異世界蛮王、貧弱な身体に転生する〜元凶は前世神官の転校生〜   作:ヘイ

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帰宅とその翌日

 

 和泉晏悟は女好きの軽薄な男だ。

 そんなイメージができてしまっている。

 実際はそんなことはない。

 茶髪に褐色肌。程よく鍛えられた身体。その容貌からか、遊んでいるような雰囲気が滲み出ている。

 

「付き合ってくださいっ」

 

 そして、よく告白されるのだ。

 

「いいよ」

 

 そして、それらを了承する。

 和泉晏悟のこれは日常と言っても差し支えのないほどだ。

 そうしてカップルが誕生したところに。

 

「お、いたいた。和泉、帰んぞ」

 

 俺に探させやがって、と朔斗がやれやれと溜息を吐き出した。教室に晏悟の姿がないことから、誰かしらに呼び出されたことは推察できた。そして可能性のある場所をいくつか巡り、こうして見つけ出せた。

 

「いやいや、オレ今日は彼女と帰るから」

 

 しかし、晏悟は朔斗の誘いを断った。

 

「あー……了解」

「またあとでね」

 

 朔斗が校舎裏から出てきたところに「彼、モテるんですね」と声がかかった。

 

「覗き見かよ、趣味悪りーな」

「……愛のないハーレムを築き上げたあなたが言いますか?」

「政策の一環だろうが。何するにも数を増やしたかったんだよ。俺の野望には届かなかったがな」

 

 必要な物も増えるが兵士も商工従事者も数が増えれば有利に働くことも多い。特に征服戦争を数多仕掛けた蛮王の治世となれば、戦死する兵士も少ない訳がなかった。侵略し、奴隷兵士を手に入れ。女には子供を産ませる。

 

「さ、私たちも帰りましょうか」

 

 朔斗は蓮華の発言に眉をピクリと動かし。

 

「あ? ざけんな。お前と一緒にいられるか。俺は一人で帰らせてもらう!」

 

 背中を向けて走り出すが、直ぐに疲れて速度が落ちる。当然、彼女にも追いつかれる。

 

「え? 本当に一人で帰れるんですか?」

 

 蓮華は本気で不安そうな目を向ける。

 

「お前……! 俺を、舐めるのも大概にしろよ! 和泉が居なくても、一人で帰れるに決まってんだろ!」

 

 啖呵を切ったが家まで残り三百メートルという辺りで彼は肩で息をする状態に陥っていた。

 

「……ぜ、ぁ、はぁ……」

 

 それも学校で走ったせいだ。叫んだせいだ。根本的な原因は隣にいる蓮華のせいだ。

 

「雑魚すぎません?」

 

 馬鹿にすると言う顔ではない。

 憐憫を抱いている。

 

「貴様……こ、のドレッド・レッドに……なん、たる」

 

 朔斗が睨むも臆する様子はない。

 前世の頃は一瞥するだけで多くの人間が震え上がったというのに。

 

「前世のあなたを恨む人たちにこの情けない姿を見せてあげたいですね」

「……そんな、ので恨みは、晴れんだろう、が。それに……俺に屈辱を与えるのが目、的なら……うぐっ、ふぅ。部下に……見せる、方が効率的、だ」

「……さすがの性格の悪さですね」

「これ、でも……統率者、だったからな」

 

 相手の嫌がることを考えながら動かなければ戦争はできない。そして反感を抱く部下を無理矢理に纏めるにも、やはり冷酷でなければならなかった。

 

「少し休みましょうか」

「あ、あ……はあ」

 

 二人は立ち止まり、朔斗の呼吸が落ち着くのを待つ。

 

「もう大丈夫だ」

「ゆっくり行きましょうね」

 

 まるで介護されているかのような扱いである。

 

「はぁ……」

「さて、ここが朔斗くんの家ですか」

「…………」

 

 家までバレてしまった。

 彼女はずっと付いてきていたのだ。

 

「お家も分かったことですし、これからは迎えにきてあげましょうか?」

「死ね! 和泉がいるからお前はいらん!」

「あれ? でも、晏悟くん彼女できましたよね?」

「どうせ直ぐ別れる」

「は? なんでですか?」

「ああ見えてあいつは純情なんだよ」

 

 キープして身体だけの関係でも築けばいいだろうに、晏悟はそれをしない。軽々しく付き合うからか、軽々しく別れる。けれど決して肉体関係に至ることを軽いことだとは考えていない。

 

「あとは……まあ、これはいいか。とにかく、いろいろあったんだよ」

「え? 何があったんですか?」

「気にすんな。絶対に言いたくないから」

 

 これは二人の過去に関わるものだ。勘違いに始まり、根幹を揺るがした話だが……それは二人だけの秘密である。二人にしてみれば暗黒の歴史なのだ。

 

「教えてください! じゃなきゃ帰れないです! 気になるんです!」

「ほうか。じゃあな」

 

 朔斗は家の中に入り鍵を閉める。

 扉を叩く音が聞こえるが無視して階段を上り、自室に入るとベッドに倒れ込んだ。

 しばらくすると扉を叩く音も止んだ。

 彼女も今日のところは諦めたのだ。

 そして家族が帰ってきて、いつものように一日が終わる。

 

「────おはようございます、朔斗くん」

 

 翌日、井嶋家の朝食の場に彼女は居た。

 

「なっ……んで、手前がここに!」

 

 驚き。疑問。怒り。

 

「こら! 朔! せっかく友達が迎えにきてくれたのにそれはないだろ!」

 

 そして父親からの叱責。

 感情がぐちゃぐちゃになる。

 

「……親父に何をした」

 

 この世界に魔法はない筈だというのに、そういった現象を疑いたくなってしまう。

 渋々と右隣の椅子に座った朔斗の問いに少女は微笑み。

 

「くすっ……ふふ、性格に難があるのがいけないんですよ?」

 

 唇の前に右手人差し指を立てながら言う。

 

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