不遇水魔法使いの禁忌術式サーシャと死に戻りの時計   作:何処にでもある

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 中間テスト(1/3)の下編です。




試・森・十六

 

 

「和平できる余地ありますかー!」

 

「寄越せ!」「ない!ザコだから!」「ヒャッハー!」

「無駄に足早え!」「移動用の魔法覚えてるとか小癪な」「水魔法使いの癖に生意気だ!」

 

「無理そう」

(これだけ騒がしいなら五層に逃げるか?…いや、私だけ死にかねないか)

 

 残念な話だけど、後ろで追い縋ってる奴ら一人の方がサーシャよりも強いからな。

 属性が違うと先ず頑丈さが変わる。火属性ほど生身が少ないって事は、切られて致命的な肉体も少ないって事だからな。

 水魔法は死体になる生身が多い。それはこの世界だとどうしようもない弱点だ。

 火の怪物と人間の頑丈さを比べてるのと同じだからな。同じ人間の枠でも単純に生物としての格が違う。

 ゲームではそこまで極端な設定ではなかったのだが…現実になると悪化する事の一つだな。

 

 キェー!ギュルリ!

 

 バードストライクを水の盾で防ぎ、『水滑』の魔法で移動する。

 スケートを下地にしたお陰でバックに来る振動は少ない物の、秒針()や荷物が有る状態で滑るのはかなり難しい。

 幸い水量が自動調整されて木々の凸凹の影響はないものの、追いかけてる奴らがお互いの足を踏み合ってるのをやめた瞬間に終わる現状はなんとかしたい。

 それはサーシャも同じなようだ。

 

「…入り組んだ道を利用…いや、アレも使わないとダメか」

(コレだけ騒げば魔物も集まる…そうなると絶対打破出来なくなる…仕方ない。試験品だけど実地検証と行こう)

 

 サーシャは胸元に掲げていた真っ白な宝玉に魔力を流し始める。

 ここ数日間、テストやちょっとした便利魔法の開発に寄り道出来たのはコレが有ったからだ。

 それはMMの所有者の性格平均化の現象をヒントにした物。

 二つの魂の出す波長を調律し、共鳴反応で起こる以心伝心を狙った会話手段の失敗作。

 以心伝心は発生せず、それ以外の出力の上昇や変化を起こすだけとなった物。

 

 その名前を「偽りの魂(ソウル・コンプレックス)

 向上した出力が高く生身への負担から5分しか使えないとっておきで、起動時は俺とサーシャが一緒に言わないと使えない物だ。

 

「魔道具起動…せーの」

 

魂の共奏(コア・サイオン)

 

‭─‬‭─‬二つの魂が一体化する

 

 使いこなせない魔力が蒼色に輝いて氾濫し、走る私の後ろに残光を残す。

 

「…!?」「はやっ!?」「なんだあの魔力!」

 

 事前の計測だと元々の性能から5倍になっていたからね。

 うん、自分のキャパの5倍とか使いこなせる訳がないのよ。

 

「…っち。解除!」

(これやっぱり早い!周りが邪魔で逆に遅くなる…あーもどかしい!)

 

 急速に早くなった感覚に追いつけず、落とし穴にハマって一階分落ちる。

 正面の木々に当たりそうになったからか、サーシャは魔道具を解除した。

 

「確かに強いけど…私には強過ぎる。この作戦はダメかな」

(本当どうしてこんな技術作れちゃったかなぁ!絶対何かの終着点的な奴だって!一応持って来たけど、やっぱり制御するには思考の加速が欲しい!)

 

 あー…慣れない。

 使ってるとサーシャと自分との境目が分からなくなるっていうか、会話の観点から見るとまるで逆のやり方な感じがするんだよな。

 これの究極系って一体化だろうし、バカみたいな出力からして多分ゲームでも終盤辺りの奴なんだよ。

 もしくはミニゲームの方かな。

 俺はやってないけど、攻略サイトだと無限に押し寄せる敵への防衛戦(タワーディフェンス)のミニゲームがクリア後に解放されるんだよ。

 それでこういう技術が出てくる可能性はかなりあるんだよな。詳しくは知らないけど可能性はある。

 

「もう…降りるしか無い」

(停まってても捕まるだけなら、下の階層に行けば…!)

