不遇水魔法使いの禁忌術式サーシャと死に戻りの時計   作:何処にでもある

20 / 76


コレが幽玄の今のステータス。

サーシャ
水属性
Lv.18
HP98
MP500
力6 守2 速8 技8
知22 魅20 謀25 運7
攻魔F 守魔C 抗魔A
記憶容量 396/500
『水球(1)』『水纏(3)』『水放射(3)』
『渦巻(30)』『魔水(4)』『水滑(5)』
『禁忌‭術式─‬水‭─‬(250)』
『憑依(0)』『通信(0)』『錬金(0)』
『魔力視(0)』『循環(0)』『貸与((0))』
『メモと開発途中の魔法陣や設計図その他(100)』

奇跡
『癒しの祈り』『静寂の祈り』

装備(5/5)
杖:MM/時計塔(リーロ)
服:王都魔法学園の青制服
アクセ:『水滑』の靴
アクセ:偽りの魂(ソウル・コンプレックス)
アクセ:白衣






長・命・二十

 

 

「さて、今日も研究頑張るぞー」

(今日はダルクもカーリーも居ないから遊び半分で軽めに…なら時間の分離演算を他に任せる機械作りかなー。よし、リーロの言ってたコンピュータ?…のトランジスタとやらに挑戦してみよう。要は単純な力の流れを自動でコントロールすれば良いんだから……)

 

 今日も相変わらず研究を選択するサーシャだが、これでコミュが問題ないかと言われると大問題だったりする。

 これが周回出来るなら問題ないし寧ろ推奨行動なのだが…人生一度きりとなると逆にコミュった方が良いんだよ。サーシャ一人より攻略対象3人でやるのが効率良いしな。

 でも世間に関わらないならこれもまた有りだ。それはそれで終わりの時計塔の連中がなんとかする。現状で死亡済みだからか、割と満足してる俺としてはどうなってもノーダメなのだ。

 サーシャ、見守ってるよ…。

 

「じゃじゃーん、真空管。遂に砂からガラスを量産出来る魔道具も作ったし、コレで電力とやらを魔力で代理してやる行けー!いてー!」

(おわーっ!魔力もないガラス管に沢山魔力を流すと熱くなって割れた!魔力そのものが持つエネルギー?とやらが熱になってるんだ!……つまり真空に急速に魔力を流すと、属性問わず爆発を作る?…これを小規模に連続してやると…これに耐えられる素材で…衝撃を逃がせるように上は精密に作った蓋で…)

 

 しかし何だな、サーシャは結構な頻度で俺の前世の話を聞こうとするんだよな。

 勿論前世だとは言ってないし、信じさせる努力もしていない。いやー心が読めても分からないことってあるよな。

 

「おお、これがリーロの言ってたエンジンかー…包みを上に、蓋を下に。蓋を下げると真空に魔力が一気に流れて爆発、爆発で蓋に勢いがつく、下のローラーでくるくる、勢い余って蓋が上に、爆発した魔力が逃げ口に、そのまま惰性で下に行き爆発……後は複数作って…」

(魔力がある限り繰り返される機関…魔力は空気中のものを採取した奴だけど。それじゃあ回転に車輪や歯車に付けてみよ…うわ、めっちゃ早い。適当に作った槍にも似たようなのを着けてみよう…うわ、木を貫いた)

 

 なんか思い耽ってる間に魔力機関創り上げたな。ゲームだと終盤くらいの研究枠じゃん。

 でも逃してる熱が勿体無いから言ってみよう。

 

‭─‬‭─‬世界を切り替える

 

「ねーサーシャ、空気中に逃してる熱って使えないかな。折角だし水を温めてさ、蒸気にして力にしようよ。ほら、水は蒸気になると体積が広がるって言うし、コレで発電とかやると面白そうだよね」

 

 例えば鉄に銅を巻いてさ、それを左右と前に置くんだ。そしてSMでしっかり分けた磁石を蒸気で回すんだよ。こんなイメージね?

