不遇水魔法使いの禁忌術式サーシャと死に戻りの時計 作:何処にでもある
しゃあっ二度打ち投稿。
簡単なやり方の発見とお菓子屋さんです。
「……で、地下室に何があったんですか」
「実際に見た方が早いだろうな」
「先輩、信じてますよ」
「…何をだ」
「地下室の悪戯から私を守り切ることです」
「誰に言ってる。私は……私は?」
「それを知る為にも、一緒に頑張りましょう」
(ワタシ、コイツニ、プライベート、シラレルノ、コワイ。デモ、ツヨイカラ、タヨル)
サーシャの内心は置いといて、カーリーと一緒に地下室を見ることになった。
ヘルシングも入って来たのに今更だと思うだろうが、実力差が離れた相手を過剰に警戒しちゃうのはしょうがない事だ。
迷子犬と竜が部屋に居たとして、どっちがマシかなんて語るまでもない。
自分の弱い部分を強い相手に見られると嫌、強い部分だけ見せておきたい、なんて相手はよくいるからな。
「わぁ…ひろーい…」
「私も驚いたぞ。置き土産に此処までのものを用意する奴が居ることもそうだが、その部屋を引き当てた事実にな」
「研究施設も、結構良いものが揃ってるし…必要なのは全部揃ったかな」
「…入学して2日でこれか。運命ってのはあるのかも知れないな」
(実際、うまく行きすぎてる程だ。研究施設だって適切なものを用意する必要があるのに、MM関係も含めて大量の施設があるし…人はわたし含めて3人しか居ないけど、初日で用意した分には十分だ。先輩が資料も揃えてくれたし、今日から始められるなんて…)
実際、サーシャはかなり運が良い。『渦巻』なんて的確なものをその場で作れて、ダルクの話を聞いて、その日の内に全てを揃えてしまった。
…俺の固有魔法が死に戻りだけじゃなく、その能力の一端として死に戻れるだけ…とかだったら面白いんだけどな。
生憎とそれを知る術が無いのが痛い。ここまで何も出来ない転生者も珍しいんじゃないか?
「よし、早速始める準備をしよう。明日から直ぐに始める為の整理整頓と…先輩が寝る為の場所作りを」
「私にも戻る寮くらい…」
「覚えてませんよね。魔力視して指摘する人が居れば直ぐわかることを全然知らない時点で、ずっと籠りっぱなしなのは察してるんですよ」
「…頼む」
「やっておきますから、お風呂にでも行ってください。私の魔力で綺麗にはなってますけど、それでも微妙に汚れが消し切れてないので」
「…分かった」
「部屋の外には出ないでくださいねー。三年が居るとみんな驚いちゃいますからー」
(アイアイサー…と。仕舞われてる机とソファを出して資料はこの上に。それから私の布団を…寮があったかいからなくても良い筈…)
サーシャはカーリーが戻ってくる前にテキパキと準備を終えて、資料の選出も始めた。
先に少し触れておくことで、本格的に始める時にスムーズにやる為だ。
(ふむ…解析の為の魔法陣がこれで、それ関係の資料はこっち。MMの歴史はこっちで、共感関係はこことここ…新要素を追加するだけだから…へー、MM同士で会話出来るんだ。其処まで出来てなんで人と会話出来るようにしてないの?……肉体が邪魔と…あー、アプローチの方法が複数あるわ)
魂だけの存在はお互い触れ合えば会話可能である。
魔力を渡してる際に指示が与えられるのは、魔力に思考が乗るからである。
MMの思考を読めないのは、肉体があるからだ。
属性が無に近い存在ほど、共鳴してもMMの思考を読み取れなくなる。
魂は全ての魔力を受け入れ、魔力の動きの邪魔をしなくなる。
(思考が乗った魔力と他の魔力が混ざるのがダメなんでしょ?それこそ脳にある魔力もだ。でも魔力が無いと生きられないから、脳から魔力を抜き取ることは出来ない…しかし魂だけで思考できれば、魔力が邪魔しない…)
へー、俺が全方位見れるのって全ての魔力を受け入れるからなんだな。
なんと言うか、抗魔の力と逆の挙動してるのが不思議だな。
属性が高いほど抵抗値が下がる抗魔と、属性が高い程読み取れないMMの思考…俺側の思考が魔力に関係してるなら、属性が高いほど聞き取りやすくなりそうなのに……魂ってなんだ?
