不遇水魔法使いの禁忌術式サーシャと死に戻りの時計 作:何処にでもある
国家配置です。
アーリー帝国
王国
ムーン神国 イマジン商国
王国以外は全員同盟が組まれ、王国は周りに殺意を向けられています。
「そんなことが…覗き見など言語道断!今すぐ天誅させてやりましょう!」
「座ってなさいヘル。…怖いわね、夜に知らない人が現れるなんて」
「でしょ?私もびっくりした」
(あー…こののほほんとした空気がたまんないわ)
サーシャは今、シープと一緒にお茶会をしていた。
あれから1週間、授業と研究をシャトルランしつつ、無事に試験的な魔法を作るのに成功したのだ。その為一段落として、3人それぞれゆっくりする時間が設けられた。
失敗での『憑依』だと俺は返すからな。もう恐れるものは無いとトライ・アンド・エラーして、俺のことも既にダルクとカーリーに伝わった。
そんな所有者有利の環境も相待って作られたのが『通話』の魔法だ。憑依の条件に引っ掛からず、普通に会話する事に成功した。生きてる相手同士だと同じ家の中なら何処でも話せるぞ。
まだ憑依しちゃう場合の解決策がないから世間には出さないが、前世で戦争を変えた魔法を作れちゃったのは問題あると思う。
専用の魔道具作ったら特許で馬鹿みたいな金手に入ると思うよ。MMがあれば爆速で進められるけど、研究リスクが高過ぎてまだこの世界にない魔法みたいだし。
「学園内は絶対に安全って訳じゃない…だとすると、身を守る為に何かした方がいいのかしら」
「かもねぇ。ヘルはやる気いっぱいだけど、相変わらず私の方にも来るし、ずっと一緒にいる訳じゃないもんね」
「優柔不断もそこそこにして欲しいけれど…まだ判断付かないの?」
「どちらもお嬢様らしくて見分け付きません!」
「「そこまで似たもの同士ではない」わよ」
「そういうとこです。根本がそっくりなせいでずっと判断しかねてるんですよ」
「見た目違うよ?」
「性格も違うわね」
「魂が姉妹なんじゃないですか?」
(そうかなー、私は結構独特な性格してると思うけど…あ、そうだ)
サーシャとシープはお互いの顔を見て、首を傾げてから食べ進めた。
因みに、ヘルシングの指摘は当たらずとも結構的を得ていたりする。
サーシャは捨て子を村のおじいちゃんが拾った子だからな。色々と訳ありなんだよ。
「じゃあ一緒に買い物する?」
「何がじゃあなのよ。でも買い物は賛成。買いたい物があったのよね」
「防犯用の魔道具とかありそうじゃん。工房街には行ってみたかったし。何買うの?」
「あぁ、その分野なら確かに有りそうね。家具や化粧品、後は投資ね」
「でしょ?将来のある所にかぁ、私とかどう?今同じ家の中ならどこでも通話できる魔法作ったんだー」
「ちょっと詳しく説明なさい。今の私は冷静さを欠こうとしているわ」
「あの、二つの話題を同時に話すのは控えた方が良いかと」
(話し易い人だなぁ。ちょっとお金のことになると夢中になるのが玉に瑕だけど)
魔法のことになると夢中でそっちの方に行く奴がなんかほざいてるが、俺もスケートやゲームには夢中になるので人のこと言えないな。
ゲームだとライバルになる要因の性格の似た部分も、出会い方が違えばこうなるんだなー。
そんな訳で元々商人の娘に協力を取り付けつつ、今日の所は解散となった。広める時に一工夫させて欲しいって話だったからな。
元々MMと話し合う魔法が随分と変化しているが、ゲームでも研究の副産物で別系統のすごい奴を見つけたりとかも有った。
前提になる魔法を作る過程で脇道を制覇するとか結構あったよ。
「よーし、今日の魔法学は質問しちゃうぞー」
(エッホ、エッホ。ダルクの過去を知る為にMMとの会話をする魔法を作って、その魔法を作る為に別の魔法を作って…その為にも魔法学で基礎と発展をいっぱい覚えなきゃ)
現状カーリーから教わりつつサーシャが魔法の挙動を確認したりしているのだが、カーリーからの知識はかなりの偏りがあった。深淵にある知恵の真髄を食べて得た知識は手っ取り早い結果だけだったのだ。
問題の答えが分かっても仮定式が欠けていては物は作れない。試験の問題の答えが分かっても、なんでそうなるかは自力で探す必要がある。