 三相交流って言うんだけどさ、三つの電力を束ねた物なんだよ…………

 

‭─‬‭─‬世界を元通りにする

 

 言いたいこと全部言ったわ。こうして俺からサーシャに知識が渡されるって訳よ。

 

「……先ずは仕組みを手帳に書いて…作った電気と蒸気と本体の回転を使って…効率は悪いけど、一先ず魔法陣だけで再現、それから魔道具に…取り敢えずこの力で槍を投げてみよう」

(うーん、魔法を上手く扱うには魔法に頼らない仕組みを知る必要があるの、何かの不具合だと思うんだよね。素材の特徴に熱の動き、水の仕組み、魔力の挙動……全部纏めると馬車にするには過剰になる…いっそ専用の道路を敷いて其処を走る車を…やるには国とのツテがないか)

 

 リサと二人でテストを受けた晩の話である。

 

カチッ

 

 バチバチバチッ!!

 

「よし、その名も「魔力蒸気発電式投槍機」だ。コレ絶対個人で発明しちゃいけない物だと思うけど…一番の反則は錬金学だねアタック!」

(魔力爆発で回転、蒸気を貯めて、電気を流した上で磁力の反発。更に魔力の爆発を任意発動すると同時に全ての貯めた力が解放…結果は観測不可かな。夜空の向こうに消えたし、それを水平にして撃つのは怖い)

 

 俺とサーシャが錬金術で適当に作った土の槍が夜空の彼方に飛んで行き、無事にとんでもパワーの作成が終わった。投げるのが遅くて一回死んだのは許容範囲だな、普段から2日に1回くらい死んでるし。

 真空に魔力を一気に流すと爆発するって知ってれば誰でも作れるんだけど、そもそもこの世界って真空の概念が無いからな。

 あ、でもあるわ。神話でも無の世界に無の力が集まってこの世界が出来たってあるし、神国辺りが無の世界を再現しようとすれば見つかってるんだよ。

 神国には戦略魔法ってのがあるんだけど、その中に『神罰』っていう大爆発を起こす魔法があるんだよね。多分同じ原理だわ。

 

「…よし、魔道具の設計図代わりに作った魔法陣は『神罰』と名付けよう。多分神話の創世と同じ仕組みだから罰当たりだ。使い切り限定…あ、でも大砲なら何度でも…砲身は…うん、槍よりもしっくりくるし、こっちを作ろう」

(よし、ここをこうして…私とリーロの共同制作品、完成だ!1分以上貯めようとすると勝手に発射するけど、暴発よりはマシとしよう)

 

 そうしてその日の夜は終わった。

 制作した大砲はスチームパンク界のレールガンみたいな見た目になったがまぁ良いだろう。かっこいいし。動力源は空気中の魔力と水球だけのエコ兵器だな。『渦巻』の半分くらいの消費量だ。

 …俺が攻略キャラの代わりの役割を発揮してる可能性には目を瞑ろう。ゲームでもリートが居たし違うだろ。

 ゲームのリートはメタ説明や死亡時アドバイスとかがメインだから判断つかないけど多分違うだろ。

 

「むにゃ…」

(血統書に変わる証明書…契約書…うーん、その土地は開発が…)

 

 うむ、試験中の夢を見てるな。健全だ。

 

「ぐふ…」

(あーリーロそれは私の背中…乗るなー…普段から背負ってるけどもー…うーん私は文字盤(インデックス)じゃない…ちっくたっく…私は水時計……)

 

 うむ、生きてる頃の俺を見たのと普段背負ってるのが合体した状況の夢を見てるな。健全だ。

 夢に出る程頑張ってるし、最後のテストも無事に終わってほしいな。最近孫を見てる気分になって来たし。

 

「むぅ…良いこと思い付いた…メモ…」

(魔法陣を砲身代わりに出来るなら…生身の肉体も同じである可能性…命魔法、魂を作る魔法の存在が許されるなら……理論上どんな属性でも魂から設計可能である……つまり肉体を作る魔法…魔力を構成する要素を分解して……電子のように、水素のように、魔素があるとすれば……そもそも肉体は魔力から作られるのだから……)

 

 サーシャは寝ぼけながら、ミミズの這った文字を書き始めた。

 ここ最近多いんだよな。夢の中でも研究してる延長で夜中に起きて日記に書くの。

 それで朝起きたらいつも俺に聞いてくるんだよ。その時の私は何を考えていたのかってさ。

 いつも普通に答えてるけど、これが研究に役立つとは思えないんだよな。平気で矛盾した事を書くし。

 

「故に……これこそが神に追い縋る方法、生命の創造による対話相手の蘇生……そもそも蘇生魔法は禁忌として既に覚えてる……それを解明し……仮に不可逆であるならば、新たな種族として創造すれば良い……少なくとも、想像から造られる魔物よりは筋と血が通ってるに違いない……」

