動力源を落として、施設の動力装置は止まったはずです。なのに夕哉くんから連絡が来ないということは…
最悪の可能性を考えて、私は長い廊下を走っていました。
「運動してないのが祟ってます…火奈ちゃんだったら…」
「言ってる場合じゃないですね、虹村さんが動き出してた時も考えて、今は走るだけです!」
「御白さん、手伝いましょうか?」
「大丈夫ですドランさん、いざという時に備えて、待っててください」
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俺の先行で始まったデュエマは、お互いにゆっくりと、しかしいつ大きな動きが起きてもおかしくない立ち上がりだった。
「《ブルーム=プルーフ》を召喚!」
「《フェアリー:Reライフ》を詠唱」
俺の3ターン目。
「…お願い。《邪龍 ジャブラッド》!!」
「…前に俺から逃したドラゴン…」
「そう、俺の新しい相棒。出た時に2枚墓地を増やして、さらにブルーム=プルーフで攻撃!味方のアビスが攻撃した時、さらに墓地を2枚増やす!」
「シールドトリガー、なし」
「よし!俺のターン終了!」
「俺のターン…《天災デドダム》を召喚、デッキトップ3枚を手札、マナ、墓地に振り分ける。ターンエンド」
虹村が更に切り出す。
「…お前は、失ったことがないのか?あれを見て、まだ俺を止める気なのか?」
「同情してもらいたくて見せたの?そう言うわけじゃないと思ってたんだけど」
「いや、人間は何かしらを得て失う生き物だ。お前もそうじゃないのか?」
「…いや、そんな事はないよ。俺も妹が病気…みたいなものでさ。そういうのはあるかも」
「じゃあお前は何故ヘラヘラしている!何故何事もなかったかのように、他の人間と群れて生きられている!!」
「…あのさ。何事もなかったかのように見えて本当に何もない人ってさ。そうそういないんだって!俺のターン!《深淵の怪炉 マーダン=ロウ》!登場時能力で《天命龍装 ホーリーエンド/ナウ・オア・ネバー》を墓地に!更にブルームで追撃!ジャブラッドで墓地を追加!」
「シールドトリガー、《ドンドン火噴く(ボルカニック)ナウ》。手札、マナ、墓地にカードを振り分け、墓地に落ちたザーディクリカ以下のコストを持つブルームを破壊!これで俺の展開を止めるものは…」
「…邪龍ジャブラッドの能力。自分の墓地を4枚、シャッフルして戻すことによって、その除去をなかったことにできる!」
「お前ばかり…失わないで…!」
「逆なんだ!失うのが嫌だから!今進んでるんだ!これ以上大事なものに危害を加えさせないために!」
「…お前は…どこまでも…それができなかった俺は、俺は…!」
聖堂の一部がひび割れ出す。マナは十分貯まってる、反撃の糸口が、虹村にないわけないだろう。
「呪文、《ブレイン・スラッシュ》!デドダムが水と闇を持つため、両方の効果を発動する!山札を3枚引いて1枚捨て、コスト8以下のクリーチャーを墓地から呼び出す!来い!《龍風混成 ザーディクリカ》!」
「ブルーム=プルーフで破壊!」
ブルームが箒を放り投げ、ザーディクリカに立ち向かう。ブルームが小柄さを生かしてザーディクリカの懐に入り込み、死角から操った箒を命中させる。それでもザーディクリカのEXライフを破壊するのみに留まってしまう。
「さらに、ザーディクリカの登場時能力で墓地から《砕慄接続 グレイトフル・ベン》をバトルゾーンに、出た時の能力で墓地のカードを全てマナにタップして送る」
「ブルームで破壊!」
同じようにブルームがグレイトフル・ベンに一撃入れるものの、またもEXライフで耐えられてしまう。EXライフを飛ばせているだけ楽とも言えるけど…
「グレイトフル・ベンの効果で、マナゾーンから種族:ディスタスを無料で召喚できる。《霊宝 ヒャクメ-4》を召喚。1枚マナを加速し、手札を1枚捨てさせる」
捨てられたカードは…《アビスベル=ジャシン帝》。
「ジャシンのカード…!?いや、ターンエンド時ザーディクリカは呪文を詠唱したターン、1ドローとパワー5500以下のクリーチャーを破壊する、ブルームを破壊!」
(墓地切れ…3枚しかないか)
「な…。ジャシンを出せるのに手札に持っていただと!?」
「前にやった時ドルファディロムに無理矢理突破されたから、一応保険」
「お前のその減らず口…叩き潰してやる…勝って…勝って…!」
(コイツはヘラヘラとしているように見えるが…逆にそれで覆い被せているのだろうな…真沢と相対したあの時のように…)
『確かに災害や犯罪を止めるための抑止力になるかもしれない。それの為にお前は何人犠牲にするつもりだ』
(あの時はすぐ収めざるを得なかったが…あの状態が続けば…)
「どうしたの、ジャシン?出番だよ!」
「フン、どうヤツを料理するか考えていただけだ」
「呪文、《邪侵入》!4枚墓地を増やして、《アビスベル=ジャシン帝》をバトルゾーンに!」
「来たか…ジャシン…!」
「アビスラッシュ!ジャシンで軽減して2コストで《ハンマ=ダンマ》を召喚!ザーディクリカを破壊!」
「マーダン=ロウで攻撃!墓地を2枚増やしながらその時闇のシビルカウント3でそっちの墓地のザーディクリカの登場時能力を使わせてもらう!コスト7以下の呪文、《絶望と反魂と滅殺の決断(パーフェクト・ダークネス)》を墓地から唱えて、墓地から《ハンマ=ダンマ》、《レター=ジェンゲガー》をバトルゾーンに呼び出す!今出したダンマでグレイトフルベンを破壊!」
「シールドトリガーなし」
「ジャブラッドで追撃!墓地を2枚増やす!」
「ヒャクメでブロック」
「ターンエンド!残り2枚まで追い詰めた!レターの効果で手札を補充、ダンマを1体山札に返して、ターンエンド!」
「………」
「虹村…?俺のターンエンド、そっちのターン」
「そうだよ…お前がヘラヘラしてんのは…『失わないと思っているからだ』。そう思ってるからこんなに…フフフ…」
「何をする気で…!」
「俺のターン、呪文《お清めシャラップ》。お前の墓地を全て山札の下に。そして…《聖魔連結王 ドルファディロム》をバトルゾーンに!」
あの悪魔と天使が歪にぶつかったクリーチャー、俺が辛酸を舐めたクリーチャー、ドルファディロムがまたも俺の前に現れる。でも、なんか様子が…?
