奥山沙織はアイドルになって声を届けたいようです   作:まきにゃん

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保温。消費期限を過信するな、まだはもうなり。

第2企画シンデレラプロジェクトは現在進行形で多数のアイドルを抱えているが、同時に過去にシンデレラガールズとしてプロデュースされたアイドルもまた、事務所を移籍したりアイドルとして引退廃業しない限り、シンデレラガールズの一員として見なされている。

 

例えば第1企画の所属になっている高垣楓。

モデルから転身してアイドルになった彼女は第1期シンデレラガールズのメンバーとして起用され、その後、第1期プロデュースの終了とともに第1企画への転属を経て、歌手としての活動を中心として多くの業績を上げる事となった。

芸能界という階段を駆け登ったシンデレラとして誰もが認めるアイドルであろう。

 

例えば第3期シンデレラガールズのメンバーである島村卯月。

第3期プロデュースで採用された島村はニュージェネレーションというユニットで頭角を顕し、そのひたむきな努力と満面の笑顔を評価されて、『舞踏会』のセンターアイドルを務めた。

今もソロ活動をはじめ複数のアイドルユニットに参加しており第2企画の不動の花形だ。

 

彼女らのような偉大なる先達もまたシンデレラであるために、今まさにプロデュース対象となっている第5期メンバーとの接点は多い。ユニット活動の仲間であったり、イベントで後背からその姿を学ぶべき対象であったり、あるいはバイト先の安部菜々先輩であったりと。

 

「まあ、ぶっちゃけると芸能界の悪しき風習の残滓ですね」

 

真名子八重は否定的な見解を示した。

 

「デビュー時期が1年も違えば先輩後輩ただそれだけの理由でマウントを取られますし、より良い仕事も優先的に持っていかれてしまいます」

「真名子さん、そう憎まれ口せんでも、わたすはお仕事貰えてありがてえよ」

 

アイドルとして今まさに輝いているところから見習うこともあるだろう。

下積みという段階を一足飛びにしてデビューしてしまった私にとっては尚更だ。仕事はカネコネフォルトネ(幸運)の要素もあるのだから積極的に拾っていかねばなるまい。

 

「だからといってコスプレショーはないでしょう」

 

2期先輩の渋谷凛の出演する『かわいいワンワンコスプレショー』に補助スタッフとして呼ばれているのであるが、真名子アシははどうしても気に入らないらしい。

コスプレショーとはいっても犬耳と尻尾を着けるぐらいで衣装は際どいものではないし、ショーに出演する訓練済みの犬達を誘導するだけの簡単なお仕事なので何も心配することはないはずだ。

何ならメインを張る渋谷さんのほうが際どい衣装だが?

 

「私のマネージメント計画と相容れないです、断固たる抗議を!」

 

我を押し通せるようにように是非とも偉くなっておくれ真名子さん。

 

 

***

 

 

「ふーん、あなたが奥山さん。どうぞよろしく」

 

渋谷先輩、どうぞ宜しくお願いします。精一杯務めますので。

 

「ああ、私のことは凛でいいよ。歳上に人に苗字で呼ばれると、なんだか緊張するから」

 

渋谷凛は一見無愛想な感じを受けるが、話してみると感受性の高い女の子のようだ。

実家が生花店を営むだけあって内面はとても優しいのだろうか。

やはり一廉のアイドルは人を惹きつける何かがある。

 

それでは私の事は沙織と呼んでくれたまえ。

 

「ん、わかった。沙織さんにはショーに出演する犬たちをステージに連れてきてもらいたいんだけど」

 

楽屋裏に案内されると、多種多様な犬が集められていた。

幼児の背丈と遜色ない大型種から、愛玩用のふわふわもこもこな小型犬、不細工な面構えの狩猟犬、住宅街で歩いていれば散歩していそうな日本お馴染みの犬種まで、よりどりみどり。

 

「たんとおるね」

「何匹がまとめてリード牽いてくれればそんなに手間はかからないはず」

 

凛先輩は簡単に言うが、これだけの数だ、ステージに上げるだけでも進行が滞るだろう。

訓練されているとはいえほうぼうから掻き集められてきた動物たちだ。君達は大人しく私に従ってくれるだろうか?

目線で問うと犬達は身動きをやめて覚悟を示した。

ああ、君達ならやってくれるだろう。安心だ。

 

「沙織さん?」

「どの子もよく躾されてんで、大丈夫そうだ。任せてけれ」

 

さて、かわいいコスプレ衣装に着替えないと行けないので一旦失礼します。

素敵なショーにしましょう、凛先輩。

 

 

***

 

 

私は何を見ているのだろう。

 

沙織さんを先頭に犬達が行進している。

吠えもせず、列を乱さず、大きいのも小さいのも歩調を合わせてステージに登ってくるのを見て、驚きの声を上げなかった自分を誉めてあげたい。

動物プロダクションの担当の人からは充分に訓練されているとは聞いていたが、これは訓練済みというよりは、警察犬がそうであるように調教済みという体ではないだろうか。

 

うん、まずは気にするのはよそう。

クールになれ私。

 

たまたま、わんこたちの機嫌がよくて、大人しく従っているのだろう。

健気だね。かわいいね。

客席も統制の効いたわんこたちの振る舞いにざわついている。

 

沙織さんが右手に持つ棒を振ると、わんこたちが一斉に挨拶した。

…もう何も考えるのはよそう。

 

 

***

 

 

「凛先輩、かわいいワンワンショー大成功だったすな」

 

犬達の頑張りもあってショーは大賑わいとなり、コスプレした渋谷さんも、犬達も、観客とのふれあいを楽しんだようだ。

しかし、渋谷さんは茫洋とした表情を浮かべている。

 

「沙織さんはさあ、マタギ?」

 

またぎとは何だろう。

どう答えていいかわからずに小首を傾げていると、渋谷さんは何か自分のなかで納得したのか、握手を求めてきた。

 

「今日はありがとう。沙織さん──、私、負けないから」

「はい?」

 

良く分からないが、渋谷さんは意識が高いシンデレラなのだろうか。

名前の如く凛としていて素晴らしい。

 

 




シルバースピリット特訓後(ボソッ

モバマスでえっちな衣装で未成年にコスプレショーをさせるのはコンプライアンス違反なので、『かわいいワンワン(コスプレ)ショー』になりました。ご査収ください。

奥山さんにやらせたいこと

  • CMのお仕事
  • ライブ出演
  • 動画配信
  • グラビア撮影
  • その他
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