デュエル・マスターズOver(オーバー)   作:シグレサメ

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俺、黒井夕哉(くろいゆうや)は、謎のデッキケースとジャシンというクリーチャーに出会ったことによって数々の奇妙な事件に巻き込まれる。クリーチャーを悪用して最強の戦士を作ろうとする真沢の手下、虹村と緑に負けた俺と飛水(ひすい)。さらに意思を持つカードを手に入れようとする真沢たちの魔の手が伸びていたが、彼らにとっても俺らにとっても想定外なことが起ころうとしていたんだ。


誇り高き暴龍爵

「その、本当に大丈夫なんですか!?」

私、光屋御白(ひかるやみしろ)が持ってきていた改造パーツと睨めっこする彼女は、凄く難しそうな顔で考えている。

騎堂さんがくれた時間は20分。短くはないけど決して長くはない。家からパーツを取ってくる時間をくれないあたりやっぱり正々堂々って人ではないでしょうね。

「分かんないものだねー、やってみれば案外って思ったんだけど」

「そんな感じで引き受けないでください!あのカードはとっても大事なもので…もし負けたりしたら…」

「ねぇ、御白ちゃんがデッキ作りやってもらえる?ルールはわかるんだけど、デッキ作りはあたしやっぱり無理かも」

「えぇ…?構築済みデッキなんて妄想でしか作ったことが…。え、何で名前知ってるんですか!?」

 

目の前の少女のことがさらに訳がわからなくなる。

「あたし、赤坂火奈。貴方が御白ちゃんでしょ?夕哉と一緒にいるところ見たから、多分あなたなんだろうなーって」

「夕哉くんを…知ってるんですか?」

「うん、あたしが前に助けたんだ。2人とも似てるんだねー」

「え、何言ってるんですか赤坂さん!!?私と夕哉くんが似てるって、えっとそれが…」

「火奈でいいよ!さっきも含めて、やっぱり2人とも誰かのためにすぐに手を出してあげられる人なんだなぁって。だからあたしもいてもたってもいられなくなっちゃって!」

「そっか、火奈ちゃんが…夕哉くんから話は聞いてましたが…」

 

夕哉くんの言ってた通りの人ですね。裏表がなくて、優しい女の子。

「ねぇ御白ちゃん。あたし、負けるつもりで戦うつもりはないよ。これに負けたら夕哉と御白ちゃんが困るなら余計に」

「火奈ちゃん…」

「だからさ、最高のデッキ作ってよ!あたし、絶対使いこなすから!」

「はい、分かりました!」

 

デッキが完成して、最後の調整に入る。最後の1枚、どうしても決まりませんね…

「ねぇ、このカードって入れても良いかな?」

火奈ちゃんが黒く塗られた、いや近くで見ると焦げているのでしょうか?そのカードを私に差し出してきました。

「デュエマのカードでしょうけど、読めないカードを使うなんて…」

「あたしの予感だけどさ、この子すっごく役立つ気がするの!」

何となくその言葉に逆らえなくて、最後の1枚にそのカードを入れました。いや、誰かに入れさせられたみたいな、そんな違和感が…。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

あたし、赤坂火奈は御白ちゃんからもらったデッキを手に、騎堂さんの前に立った。

 

「ほぅ、件のカードをデッキに入れますか、それはカードを賭けたデュエルとして公平性に欠けるのでは?」

「うーん、あたしもそう思うんだけどね。初心者特権ということで入れさせてよ!」

「自分から初心者と認めつつこの真のデュエルに挑むとは、勇敢なのか馬鹿なのか…」

「聞こえてるよー!あたし、文系科目は行けるからー!」

「そういう馬鹿ではありません、さぁ、デュエマを始めましょう」

 

「「デュエマ、スタート!」」

 

突如として周りの景色が変わり、外国のお城の中のような場所になっちゃった、なんで!?

 

「えぇ何これ!?最近のゲームってこんなにすごいの!?」

「火奈ちゃーん!私の友達によると、それが真のデュエルの始まった証です!気をつけてー!外からは干渉できないみたいですー!」

「大丈夫ー!1人で頑張れるよー!」

 

あたしの先行で、4ターン目。なんだけど…。

(あたしの場は《Re:奪取 トップギア》、騎堂さんの場は《無頼 ブロンズ-1》がいる、お互いのマナーは4と5!どっちが有利なんだろ、分かんない!!)