「吹き飛ばせ」
ドルファディロムの登場時能力の全体破壊はジャシン以外受け止められず破壊される。墓地が切れているから仕方ないし、何よりこの後アビスラッシュすればいい…だけ…?
ドルファディロムの攻撃はひとしきりジャシン達に向けられた後、俺の後ろの建物へと命中する。ドルファディロムの強烈な攻撃が建物を揺らし、崩落が始まる。
「虹村!何をしてるんだ!」
「そりゃあ勿論、お前から大事なものを奪うためだよ。お前のお仲間さん、何人助かるかな?」
「やめろよ、なんで!俺だけを狙えば!お前も仲間を失うかもなんだぞ!」
「知ってるよ!!お前も何も失わないと思うなよ。どうせ積み上げても全部最後は手元には残らないんだから」
「コイツ…それっぽい理屈を並べているものの…クリーチャーの破壊衝動に飲まれたか…」
「ジャシンくん!止めなきゃ!」
ドルファディロムの攻撃は続き、建物の様々な部分を破壊していく。地下の建物だから自分達も巻き込まれる可能性があるのに…
「ジャシンくん!止めて!お願い!」
ジャシンが手を伸ばすもののドルファディロムは既に別の場所を破壊し始めている。こちらに興味などないように、ただ破壊に赴く。俺と戦うんだろう…!?なんで他の人を…!!
「消えろ!消えろ!俺から奪うもの全てを!」
「虹村…やめろ…!」
建物は半壊し、デュエルフィールド以外殆ど残っていない状態になってしまった。
「黒井夕哉、お前の大事なものは…どれくらい残ったんだろうな?」
「……お前えぇぇぇ!!!」
頭の中がドス黒いもので埋め尽くされる。泥のようナものに頭も体も囚わレて、意識が混濁していく。でも、一つだけ見えてイる。分かっている。
虹村を、倒す。
「俺のターン!ジャブラッド、バウワウジャ、ダンマ、フォックをアビスラッシュ!!ダンマでデドダムを破壊!」
「バウワウジャで攻撃!その時、攻撃時能力でドルファディロムを破壊!」
自分の声なのニそうでなくなルような不思議な、極めテ不快な感覚が身体をうずマく。このままいケば…
「ドルファディロムはEXライフが離れた時も多色(レインボー)でないクリーチャーを破壊する」
「ジャシン、ジャブラッド、バウワウジャ、フォックは墓地を16枚戻して耐えさせる!」
「めちゃくちゃな…!だが、シールドトリガー!《ブレイン・スラッシュ》!効果でザーディクリカを蘇生!更に効果で呪文、《ドラゴンズ・サイン》!ザーディクリカ2体目!2体目から先ほどの《ブレイン・スラッシュ》!ドルファディロムとザーディクリカで条件達成!《天命龍装 ホーリーエンド》を墓地から蘇生する!お前のクリーチャーを全てタップだ!!」
「…ターンエンド、ジャシン以外の全てのクリーチャーを山札の下に」
虹村が、大きクため息ヲついてイる…!なんデ…!?
「お前、クリーチャーに飲まれてるだろ?相手がジャシンでもなんでも俺は関係ないが」
「フン、自覚されてしまったではないか」
自分カラ、別人ノ声ガスル…
「夕哉よ、お前はここで終わりのようだな?あとは余がお前を丁重に扱ってやるから安心するがいい」
ジャシン…!
「お前は一時の怒りに任せて感情的に戦った。ジャブラッドも手に入れたし、余はもうお前に頼る理由は無いということだ。怒り、つまり人間の闇を放出するタイミングを狙えば、これで簡単に乗っ取れる、今までご苦労だったな」
…そっか、俺は…
「今更気づいても遅い。あとは余がコイツを捻って終わりだ。良かったな、虹村は殺せるぞ」
『君がそのままでいられるなら、君はジャシンの闇を覆い被さる光になれる。そうである限り、ジャシンが君を、君の大事なものを害することはない、断言するよ』
足を滑らせたように、更に意識が深いところに落ちていく。今更、竜也さんのあの言葉を思い出しながら…俺は…馬鹿だったなぁ。いつの間にか、ジャシンを自分自身の力だと思いこんでいた。
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誰かの走る音が聞こえてくる。誰かの…誰だっけ…。
「夕哉くん!夕哉くーん!!」
次回、『闇の向こうで・後』