奥山沙織はアイドルになって声を届けたいようです 作:まきにゃん
凄いね(驚愕
榊原里美といえば『榊原里美の甘党ラジオ』という冠番組のパーソナリティを務めるアイドルとして知られている。
ボリューミーな縦ロールが特徴的なふわふわな髪にワガママボディー。無邪気でマイペースな言動が人の心を震わせる少女だ。自称有識者のファンによると良いところのお嬢様ではないかと考察されるのも無理はない。
その榊原里美が346カフェに来店している。
彼女の座る客席の前で私は戸惑っていた。
テーブルに乗るお皿には、三段重ねのホットケーキ。ベリーとキウイのトッピング鮮やかに、クリームでカロリーはおおよそ1000kcalを超えている。
「はちみつ、いっぱい掛けちゃってください〜」
ウサミン先輩に必要と言われて持たされた3個のそこそこの大きさのハニーポットの1つ目の中身をゆっくりと注いでいく。
ねろねろとホットケーキに流れゆく黄金の液体がとても嘗めかましい。
「はわぁ〜、美味しそうですぅ」
さらに追い蜂蜜を所望されて私は目を見開いた。
蜂蜜を全て注ぐとまさかの2000kcalを優に超えて、某インスタント焼きソバの超超超大盛りGIGAMAXに匹敵する。大丈夫だろうか。
溢れんばかりに蜂蜜の池が誕生した皿からはホットケーキの余熱で温められた濃厚な香りが立ち上ってきて、噎せ返りそうになるが仕事中である。じっと我慢する。
「ありがとうございます〜、沙織ちゃん」
私をご存知ですか?
「はい〜。今度、私の甘党ラジオに出演してもらうことになりましたので〜、沙織ちゃんにあらかじめお会いしたいな〜って、きちゃいました」
初耳なんですが、いつ決まったのでしょうか。
「ついさっきの会議ですぅ。さっそくお知らせしなきゃっておもって〜」
これはまだ真名子アシスタントも把握していない段階ではないだろうか。
なんとも返事をしかねる状況に、曖昧な笑みを浮かべるしかない。
「どうぞよろしくお願いします〜」
そう言って、榊原里美はたっぷりと蜂蜜を吸ったパンケーキをひと口大に切ると、とても美味しそうに咀嚼しはじめた。
***
「さとみんの〜甘党♡ラジオ〜♪」
放送が始まった。
収録ブースにはマイクと、大量の菓子、そして飲み物。それらに囲まれてご機嫌な榊原里美が甘い声を紡いでいる。
テーブルを飾る菓子の諸々はラジオ番組の提供企業の数々から寄せられたもの。ひとくち摘むごとにお菓子の感想と提供社名を彼女が読み上げるので、ラジオリスナーは最新の甘菓子のダイレクトマーケティングを受け取ることができる、そういうコンセプトの番組だ。
マイクが拾う声以外の音、例えば咀嚼音だったり、包装を開けているガサゴソ音、何かがマイクに当たる音だったりと、色々と放送事故じゃないかと思われる事も茶飯事であるが、この番組ではなぜかおおらかに許されている。
346プロのスタッフには
「──今日の提供紹介はここまでで〜す。次は、と〜ってもステキなゲストをお迎えしますよぉ。その前にここで一曲どうぞ〜」
『おかしな国のおかし屋さん』の曲に切り替わると、榊原里美が手を振って入室を合図する。
恐る恐る収録ブースに入ると漂う甘い香り。
対面の椅子を示されて私が座ると、里美は身を乗り出して声を掛けてきた。
「かな子ちゃんの曲が終わったらぁ話を振りますからね〜。それまでお菓子でも食べてリラックスしましょうか〜」
「まんず、頂きます」
これ美味しいですよと手渡されたチョコ菓子を口にするととろけるココアバターの風味が心を踊らせる。
口内が嬉しい。
「いい顔ですね〜わたしもいただきま〜す」
彼女の食べっぷりは育ちの良さが顕れている。
カフェテリアでも見せつけられたが所作がお嬢様のそれだ。それでいて一口ごとにリアクションがあり見ていて飽きがこない。
食べた菓子の感想を交わしていると曲も流し終わってマイクのコントロールが戻ってきた。
「あらためまして〜こんにちはぁ。甘党♡ラジオですぅ。今日お迎えするゲストは〜シンデレラガールズの奥山沙織ちゃんですぅ。どうぞ〜」
「リスナーの皆さん、はじめますて、おぐやまさおりです。よろすくおねげえします」
「沙織ちゃんは私と同じ346プロダクション所属のアイドルで〜、デビューしたての新人さんなんですよ〜」
人物紹介を兼ねたトークが始まる。
プロフィールや好きなものとか一通り話して、ライブの裏話やら、ちょっとしたデビュー周りの逸話をいくつか。
「そういえば沙織ちゃんは346カフェで働いているんですよね〜」
「んだ。アイドルさお仕事ないときお店で働かせてもらってますね」
「あそこのパンケーキ大好きで気が向いたら通ってるんですけど〜たまたま沙織ちゃんにお給仕してもらって、とっても幸せな時間でしたぁ。たっぷりはちみつかけてもらって、はわぁ〜、思い出すとまた食べたくなってきちゃいますぅ〜」
「里美ちゃんは甘いものあんな食べて太らねんだか?」
「不思議なことにあまり影響ないんですよ〜どうしてなんでしょうか〜」
いや充分に影響があるのではないでしょうか。
主に胸の大きさとか。
「私もカフェで働いたらしっかりもののアイドルになれるでしょうかねぇ〜。アルバイトなんかしたことないからいろいろと失敗しそうで」
「里美ちゃんはお客様としてカフェで食事してるほうが似合ってると思うけんどな」
「残念ですけどやっぱりそうですよね〜。でも気分だけはメイドさんになりたくって、実はいまですね〜私と沙織ちゃんはメイドさんの服を着ているのですよ〜」
里美はフレンチスタイルの、私はカフェテリアの制服をそのまま借りてきている。
オフショットは番組ブログに掲載されるので楽しみにしてくれ。
***
「では、今週のあまあまタイムはここまで~。甘党ラジオのパーソナリティーは、榊原里美でしたぁ。では、また来週~。ばいばぁい~♪」
オンエアーが終わり溜め息が漏れる。
「沙織ちゃん、どうでしたか〜楽しんでいただけましたかぁ?」
「まんずまんず、お菓子美味しかった」
「沙織ちゃんが持ってきてくれた秋田犬のどらやき、かわいくて食べちゃうのもったいなかったですぅ」
地元銘菓の差し入れが気に入ってもらえたようで良かった。
どら焼きも里美さんのお腹に収まって喜んでいることだろう。
「またご一緒できればいいですね〜」
「んだな。また、いずれ」
奥山さんにやらせたいこと
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CMのお仕事
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ライブ出演
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動画配信
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グラビア撮影
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その他