「よーし、《マルルの炎杖》と《ボルシャック・フォース・ドラゴン》を召喚!フォースドラゴンの能力でパワーが4000より小さいブロンズ-1を破壊だよ!」

「凄いです火奈ちゃん!どうしてこんなに上手いんですかー?」

「ルールはお勉強したよ!夕哉がやってたのが楽しそうだったから、陸上の練習のついでに見てたんだけど…なんで御白ちゃんがいうほど上手いのかは分かんない!」

 

「早くターンエンドを宣言してください…!」

「あ、ごめん。ターンエンド」

「私のターン!《神徒 メイプル-1》を召喚!手札の《ボルシャック・バラフィオル》を墓地に!ターンエンド!」

キラキラしたカード、御白ちゃんがいうにはこのデッキの切り札が…

「あたしのターン!ドロー!あ、引けた」

「えぇえー!?」「はぁあー!?」

御白ちゃんも騎堂さんも凄く驚いてる。凄いんだ。

 

「マナチャージして、《ボルシャック・バラフィオル》を召喚!」

「えっと、私このカード2枚しか持ってないから仕方ないから2枚デッキに入れて、1枚がハンデスで落ちて今引いて…あれぇ?」

御白ちゃんがパンクしてる。でも今は…

「《ボルシャック・フォース・ドラゴン》で攻撃!味方全体にスピードアタッカー、パワードブレイカー、攻撃時パワー+6000をあげるよ!

更に、《ボルシャック・バラフィオル》の効果でデッキの一番上をめくって…コスト6以下の火のクリーチャー!《ボルシャック・テイル・ドラゴン》をバトルゾーンに!メイプルとバトルして、フォースドラゴンでWブレイク!!」

「シールドトリガー、なし…!」

「更にスピードアタッカーを得たバラフィオルで攻撃!デッキの一番上をめくって、《アニー・ルピア》をバトルゾーンに!シビルカウント3でドラゴン全員がスピードアタッカーだよ!」

「効果の読み落としもない!流石です火奈ちゃん!」

「…舐めるなぁ!!!俺の本気を見せてやる…!」

 

突然騎堂さんの雰囲気が変わった、けどたまにいるよねそういうのがカッコいいと思って大会とかでやる人…

「シールドトリガー!《霊宝 ヒャクメ-4》!《マスター・スパーク》!相手クリーチャーを全てタップして、ヒャクメの能力で1ブースト1ハンデス!ビギナーズラックもここまでだ…!」

いや、ちょっとヤバいかも…?

 

「俺のターン!俺が手柄を立てて、最強のデュエリストになるんだぁ!」

「ヒャクメ-4を破壊して、次に召喚するディスペクターの召喚コストを4下げる!コイツを破壊しろ、《零獄接続王 ロマノグリラ0世》!」

 

なんかとんでもないヤツでてきた!?

「召喚時にデッキトップ3枚から2枚をマナに、1枚を墓地に!ロマノグリラはマッハファイター!クリーチャーであるバラフィオルに攻撃!その時マナゾーンの枚数以下のコストを持つクリーチャーをマナまたは墓地から出す!来い、2体目のロマノグリラ!さらに同様の効果でフォースドラゴンに攻撃する時、3体目をバトルゾーンに!更にトップギアに攻撃!《霊宝 ヒャクメ-4》2体をバトルゾーンに!」

 

「早く諦めろ!ブロンズ-1でシールドに攻撃!ありったけだ!」

ブロンズの攻撃がシールドで受けきれず、あたしの体を吹っ飛ばす。

「火奈ちゃん!!!こんな酷いんですか、真のデュエルって…」

「大丈夫だよ御白ちゃん、あたし普段から運動してるしピンピン…」

 

あれ、急に目眩が…あたし…ちょっとヤバいかも…。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「お前のそれは蛮勇だろう、なぜ彼女に手を差し伸べた」

 

え、誰?そう思って目を開けた瞬間、周りは沢山の松明に囲まれていた。声の主はどこだろう。まだ見えない。

 

「それは、困ってたからだよ。困ってる人を見捨てられないでしょ?」

 

「そうだな、しかし彼女はそれを欲しがったのか?必要としていたのか?それは余計なお世話というものではないか?」

 

「分かんない、でも御白ちゃん、怖がってたように見えたんだ。怖いことを言い出せない人だっているじゃん、そういうのって助けるべきじゃない?」

 

「あぁそうだな、俺もそう思う。しかし俺が一番気になった事は、その後彼女にデッキを作れと助けを求めたことだ、結局助けられているじゃないか」

 

「…それは、私も変だと思う。悪い癖だよ、考えるより先に行動に出ちゃって。昔も川に落ちた人を助けようとして、逆に自分が溺れそうになっちゃって」

 

「でも憧れちゃったんだ。そんな誰かに手を差し伸べられる人に」

 

「最後の質問だ、結局のところ、デュエマが始まってからお前は1人でプレイをしてきた、それは何故だ?」

 

「試合が始まったら、頼れるのは自分だけ。でも沢山の人に支えてもらえるから試合に出れるんだ。だからあたしは手を伸ばす。誰かを助けられるような人間になるために。でも全然ダメダメだった。こんな風になっちゃって」

 

「質問は終わりだ。…お前の答えはとにかく未熟だ。自分で助けると言って結局のところ助けられている。憧れが先導して技術が身につききっていない」

 

