ソシャゲの☆1キャラが固有スキル【会心率二倍】で最強になるまで 作:人見小夜子腹パン部
【強欲の王】はとある存在と対峙していた。
世界を滅ぼしかけた七人の王であり【竜】である自分が、単なる盗賊相手に追い詰められていると。
盗賊が短剣を振るう。
瞬く間に振るわれた九の斬撃が全て急所に叩き込まれ強欲の王はうめき声を上げた。その瞬間、細胞の隙間を通るかのような精度で振るわれた、実際に細胞の隙間を通る刺突が胸を穿ち、通り抜け、心臓に向けて叩き込まれた。ぬるりと心臓に潜り込んだそれは、無尽蔵の再生能力が通る経路を切り裂き穿って断ち切った。細胞を殺した。肉片を切るでも刺すでも無く、ドリルの様に穿って細胞を飛び散らせた。
単なる一閃に、こちらの無尽蔵の再生能力を破壊する執拗なまでの悪意が、技術が込められている。
激痛と共に強欲の王は叫んだ。
「GOAAAAAAAAAAAAAAA!」
何より恐ろしいのはこの、9閃1穿がセットになった十連撃、大概の【
速さ自体はそこまででは無い。神速の領域に達しているものの、最強生物たる自分とそう大差は無い。それなのに、回避も反撃もできないままその連撃は、自身を切り刻む。
その10連撃は激痛をもっとも効率良く与えうるラインをなぞる事によって、こちらの細胞が、反射的に、脳の命令とは違う動きをするよう計算しこちらの反撃を封じこちらの回避を縛ってくる。原理こそ分かるのだが、実際にやられると笑える程に動けない。
一応十連撃の直後には僅かな隙があるのだが、その隙に奴へ攻撃しようとした爪牙は紙一重で空を切る。そして直後にあの嫌な十連撃が叩き込まれる。奴への攻撃を回転して受け流され、奴自身の攻撃威力へ変換される為だ。何だったら回転抜きでも、こちらが真っ直ぐに心臓を貫こうとしても、力の流れを短剣まで流され反撃を食らう
ああこりゃ無理だ。
【強欲の王】はそれを魂に刻まれた。彼は全てを切った
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ヴァリアント・ヴェンデッタというソシャゲをご存知だろうか。
俺のプレイしていた、エロゲに片足を突っ込んでいるタイプのエロソシャゲ(サ終済み)だ。
未来世界を舞台にした中堅程度のソシャゲだったが、まあまあ好きなタイプのソシャゲではあった。
世界観は次のようなものとなる。
2050年、【幻想病】というウイルス性の病気が表れた。それは致死率ほぼ100%。さらにこれによって死んだ人間を生前の欲望に応じた姿の怪物に変容させる。
直接感染で前世界の3割の人類が死に、感染者が変異した幻想病突然変異体、通称【魔物】によって世界の1割の人類が殺された。
しかし、ウイルスがもたらしたのは悪夢だけでは無かった
【幻想病】に感染したが生き残り、魔物にもならなかった人間は、体がなにがしかの進化をするのだ。そして特殊能力を得た超人、通称【
そして人類存亡の危機を前にバリアント、医療者、政治家……とにかく世界が一丸となって【幻想病】という脅威に立ち向かった結果、幻想病騒ぎは一応の解決を見せた。
問題はここからだ。最初の感染から半年後、超人である【
端的に言うと近代文明は滅ぼされた。
しかし文明を原始時代まで後退させられても人類達は諦めていなかった。人類絶滅の危機の中、突然変異によって産まれた【人類最強】の【
そして後退した世界で文明を取り戻そうと人類は必死に頑張り200年で中世まで文明を戻したものの、病人達の封印も徐々に解けていき……復活した人類の宿敵を討ち滅ぼし、再び平和な世界を取り戻そうというのが大まかなストーリーだ。
世界観から治安が笑ってしまうほど終わっている上、話もグロく陰惨かつ人間の負の面を掘り下げたシナリオだらけだった。しかし、そこまで胸糞な作品ではなかった。それはこの世に生きる大部分の人間は、邪悪というほど救えない訳でもなく、馬鹿と言うほど愚かでもなく、簡単に滅ぼされるほど弱くはないという人間讃歌が根底に流れている為、結構好きな物語だった。
飽くまでも、エロ抜きでの話だからな。
……ぬき◯しとかク◯ナドやらF◯TEとかみれば分かるように、オタクには、エロ要素のある良シナリオ作品を過剰に評価する習性がある。
上の作品も100点満点中98点くらいの作品だがネットで検索すると120点満点の作品だと言わんばかりの絶賛をされている事をみれば分かるだろう。
それ故に俺もこのシナリオを絶賛していた。大好きだった。
だがそれ以上に好きだったのが戦闘のシステムだ。
滅茶苦茶良くできていた
簡単に言えば10×10の盤上に配置された六体の自キャラを動かし、迫りくる敵を、プレイヤーである、【医者】の元に近づけないように防衛するゲームだ。
公式ではタワーディフェンスと言うことになっているものの、どちらかと言えばSRPGに近い。
俺もタワーディフェンスときいて棒立ちで歩くだけの敵キャラを飛び道具で嬲り殺しにするゲームを想像していたから初めてやった時は驚いた。普通に敵が殴ってくる上に、相手を抱えてのド付き合いがどんどん起きるからだ。
まあ、アレだ。アー◯ナイツとか◯年戦争アイギスとかモンスター◯TDとか無◯迷途のパチモンだと思ってくれれば良い。
話は変わるが俺は、ソシャゲの最大の楽しみは【変化】だと思っている。
新たなキャラの追加で環境が変わり、ここさえ変えてくれればなと思っていたUIが改善され、新たなボスによって適正が変わる。新たな育成システム実装により、キャラのパワーバランスが変わるのなんて最高だ。各キャラにどんな新要素が追加されたかを見るだけでワクワクする。
そしてバリベンはその変化を大事にしていた。
5度に渡る、全キャラでそれぞれ違う、育成要素の追加。要望出せば次の日には治ってるUI、適正キャラが次々に変わるイベントボス。とにかく変化をつけさせ、飽きさせないように徹底した、運営の事がそれなりに好きだった。
そしてその中に、一際有名な、本編をプレイしてないゲーマーにも名を轟かせるキャラがいた。
そいつの名はウルス・ラグナ。パ◯ドラの◯芸師、FG◯のマ◯リンとかと同じく、元ネタプレイして無くてもゲーマーなら知ってる程に壊れた、チートキャラだ。
以下が奴の能力だ。
キャラ名:ウルスラグナ。
クラス:盗賊
レアリティ:☆1
HP: E
ATK:E
DEF:E
SPD:B
アクティブ1:攻撃力の80%のダメージ×2
アクティブ2:会心率と速度を1ターン30%上昇
パッシブ1最終会心率を2倍にする。
パッシブ2会心発動時次ターンの終わりまで絶対回避率5%上昇(30%上限)
ソシャゲに慣れた勘が良い上に顔までいい皆様方は、会心率2倍か絶対回避率と言う文字を見て、このどちらかがぶっ壊れになった原因だと思っただろう。しかしそれと同時にぱっと見大した事無いと思うだろ。それは正しい。
ヴァリアントヴェンデッタはそれなりにクリティカルが強いゲームだが、こいつの最低値に近いATKで会心を出した所で大したダメージは出ない。
絶対回避率上昇は強力だが、10%程度じゃ全く当てにならない。
ただ、7周年時の新規システム【スキル換装】によって、スタッフがお遊びで入れたロマン特化アクティブスキル、【アンダーテイカー】及びに運営がカスレアのテコ入れ目的で入れた【神速痛撃のルーン】との噛み合いの良さが凄まじかった、というか狂っていた。
端的に言うとゲームを破壊する程に。半年程暴れに暴れその後はソシャゲの例に漏れずインフレに何度か置いていかれそうになったものの、クリティカルと回避にテコ入れする度に、その恩恵をもっとも大きく受ける性能デザインだったので、ゲームが終わる最後の最後まで最強格であり続けた。ナーフしようと言う声も上がったようだが運営はサービス初期に強力なシナジーが見つかる度に簡悔としか言え無いナーフを行い、炎上し、これ以上調整(と言う名前のナーフ)はしないと声明を出した為こいつを止められなかった。
こいつがゲームにおいて初めて登場したのは、3回目のイベント【嫉妬と死霊】の前半で追加された☆1キャラだ。
このイベントは二人のキャラの掘り下げを目的として作られたイベントだ。、ゲームの【七人の病人】中ぶっちぎり最弱の病人でありながら、もっとも多くの人類を殺害した人類の天敵【嫉妬の王】と、優しく、共感性があって、真面目で、頭が切れるからと言って善人であるとは限らない、をコンセプトに作られたプレイアブルキャラ、【死霊術師ベレッタ】の掘り下げを目的としたイベントだ。
その前半部分に登場した、スラム街で産まれた盗賊がラグナだ。こいつはスラム街で生きるために11歳まで荒んだ生活を送っていたものの、とある善人の貴族に拾われ義父、義兄、義姉と7年間幸せな生活を過ごす事になる。
そして彼はこれまでの行いを悔い、この幸せを絶対に守っていこうと決意する。
もっとも【嫉妬の王】が復活した事によってその幸せは容易く踏みにじられるのだが
【嫉妬の王】、こいつには、病人最弱、人類の天敵、合理的なバカとか様々な呼び名があったがもっとも有名な渾名は“大体コイツのせい”
その呼び名に反しない活躍によりまず、ラグナの義父、ソーマ・アルゼイドが、こいつに扇動された愛すべき領民にR18-Gかつ胸糞が悪くなる仕打ちを受け殺される。
そして【嫉妬の王】によって間接的に、愛していた領民によって直接的に親を殺された事によって義姉義兄は人類の敵へ闇落ち。
人類の敵となった義姉義兄を止めてくれとプレイヤー兼主人公である【医者】率いる一党に依頼してくる。
その後の戦いでは人間を憎む義姉義兄による村焼き扇動人間爆弾といったこれまたR-18Gな戦術に主人公一行は多少手こずるものの、結局闇落ちした義姉、義兄は敗北する。
余談だがこのイベントバトルにはラグナも参加するのだが、義兄達は決してラグナを狙わず、ラグナの彼女らへの攻撃は必ず外れる様になっている。
そして敗北した義姉達にラグナは今までの思い出や、父親が生きていたらこんな事を望んでいないと言う事、また楽しく暮らしたいと語り今からでもやり直せないかとテンプレ説得する。そしてテンプレ通りそれを闇落ちした二人は拒絶し自殺する。展開はテンプレ通りだが闇落ちした二人の滅茶苦茶いろんな感情が入り混じった顔スチル、超アップテンポだが物悲しいメロディである人気BGM【regret】、さらにプレイヤーにギリギリ聞こえるか聞こえないくらいの声量で虫の息の二人が何かを告げるギミックなど演出が滅茶苦茶良かった為普通に泣いた。
その後、このタイミングを見計らっていたかの様に,
【嫉妬の王】がけしかけた地を覆う程の魔物の大群達相手に撤退戦がはじまる。
ここでイカれた本性を剥き出しにした【死霊術師ベレッタ】によって義姉義兄もゾンビに変えられる。そしてゾンビ、ラグナ、主人公一座、それにイカれているが、一応味方ではある死霊術師の連合パーティVS魔物の大群の決戦が始まる
地獄のような撤退戦を辛うじて生き延びた所でストーリーはひと段落
そして“彼は生き延びた、しかし彼の守りたかったものはもうない”という無常な文字と共に【嫉妬と死霊:前半】は終了。それと共にラグナは物語からフェードアウトする。
この後イベント後編で救済が用意されていたようだが
【死霊と嫉妬:後半】の開始9日前に、糞運営が【死霊術師ベレッタ】を優良誤認ナーフしたせいで、バリベンはサービス終了の危機に陥っていた。結局ベレッタに使った石を全部返却+完凸ベレッタ配布+3天井分の石を配布で炎上は収まり、既存プレイヤーは手のひらドリル、新規プレイヤーはヤケクソ補填!神運営と持ち上げた。ゲームは初動でコケてサービス終了と言うお決まりの運命から脱した。
ただこのゴタゴタでシナリオが崩れたのか前半からゲーム内時間がいきなり数カ月飛び、後半は前半の設定を放り投げて、伏線も全部放り投げた。
ラグナも、ゾンビとなった義兄、義姉も猿空間に飛ばされた状態で始まる後編の評判は良かったが、前半との整合性が滅茶苦茶だったためシナリオライター◯渡哲也かよだの色々言われてたな
そして俺が生まれ変わったのもウルス・ラグナであった
ここ1年でFGOで、アーラシュ、陳宮、バニヤン、以外の☆1☆2を、絆上げ目的以外で使った回数
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たくさん
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少し
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ない