「虹村のアジトの目処がついた、警察が突入するのは3日後。しかし僕達はクリーチャーと契約していないから、真のデュエルに巻き込まれたらお手上げになる」
俺達は公輝さんのアジトに招かれ、今一度作戦確認をしていた。来ているのはドラン・ゴルギーニと契約している光屋御白(ひかるやみしろ)とボルシャック・カイザーと契約している赤坂火奈(あかさかひな)、そして、俺たちの事を知って居ても立っても居られないと言った青海飛水(おうみひすい)。俺達5人だけの状況だ。
「つまり、あたし達が真沢達を真のデュエルで勝てば良いんだね?」
火奈が真っ先に口を開く。それに対して飛水が口を挟む。
「真のデュエルに勝ったらそうはいくが、負けたら死ぬんだぞ、リスクが高すぎるだろ、100戦100勝なんてそう上手くはいかない」
「え!?あたし負ける前提!?」
「そうは言ってないだろ、リスク取るべきじゃないって言ってんだ」
飛水がいつも通りのちょっときつい言葉だ。火奈とは相性悪いだろうなって思ってたけど案の定だ…
「2人とも落ち着いて。うん、本来そんなリスクは取りたくない。確かにデュエルに勝てれば一発だろうけどそうもいかないのも確かだ。何より真のデュエリストの人数も厳密にはわからないからね」
「虹村さんと、飛水くんがあったっていう守木くんが少なくともそうなんですよね」
今度は御白が纏めてくれた。そう、虹村。間違いなく俺を狙ってくるだろう。
「やはり最高戦力は現時点で黒井くんと光屋さんだ。黒井くんは契約クリーチャーが2体いるし、光屋さんはデュエマ歴が長くて上手いからね、2人を軸に虹村くんと守木くんにぶつけて、周りでサポートしていく形になる」
「その間に真沢の犯罪の証拠を見つければ…法で捌ける!」
「そうだね青海くん、どうしても君は裏方になるだろうけど、デュエマが必要となったら君にも頼るかもしれない」
「…はい、よろしくお願いします」
飛水の顔が曇る。でもどうしても彼の気持ちに今踏み込んで良いように思えなかった。
「正直竜也に初めてクリーチャーの事を聞かされた時、嘘だと思っていたんだ。そんなものが存在するのかなんてね。でもオレのその考えは彼が呼び出したドギラゴンによって砕かれた。だから自分の畑違いにはその畑の人に助けてもらうしかない、大人としてできるサポートはする。よろしくお願いするよ」
「「「「はい!!」」」」
そうして俺たちは、各々の準備に備えていった。
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決戦前の夕方、俺は普段通りCDショップへと向かっていった。
「はぁ…Dracheが本当にいりゃいいのにな」
他の3人はクリーチャーを使える、俺だけだ。俺だけが…おじさんにとって俺はスタートラインにも立ててないんだろうな…
「ねぇ…ねぇ!」
「お前…赤坂?」
「火奈って呼んで、あたし苗字呼び苦手で」
「そっか火奈、お前なんでそんな汗だくなんだ?」
「そりゃあ走ってきたからだよ、今はここで休憩中」
「大事な日の前日に走って体力減らすか普通?」
「もう、飛水そういうところ!もう少しさ、言葉というかさ!」
「…わりぃ、もう癖だこれ」
気まずい。なんだかんだこいつとちゃんと喋ったことねぇもん。
「ねぇ、一緒にアイス食べない?」
「なんで?」
「昔からお母さんがなんか頑張ってたらアイス買ってくれてるの、あたしも同じことしたいなって」
「別のやつにしろよ…」
「本当に捻くれてる!将来モテないよ!」
「そういうお前も言葉つえぇよ」
口喧嘩しながらアイスの店に行く。アイスって言えば…
「おいしーい!やっぱりバニラが王道だよね!飛水はチョコ?」
「声でけえって…あぁそうだよ」
「ねぇ、あの真沢って人が飛水のおじさんって本当なの?」
「…あぁ…尊敬してた人なんだ」
「そっか…」
何も言わないんだな、こいつみたいなタイプはやたら励ましてくると思ってたんだけど…
