伝説の勇者・前
「僕たちの目的は2つ。最高のクリーチャーの調達と、最強のデュエリストの育成。それが救世主には必須なんだ。」
まざわさんの言葉。なんていうんだろう、今日はすごく嬉しそうに喋ってるなー。
「今日は君たちにお願いしたいことがあるんだ。『ボルシャック』というクリーチャーは知っているね?」
ぼるしゃっく。うん、昔読んでもらった本にあった。
「ボルシャックのカードは幾万とあるけれど、その中に一種類。意思が介在するカードがあるんだ。あれがあれば、僕たちは次のステージに進める。緑、虹村くん、頼めるかな」
うん、分かった、頑張ってくる。それが出来たら、また、あそこに帰れるんだ。
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「君達ってどこから来たの?」
俺、夕哉はいつも通り家庭教師の仕事を終わらせて雇い主の御白と、ジャシンやドランについて話していて…
「気づけば、こちらに来ていて…初めて目を覚ました時は大変でしたよ、クリーチャーの身体を失ったせいで自分の身体は紙同然。そよ風さえ大敵という状況でしたね」
とドラン。その契約主の御白は涙ぐんでいる。やっぱり彼女は優しい。
「余は復活した途端にこちらの世界にいたからな。手頃な人間を見つけて…というところだ」
「その人間に主導権を握られたら世話なくない?」
「貴様…死にたいようだな…!」
ジャシンはこんな感じか。デュエマにならなきゃ猫パンチ程度しか痛くない。気にしないでおこう。どちらかというと…
「『こちらに来ていて』ってどういうこと?ドラン」
「余は無視か夕哉よ!」
「私達は元々クリーチャー達の住んでいる世界から来たんです、そこで私は統治者として君臨してたのですが、そこから気づけばこんな事に…」
「クリーチャーの世界があるんですか!?」
御白が一気に食いついてくる。
「だってデュエル・マスターズは色々な人が協力してお話を作っていて…とにかくあり得ないはずなんです」
「しかし私の元々いたところに《アストマープル-T3》も《シェケダン・ドメチアーレ》もいて、仲良くしていたんですよ」
「えぇ…?そんなに、都合よく…?」
御白は納得していないようだった。
「ねぇ、どういうこと、ジャシン?」
「フン…一つだけ言えることは、その物語を作ったもの、その物語の受け取り手を元にクリーチャーの世界は生まれている」
「えっと…?本当にあるんだ…それで…!」
「人間が作った物語を元に、あとからそのクリーチャーは生まれたというわけだ。『余を始めとした、アビスは違うがな』」
「少なくともドランさんの周りのクリーチャーは元からいた訳だもんね、じゃあ…」
「余とドランは、人間の意思で作られたクリーチャー界において「無」から生まれている、その証がこれだろう」
ジャシンが自身のカードに印字された文字に手を伸ばす。
「クリーチャー界がなぜ出来たかまでは分からぬが、その産んだ人間達の意思の知らないもの。それを越えたものにこの文字が印字され、契約ができるのだろうな」
難しすぎる、人間の作ったクリーチャー達の意思が固まって、もう一つの世界になって…その世界で0から生まれたクリーチャー、ジャシンとドランがこっちの世界に来ているってこと…でいいのかな。
御白はなんか頭から白い煙が出てるし。
電話が鳴った。誰だろうか。
「おーい夕哉くん、久しぶり」
「竜也さん!お久しぶりです!」
「機械の解析とドランのカードデータの根回しが終わったよ、これで彼女もドラン・ゴルギーニを大手を振って使えるよ」
「あ、夕哉くんの協力者の方ですか!お世話になってます、光屋御白と申します…」
「ご丁寧にどうも。問題の方なんだけど、2人の違う者の意思をを無理やりくっつける機械だったんだ。こんな超科学が何処から来たのかも気になるけど。問題は使われた用途」
「それって、御白とドランの時みたいに持ち主がまた使う可能性があるってことですか?」
「夕哉くん、それで合ってるよ。となると持ち主は、他にもそういうことができそうなクリーチャーの目星をつけてるんじゃないかな」
「じゃあ、ドランさんみたいなクリーチャーがまだいるっていう…!」
「うん、僕も探してみるつもりだ。君達は無理しないで」
「探させてください。また御白みたいにクリーチャーに飲まれる人が出たら大変です」
「私も!手伝いたいです!あんな辛い思い誰にもしてほしくないから…」
「…分かった。でもくれぐれも無理はしないで、じゃあまた今度」
「待ってください!クリーチャーの世界について、竜也さんは何処まで知っているんですか?」
「そこまで知ってるんだ…クリーチャー達の世界ができたのは10年くらい前ってことかな」
「分かりました、後でジャシンから聞いたこと、全部本当かは分かりませんが、送っておきます」
さて、やることは決まった。御白と解散して家に帰る。なんとなくの予感だけど、クリーチャーに乗っ取られて体の自由を奪われるという言葉、現象に、どうしても妹の顔がちらついてしまう。
明日からは学校の合間に…メール?飛水から?
