不遇水魔法使いの禁忌術式サーシャと死に戻りの時計 作:何処にでもある
これはサーシャがLv.1の時の簡易ステータス。
成長方法は下の確率にMMの補正含めてダイス。
職業:魔法使い
HP28
MP500
力1 守2 速1 技3
知5 魅5 謀8 運3
10%10%50%70%
90%80%90%20%
そしてコレが幽玄のモブのLv.1。
職業:村人
HP28
MP25
力5 守5 速5 技5
知3 魅3 謀1 運1
70%30%30%50%
30%30%10%10%
「言う通りに発動して。拘束、衝突、大回転」
ドラゴンの顔面に水をかけて怯ませた瞬間に土の鎖によって拘束し、其処に幻影が下から拘束丸ごと土を迫り上げて、飛び出た大地を風の刃が切って切り離した。
「後はドラゴンの顎下あたりを攻撃。最大火力」
ギャオオーォオ……!!
残った8人が指示通りに各々が得意な魔法で攻撃すると、ドラゴンはみるみると弱っていって死んだ。
SRPGに限らない真理なんだが、結局囲んで弱点を狙って叩き殺すのが一番早いんだよな。
拘束すると確定で命中、弱点を狙えば確定でクリティカル。二つ合わせれば確定クリティカルだ。
対人ならこうはいかないが、明確に弱点がある魔物は総じて人が集まれば怖くない。
「…思ったよりあっさりですね」
「所詮一回も氾濫してない竜だからね。私達の知ってる竜はとんでもないけど、先祖ならこんなものだよ」
「確か先生は最初に発見されたと言ってましたか。怖がらず立ち向かえば簡単な問題ですね」
「本番は次からだからね」
「ビビらず立ち向かった奴は正解だ。竜も最初はこんなに弱かったし、氾濫がいかに脅威かを理解しろ。次は神歴504年の王国、神歴750年の王国、神歴800年の王国騎士だ。一番を当てろ」
「2、1、0」
周囲がお城の中庭となり、歴代の王国騎士の内3名の隊長が乱戦を行う。
其々大きな騎士、馬に跨った騎士、魔法使いみたいな格好だ。
俺たちは城壁の上から見下ろす形だが、距離が近いこともありかなりの臨場感を感じ取れる。
どう答えるかと手元の脱落ボタンの裏、カウントしている所に選択する場所が設けられていた。解答欄でもあるのかこれ。
「魔法使いの騎士ですね。最新の騎士こそが最強に決まってます」
「答えは変えられるっぽいね。それなら私は大きな騎士かな。全員MMを持っているなら、一番戦闘慣れしている騎士が強い」
(王国の騎士の仕事は魔物狩りと氾濫防止、関所や警備…沢山あるけど、その時代によって主な仕事は変わる。古い程魔物を相手にして、新しい程人を相手にする仕事が多くなって行った。最近の騎士程戦闘から離れてるのは純粋たる事実だ)
大きな騎士が大剣を払えば風圧で剣先の壁が切られ、馬に乗った騎士が槍を突き刺せば地面と一緒に抉れ、魔法使いの騎士が杖を回せば辺り一面に雷が轟いた。
名前も知らない騎士達だが、誰もが熟練の魔法使いである事は明らかだ。
見応えはあるが、ただ見てるだけなのが耐えられない人もいる。リサは辺りをキョロキョロと見渡して、それからサーシャに話しかけた。
「…私達が手助けするのは有りなのでしょうか」
「どうだろう。先生はペースが早いと言っていた。観戦するのが正解かも」
「しかし、これは歴史と属性と語学のテストです。歴史としては正しくとも、ここまで語学としての要素が薄いとは感じませんか?魔法を作って助けるのが正解では?」
「…属性学としては今の状況下で冷静さを保ち続けるのが評価されるけど…騎士達を解析してみようか。問題文を見ないと解答は出来ないし」
「悠長ですね。一応協力関係なので相談しましたが、私は手助けに入ります」
リサはそう言うと、城壁を土魔法の『石走』で降り立っていった。
サーシャはそれを見届けつつ、魔力視で騎士達を構成する魔法を確認する。
