デュエル・マスターズOver(オーバー)   作:シグレサメ

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闇の向こうで・後

「夕哉くん!!」

 

私は部屋に入った途端目に入った状況に足がすくんでしまいます。虹村がドルファディロムを従えて…途中の爆発はそのためでしょうか…。ドランさんに守ってもらいましたけど…!もう1人は…夕哉くん!?

 

夕焼け色の髪が深く黒く染まっており、体から出る黒い何かが只事ではないことを伝えてきます。…まるで、あの時の私みたいな…

 

「御白さん!夕哉さんは不味い状態です、あれは…!」

突如として彼の手から紫の弾が飛んできて、私はドランさんに庇ってもらい、体が横に飛びました。

「小娘か。もう遅い。夕哉はもう戻ってこないだろうな」

 

「嘘、ジャシン…!夕哉くんを乗っ取って…」

「乗っ取ったとは失礼だな。こいつが勝手に仲間を失った怒りに飲まれ、余につけいられてしまっただけだぞ?」

「夕哉くんをどうするつもりですか…?」

「完全に乗っ取ったら用済みで死ぬな。良いではないか、余はこの力を得て完全復活する。その途中で虹村は倒れる。それでお前は何も損をしない」

「します!夕哉くんを返してください!!」

 

私は必死で夕哉くんの身体にくっついて、呼びかけます。

「夕哉くん!私です!御白です!公輝さんから全員無事という連絡が来ました!大丈夫ですよ!皆!無事なんです!」

「邪魔だ」

「御白さん!!」

 

ジャシンが打ち出した光弾はドランさんがぶつかり受けとめました。

 

「御白さん!夕哉さんに呼びかけ続けて!デュエルができない以上、それしかないです!大丈夫、私、守ることには慣れています!」

「夕哉くん…帰ってきてください…!」

「邪魔だと言っている」

 

ジャシンが打とうとした光弾は突然暴発して、虹村の方向に飛んでいきます。私は少し笑ってこう言います。

 

「夕哉くんも戦っているんですね…今ので確信しました」

「夕哉め…小娘の呼びかけに答えて戻ってこようとしているのか!?しかし無駄だ、もう少しで完全に乗っ取れる、それまでの時間だ…!」

 

「お前…いつまでも俺を倒せるつもりでいるなよ…」

 

虹村が突如喋り出して、カードを握ります。夕哉くんがこんな状態でデュエマが継続できるわけ…不味いです…!

 

「《斬龍電融 オロチリュウセイ》、《天災 デドダム》を召喚!オロチリュウセイの効果で全体にスピードアタッカーを与える!」

 

「デドダムで攻撃する時、墓地とマナから《SSS級天災 デッドダムド》を侵略!ジャシンをマナに送る!」

(余の乗っ取りが完了する前に余を除去したか…しかしその時の闇の力が、更に余の力を加速させる!)

 

夕哉くんから出る黒いものが更に数と勢いを増していきます。ドランさんが私に飛んでくる分を光弾を細かく撃って打ち消してくれてますが…長く持ちそうにありません…でも…!

「今、手を離しちゃ…絶対ダメ…です…!」

「御白さん!夕哉くんの意識を呼び出せるようなもの!なんでも!ものでも、言葉でも!」

「ドランさん…!はい…!」

 

「デッドダムドでWブレイク!」

(ふん、シールドトリガーで受け止めて…余程のクリーチャーであればトリガーを弄ることなど…何!?)

「死にたいのか黒井夕哉!早く意識を全てこちらに渡せ!そうでなければお前ごと死ぬぞ!」

「夕哉くん、まだいるんですね…なら、大丈夫、です」

「小娘も諦めろ!攻撃に巻き込まれて死ぬ気か!」

 

私もデッドダムドの攻撃に巻き込まれてボロボロ、ですけど…

 

「夕花ちゃんも夕哉くんのお婆さんも!飛水くんも火奈ちゃんも!竜也さんも公輝さんも!私も!!全員夕哉くんを待ってます!帰ってきてください!」

「諦めろと言っている!」

 

「そんなわけないじゃないですか…私も、夕哉くんも、両方助かる道しか、私には見えてません…!夕哉くん!!!」

 

私は体中の力を振り絞って声を張り上げる、帰ってきて!!