 

 サーシャが木々の隙間からするりと降りて5階層に着地する。

 これで一階層ずつ調べる為に時間を取られるし、少なくとも人手は分散された。

 追っ手は多少はマシになるが、一気に明るい場所から降りたせいで周囲が真っ暗だ。

 

「手札は即席、三日月草と魔力結晶、構造は既にある出力強化と時間差発生で…」

(足は止めずに…授業の成果を見せるなら今だよね。光る草と電源用の魔力、そこにさっきやったダルクのランプと同じ魔法陣を流用すれば…!)

 

 使っても問題ない分だけ取り出し、錬金用の魔法陣を展開して混ぜ合わせる。

 既存のものから新しいものに再構築して、魔法の力を宿した道具を創り出す方法。

 魔法ではなく魔力視や循環と同じ技術の範疇ではあるが、これが上手に出来るかで魔法使いとしての格が変わる物だ。

 まだ発展途中の分野にも関わらず授業の一つとしてカリキュラムに組み込まれたもの。

 サーシャも未だ使いこなせる訳ではないが、こうして予め用意したものを使うならちょっとした時間さえあれば造れる。

 

「構造分解、魔力分解、経路分解。構築要素掌握、配列整理、擬似調律。設計、集積、形成。…完成、閃光弾」

(当たった人の麻痺を解除し、代わりに目潰しする手榴弾か…専用の素材じゃないから無駄が多いなぁ…でも魔力結晶のお陰で出力は十分、保険は出来たから後は私達次第だ)

 

 見た目は複雑な模様が刻まれた六角形の結晶、その中に三日月が浮かんでいる物になった。

 常に優しい光が辺りを照らしていて、持ってる間は足下が見やすくなるだろう。

 魔法なら俺が手伝ってやれるんだけどな、錬金による魔道具の作成とかは手伝えないんだよ。

 出来る事は精々『水滑』を上手く動かして障害物にぶつかって遅くならないようにするだけだ。

 

「いたぞ!」「下か!」「逃がすな、追うぞ!」

 

「分かりやすく光ってたら見つかるよね」

(だけど移動が遅くならずにすんだ。相手が少ないならやりようはある)

 

「ちょっと踏ませてもらうね」

 

 目の前のキノコの魔物を足場に跳躍し、4層に。降りようとした人達の横を通り過ぎた。

 

「あ!待…」「うわなんだコイツ!」「魔物だ!」

 

「基本はこうかな?」

(擦り付けてその間に逃げる…3対1なら勝てるだろうし遠慮なくやらせて貰おう)

 

 木の根を飛び越え、魔物の横を通り過ぎ、刺激した魔物と追っ手がぶつかるようにして潰していく。

 そうして相手の数を減らしつつ逃げていたが、それも長くは持たない。

 倒してまた追えば、それだけ魔物を擦り付けられた仲間と遭遇して再集結していく。

 そうすれば倒す時間も短くなるし、距離も縮まる。

 

「…強制送還まで残り10分。逃げ切るにはもう少し何かが欲しい。欲しいから…」

(コレだけで逃げるのは無理があったから…リーロ、作戦通りに。そろそろ到着する筈…着いた!)