(…行ってしまったけど、解答が複数用意されてるのは考慮すべきかな。向こうが正しければ……ふむ、知らない言語だ。l.ll.lll…だけど数字は直感で分かるかな。其処から当て嵌めれば…)
見た感じローマ字に似てるな。普段の文字が日本語に近いからより異世界らしく感じる。
あ、馬に跨った騎士が拘束された。分かるよ、土魔法って初手で拘束したくしたくなるよな。
「……これ隊長達の再現年齢かな。死んだ年齢的に…リサ、答えは馬の人だ!答えを変えて!」
「…二人とも外れですか!」
「私も変更してっと…再調律!」
サーシャが魔力の糸から遠隔で魔法陣を弄ると、馬に乗った槍の騎士以外の二人が倒れる。
何が起きたのかは、骨になった馬を見れば分かるだろう。全員の年齢を管轄する部分を弄ったのだ。
「俺は一番と言ったが強さとは言ってない。まぁ歴史という分野おいての一番は長寿だとは思ってるが。経験は一番身近な歴史だからな。次は10点問題、商国のテーレレ村の開拓史の体験だ。時間は気にするな、10年間を判断だけで一番良い村を作れ。YESかNOと一言を添えてな」
「2、1、0」
次の景色は砂漠が近いサバンナ地帯と50人と3匹の羊と1匹の牛の難民達。木々のまばらな草原。
乾いた空気と暑い日差しが俺たちを出迎えた。
もうなんでも有りだが、ゲームのミニゲームがこんなにすごい体験の連続だとは俺も思ってなかったんだよね。今回は…忠言が書かれたカードを10枚左右に振って、その総合値を高める奴かな。
『隊長、副隊長、ここなら俺達にも住めそうじゃないか?水辺が近くて土地が平らだ。魔物の気配もない。女子供も疲れているし、やり直すには丁度良いぜ?』
「…どっちが隊長かは気になりますが…それなら作って良いと思います。先ずは周囲の食べられるものを探しましょう」
「私も賛成。狩小屋をあそこ辺りに、家を作るなら多少遅れても良いから土台をしっかり、そして高くして。家畜達は専用の小屋を。ここは雨が降ると一面水浸しに成りそうだから。道は其処まで頑張らなくて良い、道は排水をしっかりさせてから取り掛かろう」
『分かった。おーい!今日からここが俺達の安息の地だ!男は女の為に家を作れ!女は子供の為に当面の食べられる物を見つけろ!子供は大人を手伝え!物を運ぶか子守りを手伝うか!分かったら俺達の指示に従って動き出せ!まともな生活を送りたいなら今日を全力で過ごせ!』
(この人頼もしいな…良い感じに指示が伝播す…おお、景色が早送りに!)
命令が受諾されたのか、時間は進み、いつの間にか俺達はそこそこしっかりとした木の小屋に居た。窓から外を見ると、大雨が降っている。どうやら雨季のようだ。
「なるほど、これからあっという間に10年が経ちますね」
「私の住んでた場所って北側なんだけど、商国ってこんなに暑いんだね。冬の対策はしなくていいのは楽だ」
「代わりに…一面が池になる程の雨ですか。私はどこに住んでいたのか知りませんが、少なくとも商国ではないですね。こんな大雨の既視感はありませんから」
『村長、副長、報告するぜ。村の食料は当面持ちこたえられる。家は問題ないな、ぎゅうぎゅうだが壊れることはない』
「おお、幻影だと分かってても成功すると嬉しいですね!」
「五感全て臨場感たっぷりだしね。だけど雨季で行動が制限されるのは…対策が欲しい」
「そうですね、一年しっかり活動して盛り上げた…いえ、これは試験、飲まれないように…」
『ただ、衣服を作れるようにしたい。ここずっと着たきりだったが、そろそろ限界だ。羊は居るから細工屋を建てたい。それにずっと籠りっきりだとみんなが喧嘩っぱやくなる。遊具か雨の中でも動ける道具はないか?』
男の提案が終わると、脱落ボタンの裏が点滅した。確認すると新しい問題文が追加されている。
今回はハイかイイエの代わりに独自解答も出来るらしい。成功すれば追加得点と書かれていた。
ゲームでのハイリスクハイリターン札だな。サーシャと協力者の能力次第で出来る選択が増える奴だ。