(やったぁ新しいアプローチ見つけたぁ……むにゃ……リロール、ロード、アンコール……時は逆流し、成長因子は蓄積する……故に死に戻りとは……深淵の階段は……シープ、お前は姫になりなさい…)

 

 パタリとまた倒れ、サーシャは今一度意味不明な夢に旅立った。思考の整理といっても、俺から見ると病的なまでに魔法に取り憑かれてるようにみえるな。

 そして数時間後、夜が明けた。

 

「ふぁ…また手帳にミミズが這ってる…へいリーロ、教えて」

 

‭─‬‭─‬普段使いが荒いよな

 

 ええと確か…手帳に改めて書き直すのも楽じゃないんだぞ?

 あれをまとめると…。

 

「禁忌として蘇生の魔法覚えてるのと、昨日知ったリサの命魔法、二つ合わせると理論上の生命の創造の魔法は案外簡単にできそうだよね」

「それ使ってMMの魂に肉体を用意すれば会話出来ない?最悪魔力を構成する魔素とかの配列弄って「魂専用の身体」、仮称「霊的魔力体(ホムンクルス)」を作るとか…可能性はあり得そうだな」

「後は…死に戻りの記憶の継続に付随して知能が加算されてる可能性が高いって言ってたかな」

 

 そもそも火属性とかは殆どが魔力だけ。その構造を魔法陣として再現すればワンチャンあるなって感じだったよ。

 

「で、此処から私の言葉ね。今日のテストは全力で戦闘の用意をして。昨日作った…仮称「大砲(ビッグ・ガン)」とか全部持ってって」

 

 じゃあ戻るよー。

 

‭─‬‭─‬この寝言の伝言意味あるの?

 

「意味はあるよ。魔法はアイデア一つで見える世界が変わる。昨日まで属性に染めて使うだけだと思ってたのに、魔力爆発一つの発見でこんな物を作れた。新しい発見は世界を切り替える。ヒントは一つも逃したくないんだよ」

(さて、魂の波長、それを調律する偽物の魂、昨日知った交流の概念に魔力爆発、そして魔法陣による肉体の再現の可能性…と言うより、「人工魔物」と「霊的魔力体(ホムンクルス)」の研究…難しい事はない。いつも通りに過程研究を進めよう)

 

 サーシャは手帳に自分の思考を纏めると、それを制服の内ポケットに仕舞って食堂に向かう。

 しかし…ただ魂だけの存在と会話するってだけで随分と大きな事になったよな。

 『憑依』に『通信』に"魂の共奏(コア・サイオン)"に…どれも深掘りすれば安全な対話自体は出来そうなのに、どれも選ばないのは拘りからだろうか。

 対面じゃない、声だけなのはしっくりこない、存在だけ感じ取れても仕方ない…どうにもサーシャの中で、対話に加えて新しい条件を付け足してるっぽいな。

 

「…奇遇ですね」

「あ、リサおはよう。ほんとに奇遇だね。折角だし一緒に食べようよ」

「遠慮します。貴女と仲良くなったと知られれば、私の学園生活に支障が出ますから」

「昨日最後まで一緒にやった時点で遅いと思うけど?」

「いいえ、まだ可能性は残っています。まだ私は沢山の友達に囲まれてお茶会をする夢を諦めてません」

 

(今日に至るまで一人きりだったしもう手遅れ…は言わないでおこう。言ってもしょうがないし)

 

 顔と歯を洗っているリサを見送りつつ、サーシャは口を噤んだ。

 生活の利便さだと土よりも水が有利なんだな。

 

「お茶会…良いね、今度私の友達と一緒にやろうよ。こう見えて顔は広いよ」

「どっちかと言えば殿方との関係が多いでしょうによく言えますね。私の言う友達とは女の子の友達ですよ。目指せ100人です」

「お、それじゃあ私はリサの友達1号だね。親友と呼んでも良いぜ」

「むむ!」

 

 リサは急いで口を濯いでから、サーシャの言葉に反論した。

 

「ぷは…貴女の実力は認めました!ですが、友達とはこれっぽっちも思ってません!言うなれば…そう、ライバルという奴です!」

「あはぁ。じゃあ訂正、心の友(ライバル)って呼んでも良いよ」

「うがーーぁ!」

 