 

 え、作戦?…五階層で滑っていたサーシャが前を照らすと、真っ白なキノコの壁が現れた。

 忘れるはずも無い、ゲームでは死亡でのゲームオーバーのない筈の、この試験で一回死ぬことになった「ライトマッシュ」の沈殿地帯である。

 サーシャはキノコの上に登ると閃光弾のピンを抜き、大量の水球を最大限創り出して纏う。

 何がしたいのか、この段階でようやく俺も理解した。

 多分水滑の制御に気を取られて作戦を聞き逃してたな。どこで考えてたんだろ。

 

「移動がダメでも使いようだ。私に合わせて…飛ばしていくから」

(はい、せーの…)

 

魂の共奏(コア・サイオン)

 

‭─‬‭─‬二つの魂が一体化する

 

「止まった?」「射撃射撃射撃だあ!」「気絶させろ!」

「こすっからい知恵なんざ暴力の前には無力だって教えてやるよ!」

 

『水纏』

 

 カッ…!ギュルルルッ!!

 

 大量の攻撃届く前に辺り一面が真っ白になり、直ぐにとんでもない負荷が水纏の壁に降り掛かる。

 下からのキノコの押し出しが壁を超えないように押し返し、上からの絡まった枝をひたすら回転して脇に追いやっていく。

 本来なら一発で死ぬ負荷だが、今回に限っては訳が違う。

 今の私達はスーパーモードだ。いつもの5倍速く、5倍硬く、5倍力強い。

 速さには追いつけないが、耐える分には何の支障もない!

 

 ズガガガガガガ…!

 

「0、このキノコは瞬間的に大量の光を当てると爆速で増える。1、なのでバリア張って増幅の勢いで射出されれば爆速で逃げられる。2、空の上なら障害物もないから‭─‬‭─‬」

 

 キェー!キェー!キェー!キェー!キェー!キェー!キェー!キェー!キェー!キェー!キェー!キェー!キェー!キェー!キェー!キェー!キェー!キェー!キェー!キェー!キェー!キェー!キェー!キェー!

 

 空気よりも軽いキノコと一緒に空に放り出された。

 広い空間に出たことで白いキノコの壁はフワフワとした毛玉のようなものに変化した。

 それは最早生きた雲と言い換えてもいいだろう。

 私は生きた雲を通り抜けて、大量の鳥と衝突しつつ更に魔法を使う。

 

『渦巻』

 

「‭─‬‭─‬どれだけ速く広範囲に魔法が広がっても問題ない!全部巻き込まれろ!」

 

 他の放射系の魔法と比べたら範囲の狭い『渦巻』も、5倍もあれば変わってくる!

 

 自分を中心に回る渦に大量の鳥が巻き込まれる中、更に魔法を重ねた。

 

「3、速度5倍なら『渦巻』に使った水が落ちるよりも速く『水滑』で足場にして再射出できる!後は2と3を繰り返して無限空中散歩すれば安全って寸法よ!」

 

 これが私の逃走経路、魔力の続く限り繰り返される空の旅!

 

 だけどコレも長くはない。限界が5分である以上、残り5分は自力で乗り越える必要がある。

 なによりコレだけの魔物を倒してヘイトを稼いだ後だ。魔力もばんばん使っているからには消耗も酷いことになっている。

 見た目が派手なだけの、遠回りの自滅なのがこの作戦だ。赤点回避だけはしたいところだけど、ここまで頑張っておいてダメでしたは私も抵抗があるぞぉ!

 …ん?あれは。

 

 …ピっ。

 

「試作品起動から3分経過、鳥の大群が見え始めてきた。西の空が真っ黒だ。これが魔物を狩りすぎる事で起こるって言う「氾濫」って奴かな。曰く、殺された魔物が死ぬ直前に想うのは同胞の姿。そのイメージを深淵が反映して起こる過剰な補填。私以外もよっぽど殺してたんだろうね」

 

 そして「氾濫」の厄介な点は、一番の死因に対応して強くなるという点。耐性や能力が上がるだけならまだ良い。一番厄介なのは、不確定なこと。

 