今回は普通の札が衣服は関係、ハイカードの方は遊具が安牌、雨季での行動対策がステータス要求だ。
リサが腕を組んで悩んでる間にサーシャは少し思考を回して、手元にある木の板に一つの魔法陣を刻んでから指示を出した。
「…「スクロール」作製完了。はい、雨季に動けるようになる魔法、『水滑』だよ。雨はその身を遮らず、川は滑るように避けていく。水属性なら滑って高速移動できるけど、他属性なら水避けになる程度かな。一つで1時間は待つから、後で人数分用意する。足下しか効果がないから気をつけてね」
「そうか、スクロールなら語学要素も…今作ったのですか?」
「いや、前々から移動用に作った奴だよ。本来なら自分の水で滑るんだけど、今回はそれを周囲の水を避ける方向に改造した。使えば私の水球が周囲の水を避けてくれるよ」
(こんな所で役立つとは思ってなかったなぁ…何が役立つかわからない物だ)
スクロールは魔法陣を予め刻んで置くことで、他者にも使えるようにする技術にして道具だな。
アイテム欄の場所を取るが、代わりに誰でも呪文名を唱えるだけで使える優れものだ。
「1日100個は作れるから数は気にしないで。最終的に筏と屋根だけで雨季はなんとかしたいけど、当面はコレで。建築物に付けておけば流されることもないし、建築はこの期間でも出来る。資材と時間ならあるし、足りないものはこの間に作ろう」
「…ふむふむ、これなら私にも作れますね。名付けるとすれば『土滑』でしょうか。1日200は作れます。本来なら土の壁で水の侵入を許さない物を作りたい所ですが…耐水の焼けた土は土魔法では作れませんから。私も手伝いましょう」
『おお、それなら細工屋も鍛冶場も作れそうだ。ここは村長達と一緒にみんなで村を育てて行くとしよう。遊んでる暇は無さそうだな』
男がそういうと、また時間が進む。
雨が止み、乾いた空気が雨の痕跡を消した。家も建って村がある程度形になってきたな。
『村長ら、十分な家に、必要な建物は作り終えた。だけど未知の病にかかった奴が出てきたし、雨季の間に近くの村を見つけもした。俺達は元々魔物の氾濫から逃げた王国の村で、ここは商国に黙って作った村だ。なんで国に属してない。税も払ってないからな』
「あ、そうなんですか?そんなの有りなんですか」
「脱税した方が発展も早いからね。…悩むなぁ、見つかったらふっかけられるけど国の庇護下にもなるんだよね。でも発展が遅れるだろうし、そうなるとテストが…でもどの道かなぁ?」
『近場の村と交易すれば、俺たちに足りない物も手に入るだろう。病の治療も、今は居ないがここらで気を付けるべき魔物の知識も。だが、元々王国の民だった俺達が受け入れられるかって問題がある。…受け入れられても、税は厳しくなるだろうな』
おお、なんか面倒な話になってきたぞ。でも将来的に絶対考えるべき問題だわ。
いやー、村にも歴史有りだな。当事者として体験すると本人達にとっての問題の大きさが分かる。
『ああ、王国に頼るのは無理だ。あっちは話を通すツテもあるし税の免除もしてくれるが、ここは商国の土地だ。俺たちへの支援は、商国が戦争をする大義名分になる。王国はそういうのは大嫌いなんだ。絶対門前払いされるだろうな』
「外交ってこんな小さな村でも起きるのですか?……面倒ですね、もう淡々と村を育てて行きたいです」
「気持ちは分かるけど、今回は大事な選択肢だ。商国にすり寄るかどうか、こういうのは後に回すほど問題は大きくなるし…あ、今のこの村はここに住む為の許可証がないのか」
「許可証?」
「王国の村は、王国がその土地に住む事を許す証を渡すんだよね。私の村だと帝国に攻められたって報告する為の魔道具かな。…で、それは帝国も商国もそう。この制度じゃないのは神国だけなんだ」
「あー…念の為聴きますけど、それがないとどうなりますか?」
「私たちはなにをされても、誰も庇ってくれない。村人だと証明するものがないからね。殺されても奪われても、無法者の言葉は誰も聞いてくれないよ。法の加護がないんだから」
