転移直後と俺の相棒
俺の名前は奥義隆。どうやら自分は異世界転移をしてしまったらしい。どうしてそんなことを言えるのか、それは今目の前に地球では漫画やアニメでしかみなかったゴブリンのような生き物一匹がいるからである。身長120cm体色緑色、羊のような瞳孔が横長の眼球、腰蓑、尖った耳、脳の容量が小さそうな頭部など、目に映る情報の全てが目の前にいる謎の生物がゴブリンだと言っている。そうだ、だんだん思い出してきた、こうなる前の記憶を、自分は商店街に突如として現れた通り魔に刺されて死んだのだ。ならば転移でなく転生か、などとどうでもいいことを考えていると、目の前のゴブリンがギャッギャッ、と棍棒を手に向かってくる。ここで俺は過去何度も妄想した敵との距離を取る守りの武術“前蹴り“を選択。180を超える長身から繰り出された前蹴りはゴブリンの顔面に炸裂する。と、ここまではカッコよかったのだが左足を滑らせ尻餅をついてしまう、土が滑るんだよ。慌てて立ち上がるとゴブリンが地面に頭を打ちつけ気絶している。
「咄嗟に攻撃しちゃったけど、ゴブリンが亜人に分類されていたらマズイな」
こちらに攻撃してきた様子からおそらく魔物、つまり人間の敵性生物であることは十中八九間違いないが万が一そうでなかった場合自分に前科がつく、それも殺人の。またそもそも地球で18年間暮らしてきた善良な日本人であった義隆には大きな生き物を殺すには嫌悪感があった。よって義隆はこの推定ゴブリンから情報を聞き出そうとする。棍棒を右手に持ちながら左手でゴブリンの頬をペチペチと叩く。
「起きてくださーい」
「グギョ?」
目を覚ましたゴブリンが棍棒を持った俺を認識すると奴はとんでもない勢いで逃げ出した。貴重な情報源がいなくなりため息をひとつ吐く。
「チートはなくていいから、せめて説明が欲しいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!」
これは俺の嘆きと、この数奇な運命への呪詛の絶叫である。
「ムゥーーーディーーージャズ!!!!!!」
ここで俺はあるバンドの名前兼“相棒”の名前を呼ぶ。すると体から全身紫のタイツを着たような格好をした俺の分身が分離する。これは地球で厨二病を拗らせたときに手に入れた能力である。近所の山に隕石が落ちるのを偶然発見した俺は一ヶ月ほどかけて隕石を捜索しようやく見つけた石で指を切ったときに発現した。能力はムーディージャズの半径5メートル以内の人間の動きのリプレイ。当然普通に動かすことはできる。時を止めたり、怪我を直したりすることはできないけれど、俺はこの能力を気に入っていた。成人したら探偵なんかやったら食うのに困らないだろうと思っている。このビジョンは他の人には見えないらしいのだが実体はあり日本にいた時には肩“とか“をを揉ませていたりしていた。男子中高生の性欲を舐めないでほしい。話を戻す。まずは人里を見つけなくてはならない、ここはどこなんだ。ほんまに。