う程か? どんだけ見たいんだ。

 

 でも確かに、ここで働くまでは彼女の前で見せていなかったな。

 素が楽だからと演技なんてしなかったし、その必要も無かったから。

 

「まぁ、見たいならいくらでも見せてやる。一周回ってなんだか楽しくなってきた」

 

 恥ずかしいとは思うけど、今更彼女相手に気にする事じゃない。

 望むなら見せてやろうじゃないか。

 

「単純……あ、いやなんでもない」

 

「聞こえてるんだよ……全く」

 

 そんなの私自身が一番分かってる。自分がここまで単純な奴だとは思ってなかった。

 でも良いだろ? その方が何だって楽しめるんだから。

 

「まぁ、今はしっかり休んで――夜も頑張ろうねっ、アリーシャお姉ちゃん!」

 

「ブフッ、ゲホッ……おぇっ」

 

 咽るな。そんなに変か、失礼な奴だな。

 見たいって言ったのはお前じゃないか……

 

 

 

 

 

 

 仕事辞めた。3日で。もう働きたくない。

 

 いや……そう言うとなんか情けなく聞こえるけど、違うんだ。

 

 客が集まるのは良いとしても、それがずっと続くのは正直よろしくない。

 誰も休めないままひたすら忙しいってのはちょっとな。

 その原因が私なのだから、正直申し訳無いなと思ってたんだ。

 

 それを宿側に伝えると、『惜しいけど仕方ないね』でアッサリだった。

 何故か客は嫌がってたけど知らん。とにかく辞めた。

 

 それでも当初の予定を大幅に越える報酬が貰えてしまった。

 それだけじゃなく、宿泊代も半額でいいとまで言われたくらいだ。

 どうやら売上がとんでもない事になってるらしく、それ程の集客をしてくれたお礼だとか。

 

 良くも悪くも私の影響は大きかった、という事だな。

 

 

 

 そうして充分なお金を得た事で、ようやく気軽に楽しめる様になった。

 昨日今日と遊び歩いて、明日は剣の受け取りと支払いになる。

 

 元々持っていた分と、賞金と、追加で稼いだ分、そして浮いた分。

 賞金は消えるが、これだけあれば困る事は無いだろう。一安心だな。

 

 

「あ、服! 服買おう!」

 

 気ままにフラフラと街を歩いていると、アリーシャがそう言って店を指差した。

 

「えー……必要ないじゃん。荷物が増えちゃうよ」

 

 今の所、アリーシャの服は新調した旅用の物が1着、それよりは簡素な物を予備で1着。

 そしてこの間着ていた普段着が1着。正直これ以上はただ荷物が増えるだけだ。

 

「増えるって言ったって、エルちゃんの服それともう1枚しかないじゃん」

 

「え、私の服を買うの……?」

 

「うん」

 

 どうやら私の服の話だったらしい。そうか……私のか。

 

 私はお馴染みの服と、似た様な物を予備で1着持っている。

 変身すればいくらでも作り直せるからな。人の目があるとか、それが出来ない状況だった場合を考えての本当に念の為の用意だ。

 

 勿論、旅をするなら外套も着るけどそれはまた別。

 当たり前過ぎて服として数えない。

 

 ともかく、私こそこれ以上は必要無いんだけど……これはまた着せ替え人形にされる流れだな。

 多分そっちが目的なんじゃなかろうか。

 

 とにかく色んな服を試着させようと、何故かやたらと張り切った事があった。

 そのお陰で着飾る楽しさを知ったから、別に嫌という訳では無いんだけど……疲れるんだよなぁ。

 

 

 ちなみに昨日今日と私は少しだけ言動を変えている。

 普段とは違う私を見たいというアリーシャの我儘に答えたものだ。

 

 例の演技はどうしても笑われてしまうから止めた。何がそんなにおかしいと言うのか。

 

 

 

 

 

「はい次、これね」

 

「おー……」

 

 これで何着目だ……?

 もう返事するのも疲れてきた。

 

 よくもまぁ、次から次へとこんなに持ってこれるな。

 サイズの合う物を全部持ってくるつもりじゃないだろうな……?

 

 どれも少しずつ系統が違うから、一応考えて選んでるっぽいけど。

 

「えぇ……これは流石に……」

 

 今度はなんとドレス。私は何処に行くんだ?

 真っ白な生地を細身に絞り、綺麗な青で装飾が入っている。1人で着られる様な簡素な物でありながら中々の物だ。

 少なくともそこらで着る物じゃない。

 

 ていうかなんでこんな小さいサイズがあるんだよ。品揃えが豊富過ぎるわ。

 

「あれ……? なんか悪くないな」

 

 おかしい、着てみたら割と良いと感じてしまった。

 アリーシャが選んできただけあって、自分でも似合ってると思える。

 

 これ着て優雅に旅して戦うのも楽しそうだ。

 普通じゃないというか、現実味が無いのが面白いと思う。

 どっちにしろ邪魔になるから要らないけど。

 

「じゃーん、どうだ?」

 

「うわ、凄い綺麗……もう人形でしょ。しかもすっごい高級な奴」

 

 とりあえず着替えたから、試着室を出て自信たっぷりに胸を張って見せつける。

 はははっ、存分に見惚れるが良い。

 うん、我ながらこの手の平の返しっぷりはどうかと思う。

 

「確かに……この整い過ぎた見た目のお陰で、綺麗な服を着ると本当に人形みたいだな」

 

「なんかムカつく。自分で言っても許されるくらい実際凄いから尚更ムカつく」

 

 お前が選んで着せた服で勝手に腹を立てるな。

 嫉妬する必要が無いくらいお前も充分整ってる方だろうが。

 

