私達、光屋御白(ひかるやみしろ)と火奈ちゃん(赤坂火奈)はデュエマに勝ったまでは良かったんですけど、竜也さんの友人を名乗るに正路公輝(しょうじこうき)さんに声をかけられて…
「街の地下に、こんな場所があったなんて…」
「秘密基地みたいでかっこいいー!」
皇龍市の公園から少し歩いたところに、裏道があってそこを通って中の古びた建物に入る。扉の中は色々なものがまるで今整列したかのように並んでいて、持ち主の几帳面さが伺えます。
「さて、夕哉くんがこの場にいて欲しかったけど、改めてオレの紹介をしよう。正路 公輝(しょうじ こうき)。警視庁の警部で、君達の知ってるクリーチャー学者の竜也くんの友人だ」
「はーい!」
「どうしたんだ、赤坂くん」
「竜也さんって誰ですかー?」
「…そこからだね、了解」
そういえば火奈ちゃん、ついさっき契約したばっかりでした。
「…という感じなんだけど、ついて来れてる?」
「うん、なんか、カッコいいね!」
適応力高いなぁ…。巻き込んじゃった私が言えたことじゃないんでしょうけど。
「さて、ここまで君たちを巻き込んでしまった以上、さらに君たちから聞いた話を鑑みるに事態は中々深刻だよ」
「クリーチャーを好きなように扱えるシステム、ですよね」
正路さんが本棚の中から一冊のファイルを取り出す。
「これは僕達の捜査ファイル。君達は警察じゃないから見せられないけど大事なところだけ言うね。真沢の実験は何が起きたのか知らないけど加速度的に進んでる、クリーチャーの力をドンドン引き出せるようになるんだ。最悪の場合は、一般人をデュエルフィールドに自在に引き込めるようになる」
私達の間に緊張が走る。あんなのを…一般人相手に自在に…?
「そんなの、凄くまずいじゃん!」
「えぇ、そんなのあったら巻き込まれる人もいますし…デュエマのイメージ下がっちゃいます!」
「うんまぁそうだね、本来オレと竜也で解決するべきだったんだけど、真沢が追跡されていることに気づいて海外にシステムをばら撒いている。1機でも暴発、暴走されたら困るから竜也はそれの対処から離れられないって言う寸法だね」
「だから君達にお願いだ、真沢達を止めるのを手伝ってくれないか?真のデュエルのデメリットを軽減できるのはクリーチャーと契約した君たちだけなんだ。でも強制はしない、子供を巻き込まなきゃいけなくなった時点で僕はお手上げと言っているようなものだからね、できればだ」
「あたし、やりたい」
火奈ちゃんが不意に口を開く。
「だってあんなのが増えたらやばいじゃん!絶対止めなきゃ!それと、カイザーとせっかく強くなるって約束したのに、逃げたらそれを無視することになっちゃう」
火奈ちゃんの決意は固い。私も…
「私も…同じ気持ちです。デュエマを悪用するなんて許せませんし、火奈ちゃんを1人で立ち向かわせるのは嫌です、あの時から結局私は助けてもらってばかりですし」
正路さんが口を開く。
「ありがとう、君たちの負担が最低限になるように、オレも最善を尽くすよ、あとは、夕哉くんか」
「ずっと連絡がつかないんです、夕哉くん大丈夫でしょうか…」
「部下が探してるけど今のところ…今は信じるしかないかな」
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俺が目を覚ますと、そこはどこまでも黒く深い闇の中だった。
明かりも何も無い、どこを向いても暗い空間。
まず自分の触っている床すらも下を向けば無限に闇が続いていくようで不安を煽ってくる。
「おぉ!黒井様が目覚めましたよジェンゲガーさん!」
「そうですねフォックさん、ようやく報告に行けます」
後ろを振り向くといつも一緒に戦っている《フォーク=フォック》と《レター=ジェンゲガー》の2人が立っていた。
「黒井様、私(わたくし)フォーク=フォックと申します、ジャシン様からあなたの監視役を仰せつかりました」
「うん、わざわざ監視役とか言わなくて大丈夫だよ、そっちはレター?」
「はい、レター=ジェンゲガーと申します。黒井様が目覚められたため、ジャシン様にお伝えしてまいりますね」
そそくさとレターがこの部屋?を後にする。出鱈目に黒いペンキで塗られたようなこの空間に部屋の概念が存在するかは知らないが、彼らにとってはあるのだろう。
「黒井様、それまでの間こちらに来てくださりませんか?見せたいものがございます」
「ねぇ、俺って黒井『様』なの?正直ジャシンのことの扱い雑だし、君達から慕われるような人間じゃ…」
「ジャシン様と契約して1ヶ月ほど生き延びられている時点で私たちからすれば尊敬に値するものですよ、ジャシン様の話し相手をすることが「処刑場」と呼ばれるようなお方ですよ?」
突如として何処からともなく刃が飛んできて、フォックを巻き込んで吹っ飛んでいった。聞こえてるんだ…。そしてフォックがこの役割を任せられた理由もなんとなくわかる。失言には気をつけた方がいいよ、フォック。
やっぱりクリーチャーは強くて、フォックはすぐに刃を取り除いて歩き出した。