 

『どんな人でも、どんな立場でも、一緒に遊べばお互いに楽しむことが、分かりあうことができる最高のゲーム!デュエル・マスターズ!!まだ一緒に遊びたいんです!!!』

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

声が聞こえてくる。夕花のことも、他に許せないことも、色々あるけどさ。

 

多分俺があの時、初めて御白と会った時、一番欲しかったのは…

 

『楽しい居場所…だったんだろうなぁ』

 

「どいてよジャシン、俺は戻らなきゃ」

「黒井夕哉…効力を取り戻して…!」

「うん、もうジャシンには負けないよ。正真正銘、今度は自分のものにしてみせる」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

ドルファディロムでトリプルブレイク!お前ごと!お前の大事な物ごと!消えろ!!」

「もう、ダメなんですか…!」

「御白さん!夕哉さん!」

 

「大丈夫、皆、お願い!」

 

アビスの皆が墓地から現れ、攻撃の余波を受け止める。俺はもう、怒りに飲まれない。

 

「ありがとう、御白。御白が呼びかけてくれなきゃ、本当にヤバかったと思う」

「夕哉くん…!」

「ただいま、あと…ごめんね、待たせて」

「夕哉くん!!」

 

御白がさっきに増して強く抱きついてくる。

 

「ちょっと待って…お腹締め付けないで、苦しい…」

「あ、ごめんなさい!…でも、本当に、良かったです…」

「うん、来てくれてありがとう、本当に助かった」

 

「あとさ、これも言わなきゃいけないと思っててさ。夕花のこととか、真沢の事とか、色々大事なことが多くて気づかなかったんだけどさ」

 

「俺、デュエマめっちゃ好きなんだ。どれにマナ使うかの選択とか、シールドトリガーのワクワクとか、色々…言ってなかったなって思って」

「それ聞いて安心しました!これからもっと遊べますね!」

「勉強もちゃんとやらないとだけどね」

「それ今言わないでください…」

 

2人で笑い出す。こんな状況なのに、ずっと続いていてほしい時間みたいな、不思議な感覚だった。

 

「おい…!お前ばかり…お前ばかり!!何故失わない!!」

「…それは違うでしょ?失うものがあったとしても、途中から拒絶して、周りを寄せ付けなくなったら自分の落ち度だと思う。助けをちゃんと求められる人じゃないと、人は助けられないから」

「偉そうなことをグチグチと…」

「俺もそうだったんだ。妹のためとか言って自分のことしか見えてなくて…でも色んな人に会って、ちゃんと自分に向き合えなきゃ、誰も助けてくれない、助けられないことを知ったよ」

 

虹村が強く憤る。あとはデュエマで決着をつけるだけだ。

「どの道シールドトリガーがなければ!あったとしてもドルファディロムで多色でない呪文を封じている!ここでお前は死ぬんだ!!」

「うん、絶望的な状況だけど…一枚だけお守りがあるんだ。あれを引くしかない!御白、こんな状況だけどさ、ちょっとワクワクしてる自分がいる」

「えぇ…後がない状態で来るシールドトリガーは、凄く興奮しますよね!」

 

「シールドチェック1枚目!シールドトリガー、《ヴィオラの黒像》!ザーディクリカを破壊して、墓地から2枚目の《アビスベル=ジャシン帝》を召喚!行くよ、『相棒』?」

「調子の良いことを…また隙を見せれば今度は完全に乗っ取ってやる」

「…上等だよ!」

 

「まだだ!俺には大量のクリーチャーが…!」

 

「シールドチェック2枚目!トリガーなし!」

「夕哉くん、頑張ってくださーい!」

 

最後のシールド、高揚が止まらない。やっぱりこのゲームは、どうしようもなく面白い。

「シールドチェック3枚目!!来たぁ!シールドトリガー、《デーモン・スパーク》!!効果で相手のクリーチャーを全てタップする!!」

「私のお守り!やりました!!」

「俺の…戦法が…俺の勝利が…」

 

「虹村さん、あなたは凄く強い人だったけど…今度は罪を償って、真のデュエル抜きで、デュエマしましょう。俺のターン!行くよ、皆!アビスラッシュ!!」

 

墓地から沢山のアビスが現れる。ジャブラッド達が破壊に必要なための墓地を肥やし、ハンマ=ダンマ達がEXライフを破壊してトドメへの道を作る。

 

「アビスベル=ジャシン帝で、ダイレクトアタック!」

 

ジャシンに命じた攻撃は虹村を掠めて奥の壊れた建物に命中する。

 

「さて、あとは公輝さんかな」

「ですね!夕哉くん、お疲れ様です…?」

 

御白が突如として足の力が抜けたように座り込む。

「ごめんなさい、さっきもデュエルしてたらで、ちょっと無理しすぎたみたいです…」

「そっか、その状態であんな無茶させてごめん、でも俺も…」

 

ジャシンに乗っ取られかけて、虹村と死力を尽くしたデュエマをしたことで俺の体力は尽きかけていた。体に力が入らない。お互いにもたれかかるように背中を預ける。ちょっと照れくさいけど、正直今は疲労でそれどころじゃない。

