その頃飛水(ひすい)は、真沢(まざわ)の非人道的な実験を止めるため、話し合うために街中を走り回ってたんだけど、部下の緑の真のデュエルに巻き込まれて、大怪我をしてしまって…
「呪文、《獅子王の遺跡》。多色マナ武装を含めて合計3ブースト。さらに《天災デドダム》でシールドをブレイク!」
割られたシールドが受け止める、はずだったんだけど、デドダムの攻撃の余波が俺に飛んできた。
「ぐぅ…!…ジャシン?君が助けてくれたの?」
ジャシンは何も返さないけど、どうやら余波はジャシンが受け止めたらしい。けど…
「やっぱりクリーチャーと契約させてると半減、いやそれ以上にカットされるか、是非クリーチャーがいない状態でお前と戦いたかったよ」
「これ、どういうことですか…急にデュエルして… …虹村!」
「あぁ、俺がもらった力だ。使えばクリーチャーを使役して、さらに直感的にゲームの舵を取ることができる。更にクリーチャー達の力も大きくなるから、契約していない決闘者と戦ったら1撃だ」
「相手を傷つけるシステム…?そんなの…」
「デュエマは相手がいて初めて成立するゲームなのに、相手を排除することを念頭においたシステムなんておかしい!」
「お前もクリーチャーと契約した以上やろうと思えばやれるんだよ?いないの?気に食わないやつ。俺は沢山いるけど」
「いたとしても、それで傷つけて、その人もその周りの人も悲しむんだから、そんなの、使えって言われても願い下げだ!」
「俺のターン!まず3マナで《邪侵入》!《アビスベル=ジャシン帝》を蘇生!残った2マナで《ハンマ=ダンマ》をアビスラッシュ!デドダムを破壊!!」
「ハンマ=ダンマでシールドをブレイク!」
やっぱりできた、ぶっつけ本番だけど…ハンマの攻撃はシールドのみを直撃し、その余波が虹村に届くことはなかった。
「ありがとう、君はお人よしだね。だから見逃してくださいは通用しないけど」
「お人よしだからじゃない、もう自分の届く範囲で誰も傷つけない、傷つかせないだけだから!」
「僕のターン、《龍風混成 ザーディクリカ》をバトルゾーンに、《ドラゴンズ・サイン》を唱えてザーディクリカ2体目を、2体目の効果で《ナウ・オア・ネバー》を唱えてザーディクリカ3体目をバトルゾーンに、そして最後に唱える呪文は、《お清めシャラップ》。」
俺の墓地が山札に吸い込まれていく。アビスの原動力は墓地、それが奪われるなんて…
「ターン終了時にザーディクリカ効果で《レター=ジェンゲガー》を破壊して、合計3ドロー、ターンエンドだよ」
墓地は《レター=ジェンゲガー》だけで、このターンの攻撃はできないけど、諦めるような状況じゃない、墓地がなくなったら貯め直せばいいだけ!
「《ブルーム=プルーフ》、《深淵の壊炉 マーダン=ロウ》を召喚!ブルームで墓地を1枚増やして、マーダンで相手の手札を見てクリーチャーを捨てさせる。《聖魔連結王 ドルファディロム》を墓地に!ターンエンド!」
(虹村が契約していたクリーチャーが手札にいた、効果知らないから第六感で吹っ飛ばしたけど、多分これで攻めあぐねてくれるはず…ターンが貰えればブルームが墓地に落としてくれた《フォーク=フォック》からアビスラッシュの連鎖をして…!)
「良いねー、君たち。虹村くんはちゃんと最高の戦士の心構えになりつつあるし、夕哉くんは前に聞いていた通りゲームの組み立てが上手いね」
突然謎の男がデュエルフィールドに現れ、俺たちのデュエマを中断した。
「あー、夕哉くん。僕のことは真沢って呼んでくれたらいいよ、流石は黒井夕花ちゃんのお兄さんだ」
「…は?」
俺は身体が硬直した、間違いなく虹村達の親玉、そいつから一番聞きたくない名前を聞かされることになるなんて。
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まざわさんから聞いたクリーチャーと仲良くする力、それがあればまた「彼」に会える。「彼」と別れたあの日から、ずっとボクはそれを願って生きてきた。まざわさんに従えば、また彼に会える。
でも、なんで…?《応援妖精エール》の上に乗せた手が動かない。飛水くんをここで逃がせば間違いなくまざわさんの、ボクたちの邪魔をしにくる。だから…。
「エールで攻撃!」
エールの攻撃はシールドに着弾したものの…飛水くんの元には届かず、その手前で攻撃の余波は止まった。失敗した…?いや、ダイレクトアタックをすればどのみち変わらない。
「応援妖精エールで…」
「なぁ、お前って家族いるのか?」
急になに?ボクの家族?ボクの家族は…!
