河川敷の堤防。
秋の暖かな陽気が体を温める中、怜子と宏一、蘭とコナンは横一列に並び、太陽の光を浴びて煌めく河川をぼんやりと眺めていた。並び順は、先程述べた名前の通りの順番だ。
水面をぼんやり眺めながら怜子は言った。
「ここ光さんと良く来たんだ。私たちのデートコースだったの」
「へぇ、そうだったんですか」
「相馬さんと3人で散歩したりもしましたよね。コンサート前に」
当時はほろ苦い、出来ればあまり経験したくないと思い出だと思っていたが、今となっては懐かしい。
色々と含むことも、思うこともある。……あるが、それでも本当に楽しかった。
「宏一ともたまに来たりしたし、私の大切な思い出がいっぱい詰まった大切な場所なの」
怜子にとって、愛する2人の男性とのそれぞれの思い出がいっぱい詰まった場所なのだから。
「あの人が事故で亡くなった春。あの人との思い出の場所で、あの人の好きだった歌を歌ったの」
「それがAmazing Graceだったんだね」
コナンは問い掛ける様に怜子にそう言った。それは口調こそ問い掛けるものであったが、確信を孕んだ断定に近い言葉。
怜子は明確に答えることはせずに、コナンの顔を見て優しく微笑むと、再び視線を河川に戻す。
「私ね、この前も言ったけど最初あの4人のことをすごく恨んだわ。それこそ殺してやりたいくらいに……だけど赦すことにした」
だって、Amazing Graceは赦しの歌だから。
そこまで言った怜子は、『それに』と言いながら宏一を見た。若干見下すように、挑発するような眼差しで宏一を視る。
「放っておけない馬鹿がいるしね。宏一のことで手一杯だから、他のことに手を回す余裕がないの。だって目を離すと直ぐに突っ走っちゃうんだから」
宏一もまた怜子の挑発するような眼差しを真っ向から見返して、そして胸に手を当て、優雅に慇懃な所作で深くお辞儀をした。
「これからも馬鹿ですが末永く宜しくお願いします」
「末永く、宜しくお願いされてあげる」
敏腕のマネージャーを忠誠を受け、怜子は鷹揚に頷く。
「じゃもう行くわ」
怜子はしゃがむとコナンの頭に手を置いて、わしゃわしゃと撫でまくった。そして、宏一から決して見えない位置で、
「コナンくん、またハモろうね」
ーー恋愛、お互いに頑張ろうねーー
コナンに良く見えるように、大きくはっきりと唇を動かし、怜子はウィンクした。
「うん!!」
コナンは元気に頷く。
そのまま歩き去る怜子に倣って、宏一もまたコナンの頭を乱雑に撫でてから、怜子の後ろを歩く。
「じゃあな、探偵坊主。また会おう!」
振り返ることをせず、前を向いたまま手を振る宏一。
「またね宏一さん!」
そんな宏一に、コナンは元気よく手を振り返していた。
「いつの間にコナンくんと仲良くなったのよ?」
「秘密です。そんなことより秋庭さん、探偵坊主と何を話したんですか?」
「……秘密。ふふっ」
怜子と宏一は並んで歩く。
2人は、憑き物が落ちた様な、とても晴れやかな顔をしていた。
〜〜Fin〜〜
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次回劇場版予告
名探偵コナン
ーー選ばれし探偵、全員集合!
タイムリミットまでに真実を解き明かせ!!!
「なぁ工藤。お前の正体を知っとるっちゅうことはつまりーー」
乞うご期待!!!
次の劇場版の前に今回の劇場版の特典映像的なエピソードを1つと、原作エピソードを1つ挟みます。