ポケットモンスター 始まりの合図   作:ウミガメ2号

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6話 ロイの一歩目

 空から降り注ぐ光は徐々に形を成し、まるで隕石の如く地上に落ちた。

 一つ落ちると地響きが鳴り、岩や木々が砕け、折れる音が鳴り響く。ポケモン達の悲鳴とリコ達の悲鳴が重なった。

 誰もが足を竦ませるなか、一瞬早く立ち直ったトキワが呆然とするロイを抱きかかえリコの側に駆け寄った。

 

「無事か!」

「は、はい! この光のおかげで私は何とも」

「お前達はここにいろ、この光の壁があれば比較的安全みたいだ。キバ! リコ達を頼む」

 

 イダイナキバをボールからだしリコ達の護衛を任せる。トキワの手持ちの中で一番防御力が高い。この光の壁がなくなっても盾となって守ってくれる存在だ。出来ることならキバを出したくなかったがそんなことも言ってられなかった。

 

「俺は平気だ」

 

 トキワのペンダントもどういうわけか光を放っている。リコと同じようにトキワを守っているようだった。

 

「この光の事は放っておけ。無事にここを乗り切ることだけ考えろ!」

 

 それだけ言うとヘルガーとともに駆けていく。リコも追いかけようとしたがキバが長い鼻で制した。

 

「駄目、私も皆を守る! ロイもしっかりしなさい!」

「え、ああ。ごめん、つい頭がこんがらがって」

「キバも着いてきて!」

 

 リコの強い意志がこもった瞳にキバはやれやれだと、人間くさいため息をついて頷いた。

 

 

 

 

 トキワの当てが多少外れた。光の壁は次第に小さくなっており、あまり持たないだろうと予感させる。一時的なモノらしい。効果はそれほど長く無いようだ。舌打ちを一つしてトキワはハバタクカミをボールから出し、直ぐに命じた。

 

「船を守ってくれ。後のことは考えなくていい、全力だ!」

 

 お前はどうするんだと瞳で返される。

 フリードとリザードンはどうにか対処しているようだ。オリオとマードックもポケモンを戻して急いで船に戻っている。あっちは大丈夫みたいだ。

 トキワとヘルガーはりゅうせいぐんを必死で避けているエクスプローラーズに目をやった。

 

「くそったれ!」

 

 ヘルガーは命じられるより前に動き出し、彼らに命中しそうなりゅうせいぐんに火炎放射を放った。

 

「お、お前。なぜ」

「死にたいのか? 目の前で死なれるのは本気でごめんだ」

「あ、ありがとう」

 

 次々と落ちてくるりゅうせいぐんはその名の通り星々が一気に雪崩れ込んでくる様だった。

 

「数が……多すぎるだろうが!」

「あぶない!」

 

 ヘルガー一匹では対処が難しい場面だった。ヘルガーの火炎放射で破壊しきれなかった星の欠片がトキワめがけて落ちてくる。

 救ったのは意外にもエクスプローラーズのサイドン使いだった。間一髪トキワの身体を思いっきり引っ張り後ろに倒れ込む。一瞬前にトキワのいた場所にはクレーターが出来ていた。

 

「助かった。これで相子だ」

「……ジルだ」

「あ?」

「名前だ。さっきはこっちも助けられた」

「……理由になってねぇがな。ありがとよ」

 

 ジルのサイドンはニャオハから食らった眠り粉からの睡眠から目覚めていた。トレーナーを守ろうと仁王立ちしている。

 トキワとヘルガーはもう一人のゴルダック使いの前に立ち、守った。しかし、また降ってくる。今度のはさっきのより大きかった。

 

「先輩!」

「ったく言うこと聞かねぇやつだよ!」

 

 必死に走ってきたリコは勢いのままトキワの胸に飛び込んだ。ロイもキバも一緒だった。

 リコのペンダントが放つ光の壁がりゅうせいぐんを阻んでいくのが見える。トキワの物より一段と光が強かった。

 数分間の星の雨をやり過ごした頃には、浜辺はクレーターだらけになっていた。

 レックウザは、いつの間にか姿を消していた。そちらに意識を割く余裕がなかったのだ。伝説のポケモンという凄まじさを感じさせられた。

 

 

「……それで、まだやるか?」

「そんな力は残ってないわよ」

「生きてるだけで御の字だぜ」

 

 エクスプローラーズの二人は荒い息を整えながらエアームドを出す。移動するための飛行ポケモンだ。

 フリードとアメジオの戦いも一段落付いたようだった。アメジオの手を挙げ合図を出している。

 

「撤退させてもらう」

「次は必ずそのペンダントを頂こう」

「……おい」

「なんだ? 追ってくるな、という事なら聞けない」

「違う。……助かった。礼を言う」

「……ふん、お互い様だ」

 

 その言葉を最後にエアームドに乗って去って行く。話に聞いていた悪評とはなんだかズレている。人の物を無理矢理に奪うという意味では間違いなく悪人なのだろうが、人としての大事な一線は守っているように見える。

 

