ノブレス・オブリージュは斯くありなん   作:パワー系お嬢様

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ノブレス・オブリージュの戦い

 

 

「……付かず離れず絶妙に安全圏を確保した立ち振る舞い、戦場から目を背ける様子もなし。かと言って銃弾を恐れぬわけではなく、常に細心の注意を払っている……良い(ベネ)

「弾が当たらない!?」

「あら、銃口を見れば弾道の予測くらい付くでしょう?それと……見学中はお静かに、でしてよ」

「あがっ……そんな芸当……できるわけ……」

 

 倒しても倒してもわらわらと湧いて来る不良生徒共を相変わらず片手間で片付けながら目線は常に先生と先生が指揮する生徒達へ。なるほどあの方は自分の立ち振る舞い方をよく理解してらっしゃる。

基本は堅実に、時には大胆に、臨機応変なその様は後方から常に戦場を見据えているからこそできる芸当。とても一昼夜で身につくものとは思えない……ああ、やはりあの方は。

 

「……良い(ベネ)非常に良い(ディ・モールト・ベネ)

 

最早疑いようなど微塵もなくあの方は尊敬すべきお方である、同時に私が至るべき到達点でもある。

お目付け役として適当に付き合って帰るかと消化作業のように思っていたがまさかこんな出会いがあるとは、偶然とは面白いものだ。

 

「さて、やることも終わりましたし……」

 

予備のマガジン含めて撃ち尽くした銃を投げ捨て近くで伸びている不良生徒の銃をまたマガジンごと拝借、軽くリロードし……

 

「通らせてもらいますわ」

 

先程そうだったように此処の雑兵どもは先生達が片付けるだろうから用はない。銃を撃つと見せかけて突撃し同じようにバク宙で肩を踏み抜いて後方へ、受け身を取ってそのままの勢いで戦車が待ち受ける目的地へと突き進む。

 

「なんだあいつ!?単騎で突っ込んでくるぞ!」

「……待って、あいつ鮮血の赤(スカーレット)じゃん……なんでこんな所に……」

鮮血の赤(スカーレット)!?ひっ……私はまた半殺しにされたくねぇ、逃げる!」

「あっちょ、逃げるなお前ぇ!」

 

おや、どうも昔私が戦場に表立って出ていた時期の奴らも居るらしい。少し懐かしさに浸りそうになったがそれはそれこれはこれ、今はあの方の進路を確保する事が先決である。

 

「……逃げたいのならお好きにどうぞ、ただし私の進路を拒もうとしない事ね。踏みつけてでも通りますわよ!」

 

ちょっと昔を思い出したせいでうっかり持っている銃を投擲しかけてしまった。全く何のために銃を拝借してきているのやら、此処で近接戦(ステゴロ)をしてしまえば事後処理が面倒な惨状になることは想像に難くない。平常心、そう平常心を保って銃を撃つのだ薊ライよ。

 

「これだけの数で囲めば幾ら鮮血の赤(スカーレット)と言えどもぉ!」

 

流石に不良生徒とはいえ頭は回る、逃げ出さない残党達が展開して四方から同時に私を攻撃する方針にシフトしたようだ。確かにまあ有効的な戦術ではある、しかし……

 

「一点、弾幕を貼り忘れましたね?」

「……は?」

 

両脚に力を込めて屈み、一気に解放して跳躍。幾ら集中砲火といえど敵が地上に居るのなら空中にまで弾幕を貼る馬鹿はいない、完全な空白地帯と化す。

 

「飛んだ!?」

「ええ、跳んでいますとも……さあ避けなさい、全身打撲になりたくなければね!」

 

無論ただ逃げるために跳ぶなんて事はしない、私の事をよく知っているのならこれから何をするつもりなのかなど容易く察せる。

 

「っ、全員逃げろ!可能な限り!」

「物分かりがいい人は好きでしてよ!」

 

故に、避ける。別に避けなくても問題はないが、事後処理が少々面倒になるため巻き込みはなるべく少ない方がいい。

 