 歴史の授業で習った物だ。

 「氾濫」で強くなる方向性は、死んだ魔物がどう願ったかによる。

 環境に合わせた適応ならまだ良いが、外敵に対して最も効果的な手段を望んだ場合、特殊な力を得る場合がある。

 それだけならまだマシで、本当に不味いのは頓珍漢な進化をすること。

 願うのが魔物である以上、人間の発想では思いつかない方向性で解決しようと考える。

 今回の場合は文字通りの鳥頭だ。傾向的に速くなったり頑丈になり易い。

 よく観察して…理解った。真っ黒だと誤認する程の過密な数に巻き込まれた生徒との攻防が見えたからだ。

 

「報告、変化を視認した。カラスから雀程度まで小型化し、旋回性能が上がってる。これじゃあ渦巻を出しても躱されるだけだね。元から数と速さは高かった分、手堅い纏まり方になってる。もう空は安全じゃ無さそう」

 

 なら下に行くか?否、それじゃあ生徒達との挟み撃ち。

 それなら更に速くなるか?否、後7分飛び続ける速度には辿り着けない。

 答えは出来るだけ上に行って落ちるまでの高度を……無理だ、今計算し終わったけど絶対的に魔力が足りない。

 困ったな、全域が危険地帯…ふと、私の真下でもくもくと広がり続ける「ライトマッシュ」の雲が目に入った。

 

「解除。地味だけど効果的な時間稼ぎを思いついた」

(良いね、死ぬ気で最後まで使い倒してみよう。神学で学んだことを思い出せば…)

 

 あー…だっる。

 やっぱり長時間の利用はダメだな。思考がサーシャに引っ張られる。

 普段は俺の方に寄ってるけど、偽りの魂(ソウル・コンプレックス)を使うとサーシャに寄るのは何だろうか。

 俺よりもずっと考えてることが多いから、兎に角頭が疲れてしまうし…若者の時間は早いってガチなんだなー。

 

「解析補助用意、錬金術式起動、私が知り尽くすのが先か、私の時間が足りなくなるのが先か!」

(ここまで来たらとことん調べ尽くす。死に戻り前提の5倍解析パワーで、「ライトマッシュ」が生きたまま錬金対象に出来るようにする!)

 

 今までで一番頭悪いスペックのゴリ押し脳筋戦法来たな。

 祈りで延命しながら少しでも長く解析し、特定の魔物を自由に錬金出来るようにする魔法を作り上げる。

 後、別に脳の性能が上がる訳じゃないから、解析能力は5倍にならないぞ。

 もう最下層で他の生徒に成果物渡しながら守って貰うのが一番良いと思うんだけど…コンコルド効果で半分意地になってるのかな。

 

‭─‬‭─‬まぁ頑張るけど…ベアトリーチェ先生の名前を言うなり、少しは楽な道選んでもバチは当たらないんじゃ…。

 

「リーロ!もうヘイト稼ぎ過ぎてるから護衛代金に手記を渡しても意味が無い。全部取られて赤点になる!赤点はダメ、おじいちゃんが教えてくれた魔法の分野で、そんな評価を貰うのはとっても嫌!分かった!?もう0か100しか無いなら、私は100を選ぶしかな、ゴホゴホッ」

(大声出し過ぎた…リーロ分かったかぁやるぞ!これが私の活路なんだよ!先生呼んだら減点になる可能性がある限り私は呼ばない!)

 

 …サーシャ、ゲームの時は気付いてなかったけど、お前って家柄や先祖のやったことを重視する性格なんだな。

 ただのおじいちゃんっ子だと思ってたけど、教えられた事に誇りを持つと考えれば、貴族に産まれたら貴族らしく、パン屋に産まれたらパン屋らしく生きてそうだ。

 

 

カチッ

 

 

「全体は把握した。生身の解析に入る」

(土属性だからか肉体に依存した部分が多い…先頭が風に乗せた菌糸を後ろが受け取って、それを更に後ろに伝えて…個体というよりも群体、全体で一つの生き物と考えるのが良いかな)

 

 生存時間は3分だったな。2分の5倍防御と、祈りながらの解析。

 死にかけてる最中の祈りは効果が上がるのも相まって結構耐えられた。

 5倍じゃない水纏?一瞬で突破されたよ。

 

 

カチッ

 

 

「分かった。全部把握しなくて良い。増殖のプロセスに介入して、私の指示通り指令を出せる、生きた『通信』の魔法陣が作れればいい。私を守るように動きを統制出来れば良いんだから、それが最適解だ」

(大事なのはその生態に沿った命令を出せるようになる事。幸い参考にする資料は頭にある。後は即興かつ高速でそれを作れるかにかかってる!)

