デュエル・マスターズOver(オーバー)   作:シグレサメ

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俺、黒井夕哉(くろいゆうや)はある日謎のデッキケースを拾い、ジャシンという謎のクリーチャーと出会った。
雇い主でデュエマ大好き系お嬢様の光屋御白に連れられてカードショップ、DM Stationを訪れていた。俺たちはそこでうるさくしてしまい、そこで出会ったデュエマプレイヤー、青海飛水に怒られ、出禁をかけたデュエマを挑まれる。
《Drache Der'Zen》を切り札にする飛水はめちゃくちゃ強くて、俺はとても追い詰められたんだけど…


流れるリズムと揺るがぬ頂上・後

「黒井くん!」

「どうした、手詰まりか?」

光屋さんの悲鳴にも似た呼びかけ、青海くんの挑発。そのどちらも不思議と俺の頭を通り抜けて、目を閉じて、気づけば澄んだ闇の中に身を置いていた。

 

「ふん、余を召喚しておいて何度も負けるとは許さんぞ?」

「ちょっと君は墓地にいるんだから静かにしてて」

「なに?余をぞんざいに扱うというのかぁぁぁあああ!?何故逆らうことができぬ!?黒井夕哉ぁ!余を自由にさせろ!」

 

静かになった。これでゆっくり考えられる。

自分のバトルゾーンは《ハンマ=ダンマ》が1体。青海くんのシールドが0枚だから見かけ上ダイレクトアタックを仕掛けられるけど、あちらの《バイケンの海幻》があって、攻撃すると《AQ NETWORK》が出てくるからダイレクトアタックは通らない。

手札の《邪侵入》を使えばジャシンを呼び出して残った3マナでラッシュが仕掛けられるけど、今度は前のターンに出ていた《チェンジの海幻》による攻撃2回制限が邪魔をする。2回の攻撃でAQを突破するのは無理があるだろう。

 

「つまりあとは…AQ NETWORKを出さないでもらう、とか?」

自分の墓地を再度確認する。何処まで行っても賭けになるだろう、AQ NETWORKを出されたら負けの賭けだ。

そう、チャンスがあるのなら。まだ青海くんに負けるって決まってないなら。

「上等だよ!チャンスがあるなら全然最高じゃないか!」

 

「俺のターン!呪文、《絶望と反魂と滅殺の決断》!使用する効果は手札を1枚捨てさせる効果とコスト4以下のクリーチャーをバトルゾーンに出す効果!《アビスベル=ジャシン帝》をバトルゾーンに!!」

「手札を選ばせて捨てさせる効果と、ジャシンの蘇生か。1マナしか残ってないが、そのマナで何ができる?」

「それはこれだよ!アビスラッシュ、《ブック=ラギルップ》!」

「ブック=ラギルップ…?」

「ブック=ラギルップはシビルカウント3で相手の手札を見ないで1枚選び、墓地に送ることができる!さぁ、勝負だよ飛水!!」

 

(ダークネスのハンデスを挟んで確率を最大化させつつ、ブック=ラギルップで俺のAQをぶち抜けば勝ち、を整えてきた!コイツ…!)

「夕哉…お前… シャッフルできたぞ、来い!!」

「うん、行くよ飛水!……一番右だ!!!」

 

墓地に落ちたカードは、《AQ NETWORK》。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「その…すまねぇ。強く言いすぎた。お前みたいな、いや、似ても似つかないな。他のゲームをやってたやつに馬鹿にされた時のことを思い出して、ついカッとなっちまったんだ」

「こっちもごめん!うるさくしたことには変わらないし…」

「その…光屋も…言いすぎた、スマン」

「大丈夫ですよ、でも二度とそういうことはしないでくださいね」

「じゃあ俺はこれで…」

「待って青海くん!その、友達になれないかな?」

「友達?俺でいいのか?」

「うん、君は間違ったことは言ってなかったし、何より楽しいデュエマができたら友達になれるんだってさ!まぁ、言葉遣いは直した方いいかもだけど」

「ふん、何だそれ、まぁよろしくな、夕哉」

青海くんがそろーりと手を伸ばしてくる。

「うん、よろしくね青海くん」

「飛水でいいぞ」

「よろしくね、飛水」

 

