辻斬りオンラインの一般武士   作:石油のせ

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従わん・天誅力の・導きに

「改めて現状確認といきましょうかぁ……」

 

 辻斬(つじぎり)狂想曲(カプリッチオ):オンライン。舞台はジャパニズム溢れる幕末。PKが蔓延る……と言うより、PKの為のVRゲームである。サービス開始すぐということで活気と殺気に溢れている。

 

「装備は……初期装備のみですねぇ……あ、耐久値あるんですね」

 

 初期装備に耐久値が存在する、それが何を意味するか分かるだろうか。長く生きる為には刀を振らなければならない。振るう度に耐久は減っていく。そして今、ニンジャの居た場所を見れば一振りの刀。

 

「初級忍刀……ああ、さっきの(とも)が持っていたのもこれですねぇ」

 

 刀を持ち続けるためには、刀の強奪が必須である。そして、デスペナは所持アイテムの全ロスである。

 

「天誅の波動を感じます……障子の向こう……」

 

 早い話が、刀を奪い合うPKゲーである。初期装備は強奪されずリスポンと共に復活するとか、刀鍛冶に会えば研いでくれるとかそんなことは関係ないのだ。武士(PK)が欲するのは大義名分であり、実利ではないのだから。

 

「カウンター天誅ッ!!!」

 

 追加の忍刀を手に入れ、アレグロはご満悦である。

 

 

 

 

 

 

 

「ニンジャって無視できるんですねぇ」

「うむ。しかし困ったものだ。高札に(とも)が居るとは」

 

 さて、現在アレグロは高札を見に行きワンリスポン。再チャレンジへ向かう道中、天誅の波動が共鳴した御仁と会話の真っ最中である。なんと先の背面天誅の御仁だという。

 

「仲間を集めてパーっと……みたいなのは……無理でしょうねぇ……」

「はっはっは、我らの様子を客観視してからいうべきであろうなぁ!」

 

 その距離およそ四(メートル)、互いに刀を構えた姿はまさしく一触即発であるが、その空気は意外にも穏やかである。

 

「背中預けたら斬るでしょう」

「はっはっは、良き天誅力よ!」

「答えてくださいよ……」

 

 穏やか(多分)である。敵意が無いのは彼我の距離から明らかであり、互いにポーズとして構えているに過ぎない。

 ただし、どちらかが背を向ければ躊躇なく斬り捨て御免だ。幕末の乱世、敵意が無いからといって殺意が無いとは限らないのだ。

 

「腕に自信はあるかの?」

「VR剣道教室を少々……」

「良き天誅力よ!」

「相槌ですかねそれ!?」

「まあまあ良いではないか、なれば行こう」

「えぇ……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 さァそんなわけで始まりました果たし合い(カチコミ)!高札前には五人の(とも)!一体全体どうしてこの乱世の世に協力できているのか!?預け合う背中はまさしく絆の象徴!煌めく白刃が眩しい!

 おおっとここで対戦相手の入場だ!現れたのは互いに刀を向け合う二人の武士!アレグロと御仁だぁぁぁぁ!!まさか高札前までずっと一触即発で歩いてきたのか!横歩きでじりじりと(とも)との距離が縮まっていく!

 

「そろそろ冗談は止して前を向いたらどうなんです!?」

「はっはっは、我が構えは中段だろう」

「上段かって聞いてるわけじゃないんですよ!」

 

 なんとここに来て余裕の冗句!(とも)五人も困惑している!

 

「お主の好きにやれ、我は合わせる」

 

 さあここに来て御仁、決め台詞を言い放った!アレグロも覚悟を決める!

 

「キィエエエエッッッ!!!!!」

 

 猿叫をキメて殺意万全!大上段に振りかぶり走り出した先には(とも)!猿叫に怯んだ惰弱な(とも)は一刀で沈んだぁ!

 

「死ねぇぇぇぇッッ!!」

「天誅!!!!!」

 

 アレグロの横合いから切りかかろうとした(とも)を背面天誅したのは御仁!一瞬で回りこんだというのか、凄まじい脚だ!

 

「天誅が漲るゥゥゥ」

「ふへへへえ斬り捨てはこうでなくっちゃぁいけませんねぇ……」

 

 そして気持ちの悪い感想文!しかしこれで逃げるほど(とも)の覚悟は浅くない!

 

「ッッスッゾクォラァァァァァ!!!!!」

「仇討天誅キメんぞボキャアアァァァァ!!」

「死ねエえええぇぇぇぇッッ!!!!」

 

 気炎万丈!周囲に乱世が満ちていく!

 先に動いたのはアレグロ!手近な一人に大上段は受けられた!しかしそれでも受けた手は痛む!再度の大上段で沈めたぁ!

 

「キィエエエエエ(見えてるんですヨオォ)!!!!!!!!」

 

 そこに迫った(とも)に猿声を上げる!大上段に迫る友を受けるは不利と見たかアレグロ!横に躱し、そのままカウンター天誅!おっと同時に(とも)の頭が唐竹割に!下手人は御仁だ!

 

「奇しくもダブルアタック天誅でしたか……」

「ダブルアタック天誅より仲良し天誅の方が語呂が良いと思うが、如何か」

「そうですかねぇ……?あ、御仁も倒したのですね、見事な腕です」

 

 ゲームセット!勝者、アレグロ&御仁!負傷もなし、完全勝利だぁぁぁぁ!

 

「うむ。介錯をせねばなるまいな」

「そういえばどうして皆さん介錯を頼むんですかね……介錯仕る、辞世の句をお願いします」

「クッ……――――デスぺナが、ハラキリにより、無くなるぞ」

「なるほど天誅!!」

 

 アレグロは親切な(とも)に介錯を行う。確かに、切腹を行った(とも)は何も残さず消えていった。

 

「攻撃に使えない初期短刀ってそれ用なんですね……」

「――――――リスキルの、忍びの者を、如何せん……」

「音を聞くと良いですよ介錯!!!」

 

 かつての(とも)の教えが今の(とも)に受け継がれる。アレグロは生命の循環に思いを馳せた。

 

「さて、高札の確認をせねばなるまい」

 

 介錯を終え、二人は高札を確認する。




《カウンター天誅》
・一般武士が使用する基本天誅の一つ
・あらゆるカウンターはカウンター天誅と言い張ることが可能
・全ての天誅はシステム的な技ではなく、皆が言っているだけのものである
・上手く決めると気分が良くなる
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