「さて、私は真沢さんから言われた通り光屋御白さん、あなたを討伐しに来ました」
私の対戦相手は、帽子を深く被って顔が見えないようにしています。声や体型から女性だと判別できますが…
「さぁ、来てください、私と勝負です!」
「うん、勝負!やっぱり勝負は楽しいねぇ」
「…その…真のデュエルですよね?」
「ん?あれ人を傷つけるじゃん。最悪死んじゃうようなやつ使う訳ないじゃん」
私は心の中でずっこけてしまいます。なんかいいことなのに肩透かしを食らったような…
「でもさ、それじゃゲームとして面白くない。だから私の後ろの動力装置を賭けて勝負と行こうよ。貴方が勝ったらこの研究室の第二動力を落とせる。そうすれば彼の研究を止められるよ」
急に彼女の周りの空気が冷たく変わります。まるでそれに全てを賭けてきているような…そんな逃げ出さない人間の威圧感…
「そんな…なんでそんなことを教えてくださるんですか?」
「真沢さんから教えてもらったけど思ったより面白くなくってね。楽しいデュエマをしてついでに帰ろうと思ってて」
「それでも警察にお話を聞くくらいはやってもらいますよ、真のデュエルしなかったら確かに傷害罪?とかにはならないんでしょうけど」
「……… 私は回田(かいだ)。よろしくね」
条件は変わったけど夕哉くんや飛水くんたちを助けるために私は勝ちます!
「「デュエマ、スタート!」」
回田さんの先行で始まったデュエマはあちらはマナ加速、私は盤面展開から始まりました。
あちらは3ターン目までに《お清めシャラップ》を唱えてマナを増やし、こちらは《Re:奪取 アクロアイト》で軽減しました。そして…
「私のターン!《ドラン・ゴルギーニ》を3マナで召喚!ターンエンドです!」
「御白さん!どんなデュエルでも、頑張りましょう!」
とりあえずドランさんが着地しましたが、違和感は拭えません。勝手に施設内の機材を賭けるような人が、こんな所でなんで門番を…
「言い忘れてたけど、私たちのデュエルは『命を賭けないだけ』だから!呪文、《ミステリー・キューブ》!山札をシャッフルして、デッキの一番上がクリーチャーならタダで使える、呪文とかならマナゾーン行きだね」
ここでランダム性の高すぎるガチャ呪文!?でもシャッフルを頼む彼女の目はすごく自信に満ち溢れていて…まるでハズレを引くことなんて考えていないみたいな…
「一番上は…来た!《禁時混成王 ドキンダンテXXII(トゥエンティツー)》!登場時能力で、貴方のクリーチャー全て、アクロアイトの効果は次の私のターンまで消える!」
嘘、大当たりを…!?
「ね、ここからもっと面白いよ?ターンエンド」
「私のターン、ドロー!」
(ドキンダンテの主な能力はもう一つ、クリーチャーまたは呪文を使った時に1ドローして9コスト以下の呪文を使ってきます。それをすり抜けるには…)
「マナチャージ、《ゲラッチョの心絵》、《豪龍のギフト》をバトルゾーンに、ゲラッチョの効果で1ドロー、豪龍の効果でドキンダンテをタップ、次のターンアンタップさせません」
「良いね、タマシード展開だけをしてドキンダンテの効果を使わせないんだね…」
「アタックフェイズ!ドラン・ゴルギーニでシールドに攻撃する時、シェケダン・ドメチアーレをバトルゾーンに!ドランの効果でこちらの方がクリーチャーが多いので破壊されなくなり、ドメチアーレの効果で5枚ドロー!ドキンダンテのEXライフを含めてブレイクです!」
「良いねぇ、シールドトリガー、《ミステリー・キューブ》」
「嘘、シールドトリガーで…!」
「今回は、《真邪連結バウ・M(マッド)・ロマイオン》!登場時能力でミステリー・キューブ2枚を墓地から回収するよ」
目の前が真っ暗になるのを感じる。『どうやっても無理』、そんな言葉が頭をちらつく。
「私、夕哉くんに約束したのに…」
「…約束、ね。私のターン、《ミステリー・キューブ》。シャッフル後、デッキ上から《斬龍電融 オロチリュウセイ》をバトルゾーンに、クリーチャー全員にスピードアタッカーを与えて、アタックフェイズに」
さっきから当たりを引き続けてる、突き崩せない壁。それが…
「やっぱりデュエマは楽しいねぇ」
「………!」
そうです、夕哉くんに言ってもらったじゃないですか。デュエマは楽しむものだって。それを人を傷つけるために使うのを絶対に止めたいって。だから…!
