奥山沙織はアイドルになって声を届けたいようです   作:まきにゃん

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耕運機。労働集約型産業では馬力こそが物を言う。

「デュオユニットはまだ奥山さんには早くないですか?」

「むしろ遅いぐらいです」

 

真名子アシスタントが正論で殴られているが、私にはどうすることもできない。

袋小路に追い詰められたような姿勢でソファーに縋る彼女だが、武内Pの圧迫からは逃げられない。

上司がやれと言えば嫌が応でも実現しなければならないのが宮仕えの辛いところだ。やりたくない仕事でも努力はしたが諸事情のため成果を得られなかった(無理です)という過程を示さないと組織としては納得しないし、ふたつの山脈に囲まれた影の国(モルドール)の闇を貫く巨大な目は、君は能力があるはずだがどうしたのかと譴責するだろう。

私はアイドルで良かった。笑顔で低みの見物をさせて頂く。

 

「シンデレラガールズは冬フェスに向けて動きはじめています」

 

フェス。

 

フェスティバル。祭り。祝祭。

346プロダクションのアイドル事業部各企画が合同で行うアイドルイベントの名称であり、多数の観客を迎えて催される346アイドルの大規模交流会だ。

シンデレラプロジェクトにおいてはレッスンの成果が試される重要な場として位置づけがなされており、所属のアイドルは夏冬年2回のフェスでガラスの靴で踊るための存在。

私の場合はデビューがサマーフェスの後であったため、冬フェス、正式な名称は『シンデレラの舞踏会』が初のフェス参加となる。

 

「冬フェスでは全体曲、ソロ曲、ユニット曲などでシンデレラは5から7曲程度演じて頂きますが、奥山さんはソロ曲含めて3曲。少し寂しい」

「じゃあソロを追加すればいいじゃないですか」

「新ユニットを結成して1曲。これは譲れません」

 

ユニットで歌えるなんて嬉しいと表明すると、真名子アシが非難の視線を浴びせてきた。

裏切り者と呼ぶなら甘んじて受けよう。

新規開業の個人事業主(アイドル)は仕事は選べないのだ。

 

「フェスでソロ2曲というのはセットリストの都合上難しい。シンデレラ同期デュオで追加1曲というのが私の結論です」

 

マネージメント計画も尊重して選択肢は与えると武内Pは最大限の譲歩を出してきたので、もう逃げられないぞ真名子八重。

無条件降伏をするよりは余力を残して停戦交渉することを推奨したい。

 

「解りたくないけどわかりました」

「現状、奥山さんと同じく出番に余裕のあるアイドルですが、リストを用意してあります」

 

千川さんから私達に渡される資料には幾人かのアイドルのプロフィールが載っているがその数は多くない。斜め読みしてみると、私と同じく後半デビューのアイドルの中からピックアップされているのが判る。育成状況と実績に鑑みということであろう。

前半デビュー組はユニット活動も馴染んているだろうから割り込むのも難しい。

 

「2人で相談してこの中から選んでください」

 

武内Pの最後通牒である。

アイドルになっても遠足のバスの隣席決めの気分を味わうとは、なんと人生とは驚きに満ち溢れていることだろう。

 

 

***

 

 

「選んでけれってもな」

 

資料をふたりして覗き込むが、選べと言われてそう簡単に選べるものでもない。

リストには4人載っている。

 

まずはクラリス。

アイドルで稼いでお世話になった教会を立て直すという使命に燃える修道女。幼いころから宗教音楽に親しんできた経験を活かしてシンデレラのなかでは抜群に歌唱能力を発揮する『歌うお姉さん』だ。

おはぎを作って配ったときにはひとりで3つ感謝しながら美味しそうに食べてくれたのが印象深い。

 

2人目は瀬名詩織。

主に雑誌などでのグラビア仕事の多いビジュアル特化アイドル。沖縄県出身の19歳。

同い年とは思えない大人の色香に私も嬉しい。あと、プロフィールにある数値は間違いではないだろうか。何がとは言わないが溢れそうだ。支えて差し上げたい。

 

次は若林智香。

ダンスパフォーマンスに優れたシンデレラで、よく他のアイドルのバックダンサーとしてイベントに呼ばれるのは隣の芝生とはいえ羨ましい限りだ。チアガールの経験のせいか分からないがコミュニケーション能力のお化け。誰とでも仲良くなれる。私にも親しくしてくれる良い子。

 

リストの最後は水野翠。

腰まで届く長く綺麗な髪が特徴的なビジュアル特化型アイドルかと思いきや何をやらせても平均的にこなせる万能型。しかし、舞台やバラエティー番組への出演が最も適正があるという不思議な人。レッスンではひたむきな真面目さで取り組む姿勢が素晴らしい。あと、お酢は飲み物ではありません。水分を摂ってください。

 

「冬フェスだけの即席ユニットですから誰を選んでもいいとおもいますよぉ」

 

真名子さんの機嫌はまだ直らない。

口調まであやしくなっているね。

 

「一晩だけの関係ですから奥山さんは気兼ねなくお相手とフェスを楽しんでいて構わないです。若林さんなんかよく絡んでるから組みやすいんじゃないですか?歌でアピールするならクラリスさんを選ぶのも良いですし、瀬名さんも水野さんも選択肢としてはアリでしょう」

 

完全に拗ねておられる。

どうか真名子アシスタント様のお力を貸してください。

私には選べません。お願いします。

 

「しかたがないですねぇ。でも、後から嫌だって言われても取り合いませんからね」

 

勿論、そんなことは致しません。

八重様の仰ることにはこの奥山沙織、喜んで従いましょう。

 

 




さて、ここで読者が選ぶ冬フェス限定ユニット投票です。
投票数が少ないと参考にならないのでぜひ投票お願いします。

なお、投票の結果待ちで次のお話の投下が滞るため、週末まで更新なしで挿絵お絵かきしたり細々としたことやろうかと思います。

0416追記
投票締め切りました。

冬フェス限定ユニットの相手は誰にする?

  • クラリス
  • 瀬名詩織
  • 若林智香
  • 水野翠
  • ソロじゃなきゃ嫌!
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