(面倒…だけど土地の所有者の関係上、絶対商国の方に付かないといけない。少なくとも王国の土地から逃げた立場である以上王国は守る義務がない。だからこの問題の返答はハイだ。その上で"どう関わっていくのか"が問われてるんだ……確か商国の仕組みは……)
すげぇ、ゲームだと何も考えず左右に振っていたミニゲームがこんなに奥深くなってる。
ゲームで生徒達が大量に脱落した理由が分かってくるな。政治能力がないと解けない問題だわ。
サーシャは自分の持っている
「……その村とは交易の関係になる」
『分かった。身元はどうする?誤魔化すか?』
「"私たちはある商隊からこの地の開拓を任された一団であると伝えて。"具体的な名前を聞かれてもはぐらかしてね」
『…お?』
(方針は騙す方向で。情に訴えるには私達は上手くやれてしまっている。なら、上手くいっているからこそ使える手段しかない)
男の雰囲気が変わる。頼りになる男から、歴史の先生と同じ雰囲気に変わった。
自動からマニュアルになった感じがするな。
『証拠はどうする?王国での証は逃げる最中に置いてきた。誤魔化すにも俺達に価値のあるものはないぞ』
「証を見るように求められたのなら、契約の魔法の関係で見せられないと答えて。その上で、どうしても疑うのなら、「コレを見せる事は許されている」と言って私のネックレスを見せる」
『村長、頭がおかしくなったのか?ここにそんなものはないだろう』
(このテストで出来る範囲外、追い詰められた?違うね、ヒントはもう見てるはず)
男がそう言って呆れる。テストだとこの方法は使えないと言うつもりらしい。
それもサーシャは織り込み済みだ。元からペンダントを見せる予定ではない。
「いいやあるよ。"魔力視を使うと見えるようになる魔道具がね。"発動中この村が誰にも見えなくなる魔法の道具だよ。今は其処までの効果は無くなったけど、それでも尚魔道具自体は見ることが出来ない。そうだったよね?」
『あ?なん…もしや、そうするのか?』
「うん、私達は10年前からこの土地に居た。魔物の脅威に晒されない為にこの魔道具を契約書と共に貰った。そしてつい最近になり"貴重な物は「大体」取った"。やり遂げた褒美にこの地に住む保証をくれた」
『…その情報を与えて、相手に皮算用させるのか。大体、と言ったな、まだあると思わせるんだな?』
「交易はお互いに利益がないといけないし、真実とは自分で辿り着いてこそ本物になる。私達が渡す利益は「期待と夢」だよ。当然破綻するけど、それは今じゃない。旅人と探窟家が1年来ない時点でここは道から外れた土地なのは分かってる。商国に気づかれるのも遅い」
『…論理の破綻はないな。分かった、やってみようか』
(さーて、村一つ賭けたペテンの時間だ)
男が小屋から立ち去り、村に指示を出しに立ち去った。時間が加速する。雨が降り、また乾いた風が吹く。
失敗したらこの村が消え、成功したら村は大いに発展する。ゲームじゃこんな選択肢無かったから俺もどうなるか分からないぞ。
「…サーシャ、一つ貴女に対して理解したことがあります」
「なに?」
「私が仮に貴族や王族なら、貴女を雇っているということです」
「まぁ、この村…街を見ればそうなるかもね」
(10年、長いようであっという間だったな。判断する時間だけなんだから当たり前だけどさ)
目の前に広がる畑、人々が賑やかに交わる市場、深淵を探窟した宝で身を固める兵士、其処にあるだけでこの地が正しい物だと民衆に思わせる教会。
結果は分かるだろう。賭けは成功し、10年を効率よく村を育てることに成功して街にした。
こうなると正当性があるかどうかは脇に置かれる。資本と深淵が全ての商国において、その両方が揃ったこの街こそが正しくなるからだ。
証が無くても、みんなが疑わなければ問題にならないってことだな。