 そんな事は恥ずかしくて言えないから、返す言葉に悩んだ結果会話が途切れた。

 いつまでも話が下手ですみませんね……これはちょっと違う話か? まぁいいか。

 

 

「しかしまぁ、こうして違う姿に変わっていく自分を見るのはやっぱり面白いな」

 

 それでも何か喋りたいと思うのは何故なんだろうな。

 昔は他人との会話とかどうでもよかったのに。

 

 という訳でとりあえず感じた事をそのまま口に出してみる。

 

 着飾る事もそうだけど、色んな服の構造やデザインを知るのも面白い。

 何より、こうして知る事で変身する時に違う物を作れるからな。参考になる。

 普段着ている服もそうやって知ったお陰で作れた訳だし。

 

「エルちゃんって凄いよね。姿が大きく変わっちゃったのに、それでも受け入れて楽しんじゃうんだもん」

 

「どうした急に」

 

 しかし返ってきたのは、なんだか湿っぽい声。

 

「ううん、ふと思っただけ」

 

 何か悩み事でもあるのかね……まぁ、まずは会話を続けてみるか。

 それで実際に悩み事だったら考えよう。

 

 

「新しい人生と割り切ってるだけだよ。変わってしまった物はどうしようも無いんだから……」

 

 まさか自分がこんな女の子になるとは思いもしなかった。

 けどどう足掻いてもそれは変わらない。

 受け入れたというか、そうしなきゃ始まらないってだけだ。

 

 変わったと言うのなら、その最たるはこの性格だろう。

 どうせなら楽しもう、なんて。生前ならそんな事は考えなかった筈だ。

 性格は死ぬまで変わらないなんて言うけど、死んだから変わったな。

 

「それが凄いんだけどなぁ――私は、割り切れるのかな……」

 

 あぁ、そういう事か。

 あの試合を経て、世間の目が大きく変わって、善悪関係無く様々な感情を向けられて……これからどうなるかを考えてしまったんだな。

 

 自分が自分のまま生きていけるのか、不安になったか。

 一歩踏み出して、そうして見えた景色に怖気づいたか。

 

 全く、何を考えているのやら。

 

「なんだ、そんな簡単に揺らぐ程度の決意だったのか?」

 

「そんな事っ……無い。無いけど……でも、体感してやっと理解出来る事が、こんなに大きいんだなって……」

 

 あの燃え盛る太陽の様な姿はなんだったんだ、しょんぼりするな。

 そう思ってわざと煽り焚き付けた。

 

 決して甘く考えてた訳じゃなく、考えに考えて選んだ。

 それでも予想以上だった……て感じだろうな。

 

 で……それがどうした。

 

 

「全部が全部そうとは言わないけど、そんなもんだろ……人生なんてのは。予想外の連続だ」

 

 少なくとも、波乱に満ちた道を往くならそうなる。

 昔から私はそうだったし、今はそれを楽しむ様になった。

 そうなれたのは……アリーシャのお陰だ。

 

「何処かで見た言葉だけど……服と同じで、着てみてようやく分かる事がある。それが着せられた物か、悩んで選んだ物かはともかく、結局それを着て歩くのは自分だ」

 

 これは長く生きて、ようやく悟った事だ。

 今更……2度目の人生になってやっと気付けた事。

 

「芯を持て。自信を持て。気に入らなければ着替えてしまえ。これが自分なんだと見せつけてやれ。それが難しいなら支え合う……その為に2人で往くんだろ」

 

 見て呉れなんていくらでも着飾れる。

 それが例え虚飾だろうと胸を張れ。

 そして邪魔なら脱いでしまえ。

 

 簡単な話ではないし、私の様にそれさえ楽しめとまでは言わないけどな。

 まぁ、芯さえあれば支え合うのは容易だろう。

 

 

「……うん」

 

 アリーシャは目をパチクリとさせた後、苦笑した。

 伝わってくれただろうか。

 

「ふふっ……なんか、上手い事言おうとしてるだけじゃない?」

 

「……うん。言いながら、ちょっとズレてるかなとは思った」

 

 口下手が何処かで見た言葉を使うとこうなるんだな。

 彼女の悩みに応える言葉だっただろうか。ちゃんと意味が通ってるのか不安だ。

 

「とにかく少しでも伝わってくれたなら良いさ……伝わった、よな?」

 

「大丈夫、ちゃんと伝わってるよ」

 

 良かった。『何言ってんの?』とか言われたら恥ずかしくて消えたくなってたよ。

 

「まぁ、あれだ。遠くまで見ようとするから余計な物を見てしまうんだ。人間なんて目の前の事だけで精一杯さ。進むと決めたなら、一歩一歩ゆっくり踏み締めて行け」

 

 今すぐどうにかする必要は無いし、急いだって碌な事は無い。

 不安なら、変化に付いていけないなら、その分ゆっくり歩けばいい。

 

 これだけは誰かの言葉を借りずとも、確かに言える事だ。

 

「うん……そうだね」

 

 そう伝えるとアリーシャは朗らかに笑ってくれた。

 こんな言葉だけで解決とはいかないだろうけど、そのうち彼女の中で答えが見つかる筈だ。

 

 人生行き当たりばったり、なるようになれ。

 

 別にそんな軽い思想を押し付ける気はないけど、重く捉えるよりはずっと良い。

 私はそう思ってる。

 

 

「んじゃあ、そういう訳で私も着替えようか。――いつもの私の服に」

 

 よーし、良い感じに纏められた。

 さぁ、次は何処に行こうか――

 

「え? まだ試着終わってないけど」

 

 逃げらんねぇ……

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