前の話の「女性を昇天させた夢」の前編にあたります。
TKFは一時期、名古屋市の北西部の小田井(おたい)という場所に住んでいたことがある。その時の話である。
小田井には五所社という小さな神社があった。名前の由来は五神を祀っているとためと言われているが、数えるともっとたくさんの神や祠があるので、よくわからない。
当時、TKFはほぼ毎日この神社に寄って、本殿と秋葉社(神社)の祠に参拝していた。なぜそうするようになったかは、長くなるのでまた別の機会に説明する。
そうして秋葉社の祠に参拝しているうちに、ちょっと奇妙なことに気づいた。秋葉社の祠の前には一本の大きな木があったのだが、その西側のちょうど目の高さぐらいの位置に、いつもナメクジが3匹いるのである。大きいのと中ぐらいのと小さいのだった。
ナメクジぐらいどこでもいるだろう?、と言われたらその通りだし、私もそう思って最初のうちは気にもしていなかった。だが文字通り毎回なのである。参拝する時刻は19時頃だったり22時過ぎだったりとバラバラだし、たまにはもう少し上方や下方、裏側にいてもよさそうなものだが、正確にその場所30cm四方の中にいるのである。ナメクジには規則正しく同じ場所に出勤する習性があるのだったっけ?、聞いたこともないが・・・ちなみにその場所は照明の光があたって、木の表面の中では夜にはむしろ明るいところであった。
ちなみにTKFはナメクジが好きというわけではない。むしろ普通の人と同じく、あのぬめぬめした感じに嫌悪感を覚える方であり、自分の家の庭だったらつぶしてしまうところだが、神社の境内で余計な殺生をするわけにはいかないし、しかも高さが顔の位置なので足で踏みつぶすこともできないので放っておいた。
そんな感じで毎晩のようにそのナメクジたちを見ていたが、11月に入ると姿が見えなくなった。おそらく寒くなったので冬ごもりにはいったのだろう。それはそれで別にいいのだが、毎晩その場所にいたのがいなくなると不思議なもので、少し寂しく感じたりもした。
翌年の春になって暖かくなってきた。参拝するたびに(そろそろあのナメクジたちも出てくるのではないか)と思った。そうしてある日に参拝した時に、元通りの場所に3匹いたときには、思わず(おっ、生きていたか)と思って、ニヤッとしてしまった。
その年もそうして過ぎ、11月になるといなくなり、翌年3月になるとまた現れて、そのナメクジたちとの逢瀬も3年目になった。
そうしてまた11月が来た。TKFは(もうすぐまた、このナメクジたちともしばしのお別れか)と思い、せっかくなので話しかけてみた。
「なあ、お前達がいつも、その目線の高さで明るくて、あえて目立ちやすい位置にいるのは、私に気づいてほしいからではないのか?、もし何か話や頼みごとがあるなら、聞いてやってもいいぞ。」
そうして耳ならぬ脳を澄まして返事をまったが、何もテレパシーみたいなものは来なかった。そりゃそうだろう。そんなに簡単に使えるものではないから。その日はそのまま帰った。
翌日、ちょっとした事件があった。いつもの会社からの自転車での帰り、途中でコンビニに寄って買い物をして、自転車にはカゴがなかったのでレジ袋をハンドルにぶら下げて神社に向かっていた。そうしたら神社の手前でレジ袋が前の車輪に巻き込まれて、袋が破れてしまった。
しまった・・・そのまま神社に入って自転車を止め(注:神社の前の道路がすごく狭いので、自転車を止めると自動車通行の邪魔になるので、いつも境内に自転車を止めていた)状況をチェックする。袋に入れていた野菜ジュースのパックがやぶれて、自転車が走行してきた石畳のうえにジュースが点々とこぼれていた。
どうしたものか・・・とりあえず残ったジュースを飲みほしながら考える。量はわずかだし、放っておいたら乾くし、雨でも降ればすぐ流されるであろう。だが次の雨までは痕跡が残ってしまうし、放置して神様に不敬と見なされるのは避けたい。よし、とりあえず拭ける分は拭いておいて、あとは神様に謝っておくか、、、そう考えたTKFは、いったん参拝は中断してアパートまでタオルをとりに帰った。
そうして戻ってきて、こぼれたジュースを拭こうとしたら、、、うわっ!!!!!、驚くべき光景を見た。ジュースの点それぞれに、数匹ずつナメクジが集まっていた。全部だと30~50匹はいるだろう。こんなにいるんだ、、、しかもたった20分かそこらの間によくこれだけ集まったものだ、、、おそらく野菜ジュースの匂い(正確にはキャロットジュースだったが)に引かれたのだろうが、、、おそるべし、キャロットジュース!!!!