「ねぇ、ここ何処なの?」
「ここはジャシン様たちアビスロイヤルの棲家、深淵(アビス)になります。ジャシン様のカードの中はここになっているんですよ。まぁジャシン様しか自在に出入りすることはできませんが」
なるほど、ジャシンが俺を生き延びさせるために緊急の避難所として貸してくれたのか。そんなこと言ったら俺に刃が飛んできそうだから言わないけど。
もう少し歩いたところで、大きな檻を見つけた。
「これが見せたいもの?中に何か…いる?」
手を伸ばそうとした俺を必死にフォックが静止する。
「ダメです黒井様!ここが《邪龍 ジャブラッド》の檻です。黒井様をあの時助けたドラゴンであり、一歩間違えれば深淵すらも破壊しかねない邪龍でもあります」
正反対だ。俺をあの時助けてくれたけど、邪龍の名で通っている…
「どうだ夕哉よ、コイツに怖気付いたか?」
「ジャシン、怪我はない?」
「フン、あっても治っとるわ」
「良かった。でもさ、見せたかったのってこれだけ?そろそろみんな心配してるし帰らないと」
「そうはさせぬ。お前にはコイツを手懐けてもらう」
「ジャブラッドを手懐ける?」
「お前はあの時全力を出して負けた。戻って虹村に挑んでも負けるだけだろうな。コイツを手懐けてみろ、そうすれば人間界に戻してやる」
「成程、ジャシンは回復までの退屈凌ぎ、俺はジャブラッドを手に入れて戦力アップってことだね」
「そう思うならそう思っていろ」
嫌に高い音を立てながら檻が空き、俺はジャシンにその中に入れられる。
「監視にレターとフォークをつける。なんかあったらコイツらにでも頼れ、我は眠る」
「ちょっと待って!今は大体どれくらい?なんかお腹も減ってないし変だなぁって」
「今の時間か?『こちらの世界では1/2の速度で時間が進む。』2〜3日で帰れば問題は起きないはずだ」
さて、中々の難題なわけだけど…目の前のジャブラッドと見つめ合う。今にも食べられてしまいそうな威圧感。手懐けるといってもジャシンは力を貸してくれないし、自分の力でどうにかするしかないみたいだ。
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「ここは…?」
俺が目を覚ますと病院の病室だった。確か俺は緑にデュエマに負けて…
やべ、何が起きたのか後半覚えてねぇ、オービーメイカーにシールドをブレイクされた後から記憶はあやふやだ。何か言った覚えはあるけど…
「飛水!」「飛水ー!」
「父さんと母さん。来てくれたんだ」
「当たり前だ!飛水が怪我したって聞いて急いで車を飛ばしてきたんだ!」
「そうよ、優しい人が病院に運んでくれなかったら今頃どうなってたか…とにかく、良かったわ、飛水!」
俺は2人の体に抱き抱えられる。俺は叔父さんのことで頭がいっぱいになって、父さんと母さん、他にも心配かける人がいることを忘れていたんだろうな。学校にも連絡行くだろうし、夕哉と光屋にも言わねぇと。
「父さん、母さん。病院に運んでくれた人って…誰が知ってる?」
「名前も言わずに立ち去っちゃったらしいんだけど、緑の髪の大柄な子だったらしいわ、とにかく怪我も後に残らないみたいで良かった…」
緑が…にわかには信じられねぇけど、やっぱりあいつはただの悪い奴じゃないんだと思う。とにかく今は…
「父さん、母さん、もう一眠りしてもいいか?」
「そうだな、飛水。ゆっくりお休み」
対策はゆっくり立てる。真沢のことは許せねぇ。それは変わんねぇけど、父さんや母さんに迷惑かけないようにしねぇとな。
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邪龍ジャブラッド。レターの残した記録によると深淵で暴れては様々な眷属に被害を出し、何を考えているのか分からないため対処法もなく、やむを得ずジャシンの作った檻の中に入っているという…。
「ねぇ、ジャブラッド。君は何が好き?」
「何やってるんですか黒井様!こういうのは下手(したて)に出たらダメです!ジャブラッドに舐められ、最悪の場合…ガブリですよ!」
フォックが叫ぶ。でも今は何が必要か分からない。だからとりあえず聞いてみようと思ったんだけど…
「…グオアアァァァアアア!!!」
ジャブラッドの雄叫びで、俺は気押される。間違いない、一発ミスったらガブリだ。
「うーん…フォック!助けてくれない!?」
「なんでしょう黒井様、1人でやるのでは」
「1人だと無理なんだ」
「え、これやるんですか!?ジャブラッドの前で!?」
一旦ジャブラッドの前からはけて…
「「どうもーーー!!」」
好きなものから打ち解ける!好きな芸人さんのネタを真似して…
「あのゴリラを誘き出す為にリンゴを置いておこう!うん?あ、リンゴがあるぅ!」
「黒井殿、じゃなかった夕哉!リンゴはあなたが仕掛けたんですよ!」
フォックの平手がクリティカルに入る。
「いったーーー!」
「あぁごめんなさい黒井殿!クリーチャーの力は強いの忘れていました!」
横でジェンゲガーが笑い転げてる。まぁ良かった。ジャブラッドは…?