「警告は……」

 

上昇も終わり後は落下するのみ、回転してさらに破壊力を付けたい所だが今は殲滅するために此処に居るのではなく露払いとして居る、過度な破壊は避けるべきだろう。

 

「しましてよ!」

 

落下の勢いを付け地面に踵落とし、先程の鉄球投げより比較的大きいクレーターが私を中心に形成され逃げ遅れた者やそもそも逃げなかった者達が衝撃で吹き飛ばされる。

昔「人間大砲」だとか言われたがまあ文字通り大砲並みの威力ではあるし間違ってはいないだろう、トウキに話したら「ジャグリングと合わせて1人サーカスだな」なんて言われたのは今でも覚えている。

 

「……道路の修繕費は事が終わり次第済ませておきますか……む」

 

靴に付いたセメントや土を軽く払って再び奥へ……と思ったのだがその前に妙な気配を感じて上……歩道橋の方を見やる。

 

「……おや」

 

どうやらそれはあちらも同じ様子、仮面で表情は見えないが少なくとも良い表情ではあるまい……仮面?

ああ、思い出した。確か彼女は……

 

「災厄の狐……これまた大物が出て来ましたわね」

「そういう貴方は鮮血の赤(スカーレット)……でしたっけ?噂だけは耳にした事がありましてよ、当時トリニティの不良集団の大半を1人で壊滅せしめた鉄の女」

「語弊がありますわね、私が1人で手を出したのは全体の2割程度に過ぎませんわ」

 

確かにまだ自警団も発足してない当時は自分1人で不良集団を潰して回っていたが……トウキが増え、自警団が発足し、気付けば団員達が代わりにその役目を担うようになった。私自体の戦果は微々たるものである。

 

「まあどうでもいい事です……そろそろ動こうかと思いましたがそれでは物足りませんし」

 

その話自体はどうでもいいと一蹴され、災厄の狐……確か狐坂ワカモ、だったかは歩道橋から地面へと着地。まあ私もこれに関しては今どうでもいいと思っていたので同感だ、それよりも……

 

「個人的な暇つぶし、付き合ってもらいましょうか!」

「そう来ると思っていましたとも……ならばこれはもう不要」

 

銃の達人では無い私にはある程度以上の腕前を持つ相手に銃はウェイトにしかならない、そして目の前の相手はその「ある程度」以上の腕前である事は確実。

不良集団の鎮圧程度ではもう済まない、拝借した物ではあるが銃をなるべく傷付かないように先程吹き飛ばし沈黙している不良生徒の上へ投棄する。

 

「あら、わざわざ銃を捨てると?」

「生憎私には……」

 

身軽になった両腕を構える、左手を盾に、右手を剣に。

 

「此方の方が性に合っていましてね!」

 

加減はもう利かない、否、加減している暇はない。

 

私の最も得意とするスタイル(ステゴロ)で、奴を迎え撃つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「居た!あいつがワカモ……待って何あの人、銃も無しに戦ってる!?」

 

「……格闘戦で互角に渡り合ってますね」

 

「先で暴れて来るとは言ってたけど……あれ、大丈夫なの?」

 

「ええ、問題ありません」

 

「ハスミ?」

 

「……そもそもライ団長が銃を持って戦うということは紛れもない「手加減」の証です」

 

「手加減!?」

 

「あの方の本領はCQC(近接格闘戦)、普段はやり過ぎないように銃を使う事で意図的にそれを封印しています」

 

「CQCって銃も普通に使わないかしら……」

 

「まあそうですが……あの方の場合は別です」

 

 

「ライ団長の場合、銃で弾丸を放つより素手で弾丸を投擲した方が威力がありますから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど、確かに「災厄」の二つ名が付けられるだけはありますね……!」

「其方こそ私と1対1(サシ)、それも素手でやり合って呑気に話せるくらいには余裕があるのですね?」

「このくらいの修羅場は何度も経験済みでしてね!」

 