「お前がどんな人生生きてきたかは知らないけど、今のお前見て家族がそれを認めてくれんのか?自分のために誰かを傷つける生き方で胸張って生きられるのかってことだよ!」
「ボクに…家族なんていないよ」
ボクの…家族は…!
「家族のほうがボクを捨てたんだ!ボクは生きなきゃいけない!「彼」の元に帰らないといけない!だから…まざわさんの目標を達成して、ボクはあっちの世界に帰らなきゃいけないんだ!」
「そういうことかよ…!お前が誰を恨んでようが、家族も友達も変わんねぇよ!お前は!この後その「彼」に本当に胸張って生きられるのか!?」
『なぁ、俺様は緑のことも好きだが、お前以外も、この文明の全てが好きなんだ!朝吹き抜ける風、昼の暖かく優しい日差し、夜の見守ってくれる月や星々、その全部が大好きなんだ。お前は家族に傷つけられちまったけど、お前はそれらを傷つけるようなやつになるなよ」
ずーっと前に教えられたこと。今思えばこれが「彼」の生き方、だったのかな。
ボクの心臓の鼓動がどんどん早くなる。早く帰ることだけを考えていたけれど、もし「彼」に拒絶されたら?そしたら、ボクは…
ボクは手を2体目のエールから離す、そして身体から力が抜けて、座り込むことしかできなかった。
「ボクは、なんてことを…」
8年前に家族に捨てられたあの日、彼に助けられたあの日。1年前に人間界に戻ってまざわさんに教えてもらったことを元に人間の世界に戻ってきたけど、今はクリーチャーの世界で教わったことを優先する。
ボクはデュエルフィールドを解除して、ひすいを抱えて病院に向かう。まざわさんのクリーチャーは、デュエル以外には使えない。まざわさんは今助けてくれない。ボクの勝手だ。でもボクは…ひすいを助けられなきゃ、一生胸を張って生きられない。
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お互いのクリーチャー、こちらのジャシンとダンマ、あちらのザーディクリカ3体が睨み合う。
「あなたが…このシステムを、真のデュエルを作ったんですか?」
「あぁ、そうだ夕哉くん。僕は真沢と呼んでくれたらいいよ。正確には真のデュエルを元に作ったシステム、真のデュエルの2次再現だけどね」
「そんなもの…何のために作って…夕花に何を!!」
「まぁまぁ落ち着いて。一つ一つ説明していくよ。この世界は災厄にまみれてる。理不尽な災害、人間の際限なき悪意。他にも…いややめとこう。どちらにしてもクリーチャーの世界の力は僕達を助ける」
「確かに災害や犯罪を止めるための抑止力になるかもしれない。それの為にお前は何人犠牲にするつもりですか」
「もうあなたとか言って取り繕いすらしないね。いいよ、そういうの好きだから。もう一つの質問の答えも教えよう。1年前、僕は最初の被験体に君の妹、黒井夕花を選んだ。ただし機械もクリーチャーも不完全でね、最初こそ彼女の預かり知らないところで身体能力の向上等成功していたんだが突然誤作動が起きた」
「それが…あの事故…!!」
「いやぁ僕もそんなもの起こすつもりはなかったんだけどね、まぁあの事件はまだ変なところがあってね、同調させたクリーチャーの意思の真反対の動きがないと身体が全く動かなくなるなんてことはないんだ、だから…」
俺は真沢に向かって走り出していた。こいつが、こいつが…!