仮にカーリーだけでこの魔法を作ろうとしても、サーシャが最初にやった『憑依』の魔法しか作ることは出来ないだろう。それが一番早くて簡単に答えを得られる物だからな、
「より良い物にするには結局、自分で頑張るしかないからなぁ……ダンテ先生、質問良いですか?」
「はい、どうぞ。今日の知りたい物はなんですか?」
「今日は詠唱代用文の多重構築を……──」
(何も1週間で作れって物でもないし、ダルクも鋭い意見を言ったりしてかなりの役に立ってる。必要な知識は先生に聞けば良いし、楽々だぁ)
そんな訳でここ最近のサーシャは、魔法学の授業が終わると直ぐにダンテ先生を捕まえて話を聞く。語学や属性学や神学の先生にも同じことしてるけどね、
授業を終わった直後なら、先生達も軽くなら説明してくれるし、分割して聞けば何を研究しているかは露呈し難い。
特にダンテ先生は一年の寮長なだけはあって、見回りの時間に会って話を聞いたりも出来る。
教科書にしてる本に書いてない知識とか、こうでもしないと手に入らないからな。
ゲームだと初中上超級のランクで分けて、研究を進めるのに必要な知識を集めて進めてたりしてたからな。先生に聞いて手に入るのは上級なので、この研究をゲームの進行度で言うなら3年生卒業、終盤の最初辺りだろう。
身の丈に合ってないと思うだろうが、そこは問題ない。地下室の設備やメインキャラが参加してる分で遅くても進められる範囲だ。
「──……ありがとうございました。おかげで魔法の研究も進みそうです」
「ふふ、それなら良かった。」
サーシャがお辞儀をして立ち去ろうとすると、ダンテがふむ、っと一呼吸置いてから疑問を投げかけて来た。
「…ですがなんの研究を?他の先生にも尋ねてるそうですが、錬金学の先生には聞いてない様子。確かに水魔法は未発展な分野ではありますが…大霊書庫で先人の残した物を探さないのですか?」
「それはですね……んー」
「私の記憶が正しければ、先達が居ない分水魔法は「浜辺」までで全て見つけられる筈。ここに来て1週間経ちましたし、同級生を誘って挑戦してみては如何でしょうか。」
(あー…ついに来ちゃったか、この質問が。ダルクの一言でここまでしてるとか普通思わないだろうし…嘘を付かない範囲で言えば良いよね)
サーシャの努力は確かにすごい。MMから過去の話を聞き出すという遠回りの為だけにここまでの熱意をもてるんだから。
普通なら…というよりゲームで他の人がやってたことだと、残った記憶と顔付きから商国と辺りを付けて聞き込みをしたり、家族を見つける『血族』の色魔法を覚えたり、事前にMMに傷を付けてヒントを残したり、外部の協力者に尋ねさせたりしていた。
ぶっちゃけ、一から魔法を作るにしたって此処まで回りくどい方法は他にない。だからゲームでは人が集まらずに失敗してた訳だし。
発想の飛躍というか、魔法の事ならなんでもマジになれる、よっぽどの変わり者のサーシャだからこそ、此処まで出来てるって言うのはかなりあった。
「例えば、ここから一歩も動かずに実技の先生と連絡するって、出来ると思いますか?」
「…難しいですね。貴族並みの魔力があったとしても、ここから実技場の土を動かすのは相当な実力が必要です。風魔法なら音を大きくすれば出来ますが、その過程で相当数の被害が出てしまいます。」
「それですよ、研究してるのは。一歩も動かずに、誰とでも目の前に居るように会話できる魔法を作ってるんです」
「…直接会えば良いのでは?遠くの人は転移門を使えば良いですし、簡単な連絡なら魔道具でも出来ますよ。」
「必要かはともかく、出来るかどうかについては?」
「不可能ですね。理論上出来るかではなく、そういう研究をしてきた者はいずれもある日、パタリとやめてしまうんです。学園では悪魔の研究と呼ばれてますよ。」
(あ、やっぱり同じ事考えた人居たんだ。でも、みんなのMMは優しくないなぁ…その点リーロちゃんは私に従順だよね。…なんで身体を取ろうとしないのかは不思議だけど)
60歳の老人が若い子の人生奪うとかダメだろ。
それは兎も角、簡単な連絡が出来る魔道具はサーシャの居た村にもあったぞ。片方が壊れたらもう片方も壊れるってだけの物だけど。それでも帝国が攻めて来た、と伝えられる良い物なんだけどな。