右手で隙あらば差し込もうとしてくる短剣を弾き、左手で銃口を此方に当たらないように同じく弾いてコントロール。たまに数発撃たれてしまう時があるがまだ躱せる範囲だったので今のところ当たってはいないが……このままでは戦況は膠着するばかりだ、震脚で好機を生み出したい所だが生憎彼女は震脚させてくれるほどの隙を見せてくれるとは思えない。

どうにかして短剣を弾き飛ばせれば右手が空く、ならば……

 

「隙ありでしてよ!」

「……!」

 

やはり、だ。彼女程の手練れであれば視界の注意を一瞬でも怠ればそれに気付く、故こうして好機を見出す。

 

「隙は……」

 

だからこうして隙を作った。今まさに肩に届こうとしている短剣を人差し指と中指で挟み込み、思い切り引っ張って引き寄せる。

 

「油断を誘う道具として、最適なのですっ!」

「何っ……!?」

 

すかさず身体を左へ捻り、短剣ごと彼女を地面に引き摺り下ろさんとする。これで本人も制圧できれば万々歳だがそう上手くは行くまい。

 

「ちぃ、面倒な……!」

 

当然のようにワカモは短剣を手放し距離を取って体勢を一瞬崩した私へ銃を乱射、確かにこれも隙だ。

 

「面倒で結構、気高さは時に必要ですが真剣勝負には無用の物です」

 

ただそれを想定していないほど私も愚かではない、しかし姿勢制御は間に合いそうにないのでたった今奪った短剣を持ち替え銃口から予測できる到達地点に軽く添える。

触った質感からこの短剣も中々良い素材でできているらしい、で、あるのならば。

 

「……盗人猛々しい!」

「その言葉、そのままそっくりお返ししましてよ」

 

当然ただの弾丸など容易に弾く……盗人猛々しいとは悪事を働いて平然としている者の事を指す、今その言葉が似合うのは彼女達に他ならないだろう。

まあそれはともかくこれで右手は空いた、後は詰めの作業を……

 

「ライ!」

「ライ団長、ご無事で!?」

「……存外早い合流でしたわね、皆様」

 

タイミング的には悪い方だが、時間としてはだいぶ早い合流だ。多勢に無勢という言葉があるが災厄の狐相手にそれが適用されるかは怪しい、できれば彼女らには先に向かってもらいたい所だが……

 

「……チッ、その短剣は預けておきます。いつか取り返しに行く時まで首を洗って待っておく事ですね、鮮血の赤(スカーレット)!」

「ええ、取れるものなら取ってみなさい災厄の狐」

 

あちらにもあちらの事情があるのだろう、ワカモは急いで撤退していった……あの方向は目的地か、面倒なことにならなければいいが。

 

「ちょっ、逃げてるじゃない!?追わないと……!」

「いえ、今の目的は不良集団の制圧でしょう?彼女1人に構っている暇などないはずです」

「……確かにそうね、ちょっと熱くなってたみたい」

「ならばよろしい、それに……」

「……この音は」

 

災厄の狐の後すぐにこれとは、やはりステゴロに移行したのは正解のようだ。

 

「……クルセイダー1型、ウチ(トリニティ)の正式採用車両です」

「全く最近は何処に行ってもこれですね、最早不法流通どころか裏で新しく製造してるのではと勘繰ってしまいますわ」

「そんなゴキブリ感覚で言うものなの!?」

「そんなものではありませんけど……あれは盗まれた物じゃなくて何処かから流れ着いた物っていうのは確かです、先生」

「つまりは?」

「ガラクタだから壊してもいいって事です!」

 

……さて、どうしたものか。実のところワカモに逃げられてしまったせいで若干消化不良なのだ。戦場で昂ってしまうのは良くない事ではある、あるのだが……近接戦(ステゴロ)を交えたこの感覚からはどうも逃げることはできないらしい、やはり真のノブレス・オブリージュには程遠い存在のようだ。

 

