奥山沙織はアイドルになって声を届けたいようです   作:まきにゃん

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第3企画≒第3芸能課ということで。

ジュニアアイドルに否定な現場って、もしかして真っ当な事務所なんですかね。
ただ面倒なだけかも(多分こっちが本音


出穂。

真名子八重は夕暮れ時の事務所で残業に向けての 栄養補給(菓子食べ散らかし)をしながら、担当のデビューライブについての構想を練っていた。

 

ファーストソロの発注は既になされており、作詞家と作曲家の先生たちの手に委ねられている。

 

問題は、ライブ自体をどのように開催するかだ。

 

アイドルのデビューライブというのを346プロダクションは重視しており、ぽっと出の新人にも小さいながらも箱を用意し、機材を揃え、会場を設営していく。

デビューシングルをはじめとしたグッズも生産され物販に供される。

 

このような手厚い後方支援がありながらも、デビューライブが成功裡に終わることは殆どない。

 

いや、アイドルの一生懸命なパフォーマンスに観客がファンとなり、握手をして、笑顔で帰っていく。アイドルはデビューを果たして達成感を味わう。

346プロの目論見としては成功したと言えるだろう。

 

だが、会場設営にもグッズ生産にもコストが発生するのだ。箱を時間貸しで使用するのも最小ロットでシングルCDを生産するにもそれ相応の金銭が必要であり、数えられる程度の観客と新人アイドルの幸福体験の対価としては、あまりにも費用対効果が悪すぎるのではないか。

 

中には閑散とした会場で立ち尽くしてしまう子もいたし、デビューライブを最後にアイドルを辞めてしまった子もいる。

 

私の担当はそこまでメンタルが弱くはないと信じているが、不必要なストレスを与えるなどということに私の精神が耐えられない。

 

リアルライブの選択肢を塗り潰す。

 

となると、ネットライブか。

真名子は頭を掻いた。

 

「八重ちゃん、フケが散ってますよ」

 

ちひろさんが私の肩に降ったゴミを払ってくれた。

ゴミのような私にも優しくしてくれるとか天使かあなたは。

 

「何を悩んでるんです?」

「おぐやまさんのデビューライブのことで少々」

「あー、沙織ちゃんの」

 

第2企画シンデレラプロジェクトに配置されたアシスタントを束ねるちひろさんも、当然の事ながら奥山さんの進捗状況を把握している。

 

「無観客ネットライブ配信の方向ですが、346はこっち方面のノウハウ無いじゃないですかあ。稟議書でっち上げるのが面倒だなーって」

「ネット配信だと第3企画で試験的に取り入れてますよ?」

「活動制限のあるジュニアアイドルのための苦肉の策な感が強くてですねえ。あと、小さな子が頑張っているコンテンツって昔から割とあって安牌ですけれど、そうさせてしまう私達事務所側の立場がありません。個人的感想なので別に会長を批判しているわけでは」

「あ、八重ちゃんはそっち派ですか」

 

幸いなことに私の担当は分別ある成年なので、コンプライアンスについては相互の理解の上で仕事を進めることができる。

 

「ちひろさんが武内Pのネクタイをクイっとっしたり、今西部長の肩を揉んでいただければ、稟議書の通りも良くなると思うんですがねえ」

「八重ちゃーん?」

「ちょっとした冗談ですよお」

 

ちひろ様が静かにお怒りになられている。

 

「八重ちゃんが部長とプロデューサーに受けが悪いのは、たぶん身嗜みとかだらしなさのせいだと思います。普段から机の上を整理整頓するとか、お菓子の屑をこぼしたままにしないとか、色々と」

 

んほぉ〜‼︎

だめですちひろ様、ヘッドショットは誉れある企業戦士に対して用いていいモノではありませんぞ。

 

せめてハイクを詠ませて。

 

 

***

 

「奥山沙織さんですね。私はシンデレラプロジェクトのプロデューサーを務めています武内と申します」

 

巨体の男性がソファーに窮屈そうに腰掛けている。

こちらでは初めましてプロデューサー(闇の魔王)さん。残念ながら私の魔法使い(アシスタント)は既に居ますがどうぞ宜しく。

 

そのアシスタントは私の隣で蛇に睨まれた蛙のように小さく丸まっているのであるが。

 

「真名子アシスタントから内々にお耳に入ったかと思いますが、貴女のアイドルデビューについて企画書がまとまりましたので正式にご報告させて頂きます」

「はい、どんも有り難うございます」

 

武内Pはその三白眼で私を覗き込む。

真面目な性格とはいえ、女性を凝視するのは止めたまえ。大抵は萎縮されるのだから。

 

「デビューライブではシンデレラプロジェクトの全体曲と新曲を歌って頂き、曲の合間には自己紹介を兼ねたトークを挟み、ライブ所要時間はおよそ30分。撮影スタジオにて無観客で行われるネット配信となります」

「奥山沙織さん。346プロダクションでは過去、新人アイドルは必ずリアルライブを経てアイドルとしてデビューして頂きました。私としてもリアルライブを奥山さんに楽しんでもらうことを推奨したいのですが、ネット配信について何かご意見がありましたら今ここで仰って下さい」

 

何やら翻意を促すような物言いは武内Pの優しさだろうか。

大丈夫。私は真名子アシスタントの組んだプランに納得しているし、実に合理的な案だと思う。

 

その不器用な優しさはぜひ、自らが抱えるアイドル達に注いでくれ。

 

「わかりました。実のところ、シンデレラプロジェクトにおいて今現在最も社会的認知度が高いアイドルは奥山さんでして、ネットライブであっても観客動員数、いや視聴者数は相応の数字が出てくるだろうと予測されます───真名子さん」

「ひゃい!?」

 

唐突に話を振られて悲鳴のような返事をする隣人。

 

「稟議書は関係部署に回覧します。部長には私からも話しましょう。真名子さんは沙織さんをしっかり支えてあげて下さい」

 

貴女の仕事で私はガラスの靴が履ける。

有難う。頑張るから。

 

「真名子さん、一緒にけっぱりましょ」

「ふぁっ、あっ、あっ」

登場させたいアイドル

  • 奥山沙織とユニットを組んだアイドル
  • コミュやデレ劇で接点があったアイドル
  • オリジナルキャラのアイドルや候補生
  • 千川ちひろをアイドルに
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