続かないと言ったな。あれは嘘だ。
とはいえ短編と言っておきながら長続きするのもアレなので、すぐに〆られる構成にします。
ちなみに前話をいくつか加筆修正しました。誤字脱字があれば報告もお願いします。
──期──年 交わりの峰スージャ 晴れ
なんか生きてたぁ…(困惑)
ハンターらしきお姉さんと、多分研究者なのだろうイケメン、すっごく私のおっぱ…龍灯に興味深々な顔のいいオッサン。目覚めてすぐに見つけたのが、この三人だ。
それぞれ星の隊と名乗った三人と私は、現在竜都の近場にある霊峰の山頂にいた。なんと、竜人族の里らしい。「スージャ」という名前で、不思議なことに竜都が敷いた人工環境操作の影響を殆ど受けていない。まるで桃源郷のような場所だった。
というか竜都、残っていたんだ。龍灯の存在も感じるし、ここの環境装置も生きてるみたい。当時の住民のお孫さん?みたいなおじさんもいた。みんな防護服を着ているようだけど、やはり千年も時が経つと流石に変わるものもあるみたいだ。
…そうか。千年も寝ていたんだ。
それはそれとして、私は色々な質問と調査を受けた。
ハンターお姉さん、オリヴィアさんは私に笑顔を向けていたが、ずっと警戒していたのは分かる。けどまあ無理もない。ハンターからして見れば、今の私は「意思疎通可能な古龍」といったところだろう。脅威として対峙する気概があるのは、職業的に正しい。
イケメンのエリックさんは、造竜化した人間という部分に着目していた。めっちゃ興奮していて怖かったけど、私のことは見るだけに徹していた。その辺りは紳士的だなと思ったけど、ずっと「ウッヒョーーーー!!」って言ってるのはどうかと思う。
顔の良いオッサン、ヴェルナーさんは……めっちゃ触ってきたな。オリヴィアさんが頭叩いて止めたけど。龍灯の仕組みに興味深々なのは分かりきっていたので、軽く原理や理論の説明をしてあげた。すると速攻で工房みたいな場所へ走り出したので、まあ効果的だったかな。
それと、里の長っぽいお婆さん。すごく若く見える。マダム的な「耳の方」。あの人はすごく優しかった。けど、何を考えているのか分からないし、何か私の考えとか、喋ろうとしていたこととかが、全部筒抜けているみたいで怖い。
確か、一部の竜人は龍種と通じることができるとかいう、オカルティズムを提唱した論文を読んだことがある。もしかして、耳の方はその例なのかな。終始ニッコリしていたので、あんまり考えないようにしよう。
最後に、タシンおじさん。シルド…いつの間にか里になったらしい、あの公園があった場所で、竜都を代々監視していたと聞いた。「守人」と名乗り、災いによって半壊した竜都に残って、オーバーテクノロジー化した私たちの技術をこれ以上悪用されないよう見守っていたそうな。
見れば分かる。かつて竜都の住民だった人たちだ。特にタシンおじさんは、かつて私と共同作業していたアイツと顔が似ている。あぁ、そこに居たんだね。
今日はそれぞれ五人と、私が竜都で生まれて今に至るまでの経緯を話した。前世のことは語りはしなかったけど、それでも私というかつての生写しの話はとても貴重だっただろう。皆ずっと驚いてばかりだった。
けれど、何かを悔やむように顔を歪めるタシンおじさんの表情が、とても印象的に残った。
まあ原因は理解している。私がゾ・シアの融合造竜人だからだろう。なおかつ、龍灯を搭載したことで完全独立した生命体になっているからだ。自分からこれを願ったのだが、タシンおじさんから、一族の罪の象徴にもみえているのだろうか。
まあ、うん。言ってどうこう言えるものではないから、言わないでおいた。これ私がしたかったことなんですよとは。
しかも話を聞くに、ゾ・シアは存命だったらしい。だったというのも、ハンターがそれを討滅したのだとか。
笑えなかった。アレでもゾ・シアは対古龍用合成古龍型決戦兵器だったのだ。この大地のモデルケースであろう「新大陸」の赤龍、シュレイド滅亡の原因たる黒龍をブレンドし、他禁忌級の古龍のデータを折り込んでチューニングした、まさしく「ぼくが考えた最強のドラゴン」がコンセプトの護竜だったんだぞ。
それを討滅するとは、ハンターってやっぱりすごいなぁ。
ちなみに、ゾ・シアは龍灯に寄生して私と同じように千年間休眠していたらしく、ここ最近になって環境装置に影響を及ぼすレベルで活性化していたようだ。龍灯を止めるか止めないかの瀬戸際だったようで、そのハンターにはもう足を向けられないだろう。
私も会ったら五体投地で降伏宣言した方がいいかな。
──期──年 竜都の跡形 ベースキャンプ 曇り
この人絶対
そんなハンターさんに会った。明らかに佇まいが違うというか、オリヴィアさん以上に「油断したら狩られる」って感じの男のヒト。そんな片手剣使いの彼は、私に「よろしく」って平然と言いながら手を差し出すのだから、ちょっと怖かった。