「だったら廃棄作業は私に任せてもらえませんこと?情けない話ですが少々消化不良気味でしてね……」

「まさかとは思うけど……1人であれをどうにかするつもり?」

「ええそうですが」

「嘘でしょ!?」

 

あっけらかんと言い放てばミレニアムの彼女は信じられないと声を荒げた。まあ当然と言えば当然である、腐っても戦車は戦車、単騎で相手取るのは無謀もいい所。

 

「できるの?」

「当然です」

「じゃあ、任せたよ」

「いいんですか先生!?」

「ではお構いなく」

 

しかしまあ先生は此処の常識を知らないのかはたまた私を信じているのか任せるつもりである、利用するようで悪いが……少し派手にやらせてもらおう。

 

「さあ道を開けなさい、阻もうものなら壁とキスをする事になりますわ!」

「ひっ……」

「もうやだ帰るぅ!あんなのがいるなんて聞いてない!」

「あっ、逃げ、逃げるなぁ!?」

 

先程のクレーターで私という存在の脅威は私を知らぬ者にも充分伝わったようで向かっていこうものなら蜘蛛の子を散らすように雑兵達が逃げていく。きっと全員とっちめておくのが良いのだろうがあくまで今の目的はこの場の安全を確保すること、それに逃げ出す輩に碌な悪事ができるとも思えないし……いや、これは言い訳か。

 

「しょ、照準確保!」

「幾らあいつと言えども戦車の一撃は耐えられまい!ってー!」

 

私が到達するまでに1発当たればどうにかなるだろうとでも思ったのだろうか、愚直に定まった照準から2ポンド砲が私に向けて放たれる。

まあ良い判断ではある……

 

「まあ、当たればの話ですが」

「はぁ!?」

「掴んだ!?」

 

銃弾と比べれば微妙に遅いそれは捉えるのもまた容易い。放たれた弾丸を右手で軽く掴み勢いのまま一回転してまだ残っていたクルセイダー周囲の不良生徒に投げ返す、まあ運が悪かったと諦めてもらおう。

 

「さて……」

 

これで私へ放つ弾丸は無意味であると知らしめた、後は如何様にでもできる。

 

「古来より戦車の攻略法は確立されているのですよ?」

 

怯んで動けない不良生徒を後目に再び屈んでクルセイダーに向け跳躍。

 

「砲塔を潰し……」

 

まずは上昇の勢いで蹴り上げて唯一の攻撃手段である砲塔をへし折り。

 

「移動能力を削ぐ!」

 

落下の衝撃で再びクレーターを作り衝撃で横転させる、実に効率的な方法である。最もこのやり方だと横転した戦車を盾にされてしまうが……ほぼ相手の戦意が喪失している今はもう関係ない事だろう。

 

「まだ、やるつもりで?」

「撤退!あんな化け物とまともにやってられるか!?」

「撤退するったって何処にぃ!?」

「そんなの自分で探せ!!!!」

「そんなぁ!」

 

ほら、皆散り散りに逃げていく。こういう統率のあまり取れていない奴らは力を誇示することで簡単に敗北を悟って戦意を失う……自警団の前線を張っていた時期に嫌というほど使った手だ、少なくとも奴らは私がこの場に居る限り戻ってくることはないだろう。

 

「さて、宣言通り廃棄作業は終わりましてよ?」

「私は夢でも見ているのかしら……」

「安心してください、しっかりと現実です」

「……これが、鮮血の赤(スカーレット)の実力」

 

何はともあれこれで仕事は終わりだ、後の事は先生に任せるほかないだろう。

 

「ありがとう皆、それじゃあ行ってくるね」

「ええ、お気をつけて」

「私達は念の為警戒を行なっておきます、何かありましたらすぐに……あ、先生との連絡手段がありませんでしたね」

「じゃあ今交換する?」

「流石にそちらのやるべきことを優先してください……」

 

なるほどなるほど、多少のユーモアも併せ持つと。私にも必要なんだろうか……ユーモア。

 