最初はビックリしたけど、新しい友達ができて…

 

「こらぁ飛水!お前別のお客さんに因縁ふっかけたのか!?客が怖がって逃げたのを見たぞ!!」

「すいません店長!俺の考えすぎで…」

「考えすぎでもやったことはやったことだよ、ほら、こっちに来なさい…」

 

飛水は店長によってお店の奥深くへと消えていった。あれ、こんな事、前に一回見たような気がする…

 

「く、黒井くん、折角ですしもう少しデッキいじって行きます?」

「うん、そ、そうしようかな」

光屋さんも俺も、ここのお店で二度と騒ぎを起こさないようにしようと固く心に誓った。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

このお店ではデュエマ用のマシーンが2台置いてある他に、椅子と机が8脚×3台の24席が用意されていた。光屋さんによると、デュエママシーンによる自動的な処理も楽しいけれど、相手の顔を直接見てやるアナログな方法の支持も中々根強いらしい。あとマシン導入のためのお金と場所代のこともあるらしく…相対的に光屋コーポレーションの商品の中では失敗作寄りなのだと、笑って教えてくれた。

 

「やっぱりジャシンのカードを100%扱えるようにデッキを改造しましょう!2枚しか《レター=ジェンゲガー》が入っていませんが、手札の数を増やすために4枚入れましょう!」

「そんなに手札って大事なの?」

「大事ですよ!第一手札というのはそう簡単に増えてくれません、シールドがブレイクされたら手札に入りますが、それ以外だとドローカードを使わないと…」

前に比べたら聞き取れるようになってきた。とりあえず《レター=ジェンゲガー》を4枚入れておくか。竜也さん戦でも活躍してくれてたし。

 

「おぉー!何だコイツめちゃくちゃつえぇ!このショップじゃ敵なしのソクさんを倒しちまった!」

野次馬の大きな声が聞こえてきた。

「何が起きてるんですか?」

俺は、何となく近くにいた人に聞いてみる。

「さっきまでデュエマの店舗大会やってたんだけど、優勝常連の速攻使いのソクさんをボコボコにしちまったんだ!」

少し年上の茶髪の男性が席を立つ。それを同じくらいの年齢だろうか、ソクさんと呼ばれた青年が呼び止める。

「君強いな、対戦してくれてありがとう、学べることがたくさんあったよ!またやろう!」

「…またやることはないですね、俺は逆に何も学べませんでした」

 

観衆がどよめく。

「何だコイツ、ソクさんに向かって…」「でも凄い強かったし…」

優勝商品の商品券を受け取りそそくさと帰ろうとする彼を見て、俺は声を上げた。

「そんな言い方、無いんじゃないですか…?」

「君は何…?何かの大会の優勝者?」

「それは…ないですけど。…黒井夕哉です、ソクさん、に失礼じゃないですか、謝ってください」

「君、安っぽい正義感で動くのはやめた方いいよ、いずれ損することになる」

「そんなことは…」

「分かった、じゃあ一つだけ教えよう、俺の名前でいい?俺は虹村五色(にじむら ごしき)。また会えるといいね、金輪際ないだろうけど」

 

「黒井くん、青海くんは口悪いけどいい人でしたけど、皆が皆そういうわけじゃないんですよ、危なっかしいです」

「ごめん、何となく…」

何となく…自分が首を突っ込んでしまったのは、あの時のように踏み出さなかったことによる後悔をしたくないから。そしてあの虹村という人に、また出会う気がしたから…

 




次回予告、今回も俺、青海飛水が担当だ。
『ある日光屋御白は自分のカードケースから見知らぬカードを見つける、そのカードの影響を受けた御白は様々な高額なものに心を奪われてしまうようになって…?』
次回、「俺が、私が、欲しいもの・前」
是非見てくれよ。…これ、次回俺出ないよな?
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