「あたしもさ、憧れの人がいたんだ。1年上の先輩。でも今は仲悪くなっちゃって別の学校。だから話せば分かるとか、勝ったら全部良くなるとか、そんな簡単に言いたくないんだけどさ」
「…!なんか、スマン」
「大丈夫。あたしもごめんね、気持ちが落ち着かなかったから。事情を知ってる飛水を見つけてちょっと安心したんだ、味方がいるんだって」
「俺めっちゃ口悪いぞ、いいのか?」
「お互い様だよ、でも君は誰かを意図して傷つけないと思う」
色々考えてるんだな、火奈も…。ちゃんと、怖いんだな…。
「ねぇ、終わったら夕哉や御白ちゃんも誘って4人でパーティするつもりなんだ!だから絶対叔父さんに負けちゃダメだよ!」
「…言われなくても」
拳をお互いに突き合わせる。思っていたより、ずっと強くて繊細なやつなんだな。火奈を巻き込ませた奴らを許せなくなった。でも今は、その大元をどうにかする。それは変わらない。そこに自分もいるっていうのが必要なだけだ。家族のため、友達のため。そして自分の決着のため。
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「じいや!お願いがあるんですけど…」
クリーチャーのことはじいや達にも内緒、だから明日は遊びに行くという建前で、夕哉くんや火奈ちゃんがいるからという理由で付き人も断りました。そうしてたんですけど…
「御白どうした?食べられないのか?」
「…お兄ちゃん、ごめん、食欲出なくて…」
「せめてお兄様といったはずだ、小さい時は良かったが…」
お兄ちゃん、光屋白都(ひかるやはくと)は光屋コーポレーションの若社長として働いています。今日はたまにある一緒に夕ご飯を食べられる日なんですけど…
「その、お兄様…もし、もしもですよ?自分にしかできないことがあって、それにすごい責任が乗っかってたら、お兄様はどうしますか?」
「それは…仕事の話か?」
「…そういうふうに捉えて貰えれば」
「…ずっと俺の一挙手一投足は光屋コーポレーションの評価を上下させかねない。だから責任なんてものは途中からあって当然のものになった」
「……はい」
「責任というのは自分の行動で救える、助けられる人間の数だと思っている。もしお前もこの先この会社の手伝いをするなら、覚えておいた方がいい」
「分かりました、ありがとうございます、お兄様」
私は下手な作り笑顔で、部屋を後にした。
困った時はカードストレージを開けて、カードを眺めたりデッキを作ったりする。そうすると自然とそういうことが忘れられる…はずなんですけどね…。
「御白様、明日は早いです、ご飯もそこまで食べてないですし、休まれた方が」
「そうなんですけどね」
私は火奈ちゃんがシールドをブレイクされて倒された時から、どうして好きなことでこうなるのかと思った。最初は大好きなクリーチャーと話せて嬉しかったはずなのに。そう思いながら無心でカードを並べる。どうしようもない心のおもりを抱えながら。
「その、夕哉様に電話をかけてみませんか?」
「…え?」
「彼は御白様と一緒に家庭教師のたびにデュエマしてくれた仲です。何か打ち明けるなら彼が一番でしょう」
「え、ちょっと待って、最近私ちゃんと勉強できなくて夕哉くんに」
「もう電話をかけましたよ」
ドランさんがカードから顔を出して勝手に私のスマホを操作する。
「あばばばばばばば」
「多少無理にでも、喋った方がいいと思います」
今更コールを切っても手遅れです、初めての友達との電話にさっきと別の心が怯え始めます。
「はい、御白?どうしたの?」
「いや、その…なんでもないんです、明日ですよねーみたいな」
「うん、そうだね」
「夕哉くんは、なんか、緊張とかしてないんですか?」
「緊張か…確かに虹村と戦うのは怖いし、負けたら今度こそ死んじゃうかもしれない。もし夕花の仇を取れなかったらなんて思ったらするよ」
夕哉くんもそうなんですね…
「ねぇ御白、作戦会議の時も昨日バイト行った時も、御白ずっと辛そうな顔してた。そっちが良かったらでいいんだけどさ、なんかあったの?」