ここら辺の研究って、ゲームでも過程なんてなかったからな。
研究成果だけ受け取ってただけだけど、魔力以外のエネルギーなんて要素無かったぞ?
あ、でもMMとの会話なんて研究はゲームでもしてなかったから、ワンチャンあるかも知れない。
ゲームでやってたの魔法の開発と効率的な魔力運用とかだったからな。
「あー…あれだ。持ち主側とMM側、思考を渡す手段と受け取る手段が一致してない」
(あーはいはい理解した。4項目に分けろって事ね。魔力ってだけで考えちゃダメだわ。魂にも不思議な力があるって考えないと…もしくは、魔力に二つの性質がある…とか)
興に乗って来たサーシャが、板書していく。
世間に知られている簡単な魂の説明と魔力の説明に、さらに仮説を二つ書く。
この研究の基礎が作られていく。世界を解き明かす時間が始まった。
「魂」
神様は全てを調律する際に、命の始まりとして魂を作りました。
魂は力を生き物へと変えて、素晴らしい物へと昇華する物です。
魔物に、人に、物に、あらゆる物へと宿り、生き物に変えます。
いずれ世界は生命に溢れるでしょう。
「魔力」
何もない力は魂を通す事で属性を手に入れました。
属性を得た力は魔力と呼ばれるようになりました。
魂に魔力が貯め込まれることで命となりました。
全ての魔力は命になる為に、我々の中に押し寄せるのです。
板書されたのは以上の通りだ。少なくとも、世間ではこの理論で回っている。
「なんで魔力が回復するか、それは魔力が命になりたいから。言い換えれば、魂は魔力を引き寄せる物であり、それが思考を淀みなく読める理由になる。逆に肉体…命は最終結果の産物、魂で思考するのなら、これほど邪魔なものは無い」
(複数の本によれば、脳は魂と肉体を繋ぐ物であるらしい。私の抗魔が高いのは、水属性が一番生身のある存在だからだ。村でも人が死ねば、火属性は灰しか残らず、風属性は骨しか残らず、土属性は骨と内臓だった。きっと、水属性は一番死んで残す物が多い。一部の地域だと穢れてると嫌われてもいるらしい)
死んでどうなるかというのはゲームでも同じだった。
死亡グラが属性によって別れてて、無駄に丁寧だと言われていたのを覚えている。
「つまりだ……魂は命を作り出す。仮にこの生命を作る力を「生命力」と名付けるとして、魂は魔力を生命力に変換し、その生命力を使って肉体…命を産み出すのではないか?そして、この生命力への変換効率は火属性程低く、水属性程高い。そして、魂でのやりとりは……」
(あぁ…抗魔で考えちゃダメだ。攻魔だ。仮に、仮に魂が魔力ではなく、生命力でやり取りするとなると、魔力は魂の出した生命力に殺到するよね。…自分の出した物なら、自分の魔力で攻撃されない?…それはおかしいなぁ、地産地消はしたいよねぇ…まだ考えるべきことがある)
命の生み出し易さで考えれば、確かに火は低く、水は高いだろう。海は全ての母とも言うしな。
それにしても…なんというか、研究というより、哲学だな。
目の前の出来事に対して、最も矛盾せず、自然な動きは何かを考える。
そうすることで世界を読み解き、自分の目的を達成する。
思考実験で、少なくともこうかも知れないという当たりを付けてやってるな。
「………一旦停止。根本から組み立て直す。まず、魂を通して生命力…もとい別の魔力になるのは間違ってない。個人の魔力と空気中にある魔力は違う。水属性の魔力、火属性の魔力、それらと空気中の魔力は違うのは肌で分かっ……てるこ…………と」
(少なくとも、此処に関しては単に言語化しただけ。みんな分かってることを言葉…に……)
サーシャが動きを止める。根本の部分に答えが有ったのを見つけたみたいな反応だった。
それで有ってるかは別として、こういうのはテンション上がるよな〜、分かるよ。
「……人気の店と寂れた店!!」
(生命力とか関係ないわ!自分の魔力があるかどうかだ!MM側に自分の魔力はない!空気中の魔力を集めて貯めてるだけ!勿論その魔力も使えるけど、それは私の奴に染めてから使ってた!そうだよ普段からやってることじゃん!)
