しかし、黒鬼神とリンクしている黒い心臓を持った尼子勝巳とその中にいる北条獅子門は消えなかった。
動けぬ獅子門の代わりに小次郎は武士団を回った後、武蔵はいきなり真面目な表情をして
「俺はやりたいことがあるんだ」
「え?」
「俺は日ノ本の外に出る」
といって語りだした。
”八尋君!元気かい?”
一通の連絡が入る。勝巳の心臓からだ。心音が脳まで響き渡る。
”「黒い心臓」がなぜまだ壊れないのか…気になってる頃だろう?”
勝巳の目に写っていたのは腰に三本の剣を携え、口元を布で覆った人物と、背中に長刀をぶら下げ、口に金属のマスクをした人物だった
”お前さんの兄弟の俺達が理由を考えてやったぜ!”
黒犬の生き残りだった。
”それは…黒鬼神がまだ生きてるからなんじゃないか?ってことなんだ。”
”例えばほら、巨大な蜘蛛を想像してみてくれよ。日ノ本に降臨していたのはその足の一本にすぎなかった。と考えれば…”
まさか…
”本体が健在でも不自然じゃないだろう?”
”俺達はその可能性に懸けて、西の大陸に渡ることにしたんだ!もしかしたらまた戦う日が来るかもな〜”
”行くぞ静六”
そして、黒犬の5番と6番…犬山五万里と犬川静六は去っていった。
「…ヤバいじゃねーか」
「あぁ鬼が生きてる可能性は高そうだ…俺の中の黒曜の女神の力も残ったまんまだしな」
つぐみと武蔵はそれに参加するつもりらしい。俺の希望を聞いてから話すつもりだったらしい。
しかし、俺には縁談が…
2週間悩み通し、俺は海伐隊出港の船に乗った。
つぐみが
「お手を拝借ゥ〜」
「ヒュ〜っ鐘巻武士団!」
船出を祝う檄である。
3年後、俺は戻って来る。そして、姫様と結婚して、武蔵と語らって…
小次郎の目は輝いていた。
そんな希望は捨てていきなさい。これから綴られる物語は決して生ぬるいものではないのだから。
船に揺られ、何日経ったであろうか?
水平線上が徐々に緑や茶色の盛り上がりを見せた。
「やっと、陸が見えたぞー!」
その報を受け取った瞬間、隊士たちの顔がパッと晴れた
「やっと、船酔いから解放される〜」
「今まで内陸の戦いばっかで船なんて乗ったことなかったもんな〜」
船首に立って、先ほどの報告をいれた男は島津秋弘、海伐隊副隊長にして上杉系の軍の統括を任されている。
「さっさと、下船の準備をしろ」
顔をしかめながら、テキパキと命令をしていく秋弘には、昔にはなかった協調性が垣間見える。
「武蔵、お前もだ」
疲れた顔で武蔵に木箱を持たすと、また秋弘は走り去ってしまった。
「いよいよ上陸だってよ小次郎!」
二カッと俺に笑いかけると、武蔵は木箱を運びに倉庫に行った。
「さて、俺も働くかな…」
腰を上げた刹那、船がいきなり大きく揺れた。
船の甲板まで駆け上がり、目の前を見ると、そこには口が大きく避けた鬼がいた。
”口裂け鬼!”
数は10と少しだった。
”鬼鉄刀 焔魔大太刀!”
黒い鎌は赤く光り、一直線に角をめがけて飛んでいく
”カキンッ”
武蔵の身体は大きく後退した。
”焔魔大太刀が弾かれた!?”
口裂け鬼の口が大きく光った。
「クッ」
胸の前に鎌を構えたが、鬼は見向きもせず、船を狙った。
「なっ」
バババと鬼は光線を放つ。
「10連鎖!」
船にいた武士団が、連鎖した刀気をぶつける。
”ジリジリジリ”
両者は拮抗し、周りには熱が発せられる。
「この子鬼!普通ではないぞ!」
「これが、あと何匹いるんだ?」
「亜種か?獅子門様がいてくれたら」
船員たちはたじろぎ、パニックに陥っている
”とりあえず、倒さないと”
再び赤い気を纏ったが、それはさっきのものとは違い、異質であった。
”赤の女神 紅蓮刀気!”
レーザー銃のような赤い光線が発散し、鬼の角を破壊した。
しかし、武蔵は顔をしかめた。
「これでやっと子鬼一匹かよ」
以前状況は変わらない。複数の鬼が船を取り囲み、攻撃を開始している。
「もっと人員を集めろ!」
「赤刀の者は前へ、青刀は後ろで刀気を繋ぎ続けろ!」
船内は慌ただしく人員が往来し、その中には、小次郎の姿もあった。
「小次郎!」
「武蔵!」
余計な言葉もかわさず、両者は刀気を繋いだ。
”黒刀連鎖術 朱黒獅子閃”
うさぎのように飛び回り、赤き閃光は角を折る。
1本、2本、3本…
「最後だ!」
叫びとともに赤きうさぎは大きく輝き、複数の口裂け鬼を一掃した。
「オォォォォォォオォォオォオ」
舞い散る鬼鉄の中、船員は歓声をあげ、勝利を喜んだ。
「やったな、武蔵!」
「小次郎こそ!」
武蔵は甲板に降り立って小次郎と拳をコツンとぶつけた。
”ドォオォォン!”
再び船が揺れた。何事かと後ろを振り向くと、船から火が立ち上っていた。
チラッと周囲を見ると、口裂け鬼がいた。
「テメェ!」
武蔵は黄色に輝き、一瞬でその鬼との間合いを詰めた。
”黄の女神 黄金刀気!”
角を思い切り殴り、それは粉々に砕け散った。
「ギャオオォオ」
後ろを振り向くと、船員は刀に手をかけ、戦闘態勢であった。
そうでない船員も、先ほどの火の消火や水のかきあげ、船底の修理に回っていた。
「周りにはもういねぇか?」
尋ねると、小次郎は周りを見渡しながら答えた。
「見る限りはな。だけど、いつ出てくるかわからねぇ」
”ドォオン”
”ドドドドドォン”
轟音とともに船体に穴が空いた。
「なんでだ?今度は油断してないのに!」
「上だよ、お前さん達!」
その言葉とともにサッと上を見る。
「なんで言っちまうんだよ、静六!」
「まぁまぁ、落ち着けって。
そこにいたのは黒犬の5番と6番、犬川静六と、犬山五万里だった。
こっちでは初投稿です。
よろしくお願いします。