転生したら秋庭怜子のマネージャーになった件   作:幽玄の鬼

1 / 18
cv山寺宏一の日本人が、死神ワールドの存在しない一般人(笑)として生きていく物語です。コナン視点で、すごく怪しい行動ばかりする名コンビものを目指します。


戦慄の譜面(フルスコア)編
1:秋庭怜子のマネージャー冬森宏一は、秋庭怜子と2人揃って怪しい【上】


 世界的音楽家堂本(どうもと)一揮(かずき)の名を冠する堂本ホール。

 そこに江戸川コナン御一行は来ていた。小学生探偵江戸川コナンと少年探偵団。阿笠博士と灰原哀の阿笠邸ペア、それから毛利小五郎と毛利蘭。蘭の同級生の鈴木園子。

 毎度お馴染みの面子で、此度開催される『堂本ホールこけら落としコンサート』のリハーサルを観る為に。

 

 堂本一揮の元専属調律師にして、堂本ホールの館長の譜和 匠(ふわ たくみ)。眼鏡を掛けた白髪の気品のある男性で、良くテレビで見ると蘭は言った。

 

 パイプオルガンの調律師ーードイツ人のハンス・ミュラー。恰幅のある金髪男性で、最初は堂本と揉めていたらしいと園子は語る。

 

 ハンス・ミュラーの隣りで通訳しているのが、ベートーヴェンに似た髪型の男性堂本(どうもと)弦也(げんや)。堂本一揮の息子でピアノ奏者でもある。

 今回の記念公演の責任者だ。

 

 そして二人組の女性。右に立つ赤毛の女性が堂本アカデミーの9期生でソプラノ歌手の千草(ちぐさ)らら。

 その隣でストラディバリウスを持ち立つ神経質そうな女の人が堂本アカデミーの8期生の山根(やまね)紫音(しおん)

 両名共に堂本音楽アカデミーの生徒で、堂本一揮の弟子だ。

 

 そして一番前に座っている女性がーー。

 

「私知ってる。秋庭(あきば)怜子(れいこ)さんね、ソプラノ歌手の」

 

 世界的ソプラノ歌手秋庭怜子。彼女は、長い髪を下ろし足を組んでリラックスした姿勢で譜面を読み込んでいた。

 そして彼女の隣の席に座る、七三分けに髪をセットしたのスーツ風の私服の男性が秋庭怜子の敏腕マネージャー。

 

「秋庭怜子さんの隣に座ってる若い男の人が秋庭さんのマネージャーの冬森(ふゆもり)宏一(こういち)さんよ。海外でマネージャーの修行を積んだらしいわ」

 

「へぇー海外で。すごい人なんだ」

 

 と、園子が蘭と談笑していると、

 

「じゃあ紫音、準備しろ」

「はっ、はいっ!」

 

 リハーサルを行うみたいだ。堂本一揮がパイプオルガンの方へと階段を登り歩いていき、紫音が緊張いっぱいといった様子で返事する。

 

「一曲目のアヴェ・マリアからだ」

「はい!」

 

 怜子は立ち上がる。

 紫音が調子を合わせながらストラディバリウスを弾くのだが、その音色の調子に怜子は落胆を隠しもせずにため息を吐いた。

 

「その様子じゃ私と合わせる段階にないみたいね」

「あぁ、すまんが待っていてくれ」

「す、すみません」

 

 謝る堂本一揮と紫音。

 怜子はしぶしぶ座った。不機嫌であること丸分かり。

 

「まぁまぁ落ち着いてください秋庭さん」

「別に怒ってなんかないわよ」

「ほら、お茶でも飲んでゆっくり待ちましょう」

 

 宏一は、怜子の水筒をきゅっきゅっと開けると、コップにもなる蓋に怜子拘りの配合のお茶を注ぎ、怜子へと渡した。怜子は、「……ありがと」と言うと、宏一の淹れたお茶を飲んだ。

 

「恐縮です」

 

 そう言う宏一の視線はステージでもなく、怜子でもなく、ホールの出入り口付近を見ていた。

 正確には、出入り口付近を陣取る警官たちを。

 

 目暮警部、白鳥警部、佐藤刑事、高木刑事の面々。

 中でも佐藤刑事が、真剣な表情でストラディバリウスの音色に聞き入ってる。その様子を、宏一は興味深そうに視ていた。

 

 そしていよいよ始まる生演奏。

 

 アヴェ・マリアの盛り上がるサビの演奏。

 ……だが。

 

「駄目だ駄目だ! 全然なってない。この1週間一体何をやっていったんだ!」

 

 堂本一揮の鋭い指導。鈴木園子は困惑するが、コナンは違った。

 

(いや、違う。ストラディバリウスにしてはーー)

 

「少し音が籠もっているように聞こえますね」

「あら? 貴方にも音の違いがわかるのかしら?」

「貴方のマネージャーになって3年ですから、それなりには分かりますよ。……ダイナミックに深く響く音色がストラディバリウスの特徴でしょう」

 

 伊達に宏一は怜子のマネージャーを勤めている訳ではない。彼女と共に世界を、日本を周り、たくさんの音楽に触れてきた。

 だからこそ、紫音という音楽家が、ストラディバリウスを全然活かしきれていないことが、聴いていて良く判るのだ。

 

 そして、再び再開される演奏。

 しかし、(あ、弦切れそう)何となく宏一がそう思った矢先に、本当に弦が切れた。

 切れた弦は、紫音の頬に当たり頬に傷を付ける。紫音は、すみませんと謝ると弦を張り替えに外に出て行ってしまった。

 

「やれやれ」

 

 怜子は立ち上がる。その後、宏一も立ち上がった。

 

「今日は歌えるのかしらねぇ?」

 

 怜子のすぐ後ろを、マネージャーである宏一は付き従う様に歩く。

 

「秋庭さん、ちょっとお時間を」

 

 目暮警部が、怜子を呼び止めるが、宏一はそれを気にせずにドアマンの如くホールの扉を開けた。

 

「化粧室くらい行かせてくれる?」

 

 キリっと目を細めて目暮警部を見る怜子。片手を上げて、手で宏一に礼を伝えると怜子はそのまま出て行った。

 

「警部さん、僕に話せる範囲内でしたら、僕が話しますので彼女をコンサートに集中させてください」

「あぁ……えっと冬森さんですな。協力感謝します」

 

 宏一の協力的な申し出に、目暮警部は感謝を述べた。これで、怜子に対する不快感はある程度拭えた筈だと宏一は思った。

 

「警部殿。こちらの方は、……?」

「あぁ、毛利くん。こちらはーー」

 

「眠りの小五郎さんですね。ご活躍はニュースでいつも見ています。わたくし秋庭怜子のマネージャーをやらせてもらっています冬森宏一と申します」

 

 わざとらしい程に目をキラキラと輝かせて、宏一は小五郎に握手を求めた。差し出された手。

 小五郎は応じると握手をする。

 

「冬森さんにこれから爆破事件の事情聴取を行う所だ」

「ということは警部、犯人の目星が?」

「あぁまだだ」

「使われたのはやはり、プラスチック爆弾?」

「あぁタイマーも発見されたよ」

「被害者はどちらも堂本アカデミーの生徒です。2人の演奏する時間に合わせてタイマーがセットされていた、ということですよね? 警部さん」

 

 事も無げに会話に入ってくる宏一に、目暮警部は少したじろぐが、えぇと返事を返した。

 すると、小五郎は青い顔で、

 

「あ!? てことは、やはり、これは……」

 

「すまんが毛利くん。今、捜査の状況をここで話す訳にはいかん」

 

 ここで、目暮警部は一旦言葉を切り下を向いた。

 

「とくに子供の前ではな」

 

「「子供……」」

 

 小五郎と宏一の動きはシンクロしていた。

 2人は同じことを呟くと、同じタイミングで目線を下げた。

 そこには、えへへへと頭に手を当てて笑う小生意気なガキが一人。

 江戸川コナンその人だ。

 

 がつん! と小五郎は拳骨を落とす。

 

「おめぇはあっちで子供たちと遊んでいろォ!」

 

 へいへい。コナンは追い出された。

 

 

 

 

 

♪ ♬ ♪ ♬ ♪ ♬

 

 

 

 

 

 

 

 紫音が弦を張り替える間、暇を持て余した子供たちの為に堂本弦也によるパイプオルガンの講座が開催されていた。

 パイプオルガンの仕組みに感激する子供たち。

 そこで阿笠博士は、恒例のクイズを出題するのであった。

 

「あるオペラ歌手が喉を痛めて待っておったんじゃが……手術を止めておじいさんの丸薬を貰って直したんだそうじゃ。さて、そのオペラ歌手とは次のうち誰か?」

 

①ソプラノ ②アルト ③テノール ④バス

 

「今回のクイズは難しいわね」園子は言う。

「博士ヒントは?」

 

 蘭の問いかけに、阿笠博士は手術は英語で何という? と返した。それに、哀が付け加える。

 

「オペレーション。普通はオペね」

「それと、おじいさんの丸薬。だろ?」

「え? コナンくん、わかったの?」

 

 歩美の嬉しそうな声が響く。

 

「あぁ。簡単さ、まずーー「1番」え?」

 

 1番、とそう割り込んだ怜子の凛とした声がホールに響く。怜子は、譜面を読んだまま、解答の披露を続けた。

 

「1番のソプラノ歌手。オペラ歌手がオペを止めたんだからオペラからオペを引いて“ラ”。丸薬は小さく丸めた薬のことだから、おじいさんの丸薬はーー祖父の小さな丸。それをさっきのと組み合わせれば?」

 

 ここまで言ったのだから、後は自分たちで考えなさいと言わんばかりに、怜子は黙った。一生懸命考える子供たちを見つめる目は、どこか優しげだ。

 

「ら?」

「祖父の?」

「小さな丸?」

 

 元太、歩美、光彦の順に呟き、考える。

 

 そ ふ 。 ら

 

「「「あ!? ソプラノ!!」」」

 

「ふっ、くだらない」

 

「あっはははは!」

 

 怜子が吐き捨てた瞬間、とても楽しそうな笑い声が後ろから聞こえた。

 その笑い声の主が誰か、すぐに分かった怜子は、後ろを振り向くことなく、笑った人物を咎めた。

 

「何笑ってるのよ宏一」

「相変わらずだなぁ、と思いまして。頭の切れも、言葉の切れも。両方が冴え渡っていますね」

「ただのダジャレじゃないこんなの。誰にでも解けるわ」

 

 宏一のヨイショを当たり前だと言って切り捨てる怜子。表情も一切崩れず譜面を読み込んでいて、怜子が本心からそう思っていることを物語っている。

 

「取り調べ、終わりましたよ秋庭さん」

 

 そう言って、宏一は怜子の真隣に座った。

 宏一の言葉を聴いて、コナンも椅子に身を隠してこっそり聞き耳を立てる。

 怜子はさも譜面を読み込んでいる風の雰囲気を醸し出したまま、小さな声で言葉を発した。

 

「……事情聴取では何を話したの?」

「当たり障りのないことを少々」

 

 宏一も携帯を取り出して、携帯を弄ってるフリをしながら囁き声で返す。 

 

「変なことを漏らしたりしてないでしょうね?」

「まさか、僕がボロを出す訳がないでしょう。それよりも警部さんたち、中々に優秀ですよ。ヒヤヒヤさせられる鋭い質問ばかりでした」

「……そう。気をつけるわ」

「警察は我々関係者の中に犯人がいると考えているようです」

「まったく……コンサート前なのに」

「人が亡くなってますからね」

 

「最後にもう一つ……秋庭さん(・・・・)

「……っ!?」

 

 普段と違うトーンで名を呼ばれた怜子は、宏一の意図を察して宏一の顔を見た。

 怜子が、真正面から自分の顔を見ていることを確認すると、宏一は声に出さず唇だけを動かした。

 

ーー現場にはフルートの胴部管があったーー

 

 宏一の唇の動きに注目していた怜子は、宏一の伝えたいことを読み解いて、顔を歪めた。

 視線を逸らし考え込むような表情。気のせいでなければ少し哀愁が交じった顔。

 

「間違っても……事情聴取でそのことを聞かれても今みたいな顔をしないでくださいよ?」

「わかってるわ。余計なお世話よ」

 

(何だ!? 今2人は何を話した!?)

 

 すぐそばで聞き耳を立てていたのにも拘らず、何も聞こえなかった事にコナンは驚愕する。

 まさか宏一という男性は声を出さなかったのか? 口の動きだけで単語を伝えたというのだろうか?

 

 だとすれば、それはーー

 

(読唇術!? この2人、一体何者?)

 

 読唇術で、意志を伝え合う世界的なソプラノ歌手と、そのマネージャー。ただならぬ2人に、コナンは人知れず戦慄(・・)するのであった。




作者が1番好きな映画オリジナルキャラクター、秋庭怜子。
彼女が、あの映画1本だけにしか出演しないのがあまりに惜しいと思って閃いた本作です
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。