で、やはりこのハンターさんがゾ・シアを倒したハンターらしい。従順を示すためにお腹を差し出したらドン引かれた。恥ずかしい。
竜都にある里に来てみた。と言っても、呼び出されたというのが正しい。
鳥の隊。ハンターさん、編纂者の女性のアルマさん、鍛治師のジェマお姉さん、あと同じ同郷の雰囲気を感じるナタくん。昨日と違って、どこか穏やかなメンバーだった。
私を呼び出したアルマさんは、編纂者として、ギルドとして私の存在を見極めたいらしい。お淑やかな雰囲気だけど、どこかパワフルさを感じる人だった。何でも、セクレトに騎乗して、ハンターさんの行動を逐一記録しているらしい。そりゃパワフルだわ。
私のことは女の子として接してるみたいだけど、同時に観察の目を向けているのは丸わかりだ。けど、このくらい分かりやすいと逆に安心するかな。
ジェマさんは、すごく…大きいです。
鍛治専門みたいだから、あまり喋ることはなかった。ただ、元気はつらつな感じは嫌いじゃない。ああいう人ほど、すっごく頼りになれるから。
もし私の角とか鱗とかを渡したら、それで装備を作ろうとするのだろうか。
そして、ナタくん。どうも十歳の子供らしい。一度、暴走した護竜アルシュベルドの襲撃に遭って、守人の里から逃されたようだ。それがきっかけで、「禁足地」指定されたこの土地にギルドが調査を依頼され、今に至るようだ。ナタくんもまた、タシンおじさんと同じ守人の一族で、龍灯の停止装置であるペンダントを代々継いでいた一家のようだ。
なんか近寄り難ッ、て思ったのはそういうことだった。ごめんねナタくん。そのペンダントを近付けられると私、不整脈を起こすんだ。
というかここ禁足地扱いされてたんだ…妥当っちゃ妥当。やーいお前んちシュレイド級禁忌〜。
…私の故郷だが。
紹介はここまでにして。
私は竜都の案内をすることとなった。私も千年の間、竜都がどのように変化したのか気になったので、元の姿との違いを教えながら歩くのも良いかもしれないと思って、それを引き受けた。
竜都は、かつての姿が半分くらい残ってた。誰一人居なくなった代わりに、護竜が野生化して環境を築いていた。命令する人間が居なくなったからか、自律的に行動している。あるいは、原種還りがされつつあるのかな。
中には護竜を餌にするモンスターもいることを知った。確かに、ほっとけば無限に餌が生まれるこの環境は、ソイツにとって天国みたいな場所だろう。
案内してるとソイツに襲われて、危うく丸呑みされかけたのだが。
流石に驚いた。びっしりと牙が生えた口を見せびらかして来て、思わずドラゴンブレスを吐いた。えっちな展開どころかガチで体がペースト状になるまでグチャグチャにされそうだったので、手加減などできなかった。
そのせいで、奴の巣穴らしき場所に大穴を開けてしまった。ざまーみろってんだ。
で、そんなことした結果…おそらく餌として捕獲されていたであろう、護竜セクレトの一匹が私に懐いた。
今じゃ私のおっぱいをベロベロ舐めてる。どうしよう、すごく竜乳の排泄に困らなくなったけど…
竜都の跡形。緩やかな螺旋を描く道を歩む四人は、一体──否、一人の少女を囲んで、改めてこの都市を眺めていた。
白いドレスを纏った、竜の少女。竜人……ではなく、人竜と呼ぶべきか。自ら造竜の苗床たる繭に入り、千年も眠りについていたという彼女は、懐かしげに語る。
彼女から語られる竜都の営み、その光景、思い出は、アルマたちの興味を大いに引いた。千年前の歴史の詳細。考古学に興味のある者にとって、どれほどのご馳走かは容易に想像がつくだろう。
だからこそ、気付けなかったかもしれない。
会話に花が咲くことで、集中力が散漫になってしまった瞬間。邪悪な暗殺者の手が、少女を絡め取った。
「──!!」
「あっ──」
一瞬。まさに一秒にも満たない時間に、ニ・スキの胴に黒い触手が巻きつき、すぐ側にあった亀裂へと引き摺り込まれる。小さな子供の体だからこそ通れる隙間に消えた彼女を、彼らは追えなかった。
「シーウーか! アルマッ!」
「緊急クエストを発行します! 今すぐに彼女の救助を!!」
行動は早かった。ハンターの男はセクレトを呼び、彼奴の棲家であるエリアへと走らせた。無論、付いてきたアルマや、ジェマとナタもまた彼の背中をセクレトで追う。
いやらしいことに、竜都はかなり入り組んでいる地形が多い。今いる場所からシーウーの棲家まで、最速でも七秒以上もの時間がかかる。だがシーウーは、その七秒の間に棲家へ獲物を引き摺り込み、捕食できてしまう。おそらくシーウーには、ニ・スキがとても美味しそうな護竜に見えたのだろう。実際護竜である彼女は、餌として狙いをつけられたのだ。
あまりの事態に焦るハンター。既にシーウーによって被害が出た件を知る彼にとって、これ以上「人が喰われる」という事態は目にしたくはなかった。いざとなれば「狩猟」の領域を越えてでも助けねばと決意した彼は、ようやく辿り着いた巣穴を前にして──驚愕した。
ズガァァァアンッ!!