「……さて」

「……何するつもり?」

「どうせあそこまで派手にやっておけば来る者も来ないでしょうし、暇つぶしでもしてようかと」

「それはさっきの……」

 

先生の対応が終わるまで見張り……という名目の暇な時間は継続である。流石に今なら許されるだろう、という事でポケットから鉄球を取り出す……

 

「……ライ団長」

「はい?」

「それ、ずっとジャケットに入れながら戦っていたのですか?」

「勿論」

「……」

 

その数、9()()。重量にして約180kg、銃のウェイトなど話にならないレベルのハンデと捉えられても仕方がない物である。銃は手が塞がるので実のところ重量よりもハンデなのだが……

 

「踵落としの威力も上がるので悪い事ではなくてよ?動きも多少鈍りますが支障はない程度ですし」

「普通180kgを「程度」とは言いません……」

「トリニティって貴方みたいなのしか居ないの……?」

「安心してください、ライ団長は例外で規格外の方達に区分されます」

「その例外で規格外の区分を詳しく聞きたいところですわね」

「少なくともツルギ委員長やミネ団長は含まれます」

「成程」

 

ハスミの説明を聞きながら鉄球を思い切り投げジャグリングを開始、此処まで至るのに初めてから3年ほどかかっただけあり楽しさはジャグリングという行為の中でも最上級に高い。側から見れば流れ作業に見えるだろうが非常に高度な計算を要求される己との戦い、その最終進化系なのだ。

 

「……20kgの鉄球を何の苦もなくただのボール同然に……」

「理解は諦めてください、あの方はそういう生き物です」

「それは遠回しな罵倒ではありませんこと?」

「なんで涼しい顔しながら返事までできるのよ……」

 

何故ってまあ……なんだかんだこれも慣れてきたからだ。人生は挑戦とその改善で成り立つとはよく言った物である、このジャグリングに限った話ではないが、トライ&エラーの繰り返しで物事の大半はどうにかなってしまうのだから。

 

「……それで、いつまでやるつもりで?」

「無論先生が戻ってくるまで」

「……そうですか」

 

……それはそれとして理解できない者を見るような目はそれなりに傷付く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いつの間にかワカモが現れて逃げ出したというハプニングがあったとはいえ。

かくして先生により連邦生徒会の行政権は回復、これによりキヴォトス各地の問題は無事鎮静化される見通しである。とはいえ鎮静化したとしても残るものは残るのだから私達自警団の仕事が無くなるわけではない、より一層気を引き締めて職務に望むべきである。

 

まあ、それはそれとして。

 

「ライは帰らなくていいの?」

「帰りはしますわ、ただ貴方に少し話したい事があるだけで」

「私に?」

「ええ」

 

ミレニアムの生徒(聞けばユウカと言うらしい)、ゲヘナの生徒(同じく聞けばチナツと言うらしい)、ハスミが先生に軽く挨拶して帰った後、ジャグリングをやめた私は少しだけ先生に話したい事があり残っていた。

 

「結論から申し上げますと……私薊ライは、貴方という人間が非常に気になっております」

「私?」

「ええ、貴方こそ私の至るべき到達点、大人としての理想像」

 

……ただ、あくまでこれは「私の」理想像である。

 

「そこまで高尚な存在じゃないよ、私は」

「だから、です」

「?」

「憧れとは理解から最も程遠い感情。貴方に憧れるばかりでは私は私の理想とする大人になど永遠になれません」

 

そう、だからこそ。

 

「私が私の理想に殉じるため、そして貴方を憧れではなく「先生」という1人の人間として見るため」

「長い付き合いになりそうです……これからよろしくお願いしますね?先生」

 

憧れるのはやめる、私は私の理想の大人になるため……先生という人間を知り尽くす。





「どうだった、その「先生」とやらは」

「やはりたまには表に出ないと身体が鈍りますわね」

「非暴力的なやり方を私は温いとは言いませんよ、スズミ」

次回「ノブレス・オブリージュの日常」

「……トウキ」

「紅茶は万病に効く、何せ加熱された薬草だからな」


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