今朝呼ばれて確認してみたところ、ランキング4位に乗りました。応援してくださり、本当にありがとうございました。
あと3、4話くらいで〆たいと思います。
──期──年 隔ての砂漠 ベースキャンプ 豊穣期 晴れ
セクレトよりずっとはやーい!
翼で飛ぶことの快感を知った私だ。こんなにも風が気持ちいいなんて思ったことがなかった。前世で言うならバイクで高速道路を走っている気分だろうか。それなら私のフラッシュ…あの懐いた護竜セクレトの名前だ。彼の背中に乗って大地を駆ける気分も、それと同じだろう。
こんなに速く、こんなに強く、大地の芽吹きと砂のニオイを感じたことはなかった。辺り一面虫だらけなのも、あちこちに小型モンスターが生きているのも、ケマトリスやチャタカブラといった大型モンスターが闊歩しているのも、全部新鮮に見える。
そういえば、原種還りしたアルシュベルドが飛んでいる姿も見えた。話を聞くと、文献上では絶滅扱いだったらしい。それが護竜という人造生命の呪縛を、自ら振り払ったのか。大自然って凄いな。
話を戻すと、私は自身のテストと、護竜セクレトの騎乗訓練のために隔ての砂漠に来ていた。私の知る限りでは、ここは砂漠ではなかったはずなのだが、もしかすると度重なる風の発生であちこちが風化、粒状に削れて砂が蓄積して砂漠となったのだろうか。
テストの内容は簡単。体力測定だ。実際に翼で飛ぶテスト、つい最近出してしまったブレスの威力確認、竜乳のサンプル、自然に取れた鱗や羽根の研究などなど。
スタミナは無尽蔵。ずっと走っても息切れしなかった。これはまあ龍灯の恩恵だろう。翼は何故か思うがままに操ることができた。腕にもなるし、普通に飛べる。本能が動かし方を知っているような、そんな感じだった。
ブレスの威力確認だが、ちょうど歴戦のチャタカブラがいたので、ソイツに試してみた。通常のシーウーだと肉体も残らなかったそれだが…歴戦のチャタカブラ相手だと、肉体の跡形もなく全て蒸発してしまった。
結論、ブレスは封印。ついでに顎が疲れる。
…アルマさんの目の前でセルフ嘔吐するハメになるとは思わなかった。吐き出した竜乳は、ジェマさん、エリックさんとヴェルナーの三名で揃って研究となった。鱗や羽根も同じだ。竜乳に関しては、やはりそこらで採取できるものより濃度が高いらしい。フラッシュがお腹空いた時に擦り寄ってくるのはこのせいだろう。
残念ながら、鱗と羽根は小さ過ぎて武器加工等には使えないとのこと。
ところで、ハンターさんのセクレトが、いかにも「アギャッス」とか言いそうなカラーリングなのは何故だろうか。
──期──年 隔ての砂漠 風音の村クナファ 豊穣期 晴れ
今日は隔ての砂漠にある村へ挨拶をしに行った。
やはりというべきか。あちこちに見覚えのある顔がある。特に村長がその例だった。かつて竜都の住民だった者の名残が、ここにも残っていた。村長のおばあさんは私の顔を見ると口をあんぐりしていたけど、彼女は普通に人間で、竜人族のような長寿者ではなかったはず。
驚いたのは、レ・ダウの音に似ている鉱石を鳴子にして、モンスター除けを作っていたことだろうか。確かにレ・ダウは性質上ガラスを擦る音を響かせるが、こうしてモンスター除けにするという発想は無かった。この荒れ地で生き抜くために生み出した、代々伝わる知恵なのだろう。
かつての技術の名残はここには無い。文明も竜都のものと比べると、遥かに後退している。しかし、一致団結し、意気揚々と生きているその姿は、故郷にはない明るさだ。
いや、それよりも驚いたのがレ・ダウだ。アレはこの地の支配権を持った合成護竜のはず。まさか野生化したのか…?話を聞いた限りだと、完全に造物から生物へと変態している。しかも、暴走した護竜アルシュベルドと戦っていた時には、死亡直後に偶然直撃した雷に打たれ、なんと再起動したとか。すっごく観察したかったな…
今では、すっかり砂漠の生態系の頂点として君臨しているらしい。豊穣期の今でも、たまにそこら辺を歩いているのが見れるのだとか。歴戦の個体などもいるので、繁殖も可能になっているのだろう。
クナファ村にお邪魔した際に、イサイという方から食事を振る舞って貰った。クナファの伝統的な料理らしい。もっちりとしたナンをベースに、クナファチーズや煮込んだ豆を一緒に頂くそうだ。食事中に音楽を鳴らすのも、民謡的で良かった。
チーズ、最高だった。ダルトドンの乳から絞って精製しているらしい。シェーブルチーズというのだったか、それに似ている。熱されてまろやかになったチーズのコクを、もっちりと歯ごたえのあるナンで頂くのは、最高に美味かった。ナタくんがチーズが大好物になったのもうなずける。
その後は、ノノちゃんや、先駆け衆リーダーのザトーさんと一緒に、セクレト騎乗訓練を行った。ノノちゃんはナタくんと同い年くらいなのに、既に大人と遜色変わらない操縦技術を持っていた。私も負けてられないな、と思った。
