犬が雷狼竜に転生するのは間違っているだろうか 作:カマクラカスタ
待たせたね!この子に協力してもらってオラリオを変えてもらうよ!
――また、命が終わった。
ジョンとしての人生が終わった。飼い主のアダムはとてもいい人だった。お菓子をいっぱいくれるし、フリスビーで何度も遊んでくれた。
でもやっぱりおじいちゃんになって死ぬのは辛い。遊んでくれたみんなの悲しい匂いと涙が充満するから。それを元気付けてあげられないのが一番悲しいし、辛い。
何回も経験していることだけど、別れはいつも残酷だ。でも出会いは自分次第で幾らでも良くできる。
だから僕は生まれ変わる度思うんだ。僕の使命は限られた時間の中でその人を幸せにできるか、救えるかだって。勿論様々な意味でね。
ただもし次も犬として生まれ変わるなら、もっと色んな人を笑顔にしたいなぁ
▽▽
光が瞼を刺激した瞬間痛みが急にやってきた。やった!これは僕が犬の赤ちゃんに生まれ変わったってことだ。死んでいたら目が痛むとかないからね。
「クゥ〜ン」
久しぶりの痛みで声が出ちゃった。さあ、最初は弱くて目を開けられないから、鼻を頼りにお母さんの乳を吸う所からだ。
「ウゥン?」
鼻を頼りに乳の匂いを探してみたけど、匂いがしない。それにおかしい、辺りが無臭無音だ。
犬として色んな生まれ変わりをしてきたけど、周りに何も無いのは経験したことがない。お母さんが僕が産まれた時に死んでいたらその死臭がするし、大体産まれてくる時は色んな人が立ち会ってるから、音もする。
それに――目も開けられる
「ウゥン!」
その瞬間僕は驚いた。赤ちゃんなのに目を開けられるのもそうだけど、体がトゲトゲでカチカチだった!上手く例えられないけど、ワニみたいな感じ。
赤ちゃんの筈なのに目線もなんだか高い。一番大きい犬ぐらい。
それにワニみたいなのにフサフサだ。その上前世の僕と違って立派な尻尾が生えてる。僕とか他の子もそうだけど、尻尾が無かったら人に思いを伝えづらいからこれは重要なチャームポイントだ。
ただ僕の愛くるしさを受け止める人は見当たらない。そしてお母さんも、こんなことは初めてだ。
「ワン!ワンワンッ!!」
いっぱい吠えてみるけど、誰も来ない。岩場に僕の声が何度も跳ね返るだけ。もう一度吠えてみる。
「ワンワンッ!ワンッ!?」
諦めないで吠えていたら身体がビリッとした。痛くないけど毛は逆立ってソワソワする。近いところで言うと巣に帰ってきた飼い主の匂いを察知して湧き上がるような感じ。
絶賛心待ちにしている飼い主もいないのに、と思っていると、
「フゥン?」
目の前にユラユラと水色に光る何か*1が現れた。若干羽音がするし虫かなと僕は思い至り、食べようかと機を窺っていると光る虫は素早く僕の頭上を疾けた。
すぐに上を向いて目で追うと、虫は僕の背中で止まった。すると体がさっき以上にビリッとして、背中の毛がビリビリと音を立て始める。
これも痛くはない。それに今このビリビリの原因が解った。これは新しい僕が
なんとなくだけど
「ハァハァ」
無意識に舌を出して息を荒らげる。大きく吠えたせいで喉が渇いたんだ。でも水は飼い主がいなくて出てこないから、探しに行こう。
そう思い僕は誰もいないゴツゴツとした荒い道を歩き始めた。
▽▽
岩の隆起した洞窟を僕はトボトボと歩き続けていた。水を探すと共に人も見つけようと鼻を働かせていたけど成果なし。
あとこの体は前脚と尻尾がやけに重くて疲れる。いつもの歩き方をしようとするから駄目なのかも。何となくそう思い重心を前に置いてみる。
「ウンッ!」
かなり楽になった。尻尾の重さと釣り合って丁度いい。ただ顔が地面に密着しそうになるから、砂利が鼻に当たってむず痒い。
「クシュンッ!」
地面に向かって鼻スプラッシュ――命名、12世目飼い主、ハヤト――を僕は思わず放つと飛び散った水飛沫がバチンと音を立てて蒸発した。
スプラッシュが命中した地面が少し焦げ臭い。鼻スプラッシュは人に向けて撃べしとハヤトに言われたけど、これは危険かもしれない。
人前ではビリビリを抑えられるようにしないと。因みに僕は上を向いて明るいモノ――太陽とかを見ると自由にスプラッシュを出せる。僕の隠し芸の一つだ。
楽な歩き方を発見し、僕は徒歩のスピードを上げる。今度は鼻だけじゃなく耳と、嗅ぐ対象を絞って探してみる。警察犬として生きていたこともあったから効率的な探し方は僕のお手の物。
ただ賢い行動をしても褒めてくれる人がいないのは寂しい。賢い事と偉い事をすれば飼い主にいっぱい褒めてもらえてオヤツが貰えるし、他の人にも誉めてもらえる。
だから新しい飼い主には一刻も早く僕を見つけて欲しいし、犬が居なくて寂しいなら早く僕を見つけて欲しい。ギブアンドギブをして沢山撫でてもらいたい。