 

 生存時間は4分だ。7分経てば送還されるのを考えると、普通に耐久してればいけそうな気がしてきたな。

 前回よりも向上した祈りで肉体を修復しつつ、こっちの観測も開始。

 無の力が魂の波長によって生身を修復しているのを、偽りの魂(ソウル・コンプレックス)で劣化再現。

 深淵という無の力が大量にある空間なのも好条件となり、「なんでそうなるのかは分からないがこうすると無の力で身体が治る」魂の周波数で回復をゴリ押した。

 もしかしてサーシャって危急の状況で研究すると爆速で研究を成功させるタイプなのかな。

 …うーん、何だか違和感があるな。やっぱこの死に戻りって時間を戻す以外の効果もあったりするのか?ローンの時も60回全て同じ死に方では無かったし…分からないが便利だから良いか?

 

 

カチッ

 

 

 チチチ、チチ、チチチ…、

 

「‭─‬‭─‬出来た。名付けて「王の冠」だ」

(魔力の結晶を幾つか使う事になったけど…想定以上に良い魔道具が作れた。要は指令は受け取ったと思わせれば良いんだから、生き物を作る必要もない。『通信』の魔法に特定の言語への通訳をさせるだけで良かったんだ)

 

 今の俺達は菌糸の壁に囲まれ、氾濫で小鳥サイズになった「ボムバード」が近くで遊んでいた。

 壁は「ライトマッシュ」を騙して固めさせた防御壁だな。

 最初に密集指示を与え、それが更に他のキノコに伝えられ、そうして安全地帯の作成した。

 誤算だったのは魔道具の命令が鳥の方にも聞いたことか。誤情報だと判断できる知性がない相手なら自由に指示ができるっぽいな。

 

「…報告、4回。ライトマッシュとボムバードの支配に成功。最高の魔道具を作り出せた。Aクラスは今後この森の探窟で大いに有利に立てる。……これもう私、一位行けたでしょ」

(一回の調査なら最大限の成果を出せたと思うけど…どうかな)

 

 手記に追記しているとあっさり7分が経過し、視界が歪む。

 4時間の深淵調査のテストの最後は穏やかに終わった。

 

‭─‬‭─‬『閉門』

 

「みんなお疲れ様なのだ!怪我した奴は…そこそこなのは優秀だ!今年は豊作なのだ。これなら早速聞き取り調査がやれそうなのだ!集まれー!」

 

「私が治療しますので怪我をした方はお集まりを……そこの方々、奪うのはダメですよ」

 

「ではABCのクラスは私に、DEFのクラスはジャッジ先生の方へ向かって下さい。最後にクラスとして報告する内容をまとめましょう。報告で提出したものは後日返しますのでご安心ください。」

 

 サーシャはダンテ先生の方へ向かい、Aクラスのみんなの様子を見る。

 全体的に和やかな感じだった。

 

「3種の魔物と3階層の地図だ。やれる限りやった」

「みなさい、まものが多いばしょのとくちょーよ!がんばったわ!」

「僕は他のクラスと情報を交換して集めてました。こちらをご確認ください」

「逃げてるだけだった…2層のゴーレムはしつこいって感じです…」

「CとDに取られたー!終わったー…あ、有光の魔物の対策の証言だけはしておくね」

「魔物狩りは楽しかったよ。それから、西部から南部で起きた氾濫の様子だ」

「真下は…真っ暗!」

「一応有光辺りまで確認したよ…先生が居なかったら死んでたけど」

「あ、私は」

 