夕哉くん、気づいてたんですね。
「私…私。最近デュエマが楽しくないんです。だって楽しんだらダメな気がして…命を賭けた戦いをしなきゃいけないなんて…」
「うん。俺もおかしいと思う」
「え?」
「だってカードゲームで生死が決まるって普通にヤバいじゃん、それはおかしいと思うよ」
「はい、だから普通のデュエマをやってる時もそんな感じに思って…」
「でもさ、それは普通のデュエマだよ。御白に教えてもらった、楽しくてスリリングなゲーム、デュエル・マスターズ。それが楽しいことは、それが俺たちにとって好きなことなのは、絶対に変わんない」
「夕哉くん…」
「だからさ、御白は自分のやりたい事を守るためでいいんだと思う。もしそれが嫌だったり逃げ出したくなったら俺もできる限り手伝うよ、だって俺、デュエマと御白をきっかけにあんなに色んな人に会えたし。少しくらい恩返しさせてくれない?」
気づけば私はボロボロと大粒の涙を流していました。
「ゆ、夕哉くぅん!!」
「え、な、なに!?」
「私、絶対勝ちます!勝ってデュエマを悪用する人を止めて!デュエマを最高に楽しむんです!夕哉くんや、火奈ちゃん、飛水くんと一緒に!それが私が今やりたい事、責任です!」
「そっか、そのためには俺も勝たないとだね」
「…お互い、絶対に勝ちましょう!!」
「そうだね!明日は頑張ろう!」
「ふふ、安心したらちょっとお腹空いてきちゃいました、少しお夜食してきます」
「光屋家夜食あるんだ、うん、おやすみ」
「おやすみなさい」
夕哉くんはドランさんに乗っ取られた時から、いや、初めて会った時から「私」のことを見ていてくれています。だから安心して話せたんだと思います。だから、ずっと友達でいたいんだと思います。
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20〇〇年 5/14 土曜日 朝7:30
俺たちの、長い1日が始まる。
「突入まであと5分…準備は万全にね」
「はい、でも、それにしては警官の方が少なくないですか?」
「クリーチャーのことを明かせる人間は少ないからね、本当に信頼できるメンバーしか集められないんだ」
「そっか…ありがとうございます」
火奈の質問に答え終わった公輝さんのの空気が変わる。ここにくる前、病院の前に寄って夕花の無事を願ってきた。今は…勝つ。
「夕哉くん!」
「??? どうしたの、御白」
「中に入ったら喋れないと思うので今のうちに。これ、私からのお守りです」
御白から渡されたのは1枚のカードだった。
「ストレージを見ていた時に何となく目に止まったんです、役に立つかなと思って」
「フン、我らアビスだけで十ぶ」
「ありがとう御白、使わせてもらう」
夕花だけじゃない、御白や飛水、火奈のことも。
「突入するよ、5、4、3、2、1。突入!」
警官隊に続いて俺たちが中に入っていく。その時急激に床の形が変化して俺はみんなと別の方向に投げ出される。
「公輝さん!皆!」
突然投げ出された黒い部屋。とにかく自分はここを進むしかないようだ。
「やはりクリーチャーを従える人間を主軸にする。ならばそれらを分断して、各個撃破するまで」
「あたし、戦力カウントされてるんだ、嬉しいな」
「こうなったからには…デュエマだよ、分かってるね?」
「えぇ、こんな所で女性デュエリストに会えるなんて光栄です」
御白と火奈はもう戦い出しているだろうか。飛水は…
「どうだいこの仕掛け。真のデュエルの座標移動を応用したんだ。さぁ見届けよう飛水。僕のシステムと彼らの契約、どちらが上回っているのかを」
「真沢…緑もいるのか…」
「………ひすい」
俺たちの長い1日が始まった。
次回予告!今回はあたし、火奈だよ!
真沢の手下、虹村と緑以外にもまだ真のデュエリスト!?あたしはそれに追い詰められる訳なんだけど…その頃クリーチャーの戦いに乗じて、ある異変が起き始める…らしいよ。
次回、「燃えよボルシャック」
あたしは、ただ契約したから来た訳じゃないから!