奥山沙織はアイドルになって声を届けたいようです   作:まきにゃん

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コンカフェじゃないカフェでアイドルがメイド服でウエイトレスしてると最高ですよね。
瑞樹さんはまずそのフレンチメイドから着替えてどうぞ。


●間断潅水。

346プロダクションに併設されているカフェテリアは、アイドル事業部の屋舎という名の城が間近に望める一等地に建ち、時間に余裕のある社員の憩いの場として親しまれている。お茶を一服は勿論であるが重めの軽食も扱っており、一般にも開放されている時間帯には近隣から栄養補給に訪れる勤め人も少なくない。

少々お値段が高めの店ではあるが、それでもなお、利用を躊躇う客はいない。

心身を削って働く者達にとって風光明媚な景色を楽しみながら喫茶するのは資本主義に差し出した人生を取り戻す機会だ。

 

「今日からお世話になります奥山沙織です」

「フロアリーダーの安部菜々です。菜々、って呼んでくださいね。奥山さんのこと、沙織ちゃんって呼んでいいかな?」

「はい、菜々先輩。よろしくお願いします」

 

菜々さんはアイドル(ウサミン)をしながらカフェで働く17歳。

この歳で職長になるのは大したものであると感心すると、以前コンカフェで働いていた経験を活かしてとのこと、それでもなおアイドルとの2足の草鞋を履くのは簡単ではないはず。

ぜひ参考にさせてください。

 

「でも大変ですよ、お仕事入った後にシフト終わるまで一生懸命働いて、それから電車に乗って帰るとですね、目蓋が凄く重くなるんです。この間も乗り過ごしちゃって酷いことになりました。できればアイドルのお仕事だけでご飯食べられるようになりたいです」

 

働けど働けど暮らし楽にならざり。

頑張れ、負けるなウサミン。

 

【挿絵表示】

 

***

 

 

更衣室に案内されて制服を渡される。

長袖裾長の黒いワンピースにエプロンは素早く簡単に着ることができ、古くから仕事着として採用されてきたのも納得だ。

髪は長いからとお団子にしてエプロンとお揃いの生地で作られたシニヨンカバーを被り、靴下とローファーを履けばあっという間に英国風メイドの出来上がりである。

 

「メイド服を身に着けると、アイドル衣装を着た時とはまた違った意味で気が引き締まりますね」

「そうなんですか?」

「沙織ちゃんもすぐに体験しますよ。なんって言ったらいいんでしょうね、ステージ衣装だと飛んだり跳ねたりしても優しく体を包んでくれるんですけど、メイド服はお客さまの前で粗相しないように緊張してしまうというかなんというか、そういう感じになります」

 

菜々さんを見る。

 

背丈が低いが、胸元の布地はボタンに引っ張られて苦悶の表情を浮かべているし、腰回りも豊かなラインの主張が激しい。

吊るしの既製品であるのなら、単純にサイズが合っていないのではないだろうか。

センシティブな問題なので後日にでもお店の偉い人にそれとなく伝えておこう。

 

「フロアに出る前に接客用語とか、歩き方とか配膳の練習とかやりましょうか。沙織ちゃんはアルバイトの経験はあります?」

「はい、高校を卒業してから資金を貯める目的で食堂で働いていました」

「即戦力じゃないですかー」

 

教えられるのは、コンカフェのように特殊なご挨拶(いらっしゃいませ御主人様)もなければ過剰なサービス(ケチャップでお絵かき)もない、実にオーソドックスな接客だ。

大衆向けのファストフードチェーンのように元気で明るく大車輪で働くのは求められていない。控えめな笑顔に声がけ。静かに丁寧に給仕。ゆっくりと綺麗な移動を心がけるぐらいだ。

 

「お客様に『アイドルがメイド姿で働いている』のを見て楽しんでもらうのもこのお店のコンセプトのひとつですからね。実際、そういう目的の常連さんもいますし」

 

成程、元々はプロダクション社員の福利厚生を目的として始まったカフェテリアと話には聞いていたが、一般開放もされているのはそういうことか。

特別な場所で特別な時間を。346プロダクションは最高の体験をお客様に約束します。

値段がお高めなお店はそれ相応の理由があるということを否応にも理解させられる。

 

「練習はこのぐらいにしてフロアで菜々と一緒にお給仕しましょうか」

 

初出勤、頑張ります。

 

 

***

 

 

「つ、疲れただす」

「沙織ちゃん、お水持ってきたから飲んで」

「どうもおーぎにです菜々先輩」

 

繁忙時を含めて4時間ほど働くと体が悲鳴を上げてしまった。

上京して新しい環境での生活でトレーニングができていないところに肉体労働。注文を伺い給仕をする軽作業。美しい所作を意識して身体を動かすのは緊張の連続だ、ランニングよりも運動負荷が大きいのではないかと錯覚してしまう。

 

ああ、水が美味い。

 

「訛りが出るほどお疲れですか。湿布要ります?」

 

菜々さんが湿布を差し出してくる。

精神的なものですからどうぞお構いなく。

そのうち復活しますので。

 

「コンプレッションタイツとかサポーター着けると良いですよ。こういう格好ですから見えませんので、菜々は肘と膝にはサポーター、腰にはコルセットで完全防御です。キャハッ♡」

「すげえ体に気を遣ってますね」

「菜々はウサミン星のプリンセスのウサミン、ファンの前で下手なパフォーマンスなんかできませんから、できる工夫はしていかないとです」

 

白鳥は水面下で優雅に藻がくと言うが、兎の場合はどう表現すれば良いのだろう。

見習いたくなるプロ意識の高い先輩だ。

 

「初出勤おめでとうアンドお疲れさまということで、菜々がパフェ奢っちゃいます。このお店、とびきり美味しいパフェを作るパティスリーメイドの子がいるんですよ」

 

 




槙原志保「労働の後のパフェはノーカウントです(迫真」

0416追記
菜々先輩

登場させたいアイドル

  • 奥山沙織とユニットを組んだアイドル
  • コミュやデレ劇で接点があったアイドル
  • オリジナルキャラのアイドルや候補生
  • 千川ちひろをアイドルに
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