 そうして割とサクサク進み、集合知の力でクラス報告用の手記の穴埋めが行われていく。

 そして、サーシャの番になった。

 

「遊泳の層の入り口まで確認した。数は少ないけど持ち帰った魔力の結晶もある。魔力が多過ぎて宙を歩けるほどだった。探窟するなら魔力を拡散させる魔道具が欲しいね。それと、有光で出て来る魔物の対策も書くね。少数なら戦闘しないで通れる相手だった。後は南部から入った場合の遊泳までの最短経路と地図、後は外側に居た「プラントレント」の報告と、浜辺だと南部の五階層の大雑把な地図と通路構成の傾向。5階層を主軸で調べたからそこ辺りは埋めておくね。後はこの深淵特有のお宝の発見、樹洞の奥に有ったよ。それから…」

 

「サーシャ、止まってくれ。みんなついて行けてない」

 

 ダルクがクラス報告用の手記を埋めていくサーシャを止めようと声をかけるが、残念ながらちょっと遅かったな。もう終わるから。

 

「大丈夫、後は一つだけだから。「王の冠」って魔道具を見つけた。時間をかければ社会性のある魔物なら会話出来るし、知能が低ければ命令も出来る。これのおかげで氾濫も治められた」

「待て、最後に特大の厄介な物を報告しないでくれ。その装着してる冠がそうなのは分かるが、そんな大層な物だとみんな思ってなかったから…ほら、アイツなんて腰を抜かしてる」

「お嬢様凄過ぎでしょ…」

「あれはいつものことだから無視して良いよ。後は…それだけだね。音声記録も一緒に出しておくから書き忘れも心配しなくて良いかな…他に北西東の穴埋めはお願い」

 

(ふぅ、緊張したー。思わず魔道具を作った、じゃなくて見つけたって言っちゃったよ。…まぁ大した違いは無いから良いか。良かろうが悪かろうが想定外の働きをする魔道具は好みじゃないし、態々失敗作を自分の子と言う気も無い)

 

 その後、サーシャの後の子が声を詰まらせてたが、ヘルシングのトークで元の和気藹々とした雰囲気に戻っていった。流石だな。

 一部の南部に転移した人は端折る事になったが…CとDの共謀とかを書けば良いとサーシャがアドバイスしたりしてたので書くには書けていた。

 調査員として来たなら他国の調査員の報告も立派な点数だからな。

 サーシャは逃げてるばかりだったからここら辺は詳しく無いんだよな。

 

「では30分経ちましたので、個人の報告と一緒に回収させて頂きます。盗難は発生しない様、私達が管理しますので邪なことは考えないように。」

 

「今日はコレでおしまいだけど、明日は語学、歴史、属性学。明後日は教養と錬金の合同なのだ。今回がダメだった子はそっちで頑張れば良い。体力温存で今日は程々にやった子も居るみたいだし、へこむ必要はないのだ!」

 

「今日の経験は今後の糧になります。その失敗も成功も、忘れずにその身に刻みましょう。その経験こそがあなた達をより良くするのですから」

 

「「「本日はありがとうございました!」」」

 

 こうして、一つ目の中間テストは終了した。

 …でもなぁ、後二つを死に戻り2〜3回だけで攻略か。

 ゲームだとこの深淵探索より死ぬ要素あったから心配なんだよな。

 

 だってゲームでローンと初めて出逢うのは、このテストの終盤なんだから。

 

 






「学園の教師」
 初代の教師は貴族を取り立てて、魔法を扱う為の道徳を説いてました。
 二代の教師は各地の異端者が希望して来たので、その改心を期待して向かい入れました。
 三代の教師は何かしらに魅入って卒業を拒否した生徒を、その巣立ちを期待して立場を与えました。
 最近だと本来ならダンテ先生しかいない筈なのに、なんか死んだ筈の歴代教師が全員います。

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