「確かに「期待と夢」を売りましたね。商国は元々が探窟家が集まって出来た国、その二つを持って探窟する集団にはよく売れました。…まさか借金させて全てを取り上げるとは思いませんでしたが」
「賭け事は探窟家の間では人気だからね。それ用の街を作ればあっという間だったし、探窟家が倉庫で腐らせてる魔道具も街の運営に役立つ物が沢山ある。一番恐ろしいのはコレを再現し切った先生達の方だよ」
「そうでしょうか、私にはどちらも怪物に見えますが」
「そうかな、後半の方は寧ろ…そう言えば名前は?」
(やっべ名前聞き忘れてた。知り合いになるにしてもこれを忘れてたの痛過ぎるでしょ)
規模が大きくなるとリサの方が前に出てたと言おうとして、未だに名前を聞いてなかった事に気付いたらしい。サーシャは焦りつつも表には出さずに質問した。
ここまで築き上げたリサ向けのイメージを崩したくないという考えだ。
「…ここまで来て私だけ知ってるのも不義理ですか。…リサ、ただのリサです。この後もよろしくお願いします」
「私はサーシャ。ただの村人だよ」
(リサ…うん、いい名前だね。覚えた)
サーシャがリサと握手する為に手を持って振っていると、リサがじとっとした目でサーシャを見つめた。
「いや、貴女がただの村人な訳ないでしょう。記憶があるのは水属性だったからにしたって、あんなに噂されて頭の回る村人は居ませんよ」
「えっ」
「なに意外そうな顔をしてるんですか。Aクラスで貴女の事が話されない日はないんですよ?」
「えっ私特に目立った事してないよ。魔法の研究しかしてない」
「いやいや、テスト前から他よりも真面目に勉強したり、食堂で大騒ぎしたり、工房街で暴れる魔法使いを倒したり、寮の裏に真っ暗な小屋まで作っておいて噂にならないと思いますか?」
「…学園に来たらそれくらいやらない?」
「やりません。大体の人は記憶がないからなんとなく勉強して、副科目で遊んで、工房街で遊んで、みんなで遊んでますよ。タダ飯を食べて寝て遊んでばかりです。魔法だってそれが好きだからって学んでる人が大半ですよ」
(えっ…魔法学園なんだから魔法を学ぼうよ。普通記憶が無くなっても魔法に夢中になるんじゃないの?)
残念だけど攻略キャラやライバルやサーシャが珍しいだけで、記憶なくしてこんな理想の大学生活みたいな環境に身を置いたらモブは堕落するよ。
まだスマホが無くて娯楽が少ないから勉学を遊び半分でやってるけど、仮にそういうの出来たら通う子消えるよ。公式四コマだとそんな感じだったからね。
「…いや、その理論には矛盾がある。リサはこのテストを頑張ってたしみんなやる気満々だった」
「私はこの学園を出た後に後悔したくなくて、目指すなら一位以外に興味がないからです。他はまだ遊びの延長ですよ」
「そんな…私は全力でもついて行くのが精一杯なのに…」
「研究してるからじゃないですか?」
否定はしない。ゲームでも成績は最低限に研究三昧だったし。
「それで、なんの研究してるんですか」
「MMと安全に会話する方法。既に肉体を差し出しての会話や身体を置き換えての会話は見つけたけど中々進まない」
「…肉体を差し出す?」
「リーロ、見せてやって」
しょうがないなぁ…。
──世界を入れ替える
全く、違いを証明するのは大変なのに…。あ、でもリサなら魂が見えるらしいから簡単か。
ハート家の命魔法は魂を創って与える魔法だ。その過程で魂を見ることが出来るから、その片鱗までなら覚醒してるリサは見える筈だな。
「あ、タイム家の問題で出てきた人」
「こんな風に肉体を操る魂を変えて支配下に置く。すると本来の魂は私の心の声が聞こえるようになるんだよ」
「それどっちが主導権を握ってるんですか?」
「私、リーロ、MMが切り替えられる。この魔法を作ったが最後、身体を明け渡すのと同義だよ」
「産廃もいい所ですね」
なんだとぉ?言ってやってくださいよサーシャの姉貴ぃ!
