この世界に来て1週間ほど経ち、やっとこの世界の生活に慣れてきた。今日まで色々と大変だった。
まず、整備班とスピットファイアの整備中にイスパノ20mm機関砲弾の補給ができないことが判明*1し、ナツオ班長のツテを頼って特注生産してもらうことになった。ただ、特注生産なので割高+一度の生産量も僅かでしばらくの間はこの世界の機体で戦うことになった。乗る機体はWTの日本でよく乗っていた一式戦闘機“隼”*2で、エンジンの始動手順から学んだ。昨日、やっとエンジン始動からの離着陸の練習が終わり、今日からコトブキ飛行隊メンバーと模擬空戦をする予定だ。
次に、訓練の合間を縫ってこの世界“イジツ”での一般常識を学んだ。この世界は、陸路での移動が困難でその結果、空路での移動が主らしい。まあ、飛行船が今だ現役なのだから当たり前か。それに加えて、この世界での様々な単位を学んだ。クーリル、ボットル、etc……なんでお金の単位がポンドと銭なのか分からない。ヤード・ポンド法は滅びろ(条件反射)
最後に俺の所属部隊。最初は、俺が助けた紫電乗りのナサリン飛行隊から勧誘を受けたが、断った。一式戦での操縦訓練中だったのでタイミングが悪かったことと、紫電一一型はWTでもあまり乗ったことがなく乗り慣れてないと言う理由で断った。そのため、しばらくはコトブキ飛行隊に臨時編入という形で所属することになった。なんでも、隊員の一人が怪我で療養中とのこと。なのでレオナ隊長と話し合い、取り合えずその子が戻ってくるまで所属することになっている。
そんなこんなで、日がだいぶ登った頃。コトブキ飛行隊メンバーと模擬空戦を行うためラハマ飛行場にやって来た。
「よし、それではこれから模擬空戦を行う。最初はエンマ対クーリエだ」
レオナ隊長に呼ばれたエンマと俺は向かい合って握手をする。
「よろしくお願いします。出来れば、お手柔らかに」
「あら?手加減するとお思いで?全力で御相手しますから覚悟なさい」
最初は柔らかく、最後の一言だけドスを効かせながら言ってお互い手を離すと、エンマは先に自分の機体に向かっていった。うーん、俺なんかやっちまった?もしかして、さっきの弱気な発言がダメだったかぁ。
「あまり気にしないで。エンマはああいうの嫌いなのよ」
「あぁ……(納得)」
やっちまったなぁ、と思いながら俺も機体に向かった。
俺とエンマがそれぞれエンジンを始動させて、エンマ、俺の順に空に飛び立つ。お互いに違う方向に飛んである程度高度を確保すると、無線からレオナ隊長の指示が来る。
『それでは模擬空戦を始める。始め!』
合図と同時に俺はエンマの飛んでった方に旋回する。旋回したほうを見やれば、エンマもこちらに旋回して来た。そして、お互いにヘッドオンの態勢になるが、俺とエンマは同時に左右にブレイク。エンマはそのまま右に横旋回、俺は機体を上下反転させ、操縦桿を引いて機体を下降させてフラップを開き、縦旋回を行う。急激なGで視界が若干狭まりブラックアウト気味になるが耐える。機首が下から上に向くと、視界の右上にエンマがこちらに向かって来ようとしている。俺はやや右寄りに縦旋回し、俺の右側をエンマが通り過ぎた直後に右旋回。スロットルを絞って速度を落とし、旋回半径をさらに縮める。
コトブキ飛行隊の面々やナツオ班長は、羽衣丸のデッキで模擬空戦を観戦していた。ナツオ班長に至っては双眼鏡を使っている。
「訓練じゃ、あんなに四苦八苦してた奴が一週間であそこまで上達するか?」
「普通はありえない。だが、彼は元の世界で操縦経験があると言っていた。やっと感を取り戻したんだろう」
ナツオ班長の言葉にレオナが返す。空戦はクーリエが優勢になりつつあった。
「でも、なんでクーリエはエンマと最初に交差した後、下に旋回したんだろう?下手すると相手を見失うかもしれないのに」
「うーん、ケイトは分かる?」
キリエが感じた疑問を隣にいるザラに聞くが、ザラは答えずケイトに聞く。