にしても、ハンターさんはまだ分かるが、アルマさんも相当な操縦技術の持ち主だ。あんなに細い体つきなのに、もしかして彼女もハンター資格を持っているのだろうか。
──期──年 隔ての砂漠 ベースキャンプ 荒廃期 曇り
今日はナタくんとフィールドワークを行った。
なんと、今日だけナタくんはペンダントを外して接してくれた。私が龍灯で生きているのを慮ってか、彼はペンダントをジェマさんに預けたらしい。父親の形見らしく、肌身離さず持っていたはずだ。少し申し訳ない気持ちになってしまった。
ただ、お陰で今日はすごく気分が良かった。あのペンダントには竜乳を気化させる物質が籠っていて、それに加えて■■■■■*1が刻印されている。私が触れれば心停止するのだから、護竜が触ったら不整脈を起こすんじゃないだろうか。
ナタくんとノノちゃん、他にもハンターの仕事を見てみたいっていう子供たちと一緒に、砂漠をセクレトで駆けて行った。いきなりモンスターとの対決、というわけにはいかないので、ハチミツの採取だったり、野生のケラトノスやダルトドンの観察といった、簡単な仕事をみんなでやった。
クナファの部族たちにとって、こうした当たり前の景色に目を凝らすことはしたことがないらしい。普段から過ごしている景色も、視点を変えれば別のものに変わってくる。既に知っていることも、知らなかったことも、今日のフィールドワークで知ることができただろう。子供も、大人も、その時の驚きは良い経験になるはずだ。
…そういえば、フラッシュの補給をしている時、ナタくん含む男衆がチラチラ見ていたのに気付いてしまった。竜都に住んでいた時はそういうのは気にしていなかったのだが、今思うとすごく恥ずかしいというか、ゾクゾクするような視線だった。いや、そういう意味じゃなくて、なんというか寒気というか、熱意というか…
ついでに、アルマさんから「今後はこれを羽織ってやってください」と、ケープを渡された。シルドコットンで作ったもののようで、これならフラッシュに被せても嫌がらないだろう。
今日はフィールドワークの一環として、ハンター式の野生的な食事を皆で体験した。シルドで採れたニンニクを油で焼き、その香りを付けた油で魚を焼き、そのまま蒸す。そして完成したものにイースタンハニーをかけて頂くという、ハンターさんが普段食しているレシピだ。たんぱくな魚肉に、焦がしニンニクの香りと、ハチミツの甘さが結構合う。隠し味のコショウがパンチを効かせるので、色々な味と香りが合わさって、意外とイケたのだ。
まあこれだけでは足りないとのことで、ハンター式食事はその日二回も行われた。ケラトノスを捌いて取った新鮮な肉に、スージャに棲むフワフワクイナの卵をかけて頂く。焼き上がったそれらにワイルドハーブをかけて食べると、スッと効く薬味の香りとまろやかな肉と半熟卵のうま味が襲い掛かってきた。これぞ野生の味!!って感じで、大変好みな味だった。
──期──年 隔ての砂漠 ベースキャンプ 砂嵐 雷雲
気候の変化は突然だった。予想された時間よりもソレは早く到達し、ごうごうと砂風が吹き荒れる。曇天は蠢き、青電を迸らせ無尽蔵に雷を降らす。
──砂嵐が来た。
「急げ! 早く避難を!」
「ベースキャンプへ向かってください! このまま村までは遠すぎます!」
今日もフィールドワークの日だった。昨日と違って参加者は減ったものの、それでも多くのクナファの人たちが、セクレトに乗ってベースキャンプへ急ぐ。吹き荒れる風の痛みなど、今は感じている間もなかった。
黄金の鱗、青き
アルマを先頭に、ハンターが殿になって、皆がセクレトに乗ってベースキャンプへ駆ける。その背後をレ・ダウが飛んで追っていた。レ・ダウの目は明らかに敵対しており、一点を見つめて飛び続ける。
その一点とは、
「……私、ですか」
白い人竜の少女、ニ・スキはちらりとレ・ダウを一瞥する。狙いは明らかで、後ろを振り向かずとも肌で敵意を感じていた。
彼が何をもってこちらに怒りを向けているのか。心当たりは……かなりあった。
別段、彼女が彼の巣を荒らしたり、何か怒りを起こすようなアクションをしたわけではない。しかしレ・ダウには、
「ハンターさん、私はこのまま集団から逸れます。よろしいでしょうか」
「駄目だ」
「分かっているのですか?」
「
ニ・スキを乗せるフラッシュが、ハンターと駆けるセクレトの横へと並ぶ。
「君は、ギルドの調査対象だ。……
ここ数日、ハンターはアルマと共にニ・スキの行動を見ていた。
彼女は竜になった人だ。同時に、人になった竜でもある。古龍の遺伝子と融合し、永久機関である龍灯を搭載した、ヒト。
旧き兵器にも等しい存在は、
今はまだ、こうして話すことができる。幸いにも、人に歩み寄っている。しかし──黒き脈動を想起させる彼女に、未だハンターは「狩人」として、一歩後ろで彼女を見ざるを得ない。
「だから、頼──ッ!!」
ズドォンッ!!