(リサって私生活だと気が緩んで面白いことになるんだね。うん、授業で競い合う相手が欲しいところだったし、是非とも卒業してからも仲良くしていきたいものだ)

 

「ところでその厳つい持ち物はなんですか」

「テスト準備」

 

 そこから次のテスト会場まで、サーシャはリサと仲良く話し合いながら向かった。

 此処からが本番だ。今の死ねる回数は2回、全力を尽くそう。

 

 


 

 

 真のお嬢様の目覚めは穏やかな陽射しこそが相応しいと言われているわ。

 

「シープお嬢様、起きてください」

「あと5日…」

「怠け羊よ、毛刈り隊に襲われたくなくば起きなさい」

 

 ウィィィン!!

 

「きゃああ!?」

 

 私の目覚めは常に震えるトランプ(バリカン挙動)の恐怖での飛び上がりよ。

 ふふ、四捨五入して実質真のお嬢様ってところかしら?

 

「さあお嬢様、朝の支度です。あと30分もすればテストが始まりますので、さっさと髪の手入れに入りますよ」

「ヘル、今日の私の寝癖は中々良いと思わない?ほら、左右の割れ方が天使の翼のように!」

「素晴らしい、お嬢様の雷の魔力属性で焼けた、パリッパリのクロワッサンですね。お顔が目玉焼きみたいで大変美味しそうですよ」

三日月の女王(クロワッサンクイーン)と呼んでも構わなくてよ?」

「はい整えました。着替えて食堂に行きましょうね」

 

 いつも通りヘルが私のMM(付角)を被せ、朝の支度は終わるわ。

 はぁ、ここ最近の春の稲妻はイヤらしいったらないわね。毎晩寝てる乙女の頭を散々に掻き乱して立ち去るもの。

 なんなら風と共に外を歩いてる私の髪を乱しもするわ。この前なんてサーシャの顔を埋めて絡まってしまったし。

 MMである程度は勝手にマシになるけれど、何事にも限度があるのよ。溢れる才能が故の悩みね。

 

「はぁ、今日もテストがあるのね…なんでこんな事をしないといけないのかしら」

「お嬢様…憂鬱気な空気を出しながらトマトをコッチに寄越すのはおやめ下さい。好き嫌いはダメですよ」

「はぁ、今日も真っ赤な悪魔が食卓に潜んでるわ…なんでこの者達は此処にいる事を許されてるのかしら」

「今日は女王気分ですか。今日はどんな夢とお見えになったので?」

「魔法使いのサーシャが下民の私をお姫様にしてお城に連れてってくれて……なんやかんやで魔法使いと結ばれる夢だったわ」

「王子様、どこへ!」

 

 うるさい、ヘルが王子様だったのを秘め事にすると自然とこうなるのよ。

 

「…というか、神国で有名な童話のシンデレラですね。お読みになったんですか?」

「昨日のテスト問題で書庫を探したでしょ?その時に読んだのよ」

「テストを放って読む辺り、相当気に入りましたね?」

「3回読み直して手帳にも写したわ」

「さては『電光』の魔法を使って加速しましたね?あれは使い過ぎると鼻血が出るんですから…」

「あーあー!過保護なヘルは嫌いよ!親に叱られてる気分になるもの!」

「で、王子様は誰でしたか?」

「…ヘル、さてはあなた、地味に気になってるのね?」

 

 それは…私は別に、ヘルのことが好きな訳じゃ…でもあの夢は…あーもー!思い出すと腹立たしいわね!…ヘルが王子様だなんて生意気もいいところよ。もう。

 それに魔法の力で全てが解決するなんてそんな優しい話、夢の中にしか……。

 魔法、魔法ね…。

 

「ヘル」

「なんですか?」

「今日は1位取るわよ」

「その心は?」

魔法使い(サーシャ)魔法(治療)は二晩を経ても夢のようには解けなかった。ヘルの老いも、私の若きも、(まこと)に元通りにしたのよ」

「はい、苦しくは有りましたが、それだけの価値はありましたね」

「ヘル、あなただったらこの魔法にどれだけの値段を付けるかしら」

「私の16年とお嬢様の8年と同じだけの応対と安息を。これを行った人物の人生全てを買い上げられるほどに」

 