「降下して増速させることにより、旋回にかかる時間を短縮したと思われる。また、二回目の交差後の右旋回時に減速して旋回半径を短縮している」
目の前の空戦を眺めながらケイトは答える。空では、クーリエがエンマの後ろについて追いかけまわしていた。
「なるほどな、だからエンマより早く旋回できてたのか。お、エンマが…いや、クーリエも同時にバレルロールしたぞ!」
双眼鏡で空戦を見ていたナツオ班長が驚く。エンマがバレルロールによる減速でクーリエの背後につこうとするが、クーリエはそれを察知して同じくバレルロールを行って背後につくことを阻止する。
「………勝負はついたな。『模擬空戦終了、二人とも降りてこい』」
空戦の決着がついたと判断したレオナは、無線で模擬空戦の終了を告げて戻ってくるように指示を出す。
『了解』
『……分かりました』
クーリエは短く返答するが、エンマは力なく返答する。その後、模擬空戦を終えた二人が飛行場に着陸。機体から降りた二人は羽衣丸から降りてきたレオナ達の元に赴くと、その場で模擬空戦の総評が行われた。
レオナ隊長や他のメンバーからの指摘を聞きながら、俺はメモ帳を取り出して指摘内容をメモって次に生かせるよう記録する。こうしないと忘れてしまうからだ。エンマは、そういうことはせずに聞いていることから記憶力がいいのだろう。その後、すぐに他メンバーと模擬空戦を行った。連戦である。
三回までは何とかいつも通りの動きができたが、最後は集中力がなくなって動きが鈍ってしまった。模擬空戦の結果は、エンマ、ケイト、ザラさんに勝利。レオナ隊長とキリエに敗北した。連戦の最後がレオナ隊長とか、(経験値の差からして)いや~きついっス。そうして午前が終わると、昼食を取ってからレオナ隊長達は仕事へ。俺は、ラハマの図書館に向かった。
そこそこ大きい図書館の中で元の世界に帰る方法がないか日本*3の書物を読み漁るが、文字が古すぎてまともに読める本がなく、しかも得られた情報も大分昔の物しかなく、何の成果も!得られませんでした!(泣)
ため息を吐いて本を戻そうと歩いていると、目の前で本を取ろうとする背の低い少女に出くわす。少女は足を怪我がしているらしく、松葉杖を突きながら本棚の上にある本を取ろうと必死に手を伸ばすが、届かず何度も
「取りたかったのは、これかい?」
「あ、ありがと」
そう言って、少女は本を受け取る。少女が取ろうとしていた本は絵本らしく、水の中を映した背景にデフォルメされた複数の魚の絵が描かれていた。本の名前は、この世界の文字で書かれていたため分からなかった。なんでこの世界の文字って、カタカナとアルファベットと漢字が入り混じってるんだ?(貧弱語学力者並感)
そして、少女と別れると本を戻して情報収集からこの世界の文字の勉強に切り替えた。
~数時間後~
チカレタ……(満身創痍)。勉強苦手な俺にとって苦行でしかないが、この世界でしばらく(最悪死ぬまで)生きてく以上覚えんとなぁ。昼過ぎから溜息ばっか吐いてたが、今は日も暮れた夕暮れ時。今日はレオナ隊長達の行きつけの店で俺の入隊祝いを行う予定だ。今になって入隊祝いを行うわけは、単純にレオナ隊長達は仕事、俺は訓練と勉強で忙しかったためだ。エンマとケイトには、仕事の合間に勉強を手伝ってもらっていた。ケイトにはこの世界の歴史、エンマには金銭と物の価値について。やっぱ、ヤード・ポンド法はクソだ(条件反射二回目)
考え事をしながら目的地に向けて歩いていると、目的地の近くが何やら騒がしい。声がする方に行くと、ラハマ自警団の確かカシワギ*4さんが少女と言い争いをしているようだ。てか、あの少女って図書館で会った子じゃん。あれか、スタ〇ド使いはス〇ンド使いと惹かれあうみたいなかんじか?てことは、あの子もパイロットなのだろうか?とにかく、俺は仲裁するために二人の間に割り込む。
「カシワギさん、子供に対して大人げないですよ」
「んだとぉ!って、アンタか。止めないでくれ、このガキ!俺達ラハマ自警団を侮辱したんだぞ!黙ってられるか!あと、俺はトキワギだ!」