そうだよね、他人の魔力に自分の思考を乗せるとか普通に難しいよね。当然だったなぁー!……云々と、怒涛の思考が押し寄せてきた。なんか分かったみたいで俺も嬉しいぜ。
「つまりアプローチは簡単だ。MMの術式を変える必要も無い。指示の感覚を他人の魔力で出来るようにする魔法。これをMM側に渡すだけ。言葉は届いてるんだから、あとは貰うだけで良かったんだ。この感覚を魔法として再現すれば良い」
(これなら…あれ、私の技術でも10秒で作れる?要は自分の魔力への使用許可証作りでしょ?いやぁ、譲渡は有っても他人に自分の魔力のまま使わせるなんて発想中々出ないでしょ。私天さ……これ乗っ取られる危険性あるか?)
うーん…つまり、俺が無理やり魔法を使った時の感覚か?
基本MMは指示を聞いてから魔法を使うのが楽なんだが、無理やりでも出来なくは無いんだよ。
そして使う魔法はMMに記録されてる奴だけっていうか、それ以外は覚えるのも難しいんだ。
「待てよ…自分の魔力を自由に使って良いって事は、身体に巡ってる魔力もでしょ?…身体乗っ取られるよね…今まで同じ事考えない人が居たかな。もしかして、作った人全員MMに乗っ取られたとか?」
(それなら…一旦作った魔法陣を改良。時間制限で解除されるように。そして、絶対に解除はされる作りにして…出来た)
お、新しい魔法が来たな。『通信』…よし、サーシャも早速使って欲しそうだし、いっちょやってみるか。
…心の一人称も私にするべきか?社会人として私とは言って来たし、出来なくも無いけど。
そうして俺…私は試しに魔法を使ってみた。
──世界が切り替わる。
「…お?」
今までより、視界が狭い。
今まで使わせてもらって来た魔力が、自由に動かせる。
肉の身体と、心臓の高鳴りを感じる。
「お?…おー?すごーい!」
たんたかたん、踵を鳴らして。
すんたかたん、手足で踊って。
木の机、少しだけの埃の臭い。
身体に満ちた、清浄な力。
「全部私のものになったみたいだね!」
サーシャの記憶も、経験も、力も、全てが自分のものになっていた。
それこそ、念の為に作った強制解除の魔法陣を、直ぐに改良し、永遠にこのままに出来そうだった。
この状態だとサーシャの声も聞こえないから、本当に自分だけで生きられそうな気分だった。
「…やらないけどね。私は他人の
取り敢えず強制解除を任意に変えて、それから外に出て、陸の上だけど軽く踊った。
本当は氷の上が良かったんだけどね、無いなら仕方ない。
3A3Lz3S3T3F、そして4A…と。
サーシャ、これがスケートっていう競技だよ。
氷の上で音楽一緒に踊って演じて、これらの技を適宜出していくんだ。
スケート靴代わり水でも貼ってっと。はい、ステップね。見てて綺麗でしょ?はいイナバウワー。
いやー身体能力の強化っていいなー!陸の上でも楽々やれちゃうし秒針持ったままでも疲れない!
鼻歌混じりに一通りの技をやって、最後に締めのポーズ。
「これが──私に出来る事。見たくなったらいつでも呼んで。最高の踊りで魅せてあげるから!」
あ、でもこの魔法の名前は『通信』じゃなくて『憑依』に変えてね。
じゃなきゃ、紛らわしいでしょう?
──世界が切り替わる
「──はぁっ!?戻れた戻れたもどれた!!!」
(あっっっぶな…てか今もか!?もう魔法陣あっちが持ってるから、いつでも身体を奪われる状態にある!!)
いやー久々にリアルで踊れたなー。やっぱり現実で踊れるのはいいねー!
楽しくて4A出しちゃった!魔力の乗ったサーシャの身体なら5や6回転も夢じゃ無いし、その内挑戦したいよね!