そんなわけで拭くに拭けず、まあこの調子ならもっと集まってくるだろうし、彼らが代わりに舐めとってくれるだろう、ということで、あとの掃除は彼らに任せることにして、本殿の神様にもそう断っておいた。
そうしてからいつものように秋葉社の祠に向かう。いつものナメクジたちの前を通り過ぎようとしたら、、、、あっ!、何か・・・念が・・・テレパシーみたいな何かがあった。ありがとう、、、だって?
TKFは後ろ、こぼしてきたジュースの方を振り返る。このナメクジたちはごちそうにはありついていないだろうが、、、何か群れか集団としての意思やテレパシーみたいなものがあるのだろうか・・・?
せっかくなのでまた話しかけてみる。
「どういたしまして、まあ大したものではない。それより、もうすぐ寒くなるから、お前達ともまたしばしの別れになる。いつも昼間や冬の間はどこにいるのだ?、近くに住処があるのか?」
そうして脳を澄ますが、やはり返事は聞こえなかった。しょうがあるまい、またその日も参拝を済ませて帰った。
翌日は急に冷え込んだ。夜、いつもの場所に行くが、そこにナメクジたちの姿はなかった。ああ、やはり昨夜が最後の夜になったか、、、まあ挨拶だけはできてよかった、、、と思いながら、(ひょっとしたら、あれの住処が近くにあるかもしれない)と思い、木の後ろに回り込んでみたら、、、あっ、あった!!!・・・
今まで気づかなかったが、木の後ろ側の根元に小さな穴があいていた。ゴルフボールは入るがテニスボールは入らないぐらいの大きさである。そしてその穴を取り囲むように、例のナメクジ3匹がいた。
大きいのと中ぐらいのと小さいの、間違いない!
「ここだったのか!!」
と思わず声かける。すると・・えっ?、寄っていけって?、。そのようなことを言われている気がした。
TKFは苦笑する。その穴では入ることは難しいだろう。だがしかし、、、それを言いたいがために、このナメクジたちは寒空の下を凍えながら、家の外でずっと何時間も待っていたのだろうか、、、なんと健気な・・
「そこに入るのは無理だが、あなたたちの気持ちはすごくありがたく受け取った。本当にありがとう!、絶対に忘れないで覚えておく。」
そのように声かけて、いつものように参拝して家に帰った。
その晩、夢を見た。
* ** ** * * * * *
なぜか、知らない家にお邪魔していて、料理をごちそうになっていた。
料理はごく普通の家庭料理だったが(ご飯とみそ汁と、煮物の小鉢と、あとなんだったかメインディッシュ)、すごく暖かくておいしかった。
家の人は女性3人で一人は30歳ぐらいといったところ。物静かでやわらかく長身で、普通の主婦と言った感じ。一人は20代半ばぐらいで社会人3年目ぐらいの感じ。一人は中学生か高校生ぐらいか、当時40歳ぐらいになっていた私から見ると子供であった。親子にしては年が離れていないため、年の離れた姉妹であろう。
TKFは「すごくおいしいです。ありがとうございます。」と言いながら食べていて、女性らは食べずに脇に控えていて、ご飯やみそ汁のお代わりをよそおってくれたり、いろいろな話し相手になってくれたりしていた。
(思った以上に長くなったので、いったん中断して次回に続く)