「君はまだデュエル中だろう?虹村くん、君の相棒を見せてあぜて」
「呪文、《灰燼と天門の儀式》(ヘブニアッシュ・サイン)。墓地から《聖魔連結王 ドルファディロム》をバトルゾーンに出して、ジャシンと強制バトル」
突如として天使と悪魔が歪にくっつけられたようなクリーチャーが俺の目の前に現れる。そしてそのクリーチャーの腕が振り下ろされる。
「フン、こんなことで死なれては困る。お前が死んだら余の契約が解けるわけだからな」
次の瞬間、俺はジャシンの腕の中にいた。
「ごめん、ジャシ…」
ジャシンはドルファディロムに吹き飛ばされ、聖堂の壁に激突させられていた。
「ジャシン!!手札を2枚捨てて、場に残らせる!」
虹村の方を見ると、彼がこちらを冷たい目で見てくる。
「君はこれ以上この件に首を突っ込まない方がいい。君は『弱くて、何もできないんだから』。ドルファディロムの登場時能力。相手の多色(レインボー)でないクリーチャーを全て破壊する」
もう手札が足りない。ジャシン達が吹き飛んでいった。
「ジャシン!!」
「ザーディクリカでWブレイク」
間髪入れず虹村が畳み掛けてくる。ジャシンを失い、もう勝ちの目はない。でも…
「…まだだ!!!シールドトリガー!《悪灯 トーチ=トートロット》!相手のパワーが一番小さいクリーチャーを1体選んで破壊する!」
「タップしたザーディクリカを破壊、EXライフを墓地に送り場から離れない。2体目のザーディクリカで攻撃」
「トートロットでブロック!」
「更にザーディクリカで攻撃」
真沢のように論理立てて味方をつけることができない。虹村のように自分の正しさを押し通せる強さもない。でも…!
「今立ち向かわなかったら、絶対に後悔する!夕花を助けることなんて、絶対にできなくなる!シールドトリガー、《スーパー・デーモン・ハンド》!ドルファディロムを破壊!」
「…お前のそんな目が大っ嫌いなんだよ!!ドルファディロムの効果で、お前は多色(レインボー)でない呪文を唱えられない!!!」
手は全部打った。完敗だ。真沢の言うことが本当なら、俺は虹村に殺される。でも、まだ、何か…まだ…。『誰も…犠牲にしないで済む力を…』
突然地下から大きな叫び声が聞こえ、骨でできたドラゴン、いや骨そのもののドラゴンが現れた。
「君は…?」
「黒井夕哉を逃すな、ドルファディロムでダイレクト…ぐあぁ!」
「ほらー、だから冷静にデュエマしようって言ったじゃんー!君のメンタルが大事なんだよー?完全にシステムに馴染むまで、少し休憩が必要だね、あとは彼らに任せて、ゆっくり休もうか」
俺はそんな台詞を聞きながら、ゆっくりと意識がまどろんでいった。
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「夕哉くん、連絡が繋がりませんね…」
私、光屋御白は途方に暮れていました。カードの手がかりは見つかりませんし、夕哉くんとはさっきから連絡が繋がりませんし…。夕哉くんがさっきまで居た公園に来たまでは良いんですけど…。
「そこのお嬢さん、そのカードを渡してもらえないかな?」
「嫌、拾った落とし物は交番でしょ、貴方達のものだったら返せるけど、どこにも名前なんて書いてないから交番だよ」
「そんなこと言わずにさ、早く俺に…」
「何やってるんですか!女の子に複数人で囲んで!」
ザワザワと動く集団の中で1人の男の人が出てきました。
「私の名前は騎堂。(きどう)真のデュエルで正々堂々決着をつけて、勝った方の言うことを聞きましょう」
「ダメです御白さん、真のデュエルは命を賭けたデュエル。貴方が命を賭ける必要など…」
「でも断ったらあの女の子が…」
「ねぇ、よく分かんないけど、あたしのことだしあたしが決めちゃダメなの?」
騎堂さんが凄く悪い顔をしながら女の子の方を見ています。どこが正々堂々なんでしょうか。
「分かりました、それでは貴方と勝負をしましょう」
騎堂さんがデッキを取り出します…。
「うん、それで良いよ」
了承しないでください…。
「でもさ、一つ言いたいことがあるんだ…」
「デュエマのカードだよねそれ、知ってるよ。でもあたし1枚もカード持ってないんだけど、どうすれば良い?」
私も含めて周りの全ての人がずっこけてしまいました。
本っ当に大丈夫なんでしょうか、この人…
次回予告、今回の担当は私、御白です。
カードも持ってないしルールも覚束ない女の子が代わりにやることに…対する騎堂さんは上級者。一体どうすれば…。あのカードは彼らに渡らずに済むのでしょうか…。
次回、『誇り高き暴龍爵』
夕哉くん、無事でいてください…。