「熱ッ──!?」
突如、世界が燃え盛った。
狭い入り口から熱風が放出され、大タル爆弾Gを至近距離で喰らったかのような衝撃波が襲いかかった。たまらず尻餅をついたハンターだが、直前に片手剣の盾を構えたおかげで、セクレト共々ダメージは最小限に収まった。
目を開ければ蒸発してしまうのではないかと思える程の熱さ。黄金色に照らされていたはずの巣穴は、赤銅色の炎に包まれ、シーウーの仔らの姿はどこにも居なかった。
何よりも目を引いたのは、上半身が
そして、そこにはゾ・シアがいた。
ティガレックスの如き這う姿勢になり、腕状の翼を固定具のように地面に突き刺し、頭部を突き上げた状態。まさしくブレスを吐いた後の姿は、あの時戦った古龍型護竜の姿を彷彿とさせた。
ちょっと可愛らしい少女だと思っていた。しかし、やはり彼女はドラゴンであった。
竜都の最終兵器、ゾ・シアの生体データを体に溶け込ませ、融合したニンゲン。
守るべきだと思っていた者の姿は、今は何に見えている?
開きっぱなしだった小さな口。赤熱化した顎を閉じ、深々と呼吸した彼女は、翼を抜いて立ち上がる。先ほどまでの少女らしくもない体勢から戻り、二足で立って翼を格納する。
よく見れば、プルプルと彼女の体が震えているのが分かった。
ハンターは、ただその姿を見つめ──片手剣を仕舞った。
「──フゥゥゥゥ……ッ! ……はぁ、はぁっ」
「……大丈夫か」
「!」
振り向いた彼女の顔を見て、ハンターはやはりと改めた。涙を浮かべ、今にも抱きつきたそうにする彼女の様子に、ハンターは屈んで「おいで」と言った。
すぐさまニ・スキはハンターに飛びついた。鎧姿にも関わらず、突撃して胸に顔を埋めた彼女に、彼はそっと翼に触れぬよう抱き止める。痛くはないのか。そう言おうとしたが、人竜相手なら野暮かとも考えてしまった。
「こわ、かったぁ……」
ハンターはただ、「あぁ」とだけ言って肯定する。シーウーに丸呑みされる痛さと怖さを経験したことがある彼は、彼女にあのようなことが無くて良かったと、心の底から安堵した。
続け様に来る足音。チラリと見れば、アルマたちがこちらに追いついてきたようだ。
「大丈夫ですか!?」
「おーい! 無事かー!?」
「大丈夫だ!」
声を返しつつ、ニ・スキを離すハンター。やってきたアルマたちの元へ、彼はニ・スキを向かわせた。
「良かった……熱っ!? ほ、本当に大丈夫だったんですか?」
「あぁ。ただ……見てくれ」
「先生、ニ・スキさん! 良かった。無事、で……!?」
ジェマとナタも近づき、二人もニ・スキの様子を確かめようとした。しかし、先に飛び込んできた光景に、二人は絶句する。
あまりにも風変わりしてしまった、シーウーの棲家。そして、炭化した下半身だけが残った宿主の姿に、目を見開いた。
「……おいおい、まさかニ・スキちゃんがやったっての!?」
「あのブレス、すごく見覚えがある……ゾ・シアの融合体って話は、本当だったんだ」
ただの飛竜種のブレスとは、あまりにも桁違い過ぎる火力に驚愕するジェマ。あの時の戦いをよく見ていたナタ。二人はこぞってニ・スキを見た。ようやく恐怖心が落ち着いたらしい彼女は、見つめられた二人に、無事であることを示すようにへにゃりと笑った。
「えっと、どう……言ったものでしょうか。ひとまず、クエストは別要因により遂行されたと認定します。よろしいでしょうか?」
「……構わない」
事態が事態なだけに、困惑しつつも報告を済ませるハンター。アルマもそれを承認したが、今回だけの特例になるのは間違いなしだった。
古龍級のブレスにより、討伐対象が死亡。実際にこれをギルドに報告すれば、詳細な説明を求められるだろう。アルマは頭を抱えた。