「お前、今何してる?」
「普段通りだよ、何かあったの?」
「人探しを手伝ってほしい」
「人探し?ごめん、俺も探さなきゃいけないものがあって…」
「じゃあ無理強いはしねぇわ、迷惑かけた」
飛水、何だったんだろう。同じようなタイミングで探し物ってそんな偶然もあるのかな…?
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俺、青海飛水は幼い頃、音楽家の両親がいない間、真沢叔父さんの家に世話になっていた。
「そう、クリーチャーで攻撃するのはダイレクトアタックが届くまでに一気に。手札を与えて、逆転されてしまう可能性が高まるからね」
「ご飯を食べる際は肘をついちゃダメだよ、マナーというのは人と話し合う上で、最低限身についていなきゃいけないからね」
俺にデュエマのことを含めて、様々なことを教えてくれた俺の先生のような人だ。でも5年前、あの人は所属していた大学を追放された。
「この研究がなければ世界は滅んでしまう!多少の人道がなんだ、それで残りの人類が救えるのなら!それは高潔なる犠牲だ!」
当時小学5年生になったばかりの俺にはよく分からなかったが、家から勘当されて、大学から追放された今でもそんな研究を続けているのなら…俺は叔父さんを、止めなきゃいけない。
真沢がいた場所をしらみ潰しに探す。つっても目立った場所に拠点は置けないだろうからある種見当は概ねついてくれる。
あとはあの感じだと何人かの協力者を得ている。真沢の他にも、虹村や守木も辿れるなら手がかりは見つかりやすいはずだ。守木によって痛めた左腕を抱えながら、俺は街を歩いていた。
「ねぇ、何してるのー?」
振り向いた先には守木緑がいた。都合がいい。身体能力で勝てる気がしないがどうにか情報を引き出して…
「いや、ただの散歩だよ、前は悪かったな、ついカッとなって急に真沢さんに殴りかかったりして…」
「嘘はつかない方いいよ、良くないって昔言われた」
バレるのはえぇな、鈍い訳じゃないよな。それは何となく分かってた。
「ねぇ、ぼくは真沢さんの為に強くならなきゃいけないんだ。練習に付き合って」
「練習って、デュエマのか?大会の練習でもして、賞金を…」
「そっかー、君できないんだ」
俺が何ができないか知らないが裏表が無さすぎてムカつく経験は初めてだ。一生味わいたくなかった感覚だよ。
「そっか、じゃあお望み通りデュエマだ!」
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「バウワウジャ、何か匂いとかない?」「クゥン…」
「だから、余の眷属をそのように使うなと…」
「そういえばバウワウジャって元々あったの?」
「眷属どもは余の力でこの世界に生を得たもの達だ、だから!バウワウジャを!警察犬みたいに使うのをやめろ!!」
「はーい、分かりました…」
電話を取り出し御白にメールを送る。
「そっちはどう?」
「ドランさんが近くに似たような存在を感じると言ってくれましたが、皇龍市中を探すのは骨が折れますよ…」
「ねぇ、御白ってドランとどうやって会ったの?」
「私がストレージを漁ってた時に気づいたら見つけて…ドランさんもどうやってそこに行ったのか分からないみたいです」
「そっか、俺もデッキケースを偶々見つけた感じだもんなぁ、ありがとう御白」
「いえいえ」
「まるで持ち主以外には見つからないようにしてるみたい」
俺も御白も、運命染みた方法で契約するクリーチャーと会っている。
というか皇龍市中をしらみ潰しに探したところで、やはり見つかる確率は低い…何となく上を見た時、空を飛ぶカードを見つけた。
フラフラと蛇行しながらも、間違いなく何処かに向かって飛んで行っている。まるで意志があるかのような…
「これだーーーーー!!!」
俺は必死にカードを掴もうとするが、まるで避けられるかのようにカードに手が届かない。もう一度、とジャンプしようとした時、俺は足を引っ掛けられて転んでしまった。
「君は…黒井夕哉だっけ?いつか俺に意見してくれた人」
「虹村…さん…?どうしてここに…?」