 そうなるわね。一度きりの奇跡ではなく、何度も扱える魔法で解決したわ。後から何度も聞いて、飴が無くても出来る事を聞き出したもの。

 それが意味するのは、あの産まれ直しの苦しみを乗り越えさえすれば、歳月から解放されることを意味する。

 …時間を金銭で買えるようになるのよね。

 

「30日、一ヶ月だけ学園に在しただけで彼女は老いの苦しみからの解放を成し遂げた。きっと彼女は、今後永久に現れない才覚の持ち主よ。その友人であるだけで()()だもの」

 

 懐から羊皮紙を取り出して手元に広げる。

 工房街で、この学園で立ち上げた商隊の契約書ね。

 商国由来の『契約書』の火魔法は、一つの紙にその商隊の全てを書き表す。

 持っている金銭も、土地も、人も、商品も、その将来性までもが表される。

 今の規模を基準に、一年後にどうなるかを世界に問いかけるの。当たりも外れもする占いだけれど、極端な数字になって外れた事は一度もないわ。

 

「私が全てを忘れても尚トランクに残っていた「『契約書』のスクロール」。本来なら門外不出のスクロールは私の産まれの証明書も同然の品物。それで新たに立ち上げて、サーシャの魔法を種銭にした商隊…」

「元から残っていた資金だけでも生涯王都で遊んで暮らせるものでしたね」

「そうね。私達二人が、土地も何もない状態から生涯、およそ20億の資産があった。この契約書にも記録されている。()()()()()()()()()()()()()1()0()()%()()()()。分かる?総資産20兆よ?商国全てと天秤をかけてもまだこっちの方が重いわ」

「サーシャお嬢様凄すぎですよね」

「分からない?サーシャにとっては、それが知り合って間もない相手のプレゼントにすぎないのよ?」

 

 へらへら笑いのヘルは普段しっかりしてるけど、自分の理解出来る範囲でしか考えない癖があるの。確か…サーシャが言うには想像力?が少しだけ足りないらしいわ。

 未知は自分の理解出来る範囲でしか扱えないし、そこから飛び出そうともしない。だからサーシャも自分理解の外にある要素は弾いて考えてる。

 その分現実的な案を出してくれるから助かるのだけれど。

 

「サーシャは目移りし易い人よ。浅く広く楽しむタイプね。それは人の関係でも同じ。その上で仲良くなる為に何かを渡すのに躊躇がない」

「…まさか」

「放っておけばサーシャは自分の作ったものを広めていくわ。現にダルクとやらはサーシャから貰ったペンダントの力でギリギリまで昨日のテストに残った。あの輝きを忘れたとは言わせないわよ?」

 

 忘れるはずもない。脱落してみんなの様子を見る時に、あの輝きはあらゆる困難をこの光で打ち払った。

 見てるだけで目が潰れかねないほど明るいのに、見てる程心が安らぐ不思議な輝き。圧倒的な力は、遊び半分の民衆を本気にさせるのには十分だったわ。

 

「だからこそ、三つ目のテストは荒れるわ。サーシャは遠慮なく自分の才覚を発露させた。もう疑う人は居ないし、その眼に止まる理由として1位は十分な参加権よ。だからこそ、私達は既に眼に入った者として塵払いをしなければならない」

「独占ですか」

「商売で最も忌むべき行為で、最も憧れる行為よね。サーシャの交友関係を狭めれば、それだけ私に流れる利益は多いもの」

「…お嬢様、お嬢様にとって、サーシャお嬢様は何でしょうか」

 

 変なことを聞くわね。

 

「ヘル、愚問よ。私のヘルを取りかねないライバルで、卒業後の全てを解決する万能の手で、手放せば二度とは掴めない友人よ。どれか一つかなんて選べないわ」

「そうですか。では、トマトを食べてから私達も会場に向かいましょう」

「そうね、今日は真っ赤な『電光』!」

「お嬢様!逃げるな!折角セットした髪が暴れるでしょう!」

 

 あはは、逃げられないわね!

 でも捕まる頃には会場よ!今日は私の勝ちね、ヘル!

 

 






「シープ・スミス」
 商国で有名な商隊と問えば「スミス商隊」は必ず挙げられるでしょう。
 無限の富を持ったとされ、10年前なら2人に1人はそこの所属でした。
 「源龍事件」は商国の全てに被害を与え、一番大きなスミス商隊は一番被害を受けました。
 こうしてかつての栄光は消え去り、残ったのは子供と使用人と、多少の金銭だけでした。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。