障子を突いたら足元より強襲されてリスポン。足元に刀を突き刺すが当たらず、頭を串刺しにされてリスポン。復活した布団の上を動かずにいたらそのまま刺されてリスポン。アレグロは疲れ果てていた。
「一歩、二歩、三歩、四歩……」
次なる作戦は、リスポン後の行動を固定することで襲撃のタイミングを予測することである。リスポン後すぐに歩き出し、一定のペースで歩む。
「六歩、七歩、八……あっ」
予定通りに襲撃され、足下に真っ直ぐ刀が突き刺さる。慣れたもので、なんら驚くことはない。滑らかに刀を床下に突き刺し、確かな手ごたえを得たことに満足してリスポン。
そして今、アレグロは六歩目で襲撃され、畳を滅多刺しにしている。
「ふざけっ!ないでっ!ください!っな!!なんでリスポン出待ちのモブがっ!ランダムなタイミングでっ!床下から刺してくるんですかっ!!」
滅多刺しに満足して顔を上げれば、障子越しにニンジャと目が合う。
「お前もですよっ!!」
動かない足に代わってアレグロが行ったのは……投擲。VR操作に慣れた者特有の現実では不可能な身体能力に加え、幕末的殺意に目覚めたアレグロの右手は大きく後ろへ伸ばされる。そのまま全身のバネを用い射出された刀は、ニンジャを見事に貫いた。
「投擲式天誅ゥゥ……」
満足げに息を吐き、しかしアレグロは気づく。
「足を切られていて動けませんねぇ……」
そう、床下ニンジャ(仮称)の先制攻撃により右足が動かない。
「しかし……自決というのも武士道に反する気がしますねぇ……誇りを守る為……でもありませんし……」
逡巡の後、アレグロは歩みだす。足を引きずり、幕末の空気を吸うために。外に出たアレグロは息を大きく吸い、
「おんどぅるどっかるあでもくぅわかってってこーやぼきゃあ!!!!!!」
大きく叫んだ。アレグロはTPOを弁えた言葉を発することができる一般武士である。即座に駆けつけてくる
「「天誅ぅぅ!!!!!」」
と言いつつ足を引っかけて転ばせる。すっ転んだ
「冥途の土産を強奪したいんですがねぇ、ニンジャの対処ってどうやりました?」
「卑怯者に話す言葉など持たぬ!!」
「チッ、面倒なロールプレイ勢に当たりましたか。仕方なし、辞世の句を詠んでください。介錯仕る。」
「――――殺意読み、辻斬りすれば、こともなしッ……!!」
「サンクス天誅!!」
「投擲式天誅!!」
「背面天誅!!」
声が聞こえたのは背後から。命中を確認した時には、別に居た背後の
「見事なり、背面天誅、素晴らしきッ……!!」
「投擲式天誅も見事であった。」
こうして再びリスポンである。
意識が戻ったアレグロは、目を閉じたまま意識を研ぎ澄ます。殺意など分かるはずもないと思いつつ、それでもかつての
「串刺し回避ッ!!……からのカウンター天誅!!やはり
床下から綺麗に貫かれた布団は、逆にアレグロにより上から貫かれ、下手人諸共縫い留められた。念入りに死亡確認天誅を行いつつ耳を澄ませば、上から物音が聞こえる。
「床下より音が大きいですねぇ……フレッシュな殺意とマイルドな緊張がほどよいバランスで……後の先天誅!!」
天性の気持ち悪さで足音ソムリエをした後、ニンジャが刀を振り下ろさんとするのに合わせ、カウンター気味に脚を貫いた。そのまま引き摺り下ろし、袈裟懸けに天誅。耳を澄ましても、もう音は聞こえない。
「ようやく装備確認に移れますねぇ……」
尚、このニンジャは起きて早々に部屋を出ることで対策が可能であることを、アレグロはまだ知らない。
《天誅》
・一般武士が使用する基本天誅の一つ
・殺意を込めたあらゆる攻撃は天誅と言い張ることが可能
・全ての天誅はゲーム的なシステムではなく、皆が叫んでいるだけの言葉である
・この一言であらゆる大義が認められる