2000年の何月だったか、私は新入社員として、ある会社の研修所で1週間ほど缶詰めになっていた。17時過ぎに研修は終わるのだが、それから後は特にやる事もないし、研修所の外には出かけられないので娯楽もないし、非常に退屈な日々であった。
せっかくなので同期同士で語りあえばいいじゃないか、と思われるかもしれないが、昼も夜も同じ10人ぐらいの相手と一緒に過ごし続けるので、同じ相手と同じ話題ばかりで飽きてくるし、そもそも半分は高卒で年代も違うので話が合わない。
いや、多少年齢が違ったって同期だからちゃんと話せよ、と当時もよく上から言われたが、高卒と言っても工業高校卒で若くてエネルギーを持て余している者ばかりで、飲み会やるとタバコをふかし一気飲みをしながら、パチンコとか車やバイクとか女の話で盛り上がる。一方で私を含む半分は理系の院卒でタバコは吸わないし、おとなしく大学の研究室の延長のような真面目な話をしている。どっちが未成年だかわかりゃしない。
いうなればヤンキーと理系大学院生の集いみたいなもので、話があうわけがなかった。(注:あくまでも25年前の話であり、今の工業高校卒はもっと真面目でおとなしくなっている)
そんな研修中のある日の昼休み、高卒同期の一人が「TKFは占いやるんだって?、何か占ってみろよ。」と煽ってきた。その言い方にTKFはカチンときたが、それでも愚かにも応じてやることにした。
なにが愚かかと言うと、今だったらそのような、まるで「俺様が話を聞いてやる」みたいな勘違いは放っておくだろう。もっと世の中には謙虚に殊勝に助けを求めている人はたくさんいるのであるから。今日だってついさっきまで3件ほど、知恵袋で復縁や転職などの無料鑑定をしてきたばかりであるが、その人たちは大変感謝してくれていた。それに比べたら、こんな奴らはどうせ感謝もしないし、やっても何も変わらないし、時間の無駄だろう。
だが、当時のTKFは、こういう占いとか神意とかの世界を垣間見せれば、この勘違いの若造たちも自分の知らない世界がある事を知って、謙虚に、かつ身を正して生きるようになるのではないか、と期待して、こいつらを啓蒙してやろう!、と思ったのである。
まあ若さゆえの過ちということですな。もっとも50歳近くになった今もあんまり変わっていないから、こうして変な小説を書いて、「いつでも神様は見ているよ」みたいな啓蒙活動にいそしんでいる。
ということで、同期相手に占いをすることになったのだが、あいにくタロットも筮竹も何も道具を持っていなかったので、夢占いをしよう、ということになった。
その同期が語った夢は以下のようであった。
「昨夜の夢で、自分が車を運転していて、交差点で赤になったので止まっていた。そしたら自分の車線はずっと赤のままなのに、隣の車線は青になって、車がどんどん追い抜いていって、すごくイライラした。どうだ?、これわかるか?」
TKFはちょっと考えて、「ああ、そうか、そういうことね。」とつぶやいてから話した。
「ああ、昨夜、彼女とケンカになったんだな。まあ研修所にいたわけだから、電話で、ということだろうけど。」
そこまで話したところで、その同期と同室の男が、ギョッとした顔をした。当たりか。
「おおかた、昨晩電話したら、彼女の方が話し中で、それが長くていつまでたっても終わらず、イライラしたんだろ?、そうしてようやくつながったときにケンカになって、そのまま仲直りできてない状態なんだろう?」
その同期と同室の男が、びっくりした感じで顔を見合わせて黙り込んだ。よし、啓蒙成功か?
「全部あたっている・・・」とその同期が言った。
「じゃあ、今後どうなるかも占ってくれ、このまま別れるのか、仲直りするのか?」
「おう、わかった、ちょっと待て」
と言いながら、TKFは10円玉を3枚取り出して、手の中で振ってから並べてみたりして、
「特にこれで縁が切れる事はなさそうだ。少し落ち着いてから今から電話して謝れば、向こうも謝ってきて、普通に仲直りできるだろう」と言った。
翌朝、確認したら、そのとおりになったということであった。
少し種明かしをすると、別にこれは占いでもなんでもなくて、単なる夢解釈にすぎない。
「夢の中で車の通行が止められる」、というのは、「コミュニケーションの断絶」を表すことが多い。それが感情として夢に出てくるという事は、ここ1~2日での何かの経験に関係することであろう。
で、何も娯楽もなく、同期とはこうして嫌と言うほど顔を合わせている中でのコミュニケーション断絶と言うなら、「彼女と電話がつながらなかった」、という以外はありえないだろう。
で、自分はコミュニケーション断絶したのに、他の車はコミュニケーションを取っていて、それでイライラした、というのだから、要するに話し中だった、ということである。
それがストレスになって夢にまで出てくるという事なので、ケンカしたまま仲直りできていない、ということである。
どうであろうか、“現代のシャーロック・ホームズ”(自称)と言うだけのことはあると、感心してもらえただろうか?
最後のところで、「仲直りできる」と言ったのは、その彼女が会社内の人間で私も話したことがあったので、こちらが冷静になって謝れば彼女もそこまで根に持たない、と読んだだけであり、占いでもなんでもない。10円玉を振ったのは、いかにも占っている、というポーズに過ぎない。
(ことわっておくが、手元に道具がなかったので占っているふりをしただけであり、道具があるときは横着せずにちゃんと占っている)
と言う感じで、その同期の啓蒙に成功して、そのときは少し殊勝になった感じもあったが、仲直りした後はすぐに元通りに戻ってしまった。
人の啓蒙とは難しいものである。
一昨日に、止まっていたガラケーの時計表示が更新されて、
今は「4月10日(木)8:59」となったまま固定されている。
前回の9:18は、鑑定を終えてとりあえず任務完了、ということだろう。
ただ、今回の8:59は、また何かの暗示だろうが、なんだろうか?
今回は誕生日ではなさそうだが・・・
さすがの私も解釈できない。
誰かわかったら、コメント欄で教えてほしい。