「………うん」

 

「だが、誰かと繋がることが必要であると心の底から理解している。俺とお前なら誰かを繋げ、共に高みへと向かえるだろうな」

 

「どういうこと?」

 

「俺の力を借りたければ手を伸ばして、お前の欲しいものを叫べ、さすればお前が今一番欲しい手を差し伸べてやろう」

 

よくわからない、このデュエマが始まってからずっと。でも…

 

『あたしが!誰かを助けられるように!あたしを強くして!』

 

この気持ちは、絶対に揺るがない。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ねぇ光屋くん、そろそろ棄権ということに…彼女がこれ以上傷付いたらかわいそうだ」

「心にもないこと言わないでください、最低です」

 

「そうだよ、最低だよ。正々堂々って言ったんだから、最後まで付き合ってよ!シールドトリガー、《ボルシャック・テイル・ドラゴン》!ヒャクメを1体破壊!」

「火奈ちゃん!!」

「まだ倒れていませんでしたか、しかし、ロマノグリラの能力で、このクリーチャーがタップしている限り、私は攻撃されません!つまり私はロマノグリラがいる限り負けないということです。これ以上痛い目を見る前に棄権をお勧めしますよ」

 

1人で、あたしだけで助けられるのは限界がある。

 

「ねぇ騎堂さん、余裕ある時だけそんな風に丁寧語になるの、カッコ悪いですよー!」

「ハァ!?なんなんですか、せっかく柔らかい態度で接しているというのに!」

 

だから、人と繋がって、助け合って。先に進んでいくんだ。

 

「…フゥ。…ドロー!!」

引いたのは黒焦げのカード。いや、私の相棒。

「5マナで《轟炎の竜皇 ボルシャック・カイザー》を召喚!!」

 

カードをバトルゾーンに置くと焦げが取れてカードのイラストが出てきた。さらに突如空が赤くなったかと思えば空から白銀の鎧を着込んだドラゴンが舞い降りる。彼から放たれる熱は敵を焼き焦がし、味方に安らぎを与えてくれる。

 

「火奈ちゃん!!!クリーチャーと契約したんですか!?」

「そんな…素人が契約を完了させるだなんて…あり得ない!!」

「あり得るんだって。カイザー、よろしくね!」

 

「いや、俺の元にはロマノグリラが3体!俺が負けるわけが…なんだ?」

 

カイザーが味方から力を集め始める。《マルルの炎杖》、《ボルシャック・テイル・ドラゴン》2体、《アニー・ルピア》の合計4つのカードが、カイザーに力を与える。

 

「まずはシビルカウント3!カイザーはスピードアタッカーを得て、バトル中パワーが+50000される!ロマノグリラに攻撃!」

「パワー+50000!?そんな出鱈目な…。しかしブロックすれば意味はなくなる!ヒャクメでブロック!」

「次にシビルカウント5!!このクリーチャーは攻撃する時、何度でもアンタップする!つまりロマノグリラ3体が倒れるまで攻撃し続ける!!」

「なんだとぉぉぉおおお!!?ロマノグリラの壁が倒れる…EXライフで回復した盾も全て…!」

 

「嘘、あんな絶望的な状況を…ひっくり返しちゃいました…」

「御白ちゃん、言ったでしょ?この子、役に立つって!」

 

「クソォ、クソォオ!!何故だ!なぜ初心者ごときに俺が負ける!!運が悪かったからか!あの時バラフィオルを引かれていなければ、いやあの時初心者特権を認めなければ…!」

「そういう所ですよ騎堂さん。火奈ちゃんは相手を怖がりも見下しもせず、自分にできる最善の行動をしたんです。だから運を活かせたんです!そうでない貴方とそこが違うんですよ!」

 

「カイザーで!ダイレクトアタック!」

「クソォ!俺は死ぬのかー!!」

 

「…はぁ、すごい嫌な人だけど、まずは警察のお世話になるべきだね」

あたしはカイザーの攻撃を逸らさせて、ダイレクトアタックを止めた。

真のデュエルのフィールドが解かれる。いつの間にか彼の仲間は全員いなくなっていた。

「分かりました、私が警察に連絡して…」

 

「ちょっと待ってね、その人はオレが引き取るよ」

突如として真っ白いスーツに身を包んだ人が現れる。

「光屋くん、赤坂くん、君達がクリーチャーと契約してるんだね、僕は正路 公輝(しょうじ こうき)。竜也の友人で警察、そして君達の味方だ」




次回予告はオレ、公輝が務めるよ。
オレと竜也の共有研究室に招待される赤坂くんと光屋くん。真沢の企みについてオレが知っている範囲で話すけど、それ以外にも青海くんは怪我してるし守木くんは悩んでるし黒井くんは行方不明だからさぁ大変。
次回、「邪龍のカギ・前」。お楽しみにね。
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