レ・ダウが人々の先頭に回り込み、スライドするように着陸し、頭部をこちらへ向ける。可変する角をレールのように並列に構え、雷をそこへ収束させる。バチバチと音を鳴らしてエネルギーが集う光景に、誰もが慄いた。
これがモンスター。これが、砂漠の
落雷と、モンスターが放つ雷は、確実な死を届けると歴史的に証明されている。それは、砂嵐で落雷が発生しやすいここの民はよく理解している。それが頂点から放つものとなれば、待っているのは死以上の、例えばかの少女が放ったブレスのような──跡形もなく、この世から消えてしまうのではないか──そんなビジョンが浮かび上がる。
それを許容しないために、ハンターはいる。そのために、ギルドは無辜の人々を避難させようとした。そして、
「──私が誘導します!」
そのために、
「ニ・スキッ!!」
ハンターの叫びも虚しく、彼女はフラッシュから飛び出し、翼を広げて集団の左方へと急旋回した。レ・ダウは狙い通りニ・スキへ首を傾け、充電完了しつつある「スタンガン」の照準を定めなおす。
突風吹き荒れる砂嵐の中でもなお、晴れの時と一切変わらない自由な飛行をするニ・スキ。守るために人々から離れ、口から竜乳を吐き出してヒトの手でそれを弄る。塊は加工し、伸びた糸はそれを縫合、補強してゆく。そうしてできたものを手で掴んだ時、彼女は地面に着地した。
──瞬間、雷速の死が彼女の肉体を貫いた。
空気が軋むほどの衝撃波。辺りから音が消えうせ、たった一瞬だけ見えた眩い閃光が、彼女に死を齎したのだと、誰もがそう思った。アレに撃たれれば死ぬ。誰もがそういう認識だった。
ハンター以外は。
──次に見えたのは、小さな赤い
「──ッッッ!?」
風を斬る音と同時に、レ・ダウの頭部に何かが突き刺さった。それは二メートルに到達しそうなほど巨大な、龍の剣。片刃のソレの先端は斧のように丸く、しかし刃は何もかもを絶断する鋭利さを持つ。溶けた鉄の如き歪な純白の鱗を纏ったソレは、赤き龍の稲妻を纏っていた。
ハンターには、奇しくもソレに見覚えがあった。かつて西の寒冷地帯にあるポッケ村に訪れた時、祠めいた洞窟の中に鎮座しているのを見たことがあった。
人間が手にするにはあまりにも巨大過ぎた剣。しかし、確実にヒトが持つようにデザインされた、狩人のための武器。かつてシュレイドを滅ぼし、同時期に竜都に災いを齎したであろう存在に対抗するために、ソレの素材で造った
銘を「ミラブレイド」。運命を断つ剣と、誰かが口にしていた。
絶命。レ・ダウの頭部を真っ二つにするように大剣がめり込んでおり、彼はもう確実に起き上がることができなくなっていた。エネルギーを放出したばかりの彼は、先ほどの威勢が噓のように消え去っており、そのまま力なく砂地に横たわった。
アルマも、避難しようとしていた人々も、ノノも、ナタも、ハンターすらも、セクレトの足を止めて、実行者に目を向けていた。
砂嵐によって巻き上がった砂はすぐに晴れる。雷に穿たれながらも、大剣を投げたであろうソイツは──無傷。
赤く、竜らしく瞳孔を縦に細めた少女は、糸状の竜乳を纏い、残心していた。
──後に、ギルドは彼女を「
彼女を要注意観察対象として、ハンターに監視の命を下した。
今回は登場人物紹介はありません。
ワイルズのBGMの中でレ・ダウ戦が一番好き。レ・ダウ本体も戦ってて楽しいのですごく好き。