「事実を言っただけですぅ!そんな見栄っ張りだからその程度の小物なんだよ!名前すら覚えてもらえないね!」
売り言葉に買い言葉で醜い言い争いを続ける両者。取り合えず、カs…トキワギさんを他の自警団員を説得してに連れてってもらう。そして、次に少女に向き合う。
「えっと、さっきぶりかな?」
「え?……あッ!図書館ときの兄ちゃんじゃん!」
今気付いたんかい!まぁ、一言しか言葉を交わしてないから無理もないか。
「と言うか、何でここにいるんだ?そのケガの感じからして、本来は病院で休んでないとダメなんじゃないか?」
「だって、やることなくて病院暇だし。しかも、皆私のいない間に新しい奴仲間にしたって言うし、しかも男!だから、どんな奴か顔を拝んでやろうと思って」
………その新しい仲間って俺の事じゃね?てことは、この子が療養中の子か。
「って、病院抜け出してたのか!ダメだろ、外出許可取らずに出るのは!」
「そんな固いこと言うなよ、兄ちゃん。ボルト入れてもうほぼ治ってるし」
「ボルト入れるほどの怪我してたんかよ!とにかく、病院に行くぞ」
見かねた俺は、少女をに背を向けて屈む。
「ほら、連れってやるから。乗れ!」
「いや、いいよ!」
「よくねぇよ!病院の人も出し、お前の仲間や家族も心配してるはずだ!ほら!」
少女は俺が捲し立てると、気おされて渋々俺の背中に乗る。松葉杖を預かると、少女に病院までナビゲートしてもらう。病院に着くと、少女の担当医がやってきて少女に拳骨を落とすと説教をし始める。担当医についてきた看護婦からは、少女を連れてきたことに感謝された。俺は、説教を続ける担当医を宥めて説教を早々に終わらせて少女を病室に連れていくよう促す。少女と担当方に別れを告げると、俺は急いで最初の目的地に急ぐ。集合時間はとっくに過ぎていた。全速力で向かい、息を切らせながら店に入ると、既に俺以外の全員が集まって頼んだ料理を食べようとしていた。
「あ、やっと来た!今までどこ行ってたの!おかげでパンケーキ冷めちゃったじゃん!」
「皆さん、すいませんでした。病院から抜け出した子を送り届けていまして」
頭を下げて頭を搔きながら弁明すると、レオナ隊長が反応する。
「その子の名前は?」
「え?あ、あー、聞いてませんでした。ただ、少女の仲間が新しく男の仲間を迎えたと言ってたので、まさかと思ったんですが」
「間違いなくチカね、でもあの子ってまだ退院できる状態じゃないはずだけど」
「暇すぎて抜け出したようです。図書館にもいました」
それを聞いてレオナ隊長は溜息を吐き、ザラさんは苦笑いを浮かべる。キリエは何とも微妙な表情を浮かべ、エンマとケイトは表情を変えずにいる。
「分かった。それじゃ、気を取り直してクーリエ。君の入隊祝いを始めよう」
丁度、ビールの入った樽ジョッキを店員が運んでくる。ビールを受け取ると、レオナ隊長、ザラさん、キリエ、ケイトが樽ジョッキを、エンマはティーカップを手に持つ。
「クーリエの入隊を祝って、乾杯!」
「「「「「乾杯!」」」」」
レオナ隊長の合図で手に持ったジョッキを軽くぶつけ合い、俺はビールを煽る。うーん、不味い!
そうして、入隊祝いが始まった。カレーライスにカレーうどん、唐揚げや各種串焼き等がテーブルに並べられていた。まずは鶏肉の串焼きから食べ始める。キリエは、パンケーキと唐揚げを交互に食べている。甘辛のエンドレスだが、食べ合わせとしてはどうかと思う。
そんなこんなで宴を楽しんだ。キリエもそうだが、ザラさんも小樽一つ分の酒を飲んだであろうに酔っぱらった感じがないのには驚いたが。
~一方、そのころ~
「そういえば、あの兄ちゃんの名前聞いてなかったな」
「何が、そういえばだ!反省しとるのか!」
「ああ、もう!反省してるってば!」
チカは病室に戻った後も、担当医に説教されているのだった。
完全版じゃ、カットされているところが多くてTV版のブルーレイ買ったら完全版が3つ買える値段でした(震え)