「君と同じだよ、あのカードを取りに来た。でもね、俺はそれよりもやりたいことがある。君たち、あのカードは任せたよ」
「大嫌いな君に、本当にこの力は効くのかなって」
虹村…さんは手を握って力を込める。普通じゃない威圧感があたりを包んだと思ったその瞬間、周りの景色が急に変わった。まるでジャシンがデュエマの時に出したあの世界のようだ。
それとは違ってまるで聖堂のような場所だが、ところどころが無残に壊されている。まるで何かの戦争が起こった後のようだ。
「ここが《ドルファディロム》の世界!彼との契約ができた証拠!」
「ドルファディロム?虹村さん、もしかして…!」
「あぁ、俺は強くならなきゃいけないからね、その為に必要なことは何でもするよ、力試しも兼ねて、手始めに君の契約したクリーチャーを貰おうかな」
「虹村さんって呼ぶのはやめるよ…行くよ、ジャシン!」
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俺と緑のデュエマはかなり静かな立ち上がりになった。
、俺は《アストラルの海幻》を出して手札を整え、緑は《衝突型加速3番ブースト・ドライバー》を置いてドローの準備をしていた。
「俺のターン!《アストラルの海幻》をもう一つ召喚!2枚ドローして1枚捨てる!ターンエンド!」
「ボクのターン!《応援妖精エール》を2体召喚!効果でマナを2枚アンタップし、ブーストドライバーでドロー。《とこしえの超人》を召喚し、3マナアンタップ。さらに2枚目のブーストドライバーを置いて、これで条件達成!」
「何する気だ…!」
「このターン場に出たクリーチャーまたはタマシードの数×3コスト軽減!1マナで《十番龍 オービーメイカー Par100》を召喚だよー!ターンエンド」
「10マナのクリーチャーが1マナで…!?そんなめちゃくちゃな…!でも!俺だって切り札を!《Drache Der'Zen》を召喚!手札を3枚ドローして…何で発動しないんだ…!?」
「オービーメイカーのシビルカウント5だよ。相手は相手ターン中、クリーチャーの出た時の効果を使用できないんだ」
「封殺能力かよ…ターンエンド」
「僕のターン、ところで君はひすいくん、だよね。まざわさんが言ってたんだけど、デュエマってどっちが強いかを決めるのに便利って言ってたんだ」
「あ?突然何言ってんだ?」
「強い方が相手を傷つけられて、勝つことができる」
「オービーメイカーでQ(クアトロ)ブレイク」
その瞬間、とてつもない衝撃が俺の身体を走った。
「ぐぉわぁあ…あぁ…!」
「まざわさんが言ってたのは本当だったんだ。クリーチャーは人間ではどうにもならないほど強い存在。『真のデュエル』をすれば、こんな風なこともできるっていってたよ」
「ふざ、けるな、お前ぇ…!」
身体に激痛が走り、立つことも喋ることもままならない。何処かが吹っ飛んだなんてことはないが、これは…マズい。
「逃さないよ?ボクは早く、家に帰りたいんだ。まざわさんが邪魔って言った以上、飛水くんにはいなくなってもらわなくちゃ」
多分自分の言ってる言葉の意味がちゃんと分かってない。俺と似たような年齢だが、ちゃんとした成長をしてきてない。真沢の作ったクソみたいな人を傷つける力で…俺は…!
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俺の意思は、何処かへ向かえと訴えかけてくる。俺と契約して、世界に降りかかる災厄を払えと言っている。その為に探さなければ。俺と戦う勇気を持つ、俺の相棒を。
真のデュエルについて
・クリーチャーと契約することが一番早いが、実験の結果それを人為的に近しい状態にできることが判明。研究を続ける。
・真のデュエルに負けたものは殺害される。私の最終目標にとってはどうしても必要、誰かを犠牲にしなければ、あの災厄からは逃れられない
・クリーチャーと契約したものが戦うと契約したクリーチャーがそのダメージを軽減する為シールドブレイクによる被害が全てとはいかないが軽微となる。これを災厄と戦う手段とする以上、私の目的、『英雄』はクリーチャーと契約するのが必須となる。
次回、「伝説の勇者・後」