なまじ転移門は作れちゃった分、より必要とはされてないのかもしれない。便利なんだけどなぁ。
「つまり、誰にも分からない分野ですよね?だからこそ私は挑戦してるんです」
「一年でやるには危険だと思いますが…何処までやってますか?」
「既に火も風も土も水も、魔力じゃない全ての属性に共通する要素も見つけられましたし、なんで誰も研究を途中で止めるのかも判明しました。後はより良い物にする段階です」
「それはすごい。すごいですが…危険性が判明したのに、なぜ中止せずに?先達が全員諦めたのなら、かなりの命懸けの筈では?」
(魔力を見えない振動に変えて、それを専用の受け取る魔法がキャッチする。個人の魔力という識別が要らないこれなら、MMに『憑依』される危険性もないし、振動だから抗魔もされない。お互いに同じ魔法を持っている前提で使える魔法だ。問題は範囲と同じ魔法を持ってる人に無差別に渡す事なんだけど…この見えない振動って波打つ量を変えるとかで……思考が逸れた…まぁ、なによりも)
サーシャが思考をまとめて、動機を考える。
魔法ならなんでも良いタイプではあるが、この魔法だからこそ良いって考えもするのがサーシャだ。なんでやりたいかなんて、魔法に関してなら幾らでも言える。
「素敵だと思うんですよね。いつでも話したい人と話せるって。どうしても声が聞きたいのに、もう聞けないとか…そう言う時に話せる魔法が作れるかも知れない。それって、不可能を越えようとする動機としては十分じゃないですか?」
(…あ、そうだ。そろそろこの見えない振動に名前を付けた方が良いんじゃないかな。見えないって言うか感じ難いっていうか…波ではあるんだけどねぇ…)
サーシャが知らず知らずのうちに、周波数に似た概念に辿り着いた結果出来た魔法なのだが、サーシャが魔法分野の専門家なせいでそこからは全然進んでないんだよな。
俺?手作りラジオは学校で作った事あるけど、もう忘れた。ゲーム知識を覚え続けるのに必死でそこまで覚えてない。
魔法陣で全部やるのを道具で補うって案自体は出したけど、具体的に何がどう補うのかは誰も知らないから諦めた。
この世界の銅や電子が前世と同じか自信がないんだよね。少なくとも魔力が伝導率を下げてそうなのは分かるんだけど。
そうやってサーシャと2人して思考を空の彼方に受け上げてる中、ダンテは懐かしい物を見た顔で頷く。昔の人と面影を重ねたみたいだった。
「それは…そうですね。…サーシャ、貴女はどうやら、私が思っている以上に素敵な女性のようです。その熱意を見せてくれたことに感謝を。」
「いえ、普段色々と教えてくれてるんですから、このくらいなら全然大丈夫ですよ」
「そうですか。…では、これ以上貴女の足を止めるのは私にも望ましいことではない。これで立ち去るとしましょう。…気が向いたら、私の部屋に来てください。出来る限り望む物を渡しましょう。」
「ありがとうございます!」
(マ?めっちゃありがたいわ)
どうやらかなりの好印象を重ねられたみたいだ。
もう聞くことのできない声を聞く、の部分が刺さったのかな。
立ち去るダンテを見送りつつ、サーシャは渋い顔をしながら自習の用意を始めた。
「…でも、そろそろ授業の方もしっかりやらなきゃ」
(うぅ…授業に加えて上級生が学ぶ知識も仕入れてる分、基礎が疎かになりそう…地下室にあった執筆加速の魔道具で書き損ねは無いけど…その分無心で聞いちゃって、授業中に理解出来る範囲が減ってるし…)
あちらを立てばこちらが立たずとはよく言った物だ。
サーシャは今、研究が順調な分だけ授業が苦しくなっていた。
頑張れ、俺は絶対に自分からお前に憑依しない。
お前の力で全部やるんだ。
「うぅ…此処どういうこと…」
(分かるけど分からない…具体的な内容を書き損ねた…)
あー、高みの見物って気が楽だなー。こういうMMの特権、手放すのは惜しいよな。
「王国貴族」
神様を慰めた初代国王は、固有の魔法に目覚めた者を貴族に取り立てました。
時魔法、証魔法、転魔法の三大貴族は、その魔法で王国を素晴らしいものにしました。
そうして新たな貴族が増えていくある日、貴族をMMにすれば、その固有魔法を自在に扱えることが分かりました。
今、王国は世界中から狙われています。