「変なの。悪人なんでしょ、あの人達」

「ああ、間違いなくそうだ」

「けど、そんなに悪い人たちなんでしょうか」

「今は考えても答えは出ないだろうさ。……疲れた。まさかあんなのが出て来るとは」

 

 トキワの元へ出していたポケモン達が集まってくる。キバは流石と言うべきか、それ程消耗していない様子だがヘルガーとハバタクカミは息を切らしている。大分疲労している様だ。動き回っていたのだから当然だが。

 全員を労ってからボールに戻し、やっと戦いが終わったことに安堵のため息をついた。

 

 

 

 

 エクスプローラーズの襲撃から数時間経ち、空はオレンジに染まりだした頃に船の修理は終わった。

 島のポケモン達にも手伝ってもらったおかげで、修理が予想より早く終わったのだ。彼らもリコ達が守ってくれた事を理解したのかも知れない。

 今夜は皆が疲れていたので、明日の朝に改めて出発することになった。

 島民の好意で食事や入浴を済ませ、船のメンバーは部屋に戻っている。リコは髪を梳かしながらベッドに座り込んでいた。

 

「私と先輩のペンダントにロイのボール。アレってなんだか共鳴してましたよね」

「どう見ても関係性ありそうな感じで光ったな」

 

 リコの隣にはトキワが座っていた。今座っているのはリコのベッドではなくトキワのベッドだった。

 リコは自分の髪を綺麗に梳かし終えると、次にトキワの髪を梳かし始めた。

 

「やめろっての」

「綺麗なのに」

「いらない」

「させて下さいよ」

 

 いつも通りトキワに対しては強情なリコの言葉に早々に諦めをつけたようで、トキワは抵抗をやめた。

 

「これが何であれ、親父と母さんから貰った大事なお守りだ。手放すことは、出来ればしたくないな」

「私も」

「今回は危なかった。次はもっとちゃんと守ってやる」

「それも。私も、ですよ」

「生意気だな」

「先輩にだけ」

「寝るぞ……お前はあっち」

「はーい」

 

 返事をせずにトキワは電気を消して布団をかぶって横になった。それを見てリコも横になる。

 すぐに眠気がやってきて、リコの意識はゆっくりと沈ませた。

 

 

 朝になり、デッキにでると何故かロイも船にいた。横にはホゲータも一緒にいる。

 訳を聞く前にロイは嬉しそうにモンスターボールをリコに見せてくる。よく見る赤と白の普通のボールだ。

 その様子を見てホゲータも嬉しそうに鳴き声を上げた。つまり、そういうことだろう。

 

「パートナーになったんだね」

「うん! 昨日は夜遅くまでホゲータと一緒にいてさ、僕のパートナーになってくれるって頷いてくれたんだ」

「おめでとう。それじゃあ……ホゲータはロイと一緒にいるからお別れになっちゃうのかな」

「ううん。僕も一緒に旅に着いていきたいんだ。爺ちゃんには許して貰った」

 

 あのお爺さんは厳しい言葉の裏にロイを大切に思っている様に見えた。きっと心配だろうが、それと同じくらいロイのことを信じているのだろう。

 きっといつも通りぶっきらぼうに言ったのが想像できる。

 

「こっちは一大決心して言ったのに。……ああ、行ってこい。だけだったんだよ。緊張して損した」

「ふふ、やっぱりだ」

 

 先に起きていたフリードとトキワも姿を見せた。ロイが着いてくることは既に知っていたらしい。ちなみにトキワは反対したらしい。

 昨日の様にエクスプローラーズに襲われるかも知れないからだ。そんな危険にさらす事はしたくなかったようだ。

 

「その時は、また俺たちが守ってやれば良いさ。旅ってのは理屈だけじゃ出来ないもんだろ」

 

 フリードが言う。確かに旅をすることはリスクを負うことである。今の時代、旅なんてしなくても生きていける。安全な町でポケモンと仲良く生きることだって出来るのだ。

 

「旅をするのは、何か求めてしまう時だ。不便とか危険とか理不尽とか、それを超えて心が動いちまうときがある。そういうときに人は旅するんじゃないか」

「……そうだな。だから俺も旅したんだった」

「そんときはどんな目的で旅してたの?」

 

 興味を持ったようにロイが聞いた。リコは聞かせて貰ったことがあるので知っていた。

 

「あー、なんつうか。……宝探しだよ」

「え、宝?」

 

 きょとんとした目になるロイを見てトキワは照れ隠しする様に頭を掻いた。

 船の最終点検を終えたことをオリオから聞くと、フリードは走って操舵室へ向かい舵を握った。徐々に機体が持ち上がりライジングボルテッカーズの旗が揺れた。

 飛び立つと島の全容が上から見える。浜辺が見える丘上に村長がいるのが見えた。

 ロイもすぐに祖父の姿を見付けて声を上げる。遠くなりよく見えなかったが、ロイには見えた気がした。いつもの仏頂面が崩れて笑ってる顔だった。

 ロイは大きな声で届くように言った。

 いってきます!__。

 大きく揺れる旗と同じくらい大きく見えるよう目一杯手を振った。

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