ルアンの言っていた封鎖部分はだいぶ地下にあるようだ。結構な時間エレベーターに乗っているがまだ止まらない。なんて思っていると遂に着いたようだ。真っ暗で不安感が煽られる。とりあえず生命体の方を探さないと。
探しているなかとある部屋でルアンが写っている映像が流れてきた。
映像の中の彼女は誰かと話しているように見える。
「簡易位相転移装置の理論はとても面白いですね。残念ながら研究が終わる前に回収されてしまいましたが。そこで、新たな試みを始めました。今回の二つのサンプルは順調に成長していますから、『概念』に私個人の好みを加えてみました。この結果がどうなるのかは分かりません。同時に2つの感情的な特徴を持つ彼らは、可愛らしく、弱く、繊細で、涙もろい反面、狂暴で、唆したり横暴だったり、自信を持っていたりします。そして面白いことに、彼らには同じ傾向があります。自分の創造主を慕い、それに対して、赤子が母性を、生命が食べ物を、人が人を想うような不思議な感情を抱いているんです。」
彼女の生命体に対する評価のようなものを聞いた後、別の部屋へ足を進めた。
…これがルアンの言っていたトラブル?
まるで最中に猫が入っているような見た目をした謎の生き物がいた。おそらくこれがルアンの言っていたもう一匹なのだろう。
「ニャン」
この子は自分がアズキアッシュだと言ったようだ。
「君はお菓子の中に隠れているの?」
「ニャン」
この子は自分と外殻が1つであると言ったようだ。
「ニャーン」
この子はとても悩ましげで、涙を流している。
さっき貰った翻訳機をつけてみた。
「ニャアニャーン」『私は梅ルアン様に認められた作品じゃない…ううっ。ネガティブなエネルギーが多すぎる…ネガティブなエネルギーは嫌だ。ううっ…』
「君にも天才的な部分があるよ。」
『うう…梅ルアン様…うう。』
この子は自分の感情感染力も天才的だと考えているようだ。
「ニャーンニャン」『ううっ…ううっ。どうして…私…は…失敗作なの?』
私にはこの子がルアンが迎えにきてくれるのを悲しそうに待っているように見えた。
そうやってこの子を眺めていると、大きく、『ドクン、ドクン』と心臓が鳴っているような音が聞こえてきた。
「何の音!?」
「ニャン」
この子が不安そうに声を上げたため、
「大丈夫だよ。着いてきて。」
この子を落ち着かせるため、別の部屋に移動させないと。それに音の原因も気になる。確か鍵のかかっていた部屋から聞こえてきたはずだ。どうやったら入れるんだろう?
移動の途中に大きな部屋を見つけ入ってみるとアズキアッシュに似た姿の生命体が多数いた。
「こんなに沢山いたなんて。」
この大部屋の中でチーズフォンデュケーキも見つけた。どうやらこの部屋は一方通行の反対側のようだ。どうやらこの部屋にもルアンの映像が残っているようだった。
「XXが機械の街で過ごした最後のとしつきは、彼女のような長寿の生命体であっても終わりを迎えるという気づきを、私に与えてくれました。今回の培養結果は『不合格』だったと断定できます。生命の形は無数にあります。だからこそ、在り方自体には何の意味もないと証明しめいるのです。この生命体たちはそれぞれの概念で非常に遠くまで進み、さらには共感覚的な連鎖反応まで引き起こしました。しかし、それは私が求めているものではありません。分からなくなってきたんです。『生命の本質』という問いにそもそも答えはあるのか、と。xxx、あなたもこのように迷い、そして絶望したことがあるのでしょうか?」
まるで人命だけが意図的に消されたかのような映像だった。
あの部屋を進んだ先でアズキアッシュが小さく鳴いた。
「もっと前に行けと言っているようだった。」
この子に導かれた先にまたルアンの映像が保存してあるデバイスを見つけた。
「生命とは色鮮やかで美しいもの。私はそう信じてます。その輝きはまるで咲き乱れる花のようで、私はその中から永遠に枯れない1輪を摘みたいんです。物事の法則は雑然としていて感動的な表面を持ちながらも、内面はシンプルで質素なものです。万物は原因に帰属して、1行の公式で衆生の迷いを解くことができます。物心ついた時から、私は微生物の痕跡を観察することが好きでした。たとえば、粘菌が物体を呑み込む速度など…私は広大な世界を見渡し、宇宙の進化過程を学びました。それらはどれもシンプルでした。私が明らかにしたいのは『生命の本質』。どの個体も持っているものでありながら、自覚していないものです。存在している物質であろうと、それを超えた未知のものであろうと。科学に対して盲目的にならないように、私は慎重に疑問を提起しました。はたして梅ルアンは、座標軸のように外部の混乱をはぎ取り、生命の最も美しく、根源となる存在の在り方を明らかにできるのでしょうか?ふと、私はある「生命の在り方」を思いつきました。それは例え私でも『不可思議』だと認めざるを得ない存在。それこそが…」
映像はここで途切れている。私はまた先へ進むことにした。
進んだ先で多数の大きなカプセルが保管してある部屋へ着いた。
カプセルにはこんなことが書かれていた。
"日照時間の長さは感情に影響を与える重要な要素であり、星の光を多く浴びることで、負の感情を和らげることができると証明されている"
アズキアッシュに良い環境ではないかと思いここに置くようにした。
「すこしここにいようね。」
アズキアッシュを置いた途端何かが開く音がした。音がした方向には扉が開きっぱなしの部屋があった。そこには小さなロボットがおり
「隠し部屋です。ジージー。梅ルアン氏だけが利用できます。証明書を提示してください。ジージー。」
「証明なんて。いや、ルアンからコマンドカードを受け取っていた。」
ルアンのコマンドカードをかざした。
「認識成功、ジージー。以下のサービスから選択してください。1、培養履歴の照会。2、無機生命体の交流サービス。」
「じゃあ、無機生命体の交流サービスで。」
「本機能は壊れています。ジージー。」
「培養履歴の照会をお願い。」
そう言うと、ルアンの映像が流れ始めた。
「私はある『生命の在り方』を思いつきました。それは例え私でも、『不可思議』だと認めざるを得ない存在。」
「それこそが『崇高』です。崇高とは何なのか、私は理解できていません。学者はそれを色彩の力の代行者だと見なしています。では、それはいつから、どの点において、他の生命体よりも『色彩』に近くなったのでしょうか?最初に私は天才を育てようとしました。でも、失敗しました。この問題はまだ未解決で、探索には長い道のりが待ち受けています。ですが、キヴォトスにおいて理外の力は神秘だけではありません。理性を捨て、他の力を望めば、より原始的で、より純粋な『崇高』になるのではないでしょうか?それは、当然のように実在していました。タイズルス。模擬宇宙を通じて、私はキヴォトスの蝗害の一部始終を垣間見ました。そして、蟲の王とその子孫のデータを手に入れ、コピーし、培養しました。それによって、新たな研究分野を切り開いたのです。合理的に判断すれば私はきっと成功するでしょう。私が復元した『それ』は、これまでになかった生命体を生み出すはずです。リオとヒマリはこの実験を気にいるでしょうか?いえ、ありえません。ですから、彼女たちが気づく前に…急がなければ。そして、相応しい『助手』を見つけなければなりません。」
色彩に崇高、それに初めて聞くタイズルス。彼女の言葉からして両方に関係しているものなのだろう。
「認識成功。ジージー。以下のサービスから選択してください。1、訪問者履歴の照会。2、『シャーレ』入口の解放。」
「訪問者履歴の照会をお願い。」
「梅ルアン氏、ジージー。自律ロボット、ジージー。石膏頭の男、ジージー。」
(石膏頭の男?どうしてこんなところに人が?)
「『シャーレ』入口の解放を解放して。」
「権限解放、ジージー。」
上の階から音が聞こえてきた。
正直難産でした