「まず…とにかく気持ちで気圧されちゃいけません…!」
「御白さん…!」
「ドランさんごめんなさい、私、対戦相手の圧で自分のやりたいことが抜けていたみたいです…!」
「良いね、顔が変わった。だから私はギャンブルするの。後がなくなった人の顔が見たくて」
「さぁ、来てくださいよ、私と運試し勝負しましょう?」
クリーチャーを呼び出してもリソース差でジリ貧になる。だから今は…あのシールドトリガーを引きに行きます!
「良いね良いね、こういうのがしたくてデュエマやってるの!バウMロマイオンで攻撃する時、手札からミステリーキューブ!ロマイオンの2体目をバトルゾーンに!登場時能力でミステリーキューブ2枚を回収!」
私のシールドが破られます。シールドの中身は…!
「シールドトリガー、《ジャスティス・フォース》!《「光速の星騎士」(ウルトラソニック・スターパラディン)》!」
「2枚トリガー!?」
「ただの2枚トリガーじゃありません!ジャスティス・フォースの能力で《アストマープル-T3》をブロッカーをつけてバトルゾーンに、さらにアストマープルの効果で《ブルトゥーラ-D1》をバトルゾーンに!」
「そこまでやってブロッカーを2枚?そんなもの…」
「それだけじゃありません!星騎士は自分のクリーチャーが出た時相手1体をタップします!出たクリーチャーは3体、ロマイオン、ドキンダンテ、オロチリュウセイをタップします!」
「へぇ…!」
「私のターン!リスク上等!ドメチアーレで2マナ軽減、3マナで《ルベル・ゴルギーニ》を召喚です!」
「リスクから逃げないんだね!ドキンダンテの効果でミステリー・キューブ!…ハズレかな、《闘争類拳嘩目(とうそうるいけんかもく) ステゴロ・カイザー》をバトルゾーンに!」
「よし、ここでリスクは最後!ドメチアーレで2マナ軽減して、1マナでブルトゥーラの2体目を召喚です!」
「ミステリーキューブ!《斬龍電融 オロチリュウセイ》!この局面じゃハズレかな…」
(あんなに運が良くても、ハズレのカードが一定数入っているならいずれ運の揺り戻しが来るはずです…!)
「ドラン・ゴルギーニでシールドに攻撃!その時、手札から《シェケダン・ドメチアーレ》をバトルゾーンに!タマシードからクリーチャー状態へ!ロマイオン2体のEXライフをブレイク!」
「シールドトリガー!呪文、《S・S・S》!最もパワーが大きいクリーチャーを手札に戻して、小さいクリーチャーを破壊。そして相手クリーチャーを全てタップするよ」
「いいえ、私の陣形はもう完成しています…!」
「え?」
「ドラン・ゴルギーニは味方全体に破壊されないを与えて、ブルトゥーラは自分以外に破壊以外で離れないを与えます、それが2体いるので全員破壊以外で離れません。最後にルベル・ゴルギーニはターン終了時味方全てをアンタップします」
「まさか…!」
「今の私のクリーチャー達はあらゆる除去が効かずタップされてもアンタップしてブロッカーとしてそびえたちます!」
「あらゆる除去が効かないって…めちゃくちゃ…!」
夕哉くんがジャブラッドを使っているのを見て考えついた無敵艦隊戦法、成功させられました!
「…よし!よしっ!!」
「そう、そうなんだよ光屋さん!デュエマってこんなにも楽しいんだよね!自分が大好きなカードと一緒に!幾重にも連なるプレイの分岐による駆け引き!それが通った快感!デュエマって、さいっこうのゲームだよね!私、あなたの戦いに感動しちゃった!」
回田さんは今は敵ですが…
「すごく分かります!デュエマっていいゲームなんですよ!」
「そうだよね、真沢さんと虹村さんにも分かってほしいなぁ、あの人達はそういうふうにデュエマを見てないから」
「…え?味方なんじゃ…?」
「友達でもみんな同じ考えじゃないでしょ?それと同じ」
「…あなたはちゃんと警察で話を聞かれるべき人ですけど、貴方と仲良くなりたいです、話したいことが色々できました」
「嬉しいなぁ、でも今は、このゲームの決着をつけなきゃね」
「私のターン!」
(ミステリーキューブは使い切った…!あとは山札かシールドに合計2枚か…さらに相手クリーチャーは無敵化してる…ロマイオンも攻撃時能力だけ使ってパワーで上回るドメチアーレとルベルに処理されちゃうんだろうな…さらに星騎士の能力でコスト4以下のクリーチャーにSトリガーがついてる、攻撃すれば間違いなく状況は悪化する…!)
「呪文、《お清めシャラップ》!《地龍神の魔陣》!両方マナを伸ばして、そっちの墓地をリセット、ターンエンド」
(ミステリーキューブというハズレを山札に戻さず、確率を上げた状態でこちらに向けてきました…ブロッカーはロマイオンだけ、ドキンダンテのリスクはこれ以上犯さないです!)
「私のターン!マナチャージ!アタックフェイズ!《ドラン・ゴルギーニ》で攻撃!手札から2体目の《ドラン・ゴルギーニ》!ロマイオン2体をタップし、次の相手ターン始めにアンタップさせません!」
「シールドトリガー、なしだよ」
「ドメチアーレで追撃!オロチリュウセイをシールド化してEXライフを処理!」
「トリガー…!いや意味ないかこれ」
「ルベルで追撃!」
「Gストライク、《地龍神の魔陣》、ブルトゥーラを止める」
「もう一体のブルトゥーラで攻撃!」
「シールドトリガー、《ミステリー・キューブ》!シャッフルして…今回はハズレ…運に見放されたのかな」
「アストマープルで、ダイレクトアタック!!」
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「これで虹村さんに電力が渡らなくなる」
ドランさんの力を借りて動力を落とし、私は一息つきます。
「光屋さんはさ、多分一番デュエマ好きだよね」
「えぇ、それは誇れます」
「ふふ、そっか。じゃあさ、また会う時まで優しくてデュエマ好きな光屋さんでいてね、それが皆を失わない、あなたの皆を支える方法になると思う」
「… えぇ、そのつもりですよ」
「うん、じゃあ私は…」
「警察だ!手を挙げて武器を置きなさい!」
公輝さんの部下の方が到着してくださりました。一安心です。
「光屋さん、怪我がなくて良かった」
「公輝さん、火奈ちゃんは?」
「少し怪我してるけど平気だよ、あちらの動力は部下に任せておいてある、カイザーが手伝ってくれたそうだ」
「そうですか…!」
「あとは青海くんと黒井くんだが…」
「私、夕哉くんを探しに行ってもいいですか!まだ動けます!」
「分かった、僕は青海くんの方に行こう。無理はしないでね」
「…はい!」
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時は少し前に遡り…
俺は数々のパイプや配線が繋がった不気味な通路を歩いていた。
「フン、我が深淵よりも数百倍悪趣味だな」
「ジャシン、深淵も大概。何も見えないし」
「ほぉ?闇は至高だろう?何が悪い」
「…もう何も言わないよ」
突き当たりに大きなケースがあり、その中に虹村が入っている。そのケースは大量のチューブに繋がれており、その姿はほぼ人のそれではない。
「…こんな、ことに…!」
真沢の目標だったことを目の当たりにして、その情景に足がすくむ。真沢のことも気になるが、今はこちらだ。
「黒井…お前か」
「虹村!?どこから…!」
「どうやら見ての通りらしいぞ」
虹村の声が直接聞こえてくる。まるで頭を覗かれているような不快感に体をうずくまらせる。
「あぁ、これでクリーチャーとつながり、俺は誰も失わなくなる。最強の英雄、この世界の守護者となるらしい」
「なるらしいって…それどういうことなの!?大丈夫なの!?」
「大丈夫だ。生きるためのエネルギー別途補給している。真のデュエルをする、邪魔者を排除するためならこんなもの…!」
「こんなものじゃない!!」
「…はぁ?」
「自分が何になってるのかわかってないの!?クリーチャーと一体化するためにこんなことになって…!そうなったら…ご飯食べられないんだよ!?」
「ご飯…?要らないだろう、あんな時間」
「ご飯も、勉強も、バイトも!家族と話したり、喧嘩したり…!一緒に誰かとデュエマしたら遊んだりすることも!全部必要な時間でしょ!?それを捨て去るなんて!」
「お前…!!」
「お前は嫌いだ、大っ嫌いだ。せめて潰す前に、俺の将来、この世界の未来を見せてやるよ」
突如として意識が朦朧として、俺はその場に倒れ込んだ。
次回予告。俺、夕哉が担当です。
クリーチャーが世界を埋め尽くす最悪の未来。それを止めるために作られた虹村という救世主。良い風に聞こえるけど、それは最悪の人柱だった。飛水は単身真沢を止めようとするが、彼もクリーチャーと契約していて…
次回、「絶望を超えて・前」 飛水、無事でいて…!