「フ…グワァァァアアア!!」
雄叫びで吹っ飛ばされる。彼には面白くなかったのか…?
「今からジャブラッドくんの選んだトランプを消して、再度出して見せましょう!」
入院した夕花を楽しませる為に覚えた簡単なマジック。まさかここで使うことになるとは思わなかったけど…
「さぁジャブラッドさん、どのカードを選びますか?」
「………ジャ」
手を振り下ろしたジャブラッドの風圧でまた吹っ飛ぶ。流石に慣れてきた。気づいたら牢屋の中にはダンマにマーダンやトートロット、ブルームにラギルップ、ゲルエールのいつもお世話になってるアビス達が集まってきていた。怖くないのかな…
「でも、マジックに参加してくれる意思はあるみたい…」
「さぁ…選んでくれたこのカードを…」
「…はぁ!」
ぶっつけ本番で成功!来てくれたアビス達が拍手をしてくれた。ジャブラッドは…
「グォギャァァァアアア!」
腕をバンバン叩いて何かを言おうとしてる。けどまぁ例によって風圧で俺は飛んでく。今回はマーダンが受け止めてくれたけど。
「お前、結構面白い奴なんだな、黒井。手懐ける為にマジック始めるやつは初めて見た」
「結局どんな人か分かんなかったら手懐けても意味ないと思って…そう言ってくれて嬉しいよ」
「うーん…。そろそろ流石にお腹減ってきたなぁ…ジャブラッド、じゃあ何か一緒に食べる?フォック、何かない?」
「え…そんなものありませんよ…」
「え…皆何食べてんの?」
「基本必要ないですよ」
「………」
「お願いします神様仏様ジャシン様!少しだけ買い物と料理のために家に戻してください!!」
「夕哉よさっき戦力アップとか啖呵切ってそれか!ふん、ならばさらに条件を増やそう、余も満足させよ!それでいいだろう」
「分かった、ジャシンの分も用意してくるね」
「黒井様!貴方様がいない間、私達がジャブラッドを楽しませます!」
「ありがとうフォック!行ってくるね!」
買い物してジャブラッド、ジャシン帝が好きそうなものを用意する。お小遣いが痛いが御白のバイトをする前よりはマシと思おう。
俺は一旦家に帰り、おばあちゃんにただいまを言う、おばあちゃんの代わりにご飯を作ることも多いから料理は得意だ。夕花が入院してしまってからは尚更。でもジャブラッドとジャシンが好きな料理ってなんなんだろうな。かなりジャブラッドと睨めっこしてたから外はもう暗くなっている。こっちの時間はあちらの2倍速だし、早めに帰って料理を出さなきゃ。
「お兄ちゃん!私唐揚げがいい!」
「それ3日前も食べなかった?まぁ、おばあちゃんが良いならいいけど」
「わたしも夕花ちゃんが食べたいならいいよ、夕哉の料理は美味しいからね」
また、一緒に食べたいなぁ。俺は料理を作りながら、御白と夕花のお見舞いに行ったこと、一緒に遊んだことを思い出していた。
次回予告です、今回は私フォーク=フォックが担当させていただきます。
ジャブラッドを手懐ける為に料理に奔走する黒井様。彼は何を考えているのでしょうか…。でも「料理」というのはどんなものなのでしょう、楽しみです。その頃虹村はシステムを完全にするための休眠に入ります。緑くんはそれに思うことがあるようで…
次回、「邪龍のカギ・後」
それにしても今日はジャシン様、全然喋ってなかったでs危ない!次回予告の言葉まで聞いてるんですかジャシン様!お、お楽しみに…!