新しい飼い主に甘やかされる自分の姿を思い浮かべながら僕は地面を駆けていると、スンッと鼻が何かを捉える。
「ウゥ〜〜ン??」
僕に近い匂い。でも少し違うような生物の匂いが縦にも横にも広い洞窟のその奥、横に数箇所空いた空洞から漂ってきた。
「ワン!ワン!」
仲間に出会えた安堵感と高鳴る期待を胸に僕は岩陰に隠れている彼等を呼び寄せる。光のない暗黒の中、見慣れた二本の前脚が一つ、二つと光の元に姿の片鱗を見せる。
獰猛な牙を見せびらかせ、明かりの下に完全に姿を現したのは犬、否、黒い狼の群れだった。
「ワンッ!ワンワン!」
声に応えて出て来てくれた
「ガルルゥッ!」
正面のナメた挑発をする別種、否、敵に黒い狼――ヘルハウンドは怒りを音に乗せ、ジリジリと距離を詰めていく。
一匹が臨戦態勢に入ると、その号令は仲間へと広がり、別種を大きく囲い込むように散布していく。さながら野生の檻が構築されつつあった。
「クゥ〜ン?」
目の前の同胞が何故か怒っていることに僕は首を傾げた。本当に物凄く怒ってる、まだ相手の縄張りに自分のオシッコ掛けた訳じゃないのに。
ただよく考えてみれば相手の態度にも納得出来る。態々群れで来てくれたのに挨拶を譲るだけじゃ傲慢だ。
なら、
「ウゥッ!?」
――ゴロ〜ン、ゴロ〜ン
僕は腹を天に向け、ゴロゴロとその意味を見せつける。これは自分が相手より劣っている、格下だと示す、服従のポーズだ。
相手もこれには赤い目をギョッとさせ度肝を抜かれている。犬として転生を繰り返してきた僕に威張るようなプライドなんてものはない。
変な誤解を生まず事が上手く収まるなら、そんなモノ要らないし、その方がみんなハッピーだ。だから僕は何度でも見せつける。
――ゴロ〜ン、ゴロ〜ン
「グウウゥ⋯」
群れのリーダーであるヘルハウンドは小さく唸り声を上げる。それ音に乗せられたるは『静止』そして狼としての『誇り』
――ゴロ〜ン、ゴロ〜ン
「グゥウウゥウ⋯!」
群れのリーダーとして、そして狼の『誇り』としてヘルハウンドの誇り高きリーダーは――
「グワオォォッ!!」
雑種、それに誇りのない敵とは言えど一族を汚す眼前の不届き者をグチャグチャに引き裂いて殺すことに決めた。
「――ッ!!?」
僕は体を回し、服従のポーズを群れ全体に見せつけ一仕事終えたと満足して立ち上がり、正面を向いたその瞬間、
殺意に塗れた牙が視界を覆い尽くそうとしていた。瞬時に横に跳び僕はその凶牙を避ける。
――なんで襲ってくるの!?
意味が分からない。そんな感情が僕の頭をグルグルと駆け巡る。仲良くしようと思っていただけなのに――
「グワァオォッ!」
「――ッ!!」
仲良くしたいという自分の理想を他所に群れは鋭い捕食者としての眼光を既に僕に向けていた。彼等に挨拶も譲った、服従のポーズもした。なのに僕を仲間と、同胞と認めてくれない。
動揺で思わず僕は視界を落とした刹那――
「ギャンッ!?」
尋常じゃない熱さが胴体を焼いた。白い毛が焼かれ、毛に覆われていた甲殻の薄い皮膜が爛れ、赤身を露にする。足を震わせ痛みに耐えながら、僕はもう一度希望を掛けて、同胞達を見る。
――敵だ
同胞達は何故か分からないが、口元に炎を滾らせ僕を『敵』として排除せんと殺意を向けていた。
――もしかして、最初から?
向けられているのは敵意ではなく膨れ上がった純粋な殺意。何かのトリガーで増幅したのかもしれないが、あれは最初から持ち合わせていたものだ。
――それなら、僕にとっての『敵』なら!
「グワァオォッ!」
萎縮する獲物を前に勝利を確信したヘルハウンドのリーダーはトドメと怨恨を詰め込んだ特大の火球を獲物へと放った。が、
「ウゥンッ?!」
獲物は小さな碧色の光を残し、疾風の如き速さでその位置を大きく変える。火球は宙を燃やしながら壁へと衝突し、焼き跡を残して空回る。
「グゥウウッ!!」
次の瞬間、萎縮していた獲物は先程までの行動が嘘のように体勢を戦闘のものへと変える。
『フェン、我々は二人で
間違い、失態、絶望。覚悟のない人間ならば慟哭することしかできない危局でも、その犬狼はただ主人の言葉に従い続ける。
その言葉は、彼のルーツであり、始まり。
『だから俺が居なくなってもこれだけは覚えていろ。お前に向かってくる『敵』には決して容赦するな。そして狩れ!』
――狩れ、本能のままに!
この時、この瞬間。小さな『無双の狩人』は新たな生を受けて初めて咆哮を上げた。
最近モンハンワイルズが出て、僕のワンダフル・ライフを見て、我が家の犬がオムツからオシッコを漏らし出す光景を見て思い付いた。
めちゃくちゃ難しい。好評なら頑張ります