──世界を元に戻す
「そうだね。MMが相当いい子じゃないと成立しない方法だ。証言によるとかなりの充足感と独占欲を身体に感じるらしいしね」
(ごめん擁護無理)
おっとサーシャも肯定して来た。なら無理かー。
「…となるとあの時計塔で暗殺されるには惜しい子じゃないですか」
「うん。私が持つには勿体無いくらいの子だよ。だからこそ、協力してくれる彼女の為にもこの実験は成功させたいんだよね」
「なるほど…ところで未だに幻覚が解かれませんね」
「そういえば…なんでだろ」
(次の問題がないのかな…それとも他の人が終わってない?)
サーシャ達が脱落ボタンを確認する。其処に書かれてるのは60という得点と、金色に光る脱落ボタンだった。
数字の下には最高50点を超えましたと書かれている。どうやらもうこれ以上意味がないから止まってるようだ。
ゲームでも最高25しか行かないのに…発展ボーナスすげぇ。このサーシャ政治が上手だわ。
ステータスの謀が25行ってそう。…そういえばサーシャの今のステータスってゲームだとどのくらいなんだろうな。
「終わりは無いって言ってたのに…」
「ここまでたどり着く人がいなかったのでしょう。私は棚ぼた気分ですが…終わりますか」
「そうだね。ここまでありがとう、結構良いチームだったよ」
「同意見です。…今度そちらの研究を覗かせて下さい。聞いてて興味が湧いて来ました」
「大歓迎。新しい研究員は常に募集中だからね」
(うん、新しく仲の良い人も出来たし、今日は大成功だ!)
二人一緒に脱落のボタンを押してテストを終えると、既に他の人は終わってたらしい。
広い空間の隅でこちらを見ている一年達と先生が居た。
「はいしゅーりょー。長話してないで早く脱落してくれたらもっと良かったな、コープ先生が息切れ起こしてるから。あの問題で史実以上の成果を出したのは初だったが、お陰で興味深い話だった。この仕事しててまさか法と権利の観点の視点の解答されるとはな。途中から先生達の方が試されてヒヤヒヤしたぞ」
「既存の魔法を調整して対応する。新たな魔法を作るのも良いですが、コレもまた正しいでしょう。この学問の真髄は手数を増やす事にこそあります。或いは、調整を前提とした魔法の開発もアリですか…私もまた新しい知見が得られました」
「はー…はー…良いですね、はい!常に冷静に、臆する事なく向き合った!この分野においての姿勢は十分と言えます!はい!魔法を扱う者として文句なしです!」
「すげぇ、途中から何言ってるのか分からんし」「人に約束を守らせるやり方を見た」「俺村長無理だわ」
「魔法のゴリ押しだけじゃ無理なんだな…」「9年までは上手くいったんだけどねー…」「勉強になったわね…」
(言いたい放題だ…ただの村人だよ?私は。このくらいならサイーシャ村の村長もやってたし…)
いやーどっちかというと俺からの影響じゃないか?…いやコレを俺の影響にしたくないな。多分違うわ。
商国の民族性を利用した交渉とか、俺が営業でやる事の応用に見えるけど多分違うと思いたいわ。
「ともあれコレで2日目のテストは終わりだ。明日に備えてしっかり休めー」
「魔物」
神が産まれた時、同時に魔物は誰かの空想を借りて産まれました。
何も無い力が何かになる為に、誰かの思考から皮を剥ぎ取ってです。
神が魂を与え、人間が生まれ、世界が広がっても変わらずに出て来ました。
何も無い力が消えるまで魔物は変わらずに創られるでしょう。