へっぽこ占い師の日常   作:TKF

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(前回のあらすじ)
 会社のサーバーの再起動のためにデータセンターに赴いたTKFくんであったが、「背中の人」のために、「共連れ防止装置」に引っかかってしまい、サーバールームに入れなくて困っていた。
 夕方の業務を回すためにも、早くなんとかしなければならない、、、どうしたものか・・



データセンターにて除霊に成功した話 その②

 ところで、これを読んでいる読者の方々は、「仮にも自称でも占い師を名乗っているんだから、除霊ぐらい何とかできないの?」と疑問に思われるかもしれない。

 

 だが、それは占い師を、祈祷師(いわゆる拝み屋さん)と勘違いした考え方である。占いとは、タロットカードによるシンクロニシティ現象を利用したり、五行思想や占星術などのモデルを利用したりして、今起こっている事象のメカニズムや流れを理解する作業であって、本来は霊とか神とか祈祷呪い(まじない)などとは全く関係ないどころか、むしろ真逆なのである。

 例えば、普通の人なら「ロマンスの神様!、どうもありがとう」で済ますところを、「安易に神様のせいにして思考停止するんじゃない!、いったいどういうメカニズムでそんなことが起こったのかちゃんとわかりたい!!、これを1回限りではなく何度も再現するにはどうしたらいいのだ?」と考える。それが占いの研究をするということである。

 

 ただ、占いを多くやっていると、いろいろ不思議な経験をしたり、あるいはそういうものを仮定しないと説明がつかないような事象に出会ったり、自分の力では何とも解決できなくてそういうものに助けてもらったり、みたいなことが多々発生する。(たとえば占いの最中に照明を消されることを何度も経験するとか)

 そういう経験を経て、結局はしだいにそういう存在を受け入れ、そういう存在をよく理解してうまくつきあっていく事も重要だ、というスタンスに変わっていく、それがプロの占い師ということである。

 

 まとめて言うと、「占いは神や霊を否定するところから始まる、ただし占いをつきすすめると神や霊の存在を認めざるを得なくなる」ということか。

 

 ということで、「占いの技術」は、「神や霊の力を抑えたり利用したりする技術」とはもともと違うので、占い師は基本的には除霊はできない。

 もっとも、占いの技術をさらに極めていくと、「神や霊の力を抑えたり利用したりする技術」も何となく理解できるようになるので、できないのは結局のところTKFが未熟だというだけのことか・・・・・

 

 

 話をデータセンターに戻す。

 さて、サーバー室の扉の前で思案してたTKFだったが、一計を思いついた。すぐにサーバー室の扉の前から20mほど離れたところに移動して、そこから全力で扉の前に走り、すばやくカードをタッチした。

「ハナレテタッテクダサイ」

えー、、これでもダメか・・・・

 

 このときTKFが何を考えたのかを説明すると、「霊は全力疾走できないはず」ということである。

 TKFはそれまでに、実は幽体離脱していたのではないか?、と疑いたくなるような夢を3回ぐらいは見たことがあるが、いずれのときも、なんかフワフワしていて、全力疾走しようとすると足が空回りしてバランスを崩して転んでしまった。

 ちょうどアポロなんとか号の乗組員が月面着陸したシーンを思い浮かべるといい。あの乗組員が月面を50m短距離走のつもりで足を動かしたら、やっぱり転ぶだろう。

 全力疾走というのは、足と地面との間に強い摩擦力を生じているからできるのであって、体重がほとんどなくて接地力がない霊が全力疾走しようとすると、氷の上のごとく足が空回りするのである。

 

 ちなみに、最近、ユーチューブで心霊動画と称するものをよく見ているのだが、あれで霊みたいなものがしっかりと体重をかけて歩いたり走ったりしているものは、バカバカしくて時間を無駄したと思う。そうではなくて、半透明っぽいのが体重を感じさせずに軽くスーっと移動しているのは、本物かもと思って興味深く見ている。

 

 そんなわけでTKFは、「全力疾走したら“後ろの人”はついてこれないはず」、と思ったのだが・・・・結果はうまくいかなかった。おそらくは、体重がなくともしがみつくことはできるので、「後ろの人」はTKFの背中にしっかりとくっついているのであろう。

 

 困ったなあ、、、万事休すか、、、こうなったら、あとは受付に行って事情を話すしかないか、、、さっきみたいに「カードが壊れている」と主張したら、また新たなカードを渡されるだけになってしまうだろうから、正直に「後ろに霊がくっついているんでサーバー室に入れません」と説明するしかないか、、、すごく嫌だなあ、、、なんかほかの手はないかなあ、、、うーん、考えつかない・・・

 TKFはとりあえずコーヒーかお茶でも飲みながら気持ちを落ち着かせようと思い、その場を離れて、自販機みたいなものがないか探しに行くことにした。

ここはデーターセンターでたくさんのサーバーが置いてある、ということは、作業者向けの休憩コーナーがあるかも、と思って。

 

 あった!!、、、下の階に。自販機が2台あって、その前にテーブルがあった。

 とりあえず缶コーヒーを買って、椅子に座って、口に注ぎ込んだ。ふぅ、、、どうしたものか。

 

 えっ・・・?、、、ああ、飲みたいのか?

 TKFの頭になんとなくそんな思考が入ってきた。

 あ、それいいかも。

 いっしょにお茶しながら、相手が何者で何の要求があるのか。立てこもり犯ではないが、とりあえずそれを聞いてみれば事件解決の糸口が見つかるかもしれない。

 いうなれば、力技ではなくて平和的な話し合いで解決しようというのか、さすが自分だ、この追い詰められた状況で、よくそんなことを考え付いたものだ!!

 

 TKFはもう一本缶コーヒーを買って、ふたを開けて、向かいの席に置いた。

「まあ、飲んでくれ」、TKFは小声でつぶやいた。

「飲みながらでいいから、貴方が何かしたいことがあるのか、聞かせてくれ」、そう続けた。

 ふっと、TKFの肩の付け根の張りが軽くなったか、、、よし、行ったか・・・交渉のテーブルにつかせることには成功したらしい。

 耳を、頭を澄ませる。

 一生懸命、何かを聞き取ろうと試みた。だが、何も聞こえなかった。今更ながら、TKFは自分のテレパシー能力のなさを悔やんだ。

 

 TKFはふうっとためいきをついて、向かいの席を見る。何も見えないが、おそらくそこに何かいるのだろう・・・仕事中だったので自分と同類の中年サラリーマンだとイメージしていたが、ひょっとしたら女性か子供なのかもしれない。

 

 そのようなことを考えていて、はっと気づいた・・・あれ、この状況って?

 

 TKFはさっと自分の荷物を持つと同時に、席を立って走った。

 階段を一段飛ばしで全力で駆け上がる、そのまま廊下を全力疾走する。

 

(続く) 

 

 

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