 

「これは…2人で回収待ちですね…」

「だね…とりあえず連絡入れよう…」

 

「おい…俺は…1人でなくなれるのか…?」

こちらも体力が尽きて動けない虹村がこちらに声をかけてくる。

「うん、きっと。相手をわかろうとする努力を続けるなら、俺も君を助けるよ。虹村も疲れたでしょ?こっち来る?」

「お前…さっきまで真のデュエルをしていた相手だぞ?」

「うん、でもさ。デュエマして勝ち負けが決まったからってその人の価値が決まるわけじゃないじゃん。たしかに虹村は償わなきゃいけないものがあるけど、それとこれとは別でしょ?虹村のこといっぱい知って思ったよ」

「………」

 

虹村は背中を向ける。

「俺はまだ、お前の力を借りるわけにはいかないだろうな」

「うん、ゆっくり待ってる」

 

「夕哉さん、御白さん!ボロボロだ、でも勝ったんだ…!」

公輝さんを始めとした警察の皆さんがやってくる。

「公輝さん、なんとか勝ちました…!」

「うん、結果的に程度に差があれど皆病院だねこれは…あちらの作戦勝ちとはいえ、守れなかったオレの責任だ」

「皆無事だったのでモーマンタイ!ですよ!」

「すいません公輝さん、虹村はどうなるんですか?」

「あぁ、虹村についてはこちらで預かるよ。クリーチャーを使った犯罪は特殊すぎてどうなるか分からないけれど…真沢に利用された立場だ、いい証拠が揃えば罪が軽くなる可能性もある」

 

「俺は、重く裁かれるんじゃないのか…?」

「それは、これからのキミ次第かな」

 

「良かった!反省して、早く帰ってきてね」

「お前に会わないように長くいるのもいいかもな」

最後に虹村と、少しだけ通じ合えたような気がした。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

〜2週間後〜

 

俺達は全員無事退院して、今日から学校生活に戻った。ジャシンとはあんなことが起こった後とは思えないほど今までと変わらない。御白は2週間の間に進んだ勉強によって悶絶していた。まぁこれ俺も大変になるんだけどね。

 

虹村達を倒したからと言って夕花の病気が回復するわけじゃないけれど、公輝さん達が研究所の跡地を使ってクリーチャー界を分析する算段を立てているらしい。緑も公輝さんが引き取ったみたい。クリーチャー世界について研究すれば病気を治せるかもしれない。少しだけ期待していてと言われた。

 

あ、そうだ。会いそびれたけど竜也さんも一時期こちらに帰ってきていたみたい。すぐに海外に用事ができてしまったらしいけど…。また、会ってデュエマできるといいなぁ。

 

飛水や火奈とは病院の時から話す回数が増えた。同じ秘密を共有するもの同士、御白も含めて仲良くしている。火奈の日課のランニングが復活したらしいんだけど、カイザーの声かけがうるさくてランニングの時はデッキを置いてきてるらしい。流石に笑っちゃった。

 

だから俺達の話はこれで一旦おしまい。かな?

 

その時、電話の通知が鳴り響く。

 

「ねぇ夕哉、お疲れ様パーティしようよ!緑や公輝さんも来るって!」

 

いや、まだまだ続くみたい。

 

デュエル・マスターズOver・完

 

   

    

  デュエル・マスターズOverRevolutionへ続く

 




ここまで読んでくださり本当にありがとうございました。筆者のシグレサメと申します。ここまで読んでくださった皆様への御礼、そしてこれからについてこの場を借りて説明させていただきたいと思います。

まずはこの作品、デュエル・マスターズOver(オーバー)についてです。次に投稿する予定の番外編、「終わった後はまた始まる」の投稿を持ってこの作品は完結といたします。

そしてもう一つ、夕哉くん達の物語の続き、次回作のデュエル・マスターズOverRevolution(以降デュエマORと略させていただきます)については少し時間を空けての投稿となります。推敲や後書き欄(次回予告からの変更)の調整等で時間がかかるため、ゆっくり執筆させていただきます。

デュエマORは使うカードもアビスレボリューション、2023年度のカードになり、新キャラや、新しいカード等が沢山登場し、夕哉くん達の新たな冒険が始まります。ぜひ皆さん楽しみにお待ちいただけると嬉しいです。

重ねて、少しでもこの作品を読んでいただき、触れていただいた方全てに、ここで改めてお礼をさせていただきます。次回の番外編と、デュエル・マスターズORでお会いしましょう。筆者のシグレサメでした。
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