「…まぁ、良い人では有った。話せる相手でもあるし、協力もしてくれる…そのおかげで身体は返された訳だし……」
(あの女の子…魂の姿を見たけど、小さな女の子だった。あの年で死んだなんて…可哀想だけど、身体を渡してやれる程じゃ無い。私は私の人生だ……なまじ一瞬で魔法陣が作れるのが広まらない理由なんだろうな。『憑依』の魔法って)
今日は楽しく寝れそうだね、サーシャ!
今の俺はとっても機嫌が良いから、なんでも許せちゃう!
パチ、パチ、パチ…、
その時、寮の庭に拍手が鳴った。
サーシャが驚きつつも俺を相手に向ける。
誰もが寝静まった時間で、満月の光だけを頼りに踊っていたのだ。
到底誰かが鑑賞できる品物ではなかったのだが…。
居るならもっと真面目に踊ってたよ!
バレエや棒回しとかを取り入れた物にしてた!
「…誰?」
「あぁ…素晴らしい物を拝見させて頂きました」
恥ずいから評価しないで?後さ、今スケート脳になってるから切り替えるの待って?
……ふぅ、取り乱したな。
「ワタクシの名前はドライ。「菓子の時間」のドライと申します。どうかお見知りおきを」
(すごい…胡散臭い!)
夜の闇から出て来たのは、仮面を被り、黒いマントを羽織った男。
顔全体を覆う仮面にはlllと書かれてあり、何よりも特徴的なのは、その背中にある3対の真っ黒な羽根だった。
まるで真っ黒な天使のようであり、事実ゲームでは終盤まで暗躍し、世界を乱し続けた連中である。少なくとも此処で会う連中じゃないぞ。序盤の終わり辺りの来月が本来会う時期だ。
本名もドライじゃなくてローンって名前だしな。
「で…その「菓子の時間」とやらが、態々水魔法使いの前に顔を出して何をしたいんですか?」
「いえ、いえ?珍しいものを見て感動し、それを行った者を賞賛した。それだけですとも」
「じゃあもう一つ…自分から悪と名乗るような人がこの学園に侵入した目的は?」
ゲームだと金平糖売りだったよ。
麻薬入りだけど。
「大した事ありませんよ。ちょっとしたばかりお菓子を売りに来ただけです。勉学に励む人達ほど、糖分を欲する方々もおりませんので。えぇ、許可証もありますとも」
「へー、翼生やす商人とか居るんだ」
「神国ではよくおりますよ。神に近づく為の高位洗礼というのがありまして、お金を払えば天使の力を移植施術出来るんです。ワタクシは信仰が深い方ですから3人分ばかりを」
「…うわぁ、生臭坊主だ」
「……くく、面白い表現ですね。えぇ、えぇ、確かにあの連中を呼ぶのに相応しい呼び方だ」
(見た目はくっそ怪しいけど…そもそも村の事しか知らないからとやかく言えないな…)
よっぽど面白かったのかドライはばっさばっさと翼をはためかせ、軽く空を遊泳する。
ゲームだと無限に空から攻撃するくそみたいな奴だったが、こうして話せる相手ではあるんだよな。
まぁ、単にサーシャが脅威にならないだけなんだけどさ。
「…ふむ、少し時間を使い過ぎましたね。ではワタクシはこれで。また踊るようでしたら、ぜひお誘いください。工房街のお菓子家「菓子の時間」、是非ご贔屓に」
「あぁうん。じゃあねー」
(…悪い人では無いかな。ないかな?)
サーシャは喉に小骨があるような感覚になりつつも、自分の部屋に戻ることにした。
どうあれ、簡単にはいかないんだ。ゆっくり積み重ねていこう。
ここは世界中の厄介ごとが舞い込む場所、王都魔法学園なんだから。
「王国」
ある所に星々の王様がいました。
ある日王様が散歩をしていると、途轍もなく美しい女性が居ました。
王様は強引に女性と子供を作り、泣いた女性を置いて満足してどこかに行きました。
その女性とは気分転換にお花を摘んでいた神様であり、その子供は初代国王として人々をまとめました。