「……あれ」
ふと、ニ・スキが顔を横に向ける。つられて皆もそちらに顔を向けると、一頭の護竜セクレトがいた。
負傷しているらしい。片脚から護竜特有の青い血が流れ出しており、全身が傷だらけで衰弱している。先ほど部屋中が蒸されたこともあって、今にも死にそうになっていた。
「護竜セクレト……おそらく、先のシーウーの保存食でしょうか?」
「つい最近捕まった個体のようだな。だが……ニ・スキ?」
そんな護竜セクレトへ、ニ・スキが近づく。駆けつけるように側へと歩み寄った彼女は、自身の肌を隠す竜乳のドレスを手で引き裂き、胸部を露わにした。
「!?」
「ちょっ!? ナタは見ちゃダメ!」
「な、何してるんですかっ!? ハンターさんも目を逸らしてください!」
「大丈夫だ。見ていない」
突然のことに騒ぎ出す四人。しかしそれらを無視し、ニ・スキは護竜セクレトの頭を膝に乗せ、口元に張り詰めた乳房を寄せた。しばらくすると、静かに響き渡る水音。とくとくとミルクが注がれるような音に、男二人は彼女が何をしているのか察してしまう。
「さっきはごめんなさい。熱かったでしょう? 元気になってね」
だが護竜セクレトにとって、それは蜘蛛の糸であった。並々と口から注がれる、いつもより
「! 傷が」
「治ってる、みたいだね。つまり、あの子の胸のは本当に龍灯ってわけか」
「はい。竜乳を注いでいるのでしょう。文字通り、その……」
「ヒューッ、大胆っ! 男がいるってのにすごいねぇ!」
「あ、あの……僕たちはいつまで、このままなんでしょうか」
「……そうですね。あの、すみません! そろそろよろしいかと!」
「ん……分かりました。ほら、もうおしまい」
乳房が離れた途端、ニ・スキは口からんべっ、と白い粘液を吐き出し、鉤爪を伸ばした指で器用に編み込む。水あめのように伸びたソレは瞬く間に糸に代わり、ふわりと巻き上げると破けたドレスをその場で補強した。
さながら手品のようなソレを、護竜セクレトは間近に見ていた。
「さあ、いきなさい。もう少しだけ、貴方は自由よ」
──透き通るような青い瞳が、ちらりと覗く青い舌が、羽根の生えた第三第四の
目の前の
だから気に入った。
「…………あれ」
「擦り寄っているな。懐いている」
「ちょっと、冷静に分析しないでください。ハンターさん? ハンターさん???」
「あらあら……フフフッ」
ニ・スキの胸元から、離れようとしない護竜セクレト。その姿は、野生化した護竜セクレトとあまりにもかけ離れており──まるで、手懐けられた原種のセクレトのようだった。
「ニ・スキ」
滅んだ後の故郷を案内した少女。タコがトラウマになりかけたが、本能的に黒龍ブレスを発射し事なきを得た。何気に精神が幼くなっている?
これからセクレト騎乗訓練を積むこととなった。
「ハンター」
我らが主人公。そしてプレイヤー。歴戦のハンターの男性で、此度の禁足地調査で大活躍した。ニ・スキと可能なら戦ってみたいどういう装備が作れるか知りたいという気持ちがある。
片手剣使い。
「アルマ」
ハンターのバディとして組まれた編纂者の女性。現地での「ギルド」の立会人として、ハンターの狩猟許諾を担う。
セクレトを容易く扱える辺り、あの体つきでかなりの体幹の持ち主。
「ジェマ」
鍛冶師の女性。4系列をプレイした方々にはとても親しみ深い方らしい。元気を貰える人。
セクレトを容易く扱えるのは、鍛冶師として身体も鍛えられたからか。
「ナタ」
ワイルズ本編のヒロイン。これまでの旅路を経て、「守人」から「狩人」の道へ歩み始めた少年。
ペンダントのせいで若干引かれていることを察し、ちょっとショック。
「負傷した護竜セクレト」
ママァ……