デュエル・マスターズOver(オーバー)   作:シグレサメ

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俺、黒井夕哉(くろいゆうや)はある日謎のデッキケースを拾い、ジャシンという謎のクリーチャーと出会った。妹、夕花の仇であるクリーチャー研究家、真沢のアジトに入った俺たち。分断され各個撃破を狙われるものの、赤坂火奈(あかさかひな)、光屋御白(ひかるやみしろ)はそれぞれ強力なデュエリストに勝利し、研究所の攻略は順調に続いていた…。


絶望を超えて・前

僕がクリーチャーの存在を知ったのは5年前。クリーチャーが住む世界が人間の住む世界と極めて近しい場所にあるということもそのタイミングで知った。

 

クリーチャーは人間と比べると強さがまるで違う。イワシとクジラ。ネズミと猫。ミミズと鳥。そんな天敵と呼べるものがいる空間が近くにあれば、人間の絶滅は早まると思った。そうでなくても危険すぎる。

 

デュエル・マスターズというカードゲームが何故かそこにいるクリーチャーたちとよく似たクリーチャーが描かれていることを知っていた。どんな因果があるかは知らないが、その世界のクリーチャー達は一部契約できることが分かった。しかしクリーチャー界で動くにはクリーチャーと契約しないと危険すぎるというパラドックスにぶつかる。その頃からクリーチャーを従え人間界を守る研究を始めた。

 

1年前。クリーチャー界で育った14歳程度の少年を見つける。緑と名乗る少年は、近くにあった木を守るように、庇うように眠っていたことから、守木という苗字を名付けた。彼の手にあった《首領竜 ゴルファンタジスタ》のカードを元に擬似的な契約のシステムを完成させ、虹村というマスターピースを得ることによってこの計画は完成へと向かった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

目の前の真沢の喋った内容は概ねそのようなところ。クリーチャー世界からの防衛装置だったんだな…。ジャシン達のことを考えるとそんな世界があるのも納得だが…

 

「…それで人体実験かよ、邪魔する警察を真のデュエルでまとめて葬り去るつもりかよ、人殺しかよ!そして緑のことを誘拐まがいかよ!救世主を作るためだけに!」

「当たり前だ、それを得るため、私が何年戦ってきたと!」

「手段を間違えてるつってんだよ!誰かに相談したりしたのか!?自分以外の誰かに助けを求めたのか!?」

「必要ないだろう、無駄に騒ぎを大きくするだけだ…」

「…そうだよな…叔父さんはそういう人だよな…」

「どうした飛水?何をする気だ?」

 

「じゃあフェアに行こうぜ、俺と真のデュエルだ、ドルファディロムだったりと擬似契約できてるあたり、最初の1体はお前が契約してるはずだろ?」

「いいのか?お前は緑と戦って知っているはずだ。シールドを破られれば守るクリーチャーのいないお前は大怪我を負う、そんな不利な条件でいくのか?」

「お前を直接叩けるのもその方法しかないだろ?」

「…見ない間に大きくなったな、飛水」

「うっせぇ。人体実験サイコ野郎に褒められても嬉しくねぇ」

 

俺はデッキを構える。自分の体が震えるのを感じる。緑のオービーメイカーに攻撃された時のあの感触が、今でも生々しく残っている…。次は病院じゃ済まないかもしれない。その手を彼が掴んでくれた。

 

「ねぇひすい。ボクも、手伝わせて」

「緑?」

「ボク、キミと戦ってからずっと考えてた。自分のやることが正しいのか、胸を張って生きられるのか。ボクは元々クリーチャーの世界に住んでいたけど、今はそっちには帰れない。だから真沢さんに頼るしかなかったんだ。けど、けど…二度とあんな誰かを傷つけるような辛い感覚、味わいたくないんだ!」

「緑…お前…!」

「手伝わせてひすい。デュエマには参加できないけど、ボクがフィールドを展開すればある程度ゲーム外、例えばシールドがブレイクされた時の攻撃の防御などで一緒に戦える!」

「そっか、裏技みたいでいいなそれ。よろしく頼む、緑」

「…うん!!」

 

「緑、私を裏切るのか?」

「うん、いっぱいまざわさんには感謝してるけど、返して欲しいんだ、ボクの相棒を」

「そうなんだね…君の選択は…」

 

ある程度条件はフェアになった。あとはアイツを…叔父さんを倒すだけだ。

 

「「「デュエマ、スタート(!!)」」」

 

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ドギラゴンが口に咥えた刀を必死でクリーチャー世界の扉を抑え込む。

クリーチャー同士、夕哉くん達の戦いは始まっている。

 

「頼む、ドギラゴン…夕哉くん…」

 

ジャシンという爆弾を持ちながらも今彼は戦っている。向かう方向を見失わず。他の彼が繋がった人々と一緒に。今は彼を信じるだけ…

 

「ドギラゴン、もう一発行くぞ!」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

真沢の先手で始まったデュエマ。あちらの盤面には《天災 デドダム》。こちらは《アストラルの海幻》を並べて俺のターン。

 

「俺のターン、マナチャージして《Law儿-怪Hawk(ローニン-カイホーク》を召喚!ターンエンド!」

(こいつはクリーチャー/タマシード。4体水を並べて…!)

 

「うん、そうだね、悪くない。私のターン、マナチャージし、呪文《有象夢造(パラドキシカル・ファクトリー)》。カードを2枚引いて2枚捨てる。その後コスト2以下のクリーチャー2体を墓地から蘇生する。《悪魔妖精ベラドンナ》を2体バトルゾーンに、出た時能力で2体を破壊して、1枚マナを加速して、1枚手札を捨てさせる」

「ぐぁっ!」

俺の《バイケンの海幻》が捨てられる。

「まぁそうだろうね。君のデッキはタマシードのカードを4つ揃えなければならない。どう足掻いても2ターンかかるだろうからね、さらに今のハンデスでバイケンを失い、防御陣形が崩れた」

「…!俺のターン!来い!《Drache Der'Zen(ドラッヘ ダーゼン》!!3枚ドローして2枚捨てる!ターンエンド!」

「ひすい…!」

「大丈夫だ、俺のデッキは攻めも守りも安定したデッキなんだ、しかも緑と戦った時より強くなってる。負ける訳ねぇだろ?」

 

「あぁ、だが君のデッキは立ち上がりが遅い。だから準備する時間を与えない。僕もクリーチャー達のためにデュエマの勉強はある程度していてね。僕のターン」

 

「全てを奪い尽くせ、《CRYMAX ジャオウガ》」

黒い体色の鋭い体付きの鬼が空から降ってくる。一目で分かる…こいつが真沢の契約カード…!気を抜けば全てを持ってかれそうになるそのクリーチャーの眼に、俺は目を逸らさずにいられない。

 

「ジャオウガは出た時お互いのシールドを3枚になるように選び残りを墓地に送る。それらはシールドトリガーは使えないから、慎重に選ぶことを薦めるよ」

「…このっ!」

俺の選んだシールドは、《Drache Der'Zen》と《AQ NETWORK》。

「マジかよ畜生…!」

「ジャオウガでシールドをT(トリプル)ブレイク。その時手札を2枚捨てさせる」

 

《バイケンの海幻》と《チェンジの海幻》が捨てられる。シールドへの攻撃が大きく空間を揺らした。

「ぐぅっっ…!!」

「ひすい!」

緑の繰り出したオービーメイカーが攻撃の余波を受け止める。しかしそれだけで勢いは殺しきれず俺は風に煽られ吹っ飛び、壁にぶつかる。

 

「悲しいよ、飛水。僕は君にもできることがあると思っていたんだ。でも君は僕に立ち塞がる道を選んだ。クリーチャーから世界を守る大した策もなく、ただ感情で僕を否定した。さぁ、トドメを刺そう。僕の興味はクリーチャーの契約者にしかない」

「まざわさん…ダメ!死んじゃう…!」

緑が…立ち塞がってくれてるのか…?

「…殺すんだよ。この子はこの世界にいらない存在だ。せめてこれ以上の苦痛を与える前に…」

「それは…それは、まざわさんが決めることじゃないよ!!」

「どいつもこいつも感情論で…!」

真沢が、緑の身体を踏みつける。そんなことを…!許せるわけ…ねぇだろうが…!

 

「おい…お前、どこ見てんだよ…!デュエルはまだ終わってねぇんだよ…!」

「この局面でもクリーチャーの覚醒に行かないのが君の限界だ。それが『僕たちの』限界なんだ。飛水」

「終わってねぇつってんだよ!シールドトリガー!《コーライルの海幻》!デドダムを山札の下に!」

俺は痛む体に鞭打って言葉を続ける。

「…そうだよ、今の俺にクリーチャーに対抗する手段なんてねぇよ!夕哉や光屋、火奈、さらに緑に頼んなきゃ俺は戦えねぇ!でも!俺は!お前を止めなきゃなんねぇ!家族としても!デュエリストとしても!」

 

「だからゲームが終わるまでは!いや、俺がくたばるまでは!勝手に限界決めつけてくるようなやつの言うこと聞くわけねぇだろうが!」

「飛水…」

 

「俺のターン!!」




次回予告はボク、緑がやるよ。
立ち上がった飛水と真沢。2人の意地を賭けた戦いはどちらかの勝利へと向かって進んでいく。シールドが0枚に追い込まれた飛水は勝つことができるのだろうか。
次回、『絶望を超えて・後』
諦めないで、ひすい…。
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