「ううう~~」
「嘘嘘、あれはレプリカだってだからそう泣くなよ、な?」
半泣き状態のまま森を歩くトウカとそれを宥めるロト。
「ほ、ほら!町に出たらお前が前から行きたがってた市場でなんか好きなもん買ってやるからさ!」
「………う~…」
「じゃ、じゃあ喫茶店!ほらお前好きだろ!なんでも頼んでいいからさ!」
「…………ホントに?」
「あぁホントホント!だからさ、機嫌直そうぜ?な?」
「……パフェ。パフェ頼む……」
「ヒョッ………お、おお……いいぜ…当然だ、なんでもいいからなぁあっはっは…」
どうにかしてトウカのご機嫌を取り戻したロトだが所持金は失うことになった。
「はぁ…こんなことなら余計なイタズラするんじゃなかったな……」
後悔先に立たずとはまさにこのこと。こういった性格上、喧嘩したときは毎度ロトがトウカの機嫌をとってうやむやにする場合が多い。
「いてぇ出費だよ、ったく…」
思わずぼやきが漏れる。
「ほらほらもうすぐ着くわよ!早くー!」
「…おう」
すっかり元気と機嫌を取り戻したトウカ。
(………まぁ安いもんか)
「♪」
~~~~~~~~~~~
しばらくして町に到着。
町は町でも世界平和統制機構のある中心街。長い間森で自給自足していた彼らはいっきに未来にタイムスリップした感覚に陥る。
「…久々に来ると相変わらず活気に溢れてやがるな……よし、町に着いたからにはまず最初に行くとこがあるな」
「そうね……そのために私たちは森からはるばる町に引っ越してきたんだもの。」
そう、彼らがこの町に来たのは単なる観光などではない。非能力者側の最高機構、『世界平和統制機構』から直々に傘下のエリート学校「私立国際対魔養成学校」への招待状が届いたからである。その内容は町全ての施設の無料利用や衣食住の完全負担などロト達にとって悪い内容は何一つない異様なものだった。
「対魔養成学校、ね……なんで俺たちが……」
「まぁ私たちは一応『特別』だからね…いつか呼ばれるんじゃないかとは思ってたわ」
「対魔養成学校は読んで字のごとく超能力者に対抗する兵士を養成する学校だ。基本は厳しい筆記試験、体術試験などを乗り越えやっと入れるかどうかと言う超エリート校。そんなところにお上から直接お呼ばれでこの特別待遇……一体何が起きてやがる?」
「まぁいいんじゃない?損はしてないと思うし。そんなことよりパフェ行きましょパフェ」
ガクッと音が鳴るような派手なコケ方をするロトを横目に素知らぬ顔で喫茶店へ向かおうとするトウカ。
「いやいやいやいや待て。」
「嫌よ。だって約束でしょう?」
「それより世界平和統制機構に行くべきだろ!喫茶店と市場はあとで好きなだけ連れてってやるから!」
「約束でしょう?あれは嘘だったの?あらあらいくら私でもそんなに嘘ばかりつかれると悲しいわぁ」
ここぞと言わんばかりに仕返しをするトウカ。
「うぐっ…」
痛いところをつかれ完全になにも言い返せなくなったロトだがおもむろに何かの紙をを取り出すとトウカに見せた。
「!……これは……!」
それを見て驚愕するトウカ。
『3時から一時間はおやつタイム!パフェ食べ放題!あなたは一体いくつ食べられるかな?』
「た、食べ放題……!」
「フフフ…そうだ、トウカ。今はまだ昼の12時前……今行っても早すぎる…もうわかるな?」
ロトがしてやったり、という顔をする。対するトウカも
「……わかったわ行きましょう世界平和統制機構へ!」
折れざるを得なかった。
そして今まさに世界平和統制機構ーー正確には私立国際対魔養成学校の正門だがーーに入ろうとしていた。
「着いたはいいけど……一体どこに行きゃいいんーー」
「ここからは私が案内させて頂きます」
「「ふぇっ!?」」
ロト達が正門に足を踏み入れた瞬間目の前に身なりの整った上品な男性が立っていた。
「失礼。驚かしてしまいましたね…私の名前はクロウと申します。ロト様とトウカ様ですね?」
未だ状況把握しきれていない二人がコクりと頷くと
そのクロウと名乗った男性はニッコリ微笑んで申し訳なさそうに言った。
「すみませんねぇ。気配を消すつもりはなかったんですが……どうも癖になっているようで。ともあれお二方。お待ちしておりました、さぁ学園長のところに案内します」
クロウは口早にそう言うと二人の肩にそっと手を置いた。
「舌を噛まないよう気を付けてくださいね?」
「え、それってどういうーー」
そしてトウカが疑問を言い終わる間もなくクロウは二人を抱き抱えて遥か上空へとジャンプした。
「う、嘘でしょ!?これってまさか超能力!?ここって非能力者の集まりじゃないのぉ!?」
「いやちげぇよ。アイツを見な」
ロトが指差すところ、学園の施設の真上あたりを見ると光に反射して何かがキラキラと光っている。
「ワイヤー……?」
「お察しの通りでございます」
二人を抱き抱えてワイヤーで忍者のごとく移動しながらクロウは言った。
「もちろん私は非能力者。ですがこう見えても私、忍者の末裔でしてね。幼少の頃から様々な技を伝授させられ厳しい鍛練を受けました。この能力も幼少の頃会得したもの……今もこうして役立てておりますゆえ、幼少の経験は決して無駄ではなかったと思っております。」
「忍者の末裔ねぇどうりで芸達者なわけだ」
「こんな超能力まがいのことができる人間がたくさんいるところで私やってけるかしら………不安ね」
やがてクロウは一際大きな施設の中庭に二人を降ろした。その学園全体を見下ろせるほどの高さにあるこの中庭にガラス張りの広い空間があった。どうやらマジックミラーになっているらしく中の様子は窺うことはできない。
「ここに学園長はいらっしゃいます。ロックは解除しました。さ、お入りください」
クロウがドアの横に控え(ガラス張りなのでクロウがいないとどこがドアかわからないが)部屋に入るよう勧めた。
二人は顔を見合わせたが堂々とその奇妙な空間に入っていった。
中にはいるとそこには大きな机と椅子が一つづつ置かれた質素で異様でーーなんというか外観以上に奇妙な空間だった。
そしてその椅子にトウカより一回り小さい大人しそうでどこか神秘的な雰囲気の女の子が腰かけていた。
「君達が例の……ロト君とトウカ君かい?初めましてかな、僕はイサナ。イサナ=ミコトだよ。一応ここの学園長さ」
「イサナ=ミコト………!!」
その名前を聞いてロトが目を見開く。
「ロト、知ってるの?」
「……ああ、不老不死の『超能力者』イサナ=ミコト……なんせ30世紀ころの本にも載ってる超有名人だ」
「不老不死の……『超能力者』!?なんで超能力者が非能力者の組織のトップやってんのよ!?」
「気に入らねぇな……アンタら、俺たちが超能力者を嫌ってることは知ってるはずだろ?」
鋭い目付きでイサナを睨むロト。対して当の本人は気にする様子もない。
「嫌だな、君達だって『超能力者』だろ?お相子だよ」
「超能力だと?あんなもんと一緒にしてんじゃねぇ!なんならここで見せてやろうか!?コイツが超能力とは違うってことをよぉ!」
「ちょっと落ち着いてよロト!」
鋭い刃物に変形させた機械の右腕をイサナに対し振りかざそうとするロトを必死に止めるトウカ。
だがイサナは相変わらず気にする様子もなく目の前に刃物を突きつけられてもなお平然と喋り続ける。
「で、君達をなんでここへ呼んだかって話なんだけど……君達にはウチのエースが集うエリートのなかのエリートクラス、『ソロモンの支柱』への加入をしてもらうためさ」
『ソロモンの支柱』ーー何万人と在籍するこの学園だがここでは戦闘能力に応じてクラス分けが成される。F~SSまでのランクがあり一年に二度の昇級試験でクラス分けが行われる。特にSSクラスからの昇級試験は難関で一年に合格者は三人いれば豊作といわれるほどである。その難関試験を乗り越えやっと『ソロモンの支柱』に加入することができる……だが『ソロモンの支柱』は1番目~10番目、11番目から60番目、61番目~108番目までのなかでそれぞれ『ソロモンの支柱』内での昇級試験試験が行われる。番号は実力を表すので『ソロモンの支柱』達による壮絶な順位争いが起こる。しかもこの試験は年に四度も行われるのだ。こうして『ソロモンの支柱』は常にトップレベルの生徒が集まるーー
「この争いに君達も参加してもらうよ?まぁ試験は受けてもらうけど……」
「上等だ。『ソロモンの支柱』にはいりゃ戦場にだって出れるんだろ?ならやるしかねぇ…超能力者どもをぶっ殺すためによ」
「うん、いい心がけだ。ちなみに戦場に出られるのは10番目までの生徒だけだからまずはトップ10に入るのを目標にしなよ」
殺気を出しただならぬ雰囲気を出すロトを見てイサナは満足そうに頷いた。
「期待してるよ、ロト君。そして…トウカ君。」
「…………」
ロトとは逆に沈んだ顔で静かに頷くトウカ。
「さぁ!試験は早速明日に開始する!それまでにウチの生徒たちと顔合わせでもしたまえ。」
パン!とイサナが手を叩くと何もなかったはずの部屋にたくさんの料理と生徒が並んでいた。
「歓迎するよ。ようこそ、私立国際対魔養成学校へ!」
つ、次から超面白いから……(白目)