TKFは走った!!、会社を救うため!、いや、自分の正しさを証明するため!!、データセンターの廊下を全力で!!!
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TKFが東京の品川あたりにあるデータセンターについたのは、10年前、、、2015年8月の暑い日の15時ごろだった。
データセンターとは、さまざまな会社のITシステムを動かしているサーバーを置いてある場所である。中はセキュリティーの行き届いた倉庫のようになっていて、真夏でも肌寒いぐらいに冷やされていて、その中にたくさんのラックがあって、たくさんのサーバーが置かれている。要するに、停電や発熱や盗難の心配なくサーバーを安全に置いておける場所である。
なぜそのような場所にTKFが来たのかというと、その当時に勤めていた会社の取引用端末のサーバーがダウンしてしまい、そのままでは取引や通知ができなくなるので、急いで夕方までにサーバーの再起動をしなければ大きな損失が出てしまう、ということで、上司に言われて慌ててやってきたのであった。
そこの受付で会社名と氏名を名乗り社員証を見せると、セキュリティーカードを渡された。これでサーバー室に入れるらしい。
教えられたサーバー室の前まで来て、入り口のドアのところにセキュリティーカードをかざすと、ピッとなってエラーを示す赤いランプがつき、「ハナレテタッテクダサイ」という音声が流れた。
離れてってどういうことだろうか?、とりあえず言われるままドアから離れたが、何も起こらない。
そうか、カードをかざすときにもう少し離れてろ、ということか、と思って、1~2歩下がって精一杯腕を伸ばしてカードをタッチするが、またしても「ハナレテタッテクダサイ」と流れた。
後ろに行くのではなく横方向に(つまり壁沿いに)離れて手を伸ばしてタッチしてもだめ、というか、普通、こんな不自然な恰好を来場者にとらせるものなのだろうか?
とりあえず受付のところに戻って、カードが壊れていないか確認してもらったが、正常らしい。「でも何度やっても入れないのです」と告げて、カードを取り換えてもらった。
もう一度、ドアに戻ってやり直してみる。「ハナレテタッテクダサイ」。
携帯がなった。会社からだった。
「まだサーバーの再立ち上げできないのか?」
「ちょっと、サーバー室のドアの入り口のところで、うまくカードが認識されずにトラブっているところです。」
「受付の人に聞けばいいだろう?」
「はい、いまやっていますので、もう少しお待ち下さい。」
しかし、どうすりゃいいんだろうか・・・・離れろと言われる前に離れてみたらどうだろうか?、と思って、タッチすると同時にダッシュで離れてみたが、ダメだった。
ダッシュが弱かったか?、もう一度、鋭い動作で離れてみるがダメ。
それならと、自分の社員証を入れていたカードケースの中にセキュリティーカードを入れて、紐を伸ばして振り回しながらタッチしてみることにした。これならはじめから離れた状態でタッチできる、と思ったが、タッチがなかなかうまくいかない。どこかに釣り竿みたいなものはないか、あるいはほうきかモップみたいなものをさがして、先にカードを挟んでみようか、トイレに行けばあるかも、あまり使いたくはないが、まあどうせ借り物のカードだし洗って返せばいいか、、みたいなことを考えていると、いつのまにか後ろに、他の会社の人であろう女性2人が立っていた。
しまった、見られていたか、、、不審者と思われなかっただろうか。。。
「ちょっと、私のカードがうまく反応しないので、先にやってみてもらえますか?」と言い訳を兼ねて話しかける。
その二人が無言でドアのところに近づいて、一人がカードをかざす。「ハナレテタッテクダサイ」。
やっぱり壊れていたかとおもったが、一人が「離れろだって」と言って、言われた一人が後ろに退くと、グリーンのライトがピッと光りドアが開き、一人が中に入るとドアが閉まった。続けてもう一人がカードをかざすとドアが開き、その一人も決して振り返ることなく無言で中に入っていった。
(あとで調べたところ、これは「共連れ防止装置」というらしい。読んで字のごとく、1枚のカードで2人が入ろうとするのを防止するものである)
あーあーあー、離れて立てって、そういう意味ね、、、TKFはようやく状況を理解した。どうりで、首や肩の付け根のところが引きつるような感触があった。電車の中で寝違えたかと思ったが、違ったらしい。
さて、状況は理解できたが、どうしたものか・・・
とりあえず、さっきの人みたいに、後ろを振り返って、「離れろだって」と言ってみる。(誰もいなかったが・・・いや、誰も見えなかったが)
そうしてタッチしてみるが、「ハナレテタッテクダサイ」、ダメか・・・
どうしようか・・・こう言う場合は、①神社にお参りして神の力で祓ってもらう、②誰かに頼んで塩を背中にぶつけてもらう、③塩を入れた風呂(バスクリンでも可)に入る、みたいな方法があるにはある。
ただ、ここは海の近くの倉庫街であり、神社もなさそうだし、コンビニやスーパーもないので塩を入手できそうにない。もちろん銭湯もなさそうだ。大森駅まで戻ればあるかもしれないが、そんな時間はない。
いっそのこと受付の人に事情を話してドアを開けてもらうか、とも思ったが、どういうふうに説明したらいいのだろうか?、、、背中にもう1人いるので入れません、と言って、「あー、よくあることですね」と理解してもらえるのだろうか?、下手したら変な人に思われるだけだろう。
また携帯が鳴った。
「まーだー?」
「いま対処しているところです、あと10分待ってください。」
ちなみに、その時の上司は、占いとか神仏の話が大っ嫌いで、そういう話をすると途端に不機嫌になる人だった。なんでも祖母か誰かが、占い師か新興宗教だかにだまされて大金を巻き上げられたらしい。そんなわけで状況を正直に話すこともできなかった。
さーて、10分以内にカタをつけなくては、、、、どうしたものか・・・
(続く)