ポケットモンスター 始まりの合図   作:ウミガメ2号

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最近やっとZAプレイしまして、やったら書きたくなりました。なので続きを少し書いていこうと思います。また見て頂けたら幸いです。


第2章
1話 旅立ちの船


 季節はまだ春。初々しい新入生が学園の門を潜る季節に、少女リコの旅は始まった。

 学園生活を送っているなか、入学して最初の大型連休がまさに始まろうとする日の事だった。

 何故だか理由もわからず、不審な者たちから襲われる羽目になったリコは学園で出会った大切な人と一緒に旅へ出ることになったのだ。

 それはあまりに突然の出来事だったが、不思議とリコは不安がなかった。大切な人の胸に抱かれながら、いつかこの人と旅をするのだと、どこか信じていたから。

 パルデアからはるばる遠く離れたセキエイ学園に入学し1ヶ月。たった1ヶ月の間に、リコは沢山の大切なものを得ていた。友人、パートナー。

 それから――。

 顔を見上げる。そこには、一緒に旅をすることになった人。

 学園で出会った、先輩。トキワ。

 初恋の人だった。

 

「見えてきたぞ」

「……あれって?」

 

 トキワのポケモン、トドロクツキの背に乗り空を飛んでいると、大きな飛空艇が雲の間から姿を現してきた。

 言葉から察するに、これがひとまずの目的地ということだろう。

 トドロクツキの背を1つ叩くと、理解したように減速しながら船に近づく。

 リコたちが近づくと、着陸しろという様に船の羽が折りたたまれてバトルコートが組まれた。

 

「安心しろ、あの船の奴らは全員俺の知り合いだ」

「そうなんですか?」

 

 その一言に安心する。信頼に足る人たちがいるらしい。

 トドロクツキはゆっくりとバトルコートに着陸し、その翼を畳んだ。

 トキワはお礼を一言言い、頭を撫でながらボールに戻す。

 戻る直前どこか嬉しそうな顔をしたトドロクツキが印象的だった。

 

「あれからトドロクツキにもちゃんと話しかけることにしてな、前より認めてもらえたらしい」

「先輩」

「お前のおかげだ。また一歩こいつらに歩み寄れた」

「そんなの、先輩が頑張ったからですよ?」

「その勇気はお前からもらった。だから感謝してる」

 

 たった数日前より大人びた表情のトキワに、リコも口元に笑みがこぼれた。

 リコとトキワが降り立ち少しすると、船の扉から二人の男女が出てくるのが見えた。

 彼らが船員だろう。一人はがっしりとした体格をした大柄の男性、もう一人はピンク色の髪をした小柄な女性だ。

 

「やぁ! 久しぶりだな、トキワ! でかくなったか」

「久しぶりだね……そっちのあなたがリコね?」

「そ、そうですけど。どうして私の名前を」

 

 二人から話しかけられ、リコは少し戸惑いながら答えた。

 その様子に女性はこめかみに手を当てながらため息を吐く。

 

「まさか、フリードから何も聞いてないの?」

「フリード?」

「リザードンに乗ってた人だ」

「あの人ですか」

 

 今度は戸惑ったように男性が言う。

 

「じゃあ、どうやってここに? 話も聞かずにか?」

「いや、厄介ごとだ。リコを狙ってる奴らが他にもきた」

「なんだって? それなら逃げる準備をしていた方がいいか」

 

 良いのだろうか。まだフリードという人が戦っているのではないか。そんな考えが顔に出ていたのか、男性が笑いながら返事をする。

 

「心配ない。アイツとリザードンは強いからな! 少し経てば追いついてくるさ!」

 

 信頼の証とでも言うように胸を張りながら言う。

 

「そんなことより自己紹介だ! 事情も分からず見知らぬ奴と行動するのも不安だろう……マードックだ! よろしくな」

「モリーだよ。悪かったね、もう少し段取り良くやれたら良かったんだけどね」

 

 二人が名乗り、先ほどよりも雰囲気が柔らかくなったのを感じた。

 事情も把握していないリコを気遣って、努めて誠意を見せてくれたのかもしれない。

 リコも気が楽になって名乗る。話すきっかけができたのは有難かった。

 

「リコです。あの、言った通り事情は分かってないですけど、よろしくお願いします」

「俺も流石に突然過ぎた、すまん」

「言いっこなしだ! さあ、フリードが戻ったら全力でここを離れるぞ!」

「アイツが戻るまで二人は船内にいて。こっちの事は任せて一度落ち着いてきなよ」

 

 マードックとモリ―が言うと、二人は慌ただしく動き始めたり、スマホロトムで連絡を取り出した。

 連携はしっかりしているようで、リコが口を挟む余地はなさそうだった。

 リコはトキワとともに言われた通りに船内へ入ることにした。入る前に船の前方に雷雲が見える。旅の始まりは晴天が良かったなと、何となく思った。

 

 

 *

 

 

 船内ではトキワの後をついて回る。

 中の構造を把握しているようで、足取りに迷いはない。初めて飛空艇に乗ったこともあり、目に入る全てが新鮮だ。落ち着いた状況ならゆっくり探検でもしてみたいくらいだった。

 船内を更に進むと、扉が多く見える通路に出る。詳しくはないが、船員用の個室に見えた。

 その中の一室にトキワは開けて中に入った。中はやはり船員用の個室みたいで寮の部屋と同じように簡易なベッドやイス、収納が準備されていた。

 

「ここなら少し落ち着けるな。……少し休憩だ。疲れただろ」

「え、大丈夫ですよ。先輩もいてくれるし」

「いいから、座れ。あいつらに襲われてたんだろうが」

 

 言われるがままリコは一先ずベッドに腰かけると、急に力が抜けた。

 どっと疲れが押し寄せてきたのだ。今になって膝が笑いだし、手も急に冷たくなった。心臓が荒く鼓動を打つのに身体が冷たかった。

 勢いに任せて強がっていたが、実を言うと何度ももうダメかもしれないと思ったのだ。

 怖かった。

 

「……よく頑張った」

「せん……ぱい」

 

 冷たくなったリコの手をトキワが包んだ。

 自分が冷たいからなのか、やけに温かく感じる。

 早い鼓動は徐々に収まっていく。トキワから熱を受けとったように身体の震えが収まった。

 

「頭もなででください」

「ああ」

「あと、手だけじゃなく……ぎゅーってしてもらえると」

「それは……勘弁しろ」

 

 残念。だがしばらく頭を撫でられ、手を包まれている内に恐怖が胸の内から出ていった。

 大きく深呼吸を1つして、立ち上がる。もう大丈夫ですと足に力を入れた。

 トキワも頷くと、スマホに連絡が入った。

 

「ああ、こっちは大丈夫だ。そっちは? ……博士が戻ったか、よかった」

 

 全部は聞こえないが、あのフリードという人が無事戻った様だった。あとはここを急いで離れるといった方針だったはずだ。

 

「……ああ、なるほど無茶するってことか。わかった、すぐそっちに行く」

「どうなるんですか? 無茶って?」

「ああ、お前を襲った奴らが追いかけてきた。それを振り切る為に嵐へ突っ込むみたいだな」

「……え?」

「まあ、旅してると訳分からんことする羽目になるってことだ」

 

 早いうちに知れて良かったなと軽くトキワが言う。

 なるほど、もう少し旅に素敵なイメージを持っていたが、理想と現実はしっかり違うらしい。

 

「不安か?」

「不安ですよ……けど、私も行きます。何かやれる事があるなら」

「そうか……なら付いてこい」

 

 離れるつもりは無いので、その心配は大丈夫だ。

 

 

 *

 

 

「おっ、来てくれたか! 早速だが力を貸してくれないか」

「分かってる。どうすれば良い、博士」

「……うーん、その博士ってのやめないか? 痒くなっちまう。これから旅の仲間になるんだから、フリードで良い」

「……なら、フリード……か。慣れない」

「なに、これから長い付き合いだろ」

 

 呼び出されたのは操舵室。舵を取りながら話しかけてくるのは学園で見た色黒の青年だった。

 フリードと呼ばれるこの男性が、いわゆる船長という役割だろうか。イメージする船長からは随分若い。

 フリードは戦闘してきたにも関わらず怪我一つないようで、クルーのマードックが言っていたようにポケモンバトルの腕は良いのだろう。

 

「あと少しで嵐に入る。そこまで入ればあいつ等も追ってはこないだろう。だが寸前で追いつかれるかもしれないんだ」

「俺の役目は?」

「バトルコートは展開したままだ。そこで迎撃しながら時間稼ぎを頼みたい。俺は操縦で手を離せない」

「わかった、リコはここに……」

「行きますよ」

 

 間髪入れず、話に入る。実際ここにいた方が安全なのだろうが、危険な追手に一人で向かわせたくはなかった。

 相手は一人じゃないのだ。トキワ一人で行かせたくない。

 

「おお、話で聞いてたよりグイグイな子じゃないか! いいねぇ、行ってこい!」

「博士。この子があいつらの狙いだろう」

「心配ない。お前がついてるなら、そこが一番安全だ」

「……ったく、そういう所は変わらない。リコ、絶対離れるな」

「はい!」

 

 リコとトキワはしっかりとした足取りで操舵室を出て行った。

 本当に聞いていた子とは違う。人見知り、引っ込み思案。そんな子を守ってほしいなんて言われていたが、あの様子を見るに弱い子には見えない。

 あの子は本気でトキワも守る気でいる。フリードはそういった細かな機微を感じ取ることには自信がある方だった。

 まだ故郷を離れて1ヶ月程度のはずだが、彼女が成長するきっかけに恵まれたらしい。

 

「それに……変わったのは彼女だけじゃないみたいだな。なあキャップ!」

 

 ぴか!――。

 舵の前方の席に向けてフリードが声を掛けると、背もたれがくるりとまわり一匹のポケモンが現れる。

 キャップの愛称にぴったりなキャプテンハットを被ったピカチュウが同意するように笑った。

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