奥山沙織はアイドルになって声を届けたいようです   作:まきにゃん

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表題が変更になって(仮題)が外れました。



幼穂形成。

真名子アシスタントから仕事に関する打ち合わせがしたいと連絡があり事務所に出向くことになった。

彼女曰くメールで済む簡単なものなので面会は必要ないとのことだったが、真名子さんを信頼していますよ(担当への営業活動)という姿勢を機会があれば積極的に示していくのはやぶさかではない。

 

「わざわざご足労頂いてありがとうございます」

 

真名子アシはいつもの如く青白い顔をしている。

栄養が足りていないのか寝不足がのかは定かではないがアシスタントの仕事に差し支えないのだろうか。

能力に疑問は感じないが急病で倒れられてしまうと私のスケジュールが止まる、ないしは、担当が別のアシスタントに変更になって改めて関係を初めから構築し直しになるのは避けたい。

 

「レッスンは順調に進んでいると報告は受けています。そこで、奥山さん、ひとつお仕事やってみませんか?」

 

有能なアシスタントではあるが、流石にもうアイドルデビューは早計ではないか?

まだ基礎力を高めている段階でお世辞でもお城の階段を駆け上るのは無理だ。

私が承諾すべきかどうか、どう返事したらよいか迷っていると、ビジネスパートナーは話を続けた。

 

「誤解を招いてしまったら申し訳ありません。アイドルとしてデビューライブをという意味ではなく、テレビコマーシャルに出てみませんか、ということです」

 

ああ、『アイドル』のお仕事ではなくて、『お仕事』の話か。早とちりしてしまった。

勿論のことながら奥山沙織は仕事の選り好みはしない。

何でも受けて立とう。

 

「346プロダクションはいくつかの撮影スタジオを抱えていまして、イベントやコンテンツ制作に携わってもらっていますが、アイドルのイベントは数が限られている上に、企画の合間が無視できない場合も出てきます」

 

世知辛い事情を打ち明けられる。

 

「スタジオの設備の稼働率を上げる為に、また、スタッフに仕事の機会と給与を保証するために公共広告の制作を請けています」

 

公共広告はご存知で、と問われる?

 

記憶が確かならば社会問題への啓蒙のために打ち出されるものだ。企業のイメージ向上や商品宣伝のために行われる普通のCMとは違い、公共広告には消費者に物欲を喚起するとか、企業を認知させるとか、直接的な経済効果は全くない。

 

「当然のことながら出演料は高くはありませんし、面白味のない仕事かもしれません。ですが、公共広告にアイドルの宣伝をついでにしてもらっても良いのではないか、と私は考えています」

 

発想の転換。

 

「普通ならば、アイドルデビューには多額の予算をかけて企画、広報するものです。シンデレラプロジェクトは割と潤沢な予算が付いていますが、その恩恵に預かれるのは武内Pが直接担当する子たちだけです」

 

自分には自由にできる予算がないと真名子は告白した。

無ければ獲ってくる。

その為の仕事ということだ。

 

「公共広告で奥山沙織を宣伝します。ついでに宣材写真と映像も用意して、興味を持ってくれた人のために動線を確保します」

 

ゲーム仕様の抜け道を突いた裏技を提案される。

正攻法では辿りつけない、あるいは、果てしない道程の先にある門が、そこにはある。

悪い魔法使いも居たものだ。

だが、私は喜んで魔法にかかろう。

 

 

****

 

 

「コンセプトは『挨拶は素敵だ』です」

 

大真面目な顔でディレクターが言った。

 

渡された台本には絵コンテのつもりなのか棒人間が描かれており、吹出しにはオハヨウゴザイマスとある。

 

どこからどう見ても挨拶である。

キュートな台本の隅でクネクネ踊っている棒人間に噴き出しそうになるのを必死で堪える。

 

「わだすはおおぎな声でこれを演じればいいんだか」

「できれば大声すぎない、元気な感じで」

 

訛りはあったほうが宜しいか?

それとも標準語のほうが良いだろうか。

 

「そうですねー、2通り演ってみましょう。どちらを採用するかはともかくとして」

 

助けを求めようとして真名子アシスタントの姿を探すが、プランナー兼務の監督と共に台本を睨めっこしながら話している。

どうやら騎兵隊の救援はないようだ。

 

「へば、頑張ります」

 

演出というには抽象的過ぎて、何かしら肉付けが必要な感じだ。

挨拶する相手をいく通りか引き出しに用意してさらに標準語と秋田弁で口にすればいい。

 

簡単な作業だ。

 

 

****

 

 

そう考えていた私が愚かだった。

脳内に用意していたパターンを全て消費し、さらに監督が妙な芸術性を発揮しだした頃には撮り直しが20回を超えていた。

 

笑顔が痙攣に変わらなかった事を誇りたい。

 

何はともあれCM撮影は終わり、余力を振り絞って宣材撮影も終えた。こちらは一礼してからシンデレラプロジェクトの曲をAパートをアカペラで歌った後に自己紹介というテンプレートがあるのでリテイクもなし。

スタッフの面々と握手を交わして気持ちよく仕事を終えることができた。

 

そして後日、編集済みとなったCMが送付されてきたので事務所で視聴となったわけだが…

 

「なにこれえ」

 

CM開始早々からの口元から喉、鎖骨にかけてのバストショットですらない画角でおはようございます。

1番訛っているテイクが採用されたようだ。

動く口が口内までしっかり撮っているのはいきなりの事案発生である。

 

シーンが切り替わって元気に手を振る全身像。

楽しい一日は素敵な挨拶からとナレーションが入り、サウンドロゴに繋がって終わる。

 

「真名子さぁん、こいだしょしいのわだすばっこんかだべ(ちょっといや)

 

抗議するがアシスタントは顔面蒼白を通り越して真っ白になっている。

これは聞いていないな。

 

「とても最の高な演技でした。私の生涯に悔いはありません」

 

いつの間にこんなの撮っていやがった。

畜生めえええええ!




真名子八重「ポエムバトルで武内Pに敗北して予算全部奪われましたあ゛あ゛あ゛(号泣」
武内P「真名子さん、笑顔です」

346プロではポエムを吟じないと出世ができない可能性。

登場させたいアイドル

  • 奥山沙織とユニットを組んだアイドル
  • コミュやデレ劇で接点があったアイドル
  • オリジナルキャラのアイドルや候補